チクタク、チクタク。
腕時計というのは、機械的で冷たい印象もあるのですが、秒針が刻々と進むのを眺めるとまるで命を持った生き物のように可愛らしくも思えてくるから不思議です。
今回ご紹介するのは、「手巻き式」の腕時計。何となく敷居が高くて扱いが難しい印象がありますが、日々の使い方に気をつけさえすれば、電池交換の必要もなく、ずっと長く愛せる相棒になるはず。
ものづくりに厚い信頼を寄せられているイギリスのメンズブランドTENDERのデザイナー、William Kroll氏のデザイン監修と、アンティーク時計を蘇らせる日本人の職人技との協業によって誕生したオリジナルウォッチコレクション。イギリス軍が1939〜45年に軍用懐中時計をバーリントンやオメガ、CYMA社等に依頼して生産していた際、ブロードアロー(イギリス軍の印)とともに時計の裏側に刻印していた名前が、GSTP(General service time piece)。軍支給の時計といった意味で、GS/TPの名前はそこに由来しています。
年月とともに深まる色合いまで計算された文字盤や、ぷっくりとした厚みが味わい深い裏蓋フロッグバックなど、時計好きをくすぐるポイントが満載のラインナップには、クォーツ式と機械式(手巻き)のアイテムがあります。 そのうち、今回は特に手巻きの腕時計をピックアップしてご紹介します。
腕時計は「機械式」「クォーツ式」の2つに大別されます。そして、機械式はさらに「手巻き」「自動巻き」の2パターンあります。
手巻きは、文字通り自分の手で竜頭を回しゼンマイを巻き上げることで動くタイプで、一方の自動巻きは自然な腕の動作を受けて歯車が回転し、ゼンマイを巻き上げます。
電池を定期的に交換するタイプが、クォーツ式の腕時計。今では腕時計といえば、電池を交換して使うものという風に思いがちですが、このクォーツ式の腕時計が生み出されたのは1969年のことで、それまで腕時計=機械式というのが当たり前だったのです。ちなみにクォーツ式ムーブメントを搭載した腕時計を実用化したのは日本のメーカー。巻き上げなくても止まらず、動き続けるということに加えて、圧倒的な精度、高い量産性は世界中の時計メーカーにとって衝撃を与えたというのも納得ですね。
そんな背景のもとクォーツ式腕時計は瞬く間に一般化した一方、あえて機械式腕時計を持つことのステータス性や製品としての芸術性・嗜好性も高まってきたといえるかもしれません。
パッケージを開けると…、中身はこちらです。
1:腕時計本体(手巻きホワイトダイアルMMD01C)
貫通式のラグ、クッションケース、バブルバック通称フロッグバックは初期の航空計器用の時計をデザインソースにしています。 ぷっくりした風防がレトロな印象。
2:布製の簡易ケース
3:調整用のベルトパーツ
このモデルの腕時計は工具を使わずに自分で調整出来ます。バネを広げて溝をスライドさせるように動かすのですが、慣れると簡単に調整出来るようになります。
4:保証書(兼取り扱い説明書)
製造上の不具合についての無償保証期間は6ヶ月となります。
5: パッケージ
かつてイギリス軍が使用していた地図を配しています。2色のカラーがあり、いずれかの色でのお届けになります。
※現在はこちらの内容に切り替わっておりますが、初期の入荷分は、布製簡易袋の付属がなくベルトは全て繋がった状態でのお届けとなっております。予めご了承ください。
保証書兼取り扱い説明書には時間の合わせ方や、竜頭(リューズ)の巻き上げ方など、簡単な解説が載っているので、それに添って調整していきます。
①竜頭を引き出します
竜頭を右側に引っ張って、引き出します。
※日にち表示がある腕時計は、竜頭を2段階で引き出すものがありますが、今回紹介するモデルは、日にち表示がありません。竜頭を引き出すのは1段階のみですので、無理に引っ張らないようにご注意ください。
②時刻を合わせます
竜頭を合わせて針を動かし、時刻を合わせます。基本的には時計回りに回すようにしましょう。時刻を現在時に合わせたら、竜頭を押し込み、もとに戻します。
手巻き式の腕時計は、ぜんまいを手動で巻き上げ、ぜんまいの巻きが解ける動力によって針を動かす仕組みです。ですので、このぜんまいの巻き上げ動作こそが手巻き腕時計の醍醐味とも言えるのです。
写真のようなイメージで、上から下へ(反時計周り)に一回転させ、その後下から上へ巻き上げるという風に動かします。この動作を繰り返していくと、だんだんと固くなり、ある段階までいくと、それまでと同じ力では巻けなくなります。そこまでいけば、巻き上げ完了です。
※それ以上無理に巻いてしまうと、不具合につながるので要注意です。
手巻き式の腕時計は、1日に一回、おおよそ同じ時刻にぜんまいの巻き上げを行うのが良いとされています。朝、お出かけ前の身支度の際に行うという風にすると忘れないですね。
ぜんまいを巻き上げると、秒針がコチコチと動き始めます。正常に針が動いているかチェックしたら、腕にはめましょう。
GS/TPはメンズブランドですが、女性が身につけてもとても魅力的に映ります。専用器具などが要らないエクステンションベルトなので、いつでも自由にサイズを調節でき、男女兼用での使用が可能です。
◇時計の裏蓋
肌に直接あたる部分なので、特に夏、汗を多くかく季節は汗やほこりなどの汚れが付着しやすくなります。錆びによる衣服の汚れや肌のかぶれを招く恐れがありますので、柔らかい布で丁寧に拭いてください。
◇バンド(ベルト)
バンドの隙間は柔らかく小さなブラシで汚れを掻き出すようにお手入れをしてください。(硬いブラシですと傷が付く恐れがありますので、まずは目立たないところで試してからお手入れをしてください。)
◇りゅうず
長期間使用すると、りゅうずの回りに汚れがたまり操作がしづらくなることがありますので、定期的にりゅうずを空回りさせてください。
腕時計の世界はとにかく奥が深く、今回ご紹介したのはそのほんの入り口にしか過ぎないものですが、基本的な使い方はとてもシンプルです。自分の手で巻いて日々動かすという習慣に慣れてしまえば、難しいことはありません。
iPhone一つあれば、世界中どこにいても正確な時刻を知ることが出来る時代ですが、その中であえて機械式、それも手巻き式の腕時計を選び大切に使うというのが、何ともお洒落なスタイルなのです。
やがてヴィンテージへと育てていくことの面白さ。そんな楽しみを教えてくれる、腕時計です。
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