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ZIKICO (ジキコ)は、鉱物ジルコニアを使って作られた料理の味を変えないカトラリーです。

 

最近は、便利な調理家電や全国の食材が手軽に買えるため、家庭でもお店のような料理を楽しむことができます。腕を振る料理は、器にこだわり見た目も楽しむお店風に。それにプラスして、素材や料理の味を変えずに美味しさを味わうことができるというカトラリーに出会いましたのでご紹介します。そのカトラリーはどうやって生まれたんでしょうか。

 

 

味覚には、甘味、塩味、苦味、酸味、旨味があり、旨味成分であるアミノ酸は、それ自体が風味豊か。料理の基本となる出汁やスープにはアミノ酸がたっぷり含まれていて、私たちはおいしいと感じるそうです。そして、和洋様々なメニューが並ぶ日本の食卓でも使われることが多いステンレスカトラリーですが、実は旨味を感じにくい素材だというのです。これは、日常でも少し思い当たることがあって、ステンレスのスプーンやフォークが、歯にこすれたりすると鳥肌がたつといった経験や、缶詰や金属が触れた料理で金属臭を感じたことがある人がいるかもしれません。これらは、金属が酸化作用によって脂質を分解し、金属臭を発生させ味が変化していたのです。

 

 

ジルコニアとは、無味無臭で、金属臭がしない鉱物から生まれた素材。太古から地球上にあったジルコニアは、人に優しく、硬くしなやか。例えば、医療用でインプラントや人工関節に使われてきた素材です。また、ファッション業界では、シャネルやカルティエ、ロレックスが腕時計のバンド素材に使っています。金属のように錆びることなく、プラスチックのように劣化することがない。長く使うことができる素材として注目し、使われているジルコニアです。

 

 

そんな一般に聞き慣れないこの鉱物、ジルコニアで作られたカトラリー、ZIKICOができるまでにはどんなきっかけがあったのか、精密樹脂部品メーカーの3代目、株式会社ZIKICO代表の山瀬さんにお話しをお伺いしました。

 

 

Q.なぜ、こうしたカトラリーを作ろうと思ったのですか?

私がドイツで暮らしていた時、日本料理を振る舞う機会がありました。蕎麦を食べる、めんつゆを作ったところ、味がしなかったのです。香りがするのに味がしない。お皿の方を舐めると味がするのに、味見に使った金属のスプーンでは、わずかな味がわからなくなることを気づいたことから始まります。調べてみると、原因は、金属が酸化作用によって脂質を分解し、金属臭を発生させるからでした。ジルコニアは、磁器と同じ焼き物なので、金属イオンが溶出することは全くないため、素材の味を確かに伝えるスプーンがあれば喜ぶ人は多いんじゃないかと考えたんです。食材が奏でる味の世界をより深く堪能して欲しいという気持ちからジルコニア・セラミックスでの制作することを決めました。

 


オーストラリア原産のジルコンという鉱物を精製したものがジルコニアです。ジルコン自体も、昔はイミテーション・ダイヤモンドとして使われていました。加熱すると透明になり、屈折率がダイヤモンドと殆ど同じになる鉱物です。

 

Q.もともと精密樹脂部品メーカーとのこと、技術的にカトラリーを作りやすかったのでしょうか?

前職で射出成型する部品製造会社であったことから、加工が難しいジルコニアの加工成型ができる技術があったのですが、大量生産前提のプラスチックの加工法を応用したジルコニアの加工法は、型の中に原料を流し込む際のコントロールが難しく、うまく製品になりませんでした。そのため、ZIKICO では、その技術を手工業と捉え直して挑みました。一般的には一つの型から同時に複数の製品を作りますが、私達は一つだけにして、加工時間も長くして解決しました。自動で製品を型から剥がす機工も、製品に痕をつけてしまうため設置せず、一つ一つ手で取り出すことにしました。

 

製品作りは、原料を溶かすことから始まります。

 

溶けた原料を射出成型し、素焼用の窯でプラスチックを気化させて、ジルコニアだけにする作業です。

 

ジルコニアは、焼結することで隙間がなくなり、仕上がりは一回り小さくなるそうです。(上の写真は、左が焼結前、右が焼結後)

 

焼成炉から出てきたものをブラスト処理し表面を綺麗に仕上げて完成です。

 

薄いスプーンは、繊細な口当たりで舌触りが良いです。口に入れたときが硬質感が少ないのも実感します。

 

こうして完成したジルコニアのカトラリー。ヘッド部分との重心を考慮して、持ち手は軽い素材にしました。

 


PPS樹脂です。宇宙航空用途にも使われる耐熱性と、耐薬品性が高い樹脂です。耐熱性は260℃あり、天ぷら油に入れても大丈夫です。酸やアルカリにも、全くは侵されません。ずっと使える、体に優しいジルコニアに見合った素材として選びました。それから、箸をモチーフに比較的丸っこくて持ちやすくしています。

 

ということで、さっそくスプーンで旨味たっぷりのスープを掬ってみました。

 

白いスプーンは、スープの色がとてもよく分かりました。同時にステンレス素材のカトラリーと味比べしてみましたが、確かにZIKICOのスプーンでは、旨味をしっかりと感じました。それに、木製スプーンと同じで、それ自体が熱くなっていなくて、飲みやすさも感じました。

 

デザインは、プロダクトデザイナーの大治将典さんが出掛けています。見た目には、鉱物であることをデザインに活かし、「石」として仕上げる事が決まりました。それにより、自然で、光を柔らかく反射し、食卓を穏やかに見せる効果が現れました。もう一つ「清らかさ」に優しいフォルムでデザインしてもらいました。

例えば、ナイフは、重心が先端にあることを利用して、普通のナイフとは逆方向に反らせ、自然と刃が下を向くようにデザインたり、フォークは、優しいフォルムを描く丸い断面を作りながら、食事をさしやすいように先端にだけエッジを残しました。スプーンは、初めから固形物を食べるディナースプーンと、液体を飲むスープスプーンで分け、ディナースプーンは平たい特殊な形状です。今までであればレンゲで食べていた物に使えるようにと考え、とても食べやすいです。フィッシュナイフにも似ており、アメリカでは魚用あるいはデザート用としてもおすすめです。デザートスプーンも他にはない大きさにしました。オールマイティーなサイズなので使ってみてください。

 

一つ一つ細部までこだわったカトラリー。食材の風味がよわかるので、風味を大切にした料理を作られる方に使ってもらいたいカトラリーです。

 

 Q.どんな料理で実感しやすいですか?


特に味の違いが分かるのは、旨味成分であるアミノ酸の味です。日本料理ならば出汁、フランス料理ならばフォンドボーやフュメドポワソンなどです。栄養素としてタンパク質が中心の、ゼリー、豆腐、卵、ヨーグルトなどの味は、違いが簡単に分かります。
日本食の料理人は、味見にお猪口を使い、オタマや金属のスプーンを使いませんし、フランスにも、キャビアと卵料理には、金属のカトラリーを使わないというマナーもあるそうです。調理したままの味を楽しんで頂けるようにしたいです。
金属は、酸化作用で唾液から金属臭を作りだします。果物などのさっぱりしたものを食べる際には、その影響を強く受けます。農家の方が有機農法で大切に育ててくれた食材は、大切に味わいたいですね。ジルコニアのカトラリーで、本当の味を確かめて頂きたいです。
食材の味を強く感じることが出来るようになるので、塩や化学調味料を減らした料理でも美味しくなります。健康促進にも効果があると思います。

 

 

さっそく使い心地を試してみましたが、スプーンは、薄く口当たりが良くて溶けかけたアイスやスープを食べると、味わいが違うことを実感しました。(デザートスプーンで食べたアイスはとてもおいしかったです。)ナイフは短く持てば、オレンジの皮も剥くことも出来る切れ味でした。また、柄が軽く形状も持ちやすいのも、幅広い年代の方に使いやすいと思います。安価なオールステンレスのカトラリーとは比べ物にならないほどの良さです。

 

Q. こんなに味にこだわれるカトラリーだったら、レストランなどでも使われていそうですね。

都内では、日比谷にある南禅寺瓢亭で使っていただいています。京都の料亭の姉妹店であり、歴史的、文化的な価値のある伝統的な器を使われる料亭です。以前は、金属の味や質感を避けて、漆器の匙を使われていたのですが、食べ難いという問題があったそうですが、ZIKICOのカトラリーを使う事で、お客さんも使いやすくなったと、喜んでくださっています。
その他、Peninsula Tokyoなどのホテルやレストラン、バーと味にこだわる飲食店等シェフに気に入っていただいて少しずつ広がっています。少しずつですが、良さを知って頂き使って頂いてます。

 

 

Q. カレーなどで着色しますか?
色が染み込むことはありませんが、茶渋が付く事はあります。気になる場合は、漂白するかクレンザーで洗って下さい。

 

Q. 落したら割れますか?
落した程度では割れません。普通の使い方をしていれば、破損することはありません。特に気にせずに、カトラリーとして使って下さい。しかしながら、カチコチに凍ったアイスに刺して、てこの原理で曲げれば、金属製であれば曲がる所、ジルコニア製ならば折れます。曲がったものは伸ばせば使えますが、折れたものは使えません。

 

Q. お手入れで、注意すべきことはありますか。
白モデルは、金属と強く擦れると、メタルマークが付きます。気になる場合は、クレンザーで落とすことが出来ます。また黒モデルは、水垢や油汚れが目立ちやすいです。これらも、クレンザーで洗うのが一番楽です。

 

 

2019年にドイツのiFデザイン賞、およびイタリアのAデザイン賞金賞を受賞しているZIKICO(ジキコ)。ジルコニアを日用品に使う事で、料理の味わいに集中するのを助け、金属アレルギーなどによる影響をなくす、100年後に続きそうなカトラリー。

ZIKICOは、毎日の食事に人体に何も影響が与えない、安心安全。そして、美味しく作られた料理を、きちんと美味しく味わうためのカトラリー。工業製品のように見えて、手工業だったのですね。素材の優しさだけでなく、温かみを感じるのは、そのものづくりにあると感じたZIKICO の製品です。

 

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投稿者: ZUTTO 編集部 日時: 2021年06月03日 11:00 | permalink

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