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【特集】はなもっこのアトリエを訪ねる(前編)

 

石川県金沢市のアトリエで1点ずつ
手作りで生み出される「はなもっこ」の腕時計。

このたび、新たに「かさね」というシリーズを販売開始いたします。
販売記念として、アトリエ探訪記を公開。

日本に昔から伝わる美意識と
職人の技をお楽しみいただければ幸いです。

 

 

 

北陸新幹線の開通で、今何かと話題の北陸地方。
金沢といえば、兼六園や21世紀美術館が思い浮かぶでしょうか。

江戸時代から続く老舗諸江屋の落雁(らくがん)の箱を開ければ、
他ではなかなか出会えない細やかな色彩美が現れます。

 

 

手作りの腕時計「はなもっこ」を手がける
アトリエ シーブレーンは、そんな石川県金沢市にあります。

金沢駅からバスに揺られること20分ほど。
静かな住宅街の中に佇む1軒のアトリエ。

 

 

シーブレーン代表の井波さん、職人そして日本画家としても
活動されている牛島さんにお話を伺いました。

 

まず見せて頂いたのが、
腕時計がずらりと並ぶショールーム。 
自然光がいっぱいに広がる白い空間で、
ガラスケースに腕時計が整然と並べられています。

 


---こうして並んでいると、壮観です。

そうですね。ZUTTOさんで展開頂いている
「はなもっこ」の 「こないろ」シリーズの他にも、
いろいろラインナップがあります。
これは、一番最初に手がけた「クルチュアン」というラインです。
シーブレーンの中では今でも一番人気なんですよ。 
最近では、とあるショップさんとのコラボレーションで、
トーベ・ヤンソン生誕100周年の記念ウォッチも製作しまして。

 


---文字盤とベルトの組み合わせって無限ですね。

本当にその通りで、ベルトや文字盤の
デザインは全て手作りなので、組み合わせ次第で
1点からあれこれ試すことが出来るんです。
だからついいろいろ作ってしまって...笑。

---このベルトは布製でしょうか?

はい、これもミシンで縫って職人が作ってます。
ただ、腕時計は文字盤もベルトも面積が狭いので、
大きな柄のプリント生地は模様が映えないので
使いにくかったりと、制限はあります。 
でも、制約がある中での表現は楽しいですよ。

 

そしてこちらが「はなもっこ」のシリーズです。

 

 

---すごく繊細。これは、何で描かれているんですか? 

これ、切り絵なんですよ。 

---!!(驚きで、言葉が出ません。)


和紙を文様のかたちに切り抜いて、文字盤にあしらっています。
こちら(写真左) がユニセックス、
この二つ(写真右)がレディースサイズです。
これも、切り絵なので文字盤の上に
表現出来るサイズであれば、他の絵柄も作れますよ。
東京にある美術館のミュージアムショップに置いて頂いている
腕時計は、オーダーで市松模様の絵柄にしてみたり。

 


---光の当て方で表情が変わるんですね。

はい、横から当たる光の角度で見え方が変わるのがこの時計の面白さです。
その分、公式サイトの写真撮影が大変で(笑)


---これ、もしかして岩絵の具の原石ですか? 

はい、天然の「アズロマラカイト」という種類の石です。

 

 

---ア・ズ・ロ・マ・ラ・カ・イ・ト。難しい名前ですね...。

皆さんそう仰ります(笑)。
アズロマラカイトは、青いアズライトと
緑色のマラカイトが混ざった原石なので、こういう名前なんです。
その青い部分だけを砕いて作ったのが「群青(ぐんじょう)」、
緑色の部分を使えば「緑青(ろくしょう)」になります。


---なるほど!はなもっこの腕時計で言うとどれでしょう?

並べると...、こうなりますね(写真の通り)。
ちなみに、アズロマラカイトを
そのまま砕いた岩絵の具を使うと、
「群緑(ぐんりょく)」という青緑色の文字盤になります。
近づいてよぉく見ると、青と緑の結晶が見えるんですよ。

 


---面白いですね。ZUTTOでも、この群緑は人気カラーです。
他ではなかなかお目にかかれない色味なので。

そう言って頂けると嬉しいです。
確かに、岩絵の具ならではの風合いを
楽しめるカラーかもしれませんね。

では次は、岩絵の具を使って
文字盤を製作する工房にご案内しますね。

 

アトリエにお邪魔すると、
早速色とりどりのパーツが目に入りました。
まだ、針もインデックス(時間表示)も
付いていない、文字盤の原形です。

 

 

---「こないろ」の文字盤ですね!
想像していたよりずっと薄いです。

腕時計の動作不良を起こさないためには、
文字盤に載せる和紙や絵の具の厚みは
0.1mm以下に抑える必要があります。
ものすごく緻密な世界ですね。

その厚さに、薄く薄く岩絵の具を塗るため選んだのが、
世界で一番薄い紙と言われる極薄の和紙でした。
でも、一度岩絵の具を塗っただけでは
むらになるので、4度塗りしています。

 

 

---重ね塗りしてもこの薄さに出来るのは、どうしてですか?

岩絵の具の粉はそのままでは紙にくっつかないので、
「膠(にかわ)」という材料を溶かして使います。
成分としては、牛の革や魚の鱗から採れる動物性のコラーゲンで、
古来から使われてきた伝統的な接着剤です。

これを絵の具に溶かして使うんですが、
岩絵の具は、岩石を砕いた粉。
古くから日本画に使われてきた絵の具なんですが、
色を混ぜ合わせることなく、単一の顔料を均一に塗ることで
岩絵具の本来の美しさを最大限引き出すことが、
日本画で良く用いられる技法なんです。

 

---西洋の絵は、厚く油絵の具を重ねて
奥行きや質感を表現しますよね。
日本画では、そういうことはしないんでしょうか?

岩絵の具は透明度の高い絵の具なので、
複数の色を塗り重ねると色が濁ってしまう
という特性があります。

だから色混ぜ合わせることなく、
単一の色をフラットに塗り、
色面でものを表現する文化が発展しました。

 

---なるほど。西洋の油絵と
日本の岩絵の具の違いについて教えてください。

西洋の絵画に使われる油絵の具の歴史は、
実は600年ほどしかありません。
それに対して日本の岩絵の具は
飛鳥時代に伝来してから1400年以上経っていますから、
歴史で見ると倍以上ですね。

西洋の絵の具は、
見たままをキャンバスに再現すること(写実性)を
理想として発展してきたので、より沢山の色みが必要になります。

 

 

油絵の具は、人工で様々なカラーが生み出され、
古い画材と世代交代しながら今に至っているので、
当時のカラーは残っていないということが多いんです。
でも、岩絵の具は天然の鉱物が主成分ですから、
同じ種類の石を使った絵の具を使えば、
1400年前の色を再現することが出来ます。
当時の人が見ている「群青」と、
私達が今見ている「群青」は同じ色味なんです。

 

(後編に続く)

 

◇かさねシリーズ販売について

「かさね」シリーズは、平安時代の装束の袖口などに見られる
「かさねの色目」をもとに生まれたもの。

 

 

昔の人々は表地と裏地の色が異なる衣を身につけ、
季節に合わせてその配色を楽しんだのでした。
「吉野(よしの)」「藤(ふじ)」「撫子(なでしこ)」など、
5色をご紹介いたします。

◇はなもっこについてはこちら

 

 

 

 

 

投稿者: 斎藤 日時: 2015年03月19日 12:00 | permalink

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