ZUTTOで長いこと取り扱いをさせていただいている日本のウエアブランド、FACTORY(ファクトリー)。元は小さなブティックから始まったセレクトショップは、やがて自分たちの手で生地を作り染めを施し、一枚の洋服に仕立てるブランドへと展開していきます。
23年秋冬アイテムの第一弾が届き、そのご紹介と共にZUTTOのために作っていただいた別注品もお披露目します。
今期の別注企画は一つのブランドに留まらず、12月までの間に複数の日本ブランドのウエアをご紹介予定です。まずは企画担当より、その意図を説明してもらいます。
「流行に合わせ1シーズンで出番がなくなる安価なウエア選びを疑問視する風潮が強まる中、 今も昔もZUTTOが目指すのは長く愛用したくなるモノだということを改めてファッションの分野でも伝えたいと思っていました。
日本の服づくりの中でも素材や染め方、縫製などものづくりに関わる各工程にこだわりと自信を持つブランドは、ファストファッションのような手軽さはないけれど、代わりに本当に良い生地を使い、長く愛用することにつながる工夫を施しています。
そうした長く愛用したくなるモノには意味や背景があることをお伝えすべく、この秋冬は日本の服づくりの魅力にスポットを当てZUTTO別注アイテムを多くご用意しています。「最近はなかなかこういう生地はない」と言われるこだわりの素材や、唯一無二の製造方法で生み出される一枚を、大切に着続けることの意義を感じてもらえるラインナップとなりますのでお楽しみに。」
とのことです。
長くなってしまいましたが、その企画の第一弾が今回のFACTORY別注シャツです。
まずはブランドであるFACTORY(ファクトリー)のご紹介から。
先述したように、セレクトショップから舵を切り自社で服づくりを行うブランドへと転身したのは1983年のこと。店舗の裏に縫製工場を作り、ミシン一つから始まったブランドは現在は企画・素材開発・製造・生産を全て自分たちで手掛けるクリエーションの形に。
最初にブランド名を聞いた時には「FACTORY=工場」と、そのままの意味にとってしまったのですが、実は"FACT IS OUR STORY”からきているのだと知るとそのイメージがぐっと奥深くなりませんか?
その意味合いとしては、「良いと信じているもの」ではなく実際に自らの目で見て手で触った事実(=FACT)を信じたものづくりをしていくこと、それがこのブランドのストーリーなのです。
実際に、FACTORY(ファクトリー)は日本から15,000km以上離れた南米の地ペルーのコットンを見出し、雨に打たれ風に晒され太陽の光をたっぷりと浴びたベルギーのリネンを求め旅をし、惚れ込んだモンゴルのウールを安定的に生産するために異国の地に工場を建ててしまうほど、素材づくりに対する熱量は計り知れません。
FACTORYの魅力は独自の生地作りと言えますね。
FACTORY(ファクトリー)の秋冬アイテムはオーストリアの画家・エゴンシーレの作品『小さな街3』からインスピレーションを受けてカラーと染色方法を作成しています。(著作権の都合で絵を載せることが出来ないので、気になる方は調べてみてくださいね。)
カラフルな小さな家がぎゅっと横並びになった構図で、エゴンシーレの絵画に見られる特徴的なタッチや凹凸感を出すべく、洋服には「ムラ染め」で表現しています。
裾をお好みで絞ることでふんわりとしたバルーンシルエットになるブラウジングデザインに、ゆるっと可愛いドルマンスリーブのブラウスです。身幅はたっぷりと生地を贅沢に使い、厚手ではありますが落ち感も感じられます。丸みのあるシルエットはサイドからのラインも美しく、シンプルなデニムからワイドパンツ、スカートまで幅広く合わせやすいデザイン。
こちらのブラウジングブラウスを特別に「近江晒素材のムラ染めブラック」で別注生産していただきました。一枚一枚柄の出方が異なる特徴的な染め方である「ムラ染め」。どのような手法なのか、FACTORY(ファクトリー)の方に伺いました。
▲近江晒/ムラ染めブラック
『浴衣などを染める「かご染め」に近い染色方法を施しました。実際にはかごではなく筒状の袋の中にブラウスをくしゃくしゃと一枚入れ、その折り重なり方で模様がムラのように出るようにしています。
実際のかご染めだと全体的に強い柄が出るのですが、今回は柄ではなくエゴンシーレの作品のような「ムラ」を出したかったため、なるべく柄にならないようにすべく考案したやり方です。』
▲確かに、柄ではなく「ムラ」になっていますね。
「布の硬さや目の詰まり具合によって意図したムラにならないので、柔らかい生地だと全て黒く染まってしまうこともあり、安定しないところです。手作業で行っているからこそ出来る方法だと思います。」
「採用された近江晒(おうみざらし)は程よくハリがあるので良い感じに染まるんですが、それでも数枚ムラにならずに全て黒くなってしまったものがありましたね。一枚一枚ムラの出方が異なるので、自分だけの一枚のように感じていただけたら嬉しいです。」
▲異なるムラの出方は手染めならでは。
FACTORY(ファクトリー)の方のお話の中にも出てきた近江晒(おうみざらし)は滋賀県の湖東地域で古くから伝わる技法を用いて、職人が一反ずつ手作業で生地を揉みほぐす手間暇をかけた生地のことです。植物を燃やした灰汁(あく)で焚くことで生地を柔らかくし染色しやすくするための漂白の役割を果たします。
太陽に晒す天日干し→焚きを繰り返すことで生地を揉み込むと味わいある細かなシワやシボができ、アンティーク生地のような高密度のシャリ感を楽しめる独特の風合いになります。
ムラ染めと近江晒が合わさって完成した今回の別注品、澄んだ夜空のようなとてもシャープでかっこいい雰囲気に仕上がりました。ブラウス自体はふんわりと丸いシルエットなので、そのギャップも面白い一枚に。
ハリのある別注品の一方で、コットンネルの「ホワイト」と「アプリコット」はふかふかと柔らかで温かみのあるネル素材です。
▲ホワイト
▲アプリコット
カーディガン代わりに羽織れるような厚みのシャツで、季節の変わり目に重宝します。Tシャツを着た上にボタンを開けて着るのもおすすめですよ。
こちらは袖の切り替えが特徴的で、ふんわりゆるやかな曲線にこだわったシルエット。古着のような雰囲気も感じさせるカジュアルさがあり、大人が着たいと思えるトレーナーです。トレーナーと言いつつ、裏毛生地ではないのでロンTのように汎用性高く着られます。
袖は長めでくしゅくしゅとさせて着ますが、丈は長すぎずスッキリ。ボトムスに裾を入れるのがもたついて苦手という方に嬉しい丈だと思います。ベルト使いも映えるトップスですね。
3カラー展開ですが、注目したいのは「硫化カーキ」。
今期のテーマである「ムラ」が存分に表現されているのが硫化染めで、酸化により発色させるこの染め方を行うと使い込むほどにデニムのようなアタリや色落ちなど、徐々に風合いが変化していきます。愛用すればするほど自分の色に変化していくので、長く着続けたい楽しみが湧いてきますね。
ブラックは着まわしやすさNo.1。ボトムスには雰囲気を揃えてリラクシーなパンツを選んだり、色柄のあるスカートを合わせても。
こっくりとした秋色のアプリコットは決して派手ではないのに色味を取り入れられるので、いつもは暗い色を選びがちな方が挑戦しやすい暖色です。