今では当たり前の飛行機は、1903年にライト兄弟によって発明され、LEON FLAM(レオンフラム)が創業する10年ほど前の1911年、イギリスでは貨物輸送が始まりです。同じ年、インドで万国郵便博覧会が開催され、フランス人パイロットが操縦し世界で初めて郵便物を輸送するための飛行が行われたそうです。それを機にイギリス、イタリアで航空郵便サービスが始まりました。
フランスでは、アエロポスタル社が設立され(現在のエアーフランスの母体)、スペインのバルセロナとの間で郵便物を運んだのが始まりました。それからまもなくの1924年、LEON FLAM(レオンフラム)が創業します。LEON FLAMはが作るバッグは、『旅』に対応できるバッグとして、パリで旅行者、パイロットに愛用されていました。
当時は屋根もない飛行機。夢と冒険だけでなく過酷さや危険も伴ったものではないかと想像します。パイロットが愛用したバッグをみると、その飛行環境で耐えられるような丈夫な素材、パーツ、機能性を備えたものだったことが垣間見れます。例えば、高密度のキャンバス生地、ワックスを十分に染み込ませたレザーは、雨風に晒される飛行中に中身が濡れないように保護していたと思われる生地。
真っ赤な生地張りをした内側からは、フランスらしいおしゃれさを感じますが、容量のあるバッグの中身が見やすい工夫とも捉えられます。
正面には、文庫本が入るほどの大きめのポケットがあります。
有名なフランスの絵本「星の王子さま」の作者サン=テグジュペリも、アエロポスタルの飛行士の一人。飛行中に本を読むほどの人物だったようで、すぐに取り出せる正面ポケットに本を入れて旅していたのではと想像すると、過酷な空の旅の世界も少し和みます。正面のフラップレザーがポケットの中身が飛び出ない工夫がされていて、大事なものを入れるポケットという役割は、こうした乗り物での振動への配慮からだったのかもしれません。
また、握りやすい丸みのあるレザーハンドルと斜めがけできるショルダーは、旅の重い荷物、大切な荷物を運びやすく工夫された上で頑丈に作られています。
バッグ底の角にはレザーパッチをつけて、キャンバスの擦り切れを防ぐ補強が施される現代でも見かける工夫があります。これらのパーツは今もなお変わらず丁寧に作られています。
LEON FLAM(レオンフラム)のバッグの素材。レザーにキャンバスを組み合わせてあります。レザーだけでは鞄自体が重くなるため、高密度キャンバスを合わせ重量を軽減していたとも考えられます。キャンバスはノルマンディー地方で作られたヘビーオンスの生地にワックスコーティングで、長く使うことであたりが出て味わい深くなるようになっています。また、こだわりのフルグレインレザーは、伝統的なオークバークタンニング鞣しで、自然な風合い、レザー特有のなめらかさと丈夫さが特徴となる仕上がりです。2000年前から変わらない製法で、樫の樹皮から抽出されるタンニンで鞣す方法は、専門的な機械や化学薬品をつかわず、環境への負担もない代わりに手間がかかるため、ヨーロッパ圏でも限られたタンナーでしか作られていません。
皮は一年近く時間をかけて鞣されることでタンニンの結合が強く、繊維が詰まって耐久性が高い革へとなります。持ち運びで酷使されるパーツにはレザーを取り入れるという実用性を重視した素材使いのバッグは、自然美のような美しい色合いとアンティークのような高級感で、使い込むほどに経年変化も楽しみな素材です。
創業から100年経とうとしている今も、昔から変わらないものづくりが受け継がれ、パターン・生地・付属品、すべてがフランスやポルトガル製という品質へのこだわりで一つ一つ丁寧に縫製し、大量生産せず一年の生産数が決められているLEON FLAM(レオンフラム)のバッグ。
必要なものだけを厳選して選ぶ時代に、歴史の中で役割を果たしてきたLEON FLAM(レオンフラム)のバッグは、ストーリーを付加価値に長く愛用したくなるバッグです。