食器好きの方なら、一度は心を踊らせる、陶器市。陶器の産地に出かけて見つける、個性があって大量生産されていない美しい食器たちは、近所のショップやオンラインショップではなかなか手に入らない、特別なものばかり。今回はそんな陶器市での掘出し物探しを少しでも体験していただけるような、新作やデッドストックの陶器たちを集めました。
日本では縄文時代から1万年以上にわたって焼き物の歴史があります。焼き物の種類は大きく分けて陶器と磁器の2種類があり、粘土を原材料とする陶器、石の粉を原材料にする磁器、2つまとめて陶磁器と呼ばれます。
現在でも日本各地で盛んに焼き物が作られていますが、世界の焼き物と大きく異なる点は「日本の焼き物は不均整で自然な形に近い点に美しさを見出している」ということ。確かに、海外の焼き物を見ると、均整の取れた美しさのある食器ばかりで、日本にあるような、少し歪な暖かい魅力とは異なるように感じます。日本人は器を手に持って食べることが多いため、デザイン以外にも大きさや重さ、そして手触りにも拘っているのも特徴です。北から南まで、全国各地の産地それぞれに素晴らしい特色があり、さまざまな風合いを楽しめるのも魅力のひとつ。旅をしながら運命の一枚を探すのも楽しいものです。
茶道や華道においても、焼き物はとても重要な役割を担っています。このように、日本における焼き物は、単なる“食器”としてだけではなく、芸術性や精神性を表すものとして、日々の暮らしの中にあり続けています。
食器好きの大人の皆様なら、すでにお気に入りの食器を何枚もお持ちのはず。そんな精鋭の中に入っても活躍できるのは、やはり伝統的な日本の食卓に並ぶ「小皿〜中皿サイズ」ではないでしょうか。ある程度の汁感も受け入れてくれるようなおおらかな器なら、今ある食器との組み合わせを楽しめるはずです。
今回新作としてご紹介するのはこちら。
山水雲型豆皿・曳舟図双輪豆皿
蓑(みの)と三度笠(さんどがさ)を身につけた男性が、川で船を漕ぐ姿が描かれている曳舟山水。手のひらほどの小さな器に描かれている旅の世界と器の縁と水面を表現した赤茶の色もなんだか心惹かれるお皿です。4枚組の方は一枚異なる絵が入っていてなんだか嬉しいセット組です。
鳥獣戯画雲型小鉢5枚組
描かれているのは、平安時代から鎌倉時代に制作されたといわれ、日本最古の漫画と言われている鳥獣戯画。京都の高山寺に伝わる墨画の10mにもなる絵巻物で、国宝とされています。その巻物には、ウサギとサル、カエルなど動物たちが、まるで人間のように楽しそうに遊んでいる姿が描かれています。
ユーモラスな場面を選び、墨で描かれ色絵でアレンジした器。九谷焼のエッセンスが入った他にはないオリジナリティがある一枚一枚。その異なる絵柄に物語を想像し、セリフをつけてみてしまうそんな鳥獣戯画の器。
墨絵の風景に彩りが加わった宮本泰山堂(みやもとたいざんどう)の鳥獣戯画雲型小鉢は、盛り付ける前に眺めてしまう愛らしい器です。かわいい雲型小鉢は汁けのある和え物や酢の物などのちょっとしたおかずに使いやすい大きさです。
双魚文和皿/宮本泰山堂
緩やかなカーブの八角形のスタイリッシュなフォルムで、丸い食器の中にあるとより存在感が出るお皿。中央に描かれ双魚は背の鱗模様まで日本画のような雰囲気です。また縁に沿うように描かれているアザミのような植物と畝る青の線の効果かモダンで華やかです。白磁の美しさを活かし、一人前のお造りを盛りつけるのも良いですし取り皿としても使いやすいお皿です。
日本の名窯でよく絵付されてきた文様の双魚は、魚が子を多く産むことから、子孫繁栄の絵柄として取り入れられてきました。料理を心から楽しんで、料理を引き立てる器を作った陶芸家北大路魯山人もまた双魚のお皿を作りました。プロの料理人が好む器をイメージして制作されたというこちらの器は、まさに宮本泰山堂の引き算の美学が加わった料理を引き立てるお皿です。
唐子新木瓜型5寸/宮本泰山堂
唐子絵とは、中国の唐時代の子どもたちを描いたものを指します。子ども達が楽しそうに遊ぶ姿から連想し、子孫繁栄、不老長寿を願う縁起柄とされています。その昔は、主に献上品の器に描かれたもので、朝廷に贈るものには7人、大名家には5人、武士や一般には3人と決められていたそうです。そしてその唐子の表情は、絵師によって個性が発揮されていたものだそうですが、宮本泰山堂の描く唐子は、ふんわりと優しい表情でどこか素朴絵のようにほっこりさせてくれる絵付。
ファンシーなキャラクターの絵柄でもないのにこうした気分になるのは画力のなせる技。その上、ゆるゆると踊っているような雰囲気もありつつとても上品な配色だったり、縁に組紐のような絵柄が丁寧に描かれたお皿です。お皿の形、木瓜(もっこう)型は日本の家紋の一つで、こちらもまた鳥の巣の形に似ていることから子孫繁栄を意味する形として、時代の大名たちに愛されたものです。縁起の良いものを掛け合わせたお皿を普段から使うことで、食卓を明るく賑わせてくれます。
宮本泰山堂は、加賀藩三代藩主・前田利常が隠居した石川県の小松市で、伝統的な色絵磁器を手がけてきた窯元です。石川県小松の地で、古九谷の本流伝統と言われる色絵磁器を中心に「伝統とモダンの融合」「何よりも楽しんで使える器」とテーマとした作陶を行っています。創業当時は九谷焼商店だったそうですが、3代に渡って泰山堂が受け継がれてきた中で、「使って楽しい器とは?」「毎日の食卓に載せたい器」を求めた結果、泰山堂はオリジナルの器づくりを行う作陶工房へと姿を変えたのだそう。九谷特有のふっくらと厚く盛り上がる青(緑)、紫、紺青、黄の上絵付にこだわりながら、「伝統とモダン」、「楽しんで使える器」の2つを職人技で形にし、使いやすい絵柄にまとめ、日常の食卓へ送り出しています。
リンカ皿/カネコ小兵製陶所
カネコ小兵製陶所のリンカ皿は、実に和洋中と万能なお皿で、プレートはそれぞれのメインディッシュを盛り付けるにちょうどよく、ボウルの方は取り皿にちょうどいい大きさです。テーブルに咲く一輪のお花のように、大ぶりの花びらが食卓を華やかにしてくれるリンカ皿。陶器の温もりあり、素朴なアンティーク品のようであり、どこか現代らしさもあるお皿で、和洋問わず盛り付けて様になるのがこのお皿の頼りになるところ。毎日の食卓に登場する頻度高く、日々の定番メニューをさりげなく彩ってくれます。
リンカ皿(ボウル白)
リンカ皿(プレート白)
一つ一つ手作業で仕上げられた焼き物らしい温かみのある器。こちらのリンカ皿では使い勝手を優先して縁を肉厚にして、陶器だからと気を遣うことがない気楽さと、土の表情はしっかり感じられる他にはないデザインとなっています。整いすぎないでこぼことした素朴な陰影が柔らかい印象を与えてくれる、なんとも愛嬌のある器です。盛り付けるものを選ばないので毎日の食卓で活躍してくれます。
カネコ小兵製陶所は大正10年、伊藤小兵の手により岐阜県土岐に創業。創業当初は共同の登り窯で、主に神仏具を焼いていましたが、成形に適した陶土が採れたことから徳利の生産に力を入れ始め、生産量日本一になりました。 その後、酒の多様化により、長年続いた徳利の生産だけでは小兵窯も立ち行かなくなると考え、誕生したのがぎやまん陶です。 ぎやまん陶は徳利の生産数日本一を誇る小兵の徳利を作ってきた成形や製造技術の裏づけにより完成した美しい菊型の器。硝子のような透明感と漆塗りを思わせる風合いにより、美を追い求めた末の傑作と呼ばれるほど。それでいて乾きやすく耐久性のある機能も備え、美しさもありながら、日常的に使える丈夫さとデザインが共存しています。
グリルプレート/TOJIKITONYA
こちらのグリルプレートは、TOJIKITONYAのもの。グリルプレートは、焼き物の産地・三重県の伊賀で製造されています。伊賀の地層である古琵琶湖層から採れる陶土は非常に耐火度が高く、耐熱陶器に見合う土として知られてきました。蓄熱・保温に大変優れていること、そしてざらりとした手触りが特徴です。また、伊賀土には遠赤外線効果があるため、食材の旨味を引き出し、料理をまろやかに仕立てると言われています。
一人分のお魚やお肉や卵を入れて深さのあるプレートごと高温で一気に焼きあげるので、グリル内は汚れず、後片付けがとても楽です。洗いやすい形状なので手洗いはもちろん、食洗機にも対応しているので、油汚れやにおいが気になるものでも安心して使えますね。TOJIKITONYAが得意とする遠赤外線効果で素材の良さを活かし、ヘルシーに美味しい料理を楽しめるアイテムです。グリルから取り出しやすい取手付きなので、出来立てをそのまま食卓に持っていけば食器も少なくて済みます。
2007年、TOJIKITONYA(トウジキトンヤ)は、問屋業を営んでいた3社が地域の歴史や文化に育まれてきた素材を活かし、現代の生活に見合う良質な陶磁器製品を伝えていくという使命をもって始まりました。焼物産地においても昔ながらの技術や職人が急減している中、日本の食文化の歴史とともに歩んできた陶磁器産業の優れた技術や製品を継承していきたいとの想いがあります。
消費が多様化し、暮らしが大きく変化した1970年代後半〜90年代のものづくりは、華やかで手の込んだものが多くありました。今は職人不足や技術継承、コスト高の問題で同様のものづくりが年々難しくなっており、できるだけ簡素に、集約して作っていく傾向にあります。そんな中で、こうした華美な陶磁器はとても貴重で、今後はこうした陶磁器が新たに生まれることはないのではないか・・と思うほど。今の時代でも取り入れたい、愛らしい一期一会の蔵出しお宝アイテム。丈夫な年代物の陶磁器は、この先40年後にヴィンテージからアンティークになるものばかり。日常でたくさん使って、大切にしていただけたら嬉しいです。
treasure series 掘出し陶磁器を見つけてきたのは長崎県波佐見町。ここは九州の焼き物の中でも特に大きな産地で、1580年頃から陶石が産出されたことで焼き物の一大産地になりました。日用食器では全国の16%のシェアを誇る出荷数を誇る波佐見焼ですが、2000年頃までは有田焼を生産していた窯元が多く集まる地域でした。分業制産地における社会的都合により、地域はこれまでのものづくりでは先が見えなくなった時に、各工房と人々の暮らしの間に立ってものづくりを支えてきた西海陶器株式会社が中心となって、新たにスタートしたのが波佐見焼です。
最近になってメディアでの露出もあり注目度も高い波佐見焼、その現代的な食器の背景には、400年以上の歴史があり、食器や美術工芸品など生産してきた技術があります。今回の蔵出しのtreasure series 掘出し陶磁器には、波佐見焼の歴史の中でも今となってはお目にかかることができないほんの一部の品々をピックアップ。現代において、同じ品質のものづくりをするには、時間と技術と材料コストと見合わないものが多く、日本の活気ある時代も感じられるお宝のような製品です。
ジュエリーボックス
陶磁器のジュエリーボックス。生地の段階で泥漿(でいしょう)※粘土と水を混ぜ合わせ泥のような液体※を塗り重ね、凹凸を施したドットパターンを仕込んだうえで素焼、本焼成、その後に金絵具を用いて着彩し、上絵焼成を経て完成したものだそうです。
東欧の雰囲気も感じる花の絵が手書きされたジュエリーボックスは、絵付の色数一筆一筆からなる濃淡から、この小さな焼き物が一つ一つ丁寧に作られたことを感じる手仕事の品。西洋を雰囲気感じる六角形のロイヤルヌーボーは、緻密な紋様の上絵転写を貼り焼成したものだそうです。絵柄はなく金彩が施されたジュエリーボックスには、水玉模様のような凹凸があるこれまた個性的な品。どれも異国のヴィンテージの雰囲気で、世界各地の焼き物がそれぞれに影響を受けて反映してきた歴史も感じます。
錦蝶絵シリーズ
錦蝶絵シリーズは、30~40年前に中華食器として作られたものです。ちょう蝶は、発音が「長」と同じところから長命の意味があるそう。華麗な羽の形や色、華やかに成長し羽ばたく姿の美しさから「美」の象徴とされ、昔から工芸品や絵画などで親しまれているモチーフをテーブル小物の絵柄にしてあります。
小さなティーポットのようでどこかヨーロッパの雰囲気もある形と愛らしい小花柄。ドレッシング入れにしても使いたいかわいいポットです。お部屋に飾る切花の短くなったグリーンを少し飾ったり、キッチンにゆとりがあれば、飾っておくだけでもかわいい錦蝶絵シリーズ。持ち手部分にある文字もなんだかいい雰囲気です。小皿の方は、醤油や薬味皿だけでなく、コーヒーやお茶のお供にお菓子皿としても使える洋の雰囲気もあります。
白山陶器年代物 U字花瓶
白山陶器の壁掛け花器。玄関や洗面スペース、階段などの柱にも使いやすい壁かけタイプのこちらの花器は、エキゾチックさもあるゾウの絵柄がポイントです。ロングライフなブランドとして知名度の高い白山陶器の今では見かけることのないタイ王国御用達ブランドとのコラボレーションの製品で、ブランドを象徴する動物「象」が呉須の濃淡で表現されています。動物柄で幼稚にならないのは、高級ブランドならではのデザインや色柄のセンスかこちらもレトロな日本のイメージから枠を超えた品です。
自宅のオーブンで焼いた、グラタンとフランスパン。ワイワイ取り分けて。
使用食器:リンカ皿、Shallow Pot 18cm(Igneous Rock)
同じ種類のお皿をサイズ違いで重ねて、プレートに。
使用食器:リンカ皿
焼き魚をのせたワンプレート朝食のメインに。
使用食器:リンカ皿(プレート黒)
お酒のおつまみになるお刺身やちょっとした小鉢料理をまとめてみるのも。
季節のフルーツをのせるお皿にも。今の時期なら柿や梨。グッと雰囲気がでますね。
使用食器:唐子新木瓜型5寸
お皿を変えるだけでいつものメニューが美味しそうに見えたり、お店のような見栄えになったり日常をさりげなく彩る食器たち。
マンネリするメニューも見え方が変わり、選び方次第では時短調理ができたりとつい色々と欲しくなります。
ZUTTOの陶器市では、各家庭の食卓やお気に入りのレシピ、バランスのいいメニューが簡単につくれるようなお皿をそろえてご紹介します。陶器以外にも幅広くご用意しているので、ぜひ合わせてみていってくださいね。