シンプルで、使う人の装いをそっと引き立てるレザーバッグを生み出すブランド、REN(レン)。
「持っていることを意識させない」「存在を主張しない」という
どこか透明感さえも感じさせる、唯一無二のレザーブランドです。
そんなREN(レン)のものづくりの魅力をもっと知りたくて、
東京台東区にあるREN(レン)蔵前店を訪ねました。
蔵前駅からほど近い、REN(レン)のショップ。
一歩足を踏み入れると、ほんのりと革の香りが鼻をかすめ、
優しい色合いのバッグがゆるやかに並べられた空間になっています。
今回は、店舗運営部の木ノ内さん、生産管理を担う白井さんの
お二人にブランドの魅力をたっぷりと伺いました。
---とても素敵なお店ですね。これだけたくさんの革小物やバッグが並んでいるとわくわくします。
たくさんのシリーズがあるようですが、REN(レン)といえばこれ、という定番のシリーズについて教えてください。
RENのものづくりの一番の特徴は、オリジナルレザーを使っていることです。
ピッグスキン(豚革)、ゴート(山羊革)など、原皮(げんぴ)と言われるもとの「皮」の
加工方法やカラーリングを決めて、タンナーさんとの協力のもと、
他にはない、RENオリジナルのレザーを開発するところからバッグ作りが始まります。
たとえば、「HALLIE/ハリー」というこちらの革。
RENの定番として立ち上げ当初から作り続けている革で、
ラインナップの中でもリピーターさんが多い人気のレザーです。
ピッグスキン(豚革)はもともと革の中でもとても軽くしなやかなのが特徴なので、
私達が目指す日常使いのバッグのイメージにぴったりだったんです。
---他のレザーブランドだと、馬革や牛革をよく見かけますが、
ピッグスキンが軽くてしなやかというのは、知りませんでした。
そうですね、豚革ってどんな革?というのは意外と知られていないかもしれません。
というのも、豚革はどうしても仕入れる段階でキズが入りやすいという特徴があって。
豚さんは牛や馬と比べると活発でちょっとやんちゃというか、
他の豚同士でぶつかったり、体が擦れた時に肌に傷がつくことが多いんです。
そういった点では、キズのない美しいものづくりを目指すレザーブランドの中では敬遠されがちなのかな、と思います。
私達も実は、一度オリジナルピッグスキンを作ってみたものの、
レザー1枚1枚の個体差がネックになって、製品作りへの採用を取りやめたことがありました。
キズがある、というのがネガティブなイメージになってしまうのではないかと
お客様にご紹介するのをためらっていたんです。
---それでも、今はREN定番の革のひとつになっているんですね。
それはどういった考えからなのでしょうか。
はい、レザーというのは、動物の肌の質感がそのまま風合いになって表れます。
それを逆に味わいとして活かし、ありのまま見せたらどうだろう?という考えに転じたんですね。
そうすることで、キズも含めて唯一無二のレザーになるし、
軽くて柔らかいというピッグスキンの特徴を活かすことができます。
豚の革は、3つずつポツポツと毛穴があって、革に加工した時に
とてもしなやかで通気性も良いんですよ。
革は湿気に弱い素材ですので、通気性が良いのは大きなメリット。
またくったりとしなやかな風合いを活かして、
たとえば肩紐や持ち手をぎゅっと結んで好きな長さに調整するということも可能です。
---なるほど、キズがなくつるりとガラスのように光るコードバンレザーや
しっかりと厚みがあるカウレザーとはまた違う、ピッグスキンならではの特徴ですね。
はい、その風合いを気に入ってくださって、
同じレザーで、色や形が違うラインナップを買い足してくださる
リピーターさんも多くいらっしゃいます。
---色集めが楽しくなりそうです。
こうして見ると、本当にたくさんのカラーバリエーションがありますね。
はい、こちらは過去にご紹介していた限定カラーのアーカイブです。
毎シーズン2色ずつ、そのシーズン限定の色を展開していて、
ブランドプロデューサーが決めたカラーリングをもとに
タンナーさんと二人三脚で色合いを作り上げていきます。
---革なのに、透明感があるというか。
この微妙な色合いを作り出すのはとても大変なのではないでしょうか。
革の染色もREN(レン)のこだわりです。
レザーは顔料(がんりょう)染色が一般的で、
これは壁にペンキをぐぐっと塗りつけるようなイメージです。
対してREN(レン)は顔料染めはせずに、大きな樽に革をまとめて入れ
染料をじっくりと染み込ませるような方法で色つけしています。
こうすることで、絵でいう水彩画のような瑞々しいカラーが生まれます。
水の温度、染めを行う季節の湿度といった環境によって微妙な色のブレがあるので、
こうした繊細な作業はタンナーさんとの信頼関係がとても大切ですね。
ここで、白井さんが「HALLIE/ハリー」の革を使ってミシンを動かし、
バッグを作る工程を見せてくださいました。
1 )裁断された革。裏地なしで軽やかに作る、REN(レン)定番のベーシックなトートバッグです。
2 )革用のミシンで縫い合わせる。ダダダダッとリズミカルな音が心地よい。
3 )ポケットのパーツ。返し縫いの一針一針まで丁寧に。
4 )糸始末をして、それぞれのパーツを仕立てる。
5 ) ハンドル、バッグ本体とパーツを造り、手作業で縫い進めていく。
---こうして製造工程を見せて頂くと、バッグのシンプルさがよく分かりますね。
蔵前店では、主に新作のサンプル(プロトタイプ)の企画やお客様から依頼頂いた修理対応を行っていて、
実際の製造は周りの職人さんに手伝っていただいておりますが、製品作りの工程は今ご覧頂いたとおりです。
「バッグ」というのは、手に持つもの、運ぶもの、使うもの。
そんな位置づけで「身につけるもの」という感覚は少ないですが、
REN(レン)の場合は、お洋服を選ぶような感じ、
つまりシャツやスカートを選ぶのと同じ感覚で選び取って頂けるように
デザイン的には作り込みすぎないというのも、ブランドイメージの「透明感」につながっていると思います。
ブランド名のREN(レン)という言葉にも、実は明確な意味はないんです。
でも、短く覚えやすい文字で、日本に昔からある音、
言葉にした時の流れるような響き、そういったところから生まれたブランド名です。
その名付けと同じように、ものづくりにおいても、
使う人が自由な使い方が出来るように極力シンプルに。そんな風に考えています。
---2017SS、新たにリリースとなった「GOAT MESH / ゴートメッシュ」も、
革なのに他にはない「軽やかさ」「透け感」が魅力のラインですね。
はい、革を裁って縫い合わせるバッグの5倍の革を贅沢に使い
「石畳編み」という手法で編み上げた、RENオリジナルのレザーです。
革には、通常「銀面(ぎんめん)」「床面(とこめん)」があります。
銀面が表で、床面が裏ですね。
通常、レザーバッグの表はつるつると光沢があって、床面はザラザラとして質感になっているのですが、
石畳編みは、バッグ本体の表も裏の両方が革の「銀面」が見えるように立体的に編むという特徴があります。
そうすることで、見た目にも美しく耐久性も高い造りとなっていますし、
ゴート革をふんだんに使うことで生まれる「重厚感」と、
メッシュ編みのメリットである「軽さ」の2つがコントラストを生むのが魅力ですね。
春夏向けの新作ではありますが、可愛い柄のファブリックや巾着袋をインナーバッグとして入れて
秋冬のアレンジも楽しんで頂けると思います。
GOAT MESH / ゴートメッシュのシリーズは、インドの職人さんが1つ1つ手作業で丁寧に作っています。
レザーを編むという技法にかけては、インドの職人さんは本当に緻密で丁寧です。
日本の職人で同じことを出来る人は、なかなかいないと思います。
1つ1つ木型に当てながら編み上げていくのですが、
1日に1人の職人さんが作れるトートバッグはたった2つ。
それくらい緻密な作業ですね。
手作りの分、手懸ける職人さんによって微妙にサイズや編み目の硬さが違うという
特徴はありますが、それも手作りの味わいとして受け止めていただけたら嬉しいです。
---海外の職人さんとのものづくり、興味深いです。
はい、「GOAT MESH / ゴートメッシュ」はインドですが、他に「BARE / ベアー」という山羊革のシリーズはインドネシアで作っています。
というのも、インドネシアには山羊肉を食す文化が一般的なので、
山羊革の流通量も多く、レザーの製造技術についても長けています。
インドネシアの職人さんはとても丁寧で特に「縫い」のこだわりは強いですね。
針を落とす場所をミリ単位で確実に選ぶくらい。
国内外のものづくりの現場を見ていると、
「made in JAPAN」ゆえの良さもありますし、一方で海外生産ならではの強みもあります。
それぞれ魅力は異なりますが、いずれも職人の手仕事を肌で感じて頂けると思いますよ。
アイテムの魅力についてたっぷりと伺ったところで、
実際に使ったREN(レン)のバッグのエイジングを見せて頂きました。
店内には、豚革もあれば山羊革もあり、
定番のトートバッグからメッシュデザインのシリーズまで様々なアイテムが並んでいます。
今回見せて頂いたのは、「HALLIE/ハリー(豚革)」「BARE / ベアー(山羊革)」
「GOAT MESH / ゴートメッシュ(山羊革)」という異なる3種類のバッグ。
それぞれに趣は異なりますが、どれも革がくったりと馴染み柔らかくなっているのが分かります。
こちらは山羊革のバッグ。向かって左が新品、右がエイジングが進んだもの。
同じモデルですが、実際に使ったものは革が柔らかくなることで自然に重心が下がり、
バッグ自体のフォルムが柔らかくなっているのが分かりますね。
特にがんばってお手入れを続けていたという訳ではないそうですが、
新品の時のマットな質感から、ほどよくツヤが出て肌触りも良くなっていました。
続いて、スタッフのお二人がこの日の出勤で持参されていた愛用品を見せて頂きました。
モノトーンの装いによくお似合いのブラックのバッグ。
肩紐をキュッと縛って短めのショルダーバッグとして使っているのだそう。
蔵前店のお仕事をする傍らRENの各店舗を回るなど移動の多いお仕事のため、
PCや手帳、資料を持って歩くのに容量たっぷりのバッグが重宝しているのだそうです。
店頭に並んでいる、同じモデルの新品と比べて。
「革のしなやかさがぐっと増して、私の体にフィットしているように感じます。」
続いて見せて頂いたのは、巾着タイプの小さなバッグ。
ナチュラルなファッションに程よいアクセントになっていて、
こちらも革がしなやかに馴染み、優しい艶が増しているのが見て取れます。
この巾着バッグと別に、ドリンクを入れたタンブラー等入れたミニバッグと2つ持ちで
軽やかに通勤しているのだそう。
「荷物が少ない私にはこれがぴったり。身軽に電車に乗って通勤しています。」
お二人とも、どんどん使ってしっとりと馴染んだ革は新品よりも魅力が増していて、
ご自身のライフスタイルに合わせたバッグ選びをされていました。
---REN(レン)のバッグを長く使うための心がけについて教えてください。
RENが手懸けるバッグは、革本来の風合いを可能な限り生かした
自然な加工を心がけているので、同じ革でも使う人によってエイジングは大きく違ってきます。
汚れや色あせを防ぎたい場合は、定期的に防水スプレーを吹きかけます。
淡いお色の場合は時間とともに退色する場合があります。
色あせを防ぎたい場合、紫外線よけの成分が入った防水スプレーを使うのがおすすめ。
スプレーを使う時は、30cmほど離してまんべんなくスプレーがかかるようにします。
近距離で吹きかけると、液剤が浸透しすぎて変色することがあるのでご注意くださいね。
ただ、実際に店舗にいらっしゃるお客様のバッグを見ていると
あまり神経質にお手入れはせず、どんどん使って味わいを楽しんでいる方が多いように感じます。
革がもともと持っている油と、持つ人の手の油分がほどよく混じって
どんどん柔らかく、風合い豊かにエイジングしていきますよ。
--最後に、REN(レン)のファンに向けてメッセージをお願いします。
RENのバッグは、コンセプトもデザインもとにかくシンプル。
こう使わなきゃ、という決まり事は全くといってよいほどありません。
どんなシーンで、どれくらいの頻度で使いたいか、
どんな風に味わいを増していきたいかも全て使う方の自由だと思っています。
ぜひ、ご自身の思うように使って、どんどん可愛がってもらえたら、とても嬉しいです。
今回お話を伺った白井さん(左)木ノ内さん(右)。
お二人とも、REN(レン)のバッグを含めた装いが凛としていて、
ふんわりと優しい佇まいの中に
ものづくりについて語る時に垣間見える、キリッとした雰囲気がとても素敵でした。
▶︎REN(レン)蔵前店
〒111-0051 東京都台東区 蔵前4-13-4 1F(都営浅草線 蔵前駅A0より徒歩3分)
OPEN:12:00-19:00/CLOSE:月曜日 ※祝日の場合は営業。
【GOAT(ゴート)メッシュバッグシリーズ】
『GOAT MESH / ゴートメッシュ』とは、タンニン鞣しの山羊革を
石畳編みという手法で編み上げたRENオリジナルメッシュレザー。
丈夫で型崩れしにくいという特性を持ち、使い込むほどに柔らかく馴染み、
艶が増し深みのある色合いに変化していきます。
通常の5倍の革の量を必要とする編み目は、重量感がありながらも
大人っぽい透け感があり、どこかレトロな表情も魅力。
ぽってりとしたサークル型が特徴のサークルショルダーバッグ 。
口元についた特製のくるみボタンや、細身のハンドルが女性らしいデザインのトートバッグです。
素材にはRENオリジナルピッグスキン「HALLIE/ハリー」を使用。
華奢に作られたハンドルは、そのままの長さで肩掛けにしたり、
結び目を作って手提げにしたりとアレンジして持つことが出来ます。
革のキズや色ムラは天然素材の証。コーティングなどで隠すことをせず、素の風合いを大切に仕上げられています。
REN(レン)定番のピッグスキンを使ったポーチもご紹介。
マットな質感、ソフトな肌ざわり、水彩絵の具で染めたような自然な色調が魅力です。
マチのないシンプルなポーチは、バッグに入れて小物を持ち運ぶポーチとしてはもちろん、
ハンカチにスマートフォン、お財布とリップクリームだけささっと入れてお出かけという時にも重宝します。
本体に縫い付けられた革紐がさりげないアクセントになっていて、
このコードを手に通せばぐっと大人っぽく仕上がります。
優しい色合いのほか、定番のブラックもご用意。男性にもぜひお使い頂きたい、レザーポーチです。