シェーカーボックスという、楕円形の木の箱を見たことがありますか?
初めて見たとき、そのあまりの美しさに単に何かを仕舞うための箱ではなく、自分の宝物を入れたいと感じたものです。200年の時を超え作り続けられる、シンプルな機能美を秘めたシェーカーボックス、今回はそんな木の箱のお話です。
18世紀に創始された、プロテスタントの新派であるシェーカー教徒が自分たちの暮らしの中で使うために作り始めたのが、シェーカー家具と呼ばれる椅子やチェスト、テーブル、生活用品など。その中に今回ご紹介するシェーカーボックスもありました。
シェーカー教は「簡素な暮らし」を理想とし、共同コミュニティの中で統一性や機能性を大事にした暮らしをしていました。暮らしに必要な道具には華美な装飾を排除しつつも、優れた道具は使い勝手だけでなく見た目も大事だと理解していたと言います。活動資金のためにシェーカー家具を外部に販売していたことも、シンプルなだけでない、「機能性や意味のある美」を生み出していた理由かもしれません。
「手は労働に、心は神に」という教えが家具作りにつながり、彼らの勤勉な手仕事から生まれた木工家具はアメリカ美術史に大きな影響を与えています。その証拠に、現在では数名しかいないと言われているシェーカー教徒ですが、当時の暮らしぶりや思想が分かる拠点は各地で保存され、生み出されたシェーカー家具やボックスは宗教関係なしに引き継がれ今も作り続けられているのです。
そしてそんな彼らが作ったものの中で現在も引き継がれ愛用されているものの代表がシェーカーボックスです。
シェーカーボックスは日本のわっぱなどの「曲げ物」同様、薄く切った木を柔らかくして曲げることで形を作っています。曲げ物の技術は世界中で古くから存在しましたが、その中でシェーカーボックスが発展したのは、「暮らしの道具」と「インテリア的要素」がうまく融合したアイテムであったため。
薄くスライスされたチェリー材を水に浸し、柔らかくしたところで楕円のボックス型に合わせて曲げていきます。
シェーカーボックスの特徴的なデザインであるスワロウテイル(つばめ)の尾の形をした接合部は、木の伸縮性を加味した機能性を持っています。
接着剤は使わず、銅のビスと木のダボ(木材同士を繋ぎ合わせる際に使用する小さな円筒形の棒)で留めているので、構造としては非常にシンプル。木だけでなく、銅のビスも時間の経過とともに色の変化を見せ、年月を感じさせる表情へと育っていきます。
シェーカーボックスに使用しているのはチェリー材。個体差はありますが明るめの色で、暮らしに馴染み使えば使うほどにツヤと色味が深まっていき、とても綺麗に経年変化する素材です。
▲右は、スタッフが10年愛用しているシェーカーボックス。職場のデスクの上に置いて文房具を入れていました。
ツヤっとした照りが出て、色味も何段階か深みが増しています。新品の時はピンクゴールド色だった銅のビスも、木の色の変化とともに濃くなり、ビンテージ感が増します。
ZUTTOでご紹介しているシェーカーボックスは、カナダのBrent Rourke(ブレント ルーク)さんが作るもの。シェーカーボックスを美しさと機能性を兼ね備えたプロダクトとしてだけでなく、背景にある「美は有用性に宿る」という考え方にも強く惹かれ、作品を作り続けています。
▲シェーカーボックスの裏面にはブレント ルーク氏のサインが。完成したら、一点一点サインをしていきます。
手仕事の技術を感じられる品、そして経年変化しつつ長く使える普遍的なデザイン。
これがシェーカーボックスの素敵な点ですが、使っていて気付いたもう一つの良い点は「ライフスタイルが変わっても用途を変えて使い続けられる品」であること。
これから先、いつの「暮らし」にも寄り添ってくれる。入れるものは変わっても、変わらない佇まいと自由で懐の深い収納だと感じています。
ふた付き・楕円の形が特徴のシェーカーボックス。サイズ1から5まで、蓋をした状態でも全て入れ子になるので、サイズ別で揃えて使わない時も収納性が高いシリーズです。
元は暮らしの道具とはいえ、やはり飾っておきたくなるような美しさ。棚にポンと置いておくだけでも様になって、ふと目に入ると嬉しくなるような存在です。
▲OVAL SHAKER BOX(1)を玄関に置いて。中には鍵、印鑑、ペン、そして代引き用の現金も少し入れておけば慌てずに済みます。
▲OVAL SHAKER BOX(3)には、化粧品を入れてドレッサー前にスタンバイ。
▲大事にしているストール類をまとめて。OVAL SHAKER BOX(5)。
不思議なのは、収納用品とは何か仕舞いたいものが先にあって、それに合った箱を探すのが常だと思いますが、シェーカーボックスの場合は、「これに何を入れたいか」ということに思いを巡らすのです。
フタ付き楕円シェーカーボックスに可動式のハンドルが付いたシリーズ。もちろん、持ち運びを便利にするためのハンドルですが、実際に持ち運ぶものがなくても全然問題ないんです。
▲SWING HANDLE BOX(2)の中に、OVAL SHAKER BOX(1)を入れて。ボタン付けなどの簡単な針仕事の時は、小さいシェーカーボックスだけを出して使います。
あえて、ハンドル付きで入れたいものを挙げるとすれば、家の中色々な場所で作業したいものでしょうか。例えば裁縫や編み物の道具を入れて持ち運べば、リビングでもベッドルームでもハンドメイドの時間を持てます。
スキンケアやメイクアップの道具を入れておけば、朝にだけ出してきてダイニングテーブルで落ち着いて朝支度が出来ますね。
▲シェーカーボックスに入れるだけで編み物が一層楽しくなるのが不思議。
オーバルシェーカーボックスの中央に仕切りを入れ、フタを無くしたもの。オープンタイプなのでデスク上に置いて、ペンやクリップなどの文房具を入れて。
寝室のチェストの上の置けば、お気に入りのアクセサリーをスタンバイさせるトレイ代わりになりますし、メガネやサングラスを素敵にディスプレイしておくことも出来ます。
持ち手の形が印象的なDIVIDED CARRIER。シンプルな中に可愛らしさも見られるデザインです。持ち手が付いているものは木のすべすべとした質感も楽しめます。
幅36cmと比較的大きめ。画像のように、靴や洋服用のブラシも入れられるので、玄関に置いておいて、週末の靴磨きに活用させるのも。
シンプルで直線的なフォルムが多いシェーカー家具ですが、持ち手など機能面のディテールに曲線を用いてデザイン要素としている点が「用の美」の視点を物語っています。
お茶用具を入れて、トレイのように持ち運ぶのも良いですね。
共同財産、という教えだったシェーカー教徒は、シェーカーボックスの中身が自分だけの財産だったとされます。
思い返せば、幼い頃綺麗な柄の入った四角い缶に当時の自分の宝物を入れて大事にしていたものです。公園で拾ったどんぐり、祖母にもらったしおり、ビー玉、ぷっくりシール、お土産のキーホルダー・・・。あの頃とは宝物の中身は変わりましたが、宝箱のフタを開けたときのドキドキ感は大人になっても変わりません。
▲OVAL SHAKER BOX(1)
シェーカーボックスを見た時に感じた「自分だけの宝箱」のような雰囲気。大人になった今だからこそ、あなたがシェーカーボックスに入れて大事にしたいと思う宝物は何ですか?
▲スタッフに何を入れたいか聞いたところ、「子どもからの手紙や作品」との答えが。