ずっと使いたいモノ、置いてます。

尾州で蘇るウールを使って

近年良く耳にする「サステナブル」。土に還る天然素材を使ったものや、生地のハギレや古着などを別のものに作り変えたり、もう一度糸にして別の製品にしたりと、環境問題が取り沙汰されるなかで、衣服や繊維業界ではもっと地球に優しいものを作るべく様々な活動が行われています。

実は、この取り組みが活発化するよりもっと以前から、日本で繊維の再生技術が発展していたのをご存知でしょうか。半世紀以上前から、日本にとっては貴重な資源である「羊毛」を何度も蘇らせる「羊毛再生文化」が、ウールの産地・尾州にあります。なかでも、「blanket」「糸と色」などのブランドを持つ大鹿株式会社のもう一つの繊維ブランド「毛七（ケシチ）」。ここでは不要になった服や生地を全国から資源として回収して新たな生地として蘇らせていますが、どの工程も職人にしか行うことのできない難しい技術が用いられています。その分、出来上がったものはこの生地でしか味わえない、とても心地の良いものばかりです。

ZUTTOでは、この素材をもっとたくさんの人に味わってもらいたく、一枚のストールに仕立てました。デザインはなるべくシンプルに、けれどただプレーンなだけでなく、ずっと楽しんで使えるようなアレンジをひと手間プラスしています。

「羊毛再生」の技術

ほわほわとした表面に、もっちり、しっとりとした質感が何とも気持ちのいい肌触り。毛七というテキスタイルを使ったこのストールは、回収した古着や生地の選別から、熟練の職人でしか行えない技を使って作られています。

・回収～選別
古着や裁断工場のハギレ、紡績工場の落ちわたなど、本来破棄されるものを「資源」として尾州の地へ集め、色や混率を揃えるために資源を選別します。毛七（ケシチ）では殆どの生地に染色を施さないため、この工程は非常に重要。生地にしたときに違和感なく、かつ毎回同じ色にする必要があるため、熟練した職人にしか成し得ない難しい技術が必要になります。

・反毛～織り
選別したものをほぐして、ワタ状に戻していきます（反毛）。このとき、ただ戻しただけだと繊維が短く糸にすることができないため、少量の化学繊維をブレンドして強度と風合いのバランスを取りますが、この配合が「毛七（毛70％）」の由来となっているのです。その後、糸を紡いで、「レピア」という旧式の織機を使って様々な生地を作ります。風合いを損なわないように、職人がゆっくりと丁寧に織っていきます。

今回のストールで使った生地は「フランネル」というもの。フランネルは、程よい厚みと弾力がありつつも、見た目よりも軽くしなやかで保温性にも優れている、ストールにぴったりな素材です。経糸と緯糸で異なる色糸を使用して、さらに表面を起毛させることでムラ感を表現。異素材が混在する再生羊毛ならではの味と、ウールの柔らかな風合いが混じり合う、尾州産地の技と伝統を感じられる生地となっています。

毛七の良さを堪能する

毛七フランネル パイピングストールは、この生地の良さを最大限味わっていただくために、なるべくシンプルにデザイン。ポイントは、四方にぐるりとつけた綿素材のパイピングと、スリットです。素朴な綿素材のパイピングにすることで生地と溶け込み、生地の良さをより引き立たせるようなデザインに。同系色でもやや色の違うパイピングをあしらうことで、シンプルさの中にもほんのりとアクセントを加えています。

生地に空いたスリットは、ストールが解けてしまわないように固定できる仕組みに。このスリットを入れることで、巻き方にも変化をつけられて、プレーンなストールよりも様々な遊びを効かせられるようになっています。長めのストールなので、ショールのように肩からかけても◎。毛七生地の本物の「良さ」をたっぷりと味わえる一枚です。

尾州が育む毛織物

愛知県一宮市は伊勢湾に注ぐ木曽川を軸に広がる濃尾平野の環境を活かし、古くから毛織物業がさかんな地域。今では毛織物の国内生産量のうちの大半を占めています。毛七（ケシチ）の母体となる大鹿株式会社は、1922年に一宮市にて創業。もともとは機屋としてスタートし、現在では毛織物の生地生産問屋、生地生産から国内のブランドOEMも手がけています。

ウールを無駄にしないという、毛七の文化を正しく知ってもらいたい・着てもらいたいという思いから立ち上げられた毛七（ケシチ）。「資源を大切にする文化を後世に残す」という理念のもと、羊毛を何度でも蘇らせ、環境に、ひいては私たちのくらしを豊かにする生地を生み出しています。