提灯の灯りは私たちにとってどこか懐かしく、気持ちが安らぐ魅力があります。キャンドルの火に癒されるという方は多いですが、同様の癒し効果が和紙を通して伝わる橙色の灯りにもあるからでしょう。穏やかな提灯の光は、ストレスフルな現代人にこそ必要なものだったのかもしれません。
2025年に160年を迎える鈴木茂兵衛商店(すずきもへいしょうてん)。古くからの伝統を大切に受け継ぎながら、現代の人の暮らしに寄り添えることは何か?と問いを繰り返し、時には業界初の新しい技術を組みあわせ、今の暮らしを照らし彩る提灯づくりを続けている老舗です。和室派、洋室派の垣根を越え、そのどちらにも馴染み使える提灯を作り出している鈴木茂兵衛商店の深いこだわりと魅力に迫ります。
1865年、四代目鈴木茂兵衛によって創業した鈴木茂兵衛商店。1951年に法人化すると、東京の問屋さんから「すずもさん」と呼ばれるようになり「すずも」の愛称で親しまれるようになりました。
当時、提灯業界では、手書きが当たり前。すずもはそこで足を止めることはなく、より使い手の日常の暮らしに寄り添えるようにと、時代の動きと一緒に歩むことを選び、業界初となるプリント技術も導入します。その後、職人の手仕事を絶やすことなく日本と共に成長を続け、業界初となる技術を多数導入。歴史と共に長年培ってきた技術や人とのつながり、信頼関係を紡ぐ手作りの技法と、新たなる機械製造のハイブリッドとして、新鮮さと懐かしさを同時に感じられるものづくりを行なっているブランドです。
そんな「すずも」の一番の強みは「人が良し」ということ。すずもとすずもに関わる職人さん、提灯を手に取る方々、どれを考えても良いつながりだと考える鈴木茂兵衛商店です。人を大切に想う温かさが手仕事から提灯に伝わり、見る私たちの心を温めてくれるのかもしれません。
誰もが知っている提灯は、世の移り変わりにつれ、求められる役割も変わってきています。昔は提灯といえば暗い夜を照らす明かり、いわば懐中電灯の代わりでしたが、より手軽な代替品に溢れる今、提灯はただの「明かり」だけではなくなりました。昔ながらの使われ方では、お盆提灯やお祭りやイベントでの風物詩、店先の看板として。今回は、間接照明として暮らしに癒しをもたらす提灯に注目します。
提灯の特徴の一つに、畳めるという点があります。広げて照らし、畳んでしまえる提灯の、限られたスペースで豊かに過ごす暮らしの工夫から生まれた「たたむ文化」。綺麗好きの方、都会暮らしの方だと特に重要視したいポイントです。一般的な間接照明にはないこの機能こそ提灯の良さであり、伝統といえます。
このたたむ文化に基づく使いやすさは変えず、変化し続ける新しい生活様式に応じて新技術の開発を厭わないことを大切にしてきた鈴木茂兵衛商店。そうやって生まれたのが、現代の暮らしに寄り添う、風鈴提灯です。
日中は暑くてぐったりとしてしまう夏でも、夜は多少は過ごしやすく、クーラーで冷えた体を労わるように窓を開けて夜風を入れるのも気持ちがいいものです。ほんのわずかでも自然を感じるゆったりとした時間を特別なものにしてくれるのは、夏の風物詩とも言える風鈴。
鈴木茂兵衛商店の風鈴提灯はその名の通り風鈴と提灯が一つになった、目でも耳でも楽しめる逸品です。「リーン、リーン」と美しく響く風鈴の音色に耳を傾けることで、自然と心が静まります。
多くの人が、風鈴と聞いて思い起こすのは下のような風鈴ではないでしょうか。
<左:ガラス風鈴 たまゆら、右:風鈴 グラス>
ガラスや鉄の風鈴が主流な中、鈴木茂兵衛商店は和紙の提灯で鈴を覆った大きな風鈴を作りました。提灯がゆら、ゆら、とゆったり風に揺れる姿を見ていると、暑さを忘れて気持ちが穏やかになるのを感じます。
もちろん「提灯」としての役割も大切。揺れる短冊を引くと電気のスイッチコードのように「カチッ」という音がし、提灯が淡く光ります。実際の火ではなく、単三電池2本で光る安心の明かりです。
この光には伝統に最新技術を組み合わせる鈴木茂兵衛商店らしさが現れています。風鈴提灯は風を受けると光が揺動し、まるで本物のろうそくの光のよう。このゆらぎのある明かりは特許技術により生み出された独自の機能で、ゆらぎ効果は、ソファに座って窓辺の風鈴提灯をぼんやり眺めているだけ目でも耳でも癒されます。忙しない日々を送る方ほど、そうした時間に取り入れていただきたいものです。
風鈴提灯には紐とリングが付いているので、フックなどで引っ掛けられる場所ならどこでも取り付けられます。そういった場所がないお家では、スタンドもご用意していますので一緒に持っているとどこでも楽しめますね。
夜の窓辺や玄関に吊るすと、微風でも小さく優しく鳴り、まんまるのお月様が浮かんでいるようになります。スタンドで室内のインテリアとして置いても、お部屋の中でのちょっとした人の動作で揺れる空気に静かに鳴るかわいい風鈴です。
提灯は、職人の手作業で工程ごとにさまざまな道具を用いて作られます。既製の道具もあれば、古くからの道具を職人それぞれの手に馴染む形に微調整したり、より美しくより手早く作るために職人お手製のものもあったりと、職人の技術を活かすための道具へのこだわりも、一つの提灯を作るために欠かせない大切なもの。
提灯の技法は主に、2つに分類されます。
1つは輪に組んだ骨を多数並べて糸をかける伝統的な「掛け糸技法」。
もう1つが「ぐる巻き技法」。こちらが風鈴提灯に使われている技法です。
1本の長い骨を螺旋状に巻き付けて固定する方法です。主に丸型提灯や個性ある形をしている提灯(例えば鳥型や月型など)を作るのに向いていて、形の繊細な表現が可能です。下がぽってりとした風鈴提灯の愛らしさと繊細さは、職人の手仕事によって作られているのですね。
(※画像は取り扱いのない提灯です)
その骨に丈夫な和紙を張り、強度の高さも特徴です。実用性も考えて、和紙には撥水加工を施しています。(基本的には室内用の提灯ですので、軒先など雨が常時当たらない場所を選んで吊るしてください。)
ライトを点灯するのに持つ短冊は、紙ではなく樹脂でできています。提灯としても風鈴としても見た目を損なわず、長く愛用できる丈夫さなので、安心して使えそうですね。
こうして出来上がった風鈴提灯。窓際に吊るすのも、スタンドにかけて玄関におくのもお好みで。風鈴はアルミ製のウィンドチャイムが入っていて、風がそよぐ度に高く澄んだ音色が美しく響き渡ります。アルミは軽くて丈夫なのが特徴ですので、大きめの風鈴ですが見た目以上に重くないというのが吊り下げる上での安心な点です。
金属製のチャイムはガラス製と比べると音色が長く続くので、忙しなさを感じずリラックスした気持ちで聴くことができますよ。
▲上品な音色が、そよ風でリーンと鳴ります。
提灯の絵柄は全部で4種類。和紙の素朴な雰囲気を堪能できる無地と、夏を感じる絵柄「金魚」「桔梗」「蜻蛉(とんぼ)」です。古くから着物など日本の布地に施されてきたこれらの文様には意味があります。
金魚:赤い金魚は幸福を呼び込む豊かさの象徴。金魚掬いは夏の風物詩。金魚そのものも夏の季語となるほど、夏がよく似合う魚です。
桔梗:厄除け開運、そして字面から「更に吉」を連想させる吉祥文様。6月から7月に咲く、夏の花です。
蜻蛉:蜻蛉は前にしか進まず、退くことができないため勝利を呼び込む「勝ち虫」として縁起を担いだ柄です。
それぞれ日本の暮らしに馴染みあるものがさりげなくデザインされています。表側と裏側で少し違う絵になっているので、風でくるくると回って、見える柄が変わってくるのも面白いところです。見た目の愛らしさだけでなく、それぞれの文様の意味を知ると選ぶ楽しさもまた増してきますね。
もっとシンプルがいいという方には、無地がおすすめです。
提灯を通して豊かな暮らしを届ける鈴木茂兵衛商店。暮らしと一緒に進化し続ける提灯の姿を見ていると、懐かしさと同時に未来の暮らしが見えるので不思議です。提灯は、空間と心を豊かにする灯り。疲れや忙しさを忘れ、ゆらぐ光と落ち着く音色に耳を傾けてみるのもよさそうです。
▼ 鈴木茂兵衛商店(スズキモヘイショウテン)ブランド製品一覧