大切に使い続けたい、使い続けられる鞄。その条件として挙げられるのが「流行にとらわれず長く愛用できるデザイン、質」です。ハイブランドの鞄が多数流通する世の中でも、必ずしもそれが万人に価値あるものとは限りません。
今回取り上げるのは、ビッグメゾンでの経験もあるデザイナーがあえてシーズンごとにテーマを掲げず作るブランド、PATRICK STEPHANのバッグ。タイムレスな魅力の詰まったプロダクトについて、PATRICK STEPHAN全商品の製作を手掛けるお二人へのインタビューも交えてご紹介します。
▲別注色のslate GRAY(左)、新たなレザーで製作していただいたBLACK(右)
以前取り扱っていたレザーショルダーバッグ tofuを、定番のBLACKと別注カラーのslate GRAYの2色のラインナップで製作していただいたのが、今回の別注バッグ。BLACKは以前お取り扱いしていたバッグ同様シープスキンですが、今回のものは以前よりもややマットな風合いのレザーを選んでいただきました。ZUTTO限定のラインナップです。
tofu、それは「豆腐」のこと。その名前の通り、豆腐をイメージして作られたユニークなショルダーバッグです。芯を使わず、かつ柔らかいシープスキンを使うことで、使い始めからくたっと柔らかい表情が楽しめます。
▲別注カラーのslate GRAY。光の当たり方によってはベージュにも見えるような、柔らかいカラーです。
さらに着目したい点は、背面側が高く作られている点と、ストラップの留め具がバッグの横ではなく背面についている点。この設計は、斜めかけしたときにバッグのフォルムが崩れることなくより綺麗に見せるための工夫です。
▲ショルダーバッグのボックスの形が自然に、かつ美しく見えるよう設計されています。
バッグそのものの美しさはもちろん、身につけた人も含めコーディネートがどう見えるか、という部分まで考え抜かれた美しい形です。
実はこのtofuシリーズ、素材や形などを変えて長年展開している人気シリーズでもあります。今回の別注バッグを作っていただくにあたって、デザイナー・PATRICKさんと直接やり取りをして商品を製作しているエスパスのお二人にお話を伺いました。
「そうですね。tofuシリーズは2016年から展開していますが、PATRICKは日本らしいものをモチーフにすることも多く、このtofuシリーズのデザイン発案も、名前も含め彼からでした。フランス人だから、というのもあるかもしれません。豆腐のような柔らかくてシンプルな形のバッグを作りたいという相談で、これが最初のスケッチですね。」
▲ファイリングしてある様々なスケッチの中から出してくださった、tofuシリーズ初期のスケッチ。ここから変更を重ねて完成に至ったそう。
「私達は製作する側として彼から生まれたイメージをなるべく実現できるよう、こんな素材にしてはどうか、こんな設計にしてはどうかと試行錯誤する役割です。
ただこのショルダーバッグのサイズは、少し小さめのバッグを作ってみてはどうか、と持ちかけたのもありますね。海外のバッグって、身体の大きさもあるのか日本人にとっては大きすぎるケースも多くて。その当時は今ほどサコッシュなどが一般的でなかったんですが、日本人が普段使いしやすいサイズのバッグを提案したんです。」
「彼の頭の中のイメージをベースに作るので実現が難しいなど大変なこともありますが(笑)、彼自身のインスピレーションを大事にすることは変えず、もう10年以上、一緒にものづくりを続けていますね。こういったスケッチがあがってきてから製品になるまで、およそ半年から1年くらいかかります。
PATRICKも私も、大きなブランドの裏側を見て、経験してきましたが、毎シーズンテーマを変えてコレクションを掲げてものづくりをするよりも、その時代にあったものや、そのときどきで作りたいと思えるものを考えて作るようになってきました。あえてコンセプトを掲げないことも、私たちらしいと言えるかもしれません。」
「金具が前に見えないように、というのはやはり重要視しました。いわゆる豆腐らしさ、革の柔らかさを表現するのに考えたところです。そしてくたっとした柔らかいシープスキンを使っています。以前作っていたものは最後の仕上げで艶を出していましたが、今回は少し雰囲気を変えて落ち着いたソフトマットな印象のレザーにしました。どちらもイタリアンレザーですが、違う会社のものです。」
▲正面から見たとき、金具だけでなくステッチなども見えない作りに。素材の良さ、シンプルな作りがより引き立つバッグです。
「男性女性問わず選べる、というところも大きいように思います。このtofuシリーズに限らず、ブランド全体としてもフラットなデザインというのは意識しています。
あとは、革の良さを感じやすいシンプルなデザインで、少しずつ自分に馴染んだ形へ変化していく様子を好まれる方もいらっしゃるようです。レザーバッグというと硬いレザーを想像される方もいるんですが、このtofuシリーズは特に柔らかさが感じられて、どんな服装にも合わせやすいと思います。」
「もともとモードなアイテムが多かったので、その名残りでもありますね。今はモードな要素も残しつつ、もう少し柔らかいニュアンスも含むブランドになってきているのかなと思います。時代の流れ、PATRICKが作りたいと思うものの変化もあって、ブランドの在り方も少しずつ変わってきている。ただその変化の中でも、メンズ・ウィメンズの境界線をつくらず、どんな方にとってもフラットに使えるものを作るという姿勢が一貫してあるので、そこから自然と黒が多くなってきているのかもしれません。」
ただ『黒い革』と一口にいってもすべてが同じレザーというわけではなく、それぞれのプロダクトに対して、適したレザーを選定して製作しているので、それぞれ違った手触り、表情を楽しんでいただけるかと。今回のBLACKは以前作っていたときよりもマットな表情で、違うタンナーのレザーを使っているんです。レザーショルダーバッグ simple2と同じレザーですね。」
「2ヶ月くらいでしょうか。マチが薄いのでかさばらないところがいいですね。わりと大きくて、A4はもちろん、ノートPCも入れられます。別のショルダーバッグとあわせて持っても違和感なくすっきり持てるところも便利ですよ。」
「服装はシンプルなものが多いです。そういった服は着回しが効いたり、様々な場面で活用できたりする一方で、ちょっとつまらなくなる時もあるので、アクセサリーや素材の良い小物などを取り入れて気分よく過ごせるようにしています。だからこそ自分にとって必要か、そうじゃないか、はじっくり吟味する方ですね。こういった革の表情が楽しめるシンプルなレザーバッグがあると、崩れすぎない大人のカジュアルが成立するかなと思っていて、重宝しています。」
「そう、とにかくシンプルです。中に内ポケットが2つあるので、細かい貴重品はすぐ取り出せます。今回再生産したレザーショルダーバッグ tofuのBLACKもこのバッグと同じものですが、シボ感があって、ややマット。使ううちにもっと柔らかくなって、表情が出てくるシープスキンです。ぜひその変化も楽しんでいただけたらと思います。」
バッグを使う上で気になるのが容量。このtofuショルダーはとても万能で、ほどよくコンパクトだけれどマチもあって荷物もしっかり入れられる。普段使い、旅行、オケージョンなど様々なシーンに対応できるサイズなのです。実際にどのくらい入るのか見てみましょう。
【入れたもの】二つ折り財布、携帯電話、メイクポーチ、ハンカチ、文庫本
休日、街へ出かけるときに持ち歩きたいものを入れてみました。今回は二つ折り財布を入れましたが、長財布も問題なく入りますし、移動中に読みたい文庫本も入ります。
トップス: オーガニックコットン 長袖レイヤードTシャツ(クルーネックL)、パンツ:NAJA デニムパンツ(INDIGO SIZE26)、パンプス:trippen(トリッペン) LEAF
【入れたもの】マイボトル、二つ折り財布、携帯、メイクポーチ、手帳、旅行本(A5想定)
こちらは旅行を想定して、マイボトルや旅行本などA5サイズの本を用意。こちらも問題なく入りました。タブレットも8インチまでのものだったら(例:iPad mini 第6世代)余裕を持って入れることができます。
便利なのが外側のポケット。直ぐに取り出したい携帯電話や化粧品はこちらへ。ショルダー部分は長さ調節だけでなく外して使うこともできるので、旅先のレストランで少しおめかしをしたいときにもいいですね。
プレーンな形で、流行り廃りに左右されることなく使い続けられるレザーショルダーバッグ tofu。長くご愛用いただけたら嬉しいです。
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