日本に洋傘がやってきたのは明治時代。さすことも惜しいほどの高級品で、その1本を職人に修理をしてもらいながら長く大切に使うものだったそうです。置き忘れても「ま、いっか」の大量生産とは真逆で、丈夫な生地素材を使用して作られ、今でいう工芸品のように憧れだったのかもしれません。
そうしたルーツを辿り、日本の職人をもう一度集め、それぞれの技術を結集させたのが佇まいあるKOUMORIUMBRELLAです。
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傘を1本作り上げるのには、生地屋、刺繍屋、織屋、染屋、型屋、防水屋、骨屋、手元屋、つゆ先、ボタン、リング、プレート、紐など、それぞれのパーツごとに専門がいて、全てを日本製で揃えるのは簡単なことではありません。
今時の傘は、パーツの簡略化を図った海外製がほとんどですが、その歴史を紐解きながら国内で顔が見えるものづくりで製造していきたいと、できる限り現場に出向き、各パーツの生産から仕立てまでをそれぞれ熟練の職人さんにお願いして作り上げたのがこちらの傘。大量生産の傘では省かれてしまうところも改めて追求したKOUMORIUMBRELLAをご紹介します。
かつて、傘はイギリスでは装飾品としても用いられ、貴族の中では使用人の存在を示すため「片手を塞いでいても不便はない」と、雨が降っていても閉じた傘を片手に持っていたのだそうです。財力の象徴にもなっていた傘は、ハンドルに真鍮や銀の装飾を施されたものも多くありました。ステッキのように細く綺麗に巻くことを職業としている人もいて、それだけ細巻きのすっきりとした傘というのは価値が高く、嗜みとして重視されていたようです。
階級を表すために派手に装飾をする時代ではありませんが、KOUMORIUMBRELLAのこだわりを見ていくと、ただ雨を凌ぐ日用品ではない特別な美しさが分かります。
日本に西洋からたくさんの傘が届いた当時、開いた形が黒いコウモリに見えたことからそう呼んだのが起源。それまで和紙と竹で作られるのが主流で、日傘と雨傘を用途に応じて使い分けていたそうですが、西洋から届いた傘は晴雨兼用でその珍しさ、便利さに大流行したのだそうです。
洋傘の総称となったコウモリ傘のように世界に広がる傘への想いも込め名付けられた、KOUMORIUMBRELLA(コウモリ傘)です。
KOUMORIUMBRELLAの傘は、飽きないシンプルなデザインと、傘の歴史を物語るパーツがあります。まず注目したいのは細巻きのシルエットです。
昔々傘を巻く職人がいたように、細身に綺麗に巻くにはコツが必要でしたが、こちらの傘はこれまで通りの傘と同じ閉じ方をするだけで綺麗に巻き上がります。生地パーツにこだわるからこそ、閉じてもさしても美しく、持ち歩く姿を凛と見せてくれる傘になっています。
次にレのようにカーブしたタモ材のハンドル。尖った個性的な形も傘が工芸品に近かった頃には多く見られた形のハンドルなのだそうです。家具にも使われるタモ材は、木目の美しさと光沢がある材料ですが、材料を切り抜いて一つ一つ制作、硬く強度があり加工する技術も必要となりますので、現代ではあまり見られなくなったものです。
傘を開いたときに見える「天紙」という部分には、KOUMORIUMBRELLAのロゴが入っています。量産化される中で省略され、現代では機能として必要なパーツとして共布を挟むだけの形が残っていますが、KOUMORIUMBRELLAはそれをきちんと残してブランドの名を入れています。
ピンと真っ直ぐな「上はじき」。傘を開いた状態のまま支える金具部分の名称です。このパーツには、弾力とバネのある素材のピアノ線が採用されています。ピアノ線は非常に強度が高いことで知られ、はじきとしても安定したつくりなので何年先も使うことを考えられた素材選びです。
その他にも経年変化も楽しめる真鍮が随所に使われ、シンプルなテキスタイルを持つ分、こういった細部が一層光ります。
歴史の上では、華やかさや工芸的な傘も今は誰でも何本でも持つことができますが、こうした素敵な傘やお気に入りの傘は使った後にお手入れをして大切に使いたいものです。
傘生地のお手入れ
晴雨兼用傘は、雨の日に濡れたまま畳んでおくと、雨シミやサビなどの原因になります。大切に使いたい方は、軽く拭いていただき、室内で広げて陰干ししてから畳んでいただくと、綺麗にお使いいただいけます。
直射日光によく当たる使用頻度やそうした保管場所では、 畳んだ際の折り目が日焼けにして変色する場合もありますが、劣化としてではなく経年変化としてお楽しみください。
真鍮パーツのお手入れ
気になる方は、使用後にさっと布で拭く程度で大丈夫です。
真鍮パーツは、水分に長時間触れるとまれに緑青(ろくしょう)と呼ばれる錆が出る場合があります。見た目が気になる場合は、酢(家庭用)に、同量の塩を混ぜた液を布につけて、緑青が発生している部分に直接こすりつけて磨き落とします。その後食器用洗剤で洗い、すすいだ後は、水気を拭き取ってください。
日本美術の世界では、むしろ緑青独特の色を効果的に取り入れることがありますので、少しずつ出てくる緑青は、取り切らずにそのまま残すというのも1つの味わいです。
人の手で触ることで表面の光が鈍くなるのも素材特徴です。市販の金属研磨剤(メタルポリッシュ等)や磨き布などで元の輝きを取り戻すことができますが、研磨剤は表面を削ることにもなりますので、味わいを増すものとして愛着を増しながら使っていただければと思います。
お直しについて
縫い付けてお直しできるものからパーツ交換の修理まで、お使いいただく中で生じた不具合は必要な修理でお直ししています。(※状態により修理不可となる可能性もあります)
▼修理例
・つゆ先やボタンが取れてしまった
・骨と生地を止める縫い目がほつれてしまった
・骨や軸棒が歪んでしまった
・パーツが折れてしまった、等
もしも、壊れてしまったということがありましたら、お気軽にご相談ください。
大量生産化の中で省略されたパーツをもう一度再現するなど、ものづくりとしての傘を教えてくれるKOUMORIUMBRELLAの傘。伝統を受け継ぎ、職人の技術を活かした細部へのこだわりを再現した傘です。
傘が工芸品に近かった時代には当たり前だった1本の傘を修理して使うという考え。ものを大切にすることをもう一度気づかせてくれる、KOUMORIUMBRELLAをご紹介しました。黒くシンプルでどんなシーンでも使えるKOUMORIUMBRELLAの傘は、ずっと使いたいものとしておすすめです。