「ずっと着たいと思える洋服」を作るZUTTOと、草木染めのエキスパートであるMAITO(マイト)がともに作る、この春夏に着たいナチュラルダイのTシャツが完成しました。
ナチュラルダイとは、いわゆる草木染めのこと。藍、柘榴、栗、桜などの植物の花/葉/根/枝などを使った天然染料の染めの方法で、化学染料を用いない、古来からある染色方法です。(日本ではなんと縄文時代から植物を用いた染色が行われてきたと言われています。)
優しい色合いと風合いが魅力で、MAITO(マイト)の洋服や靴下などを身につけると、どこか嬉しいような暖かい気持ちになっていました。そして今回、ZUTTOが作ったTシャツを、ひまわりや藍などの天然素材で染めてもらう企画が実現。植物を身にまとって、気分もTシャツも明るく爽やかな気持ちで春夏を過ごしてくださいね。
まずは、ベースとなるTシャツづくりから始まりました。イメージにあったのは、昔のアメカジTシャツのように少し厚みがあってザラッとした手触りが素肌に心地いい生地。柔らかくしなやかというより、ハリがあってシルエットが綺麗に出るものを選びました。
汗をかいても張り付かないないよう、ある程度の厚みがあるものを選びました。透け感はありません。
丸胴編みで、脇から裾にかけての縫い目がないのですっきり見えること、そしてTシャツの内側でゴロつかないので、ボトムスにインしても脇部分だけぽっこりとシルエットが変わることもありません。
この白Tをどう染めてもらうか、MAITO(マイト)さんに色のイメージをお伝えし、「それならこの素材がいいですね」などとご提案をもらいながら、数回に渡る色調整を行いました。
実際に打ち合わせの最中に「ちょっと染めてみましょうか」と、準備中だった素材を使って染めて、それが偶然とてもよい色に仕上がったためにその色を追加した、という裏話もあったりして、草花などの自然素材を使った染めというのは、その時々の色との出会いがあるのだなと感動することも。
せっかくなので、ナチュラルダイについてMAITO(マイト)の代表、小室さんに色々と聞いてみました。
「どんな草でも花でも枝でも実でも、染められるので無限大ですね。職業柄、色々な素材が集まってくるので実験的に色々と染めて試しています。この間は白樺の木の皮を送ってくださった方がいて、これをどう染めようかなと考えているところです。例えば茶色という色だけを目指したら、他の素材でも出せる色かもしれないけど、どこどこで採れたこの素材を使って色を出して染めることに意味があると思っていて、地場のもの、色の背景とつながるものを身にまとう特別感を大事にしたいと思っています。」
「自然の色を着る、まとうってそれだけで特別で魅力的だと思いませんか?化学染料で染めたものの良さもあるけど、それは作り手が感じる良さ。一気に作れる、色ムラがない、全部同じ色に出来る、というのは大量に作って安価に販売するためのメリットです。でもナチュラルダイの良さは、使い手が感じる良さ。色ムラや色落ちがあるかもしれないけど、自分は今ひまわりを着てる!と思うとすごく嬉しいし気持ちいい。」
「着て洗濯してを繰り返すと草木染めはだんだんと色が褪せたり、一部分だけ色が変わっていったりします。レザーのようにシワが色の変化に表れてきたり、経年変化を楽しめる染めの方法なんですよ。植物の色だと考えると、だんだんと変わっていく様子もとても面白くて、同じアイテムでも使う人によって異なってきます。気を付けていただきたいのは、洗濯の際は必ず中性洗剤を使うこと。アルカリ性の洗剤を使うと色合いが大きく変わってしまうので、気を付けてくださいね。」
まだまだ寒い今年の2月、東京台東区の蔵前にあるMAITOの工房を訪れました。実際にZUTTOのTシャツを染める様子を取材させてくださいとお願いしていたのです。中に入ると、作業台の上に木の枝や木の実が無造作に置かれていて、あらゆる自然素材が染めの原料になると以前教えていただいたことを思い出します。
この日は、「ひまわり」と「矢車附子(やしゃぶし)」の2色を染めることに。「まずはどういう素材から色が出るのか、原料を見てください」と、出してくださったのがこちら。
「このひまわりの花は、北海道の農家さんからいただいたものを乾燥させ、大事に使っています。乾燥させて使えるものは数年持つものもありますが、素材によっては生の状態でないと出せない色もあり、その素材によって扱い方が変わってくるのもナチュラルダイの面白いところです。」
「こっちは松ぼっくりみたいな矢車附子(やしゃぶし)。こうして、原料の実物を見ると本当に自然素材から染められているのだなと実感しませんか?ナチュラルダイのアイテムであっても、完成した製品だけを見るとあまり感じませんが、本当にこうした花びらや実、枝、根っことかで染まっていくんです。」
Tシャツのナチュラルダイ、手順はこちら。
花びらや実をどのくらい入れるか、水はどのくらいか、量ったりはしません。「このくらいかな〜」と言いながら豪快に大きな鍋に入れていく小室さん。
目分量なんですね、との問いに「そうですね、素材によっても季節によっても、原料を採ってからどのくらいの時間が経っているかによっても、色の出方は変わってくるのでその時の量とタイミングで都度判断します。」
ひまわりは20分、矢車附子(やしゃぶし)はもう少し長めに煮出したら濾します。お鍋やざるなど、使っているものを見るとまるで料理中の様子。
ここで、ZUTTOが作ったTシャツが登場しました。「色止めのために、予めみょうばんアルミ媒染に浸けています。」とのこと。「このTシャツの素材、ザラッとしてていいですね〜」と小室さんも気に入ってくださった様子。
抽出したひまわりと矢車附子(やしゃぶし)の色素にお湯を入れて色を調整し、Tシャツを数枚ずつ浸します。ムラにならないように常に棒でかき混ぜて攪拌し、Tシャツ全体に色が付くようにします。
「継ぎ目や糸も、ちゃんと染まっているか確認しながら染めていきますよ」
染まったら、次は水で洗い余分な染料を落としてから洗濯機で脱水し干して乾燥させます。
「濡れている状態だと色が濃く見えるのですが、乾燥すると色が落ち着くので、その状態を見てまた二度目、三度目と繰り返し染めていきます。」
「以前の打ち合わせで決めたそれぞれの色の濃度に合わせて、これまた目分量で色合いを合わせていくのでここは経験がものをいうところですね。」
こうして染めの工程を繰り返して、MAITOとZUTTOが手がけたTシャツが完成しました。染めている間、小室さんが「いい色になったね〜」と嬉しそうにされていて、自然素材と自分の加減で色を作っていくことを本当に楽しんでいるのだなと感じました。
染めの様子を見学した2色も含め、全5色をご用意しました。いつもなら色合いのみで決めるところ、今回のTシャツは「どの植物にしようかな」という視点でも楽しめるのがまた良いですね。
このミントグリーンが、打ち合わせの最中に偶然生まれた色。爽やかで、取り入れやすい色だと思いませんか?
納得のいくベージュ色を出すのに、MAITOさんに何度も試作していただいた色。落ち着いているけど暗くない、明るいアクセサリーや小物が似合いそうです。
夏の草木染めといえば、藍染は欠かせません。分かりやすいようにネイビーという色名も入れましたが、あえて「藍染」と言いたい絶妙な色合いです。
完成したひまわり染の色合い。夏の太陽を光を浴びた色を着て、お出かけしましょう。
※ひまわり染めは草木染め特有の色ムラが分かりやすいので、商品ページでの画像もご確認くださいね。
矢車附子染(GREY)
5色の中で一番使える色かもしれません。着続けるとアタリが出てきて、色味がいい感じにフェードアウトしていきます。