日本の職人が作る革靴ブランド、chausser(ショセ)。その靴はシンプルな中にも温もりを感じるデザイン。そして柔らかい革に包まれるような、履き心地の良さ。そんなchausser(ショセ)の魅力をもっと知りたくて、恵比寿にある店舗を訪ねました。
恵比寿駅から徒歩約7分、坂道を登りきったその場所に、chausser(ショセ)の靴屋さん、plus by chausser(プリュス・バイ・ショセ)はあります。道路を隔ててレディース・メンズと店舗が分かれているのですが、今回主に伺ったのは、レディースの店舗。
扉を開くと一気に革の香りに包まれます。どこかクラシカルで重厚感ある店内は、その装飾の一つ一つにもこだわりがあることを感じます。その中で所狭しと並べられたぴかぴかの革靴は、なんだか誇らしげ。
ありがとうございます。
知り合いの家具屋さんにお願いして、一緒に作ってもらいました。自分の中でこういう雰囲気にしたい、というイメージがあったのでそれを伝えたのですが、レディースとメンズの店舗で違う雰囲気になりました。
(レディースは木を使ってクラシカル、メンズは鉄の扉が印象的な、少し工業的な雰囲気のお店。どちらもゆったりとした時間が流れる、居心地の良い空間でした。)
レディースではラインが4つあり、chausser(ショセ)、plus by chausser(プリュス・バイ・ショセ)、コンフォートシューズのMUKAVA(ムカヴァ)、機能性にこだわったTRAVEL SHOESがあります。半年に一度、シーズンで展開を増やしていますが、全ライン合わせても14〜15型ほど。シーズンをまたいで継続するものもありますし、特にchausser(ショセ)らしいと感じるものは長く定番として残しているんです。
アメリカの画家、ノーマン・ロックウェルの絵の中の人々が履いているような、そんなイメージを持って作っています。
例えばこのブーツ。
chausser(ショセ)立ち上げ当初から継続しているモデルで、ブランドの顔とも言えるブーツなのですが、これはロックウェルのある絵で兵隊が履いているブーツをモデルにしています。
1930〜50年代の古きアメリカの、日常の生活の中で履いているような靴をデザインソースにしているのですが、絵の中の靴をいま見ても素敵だなと思いますし、時を経ても違和感がなく「履きたい」と思わせてくれるような靴を作りたいと思っているんです。
そうですね、自分自身が古着屋さんに置いてある昔の靴を見て素敵だと思うことがあるので、30年後、古着屋さんでchausser(ショセ)の靴を見たときに、履きたいと思ってもらえるような、時代に関係のない普遍的な靴を作りたいですね。
木型のデザインがしっかりしていることでしょうか。靴のデザインの8割は木型で決まると思っていて、要はフォルムですよね。
木型の良さが一番出るのはプレーンな靴を作った時です。装飾もなく、シンプルな靴を作った時に本当にきれいに見えるか、洗練された印象か、ということは木型の良し悪しに左右されます。
もちろん、色の切り替えや装飾、紐靴の種類もデザインに違いないのですが、靴は洋服と違って面積が狭いので、目に見えるものだけをデザインと捉えてしまうと出来る範囲が狭いんです。でもフォルムや履き心地もデザインと捉えるとまた見方も変わってくるというか。
木型のデザインと、目に見える装飾、あと素材が三位一体になって活きてくる靴が理想ですね。
常に考えていることなので、シーズンでデザインを出す時に絞り出す、というよりは普段の生活の中で出ることがほとんどです。アイディアを溜めておいて、シーズン品を実際にデザインに起こす時に数日でまとめ上げる、という感じです。
お話を伺った、デザイナー兼オーナーの前田さん。週に数回、店舗にも立ち接客をされています。
リュック:vasco/NylonCross×Leather Old デイパック
お願いしている靴工房はいくつかありますが、大体が都内です。工房によって得意とする靴のタイプや製法が違うので、靴のデザインや製法から最適と考えるところにお願いをしています。
ありますね。特にレディース靴は難しいんですよ。
メンズは割とシンプルというか、レディースに比べて型もさほど多くないのでライン生産が可能なものもあるのですが、レディースは一人の職人が一つの靴を請け負い、木型に吊り込んで作っていくイメージで、より特化した技術が必要になってきます。
レディース靴のほうがヒールやフォルムにバリエーションがあるために、機械で行うよりも職人が手で作業したほうが効率的だというのが理由なのですが、それでもこちらが作りたい靴を作れる人は貴重です。
このレースアップパンプスはchausser(ショセ)独自の「フレックスフィット製法」で作っています。反りが良く包まれるような履き心地のボロネーゼ製法に、クッション性をプラスしたものをセメンティング製法で実現出来ないかと、職人さんに頼んで一緒に作ってもらいました。恐らく他ではやっていない製法です。
そのはずです(笑)。特徴は、ライニングを通常より深めに袋状に釣り込むことで、よりフィットした内部空間を作り出していることです。
中底に厚めのヌメ革を使用していて、クッション性も高めています。このヌメ革は靴のアッパーにも使える位柔らかいものなんですよ。通常、セメンティング製法の中底は紙を重ねて圧着したものが多いのですが、これよりも足に負担がなくかつ反りが良くなるようヌメ革を使っています。
足を入れると靴下に包まれているような感覚になります。5.5cmの太めヒールは安定感があり疲れにくく、また履いた時に靴の中で前に滑りにくいのも歩きやすさの一因です。
バッグ:ARTS&CRAFTS/HORSE LEATHER DRAW STRINGS POUCH/S
履き始めから柔らかいのは、アッパーに上質で柔らかいカーフレザーを使用しているから。 外羽式のレースアップタイプで甲周りの微調整も可能です。
ヒール部分にまでレザーが巻かれた、品のある佇まいです。
そうですね、2016年に販売を開始して、1年経ちましたが、最近はTRAVEL SHOESをきっかけにブランドを知ってくださる方々も多い印象です。スニーカーのような感覚と履き心地で、でもレースアップできちんと感もあるので、他ではなかなかないと言って頂けます。
革に特徴があるのですが、革の染色時にフッ素樹脂を繊維にからませることで防水性を持たせています。表面に防水加工を施した革もありますが、それは革の表面に加工するものなので、通気性が悪くなりがちです。でもTRAVEL SHOESの革は通気性は保った上で、水分を通さないというものなんです。かつ、防水は防汚にもなるので、汚れがつきにくい、落としやすいという嬉しい効果もあります。
シャツ:ZUTTO/近日販売開始予定
台風のような大雨の日で、水たまりを歩くようになってしまうと履き口や縫い目から水が入り込んでしまうことがありますが、通常の雨でしたら問題なく履けます。レザーのみの実験では、48時間水に漬けても染み込んでこなかった、という結果が出ています。
歩きやすさを重視してスニーカーを履いて行かれることが多いかと思いますが、そうすると旅先でのお洒落が制限されますよね。素敵なお店のディナーにも行けなかったりして。何足か持っていくのも大変ですし、そういった制限を取り払うためにも履き心地と、天気と、見た目全てに対応した靴を作りたかったのです。
もちろん、旅行だけでなく日常でも履いて頂けます。すっきりとした見た目なので、ビジネス使いも可能です。
女性に比べ、ビジネスシューズの制限が多い男性。スーツならば雨の日でも革靴を履くのが基本ですが、そんな時にも活躍してくれるのがTRAVEL SHOESです。スニーカーのような履き心地なので外回りの多い営業マンにもおすすめです。
靴の種類にもよるのですが、甲が覆われている靴は割とフィットしやすいですね。
歩いた時にきちんと足についてくるかどうかを確認するべきなので、足の指先に力を入れないと靴が脱げるものはダメです。
甲が深い靴やレースアップシューズは足を一番前まできっちり入れて、かかと部分に人差し指の爪部分少しが入るくらいがフィットしている靴と言えます。
甲が浅いパンプスが難しいのですが、履いた時に親指と小指の付け根部分でしっかりと幅をホールド出来ているかを確認してください。
店舗に立っていて感じることは、最近は甲が低い女性が多いということ。
甲が低いとパンプスのアッパー部分をホールド出来ないので、歩いた時に脱げやすかったりかかとが付いてこずにパカパカ浮いてしまうのです。縦幅が合っている場合は、靴の前部分にだけインソールを入れて調整することをおすすめします。
ソールの反りが良いとかかとが付いてきやすいので、そういった製法を考慮していることと、かかと部分を絞っていることです。パンプスは親指と小指の付け根部分で幅を、かかと部分で後ろをホールドして履くものなので、その3点がフィットするかが大事です。
どのタイプの靴を試着する時も、両足を履いて、きちんと立った上で以下の4点を確認してください。
・指がちゃんと伸びていること
・指先が動くこと
・親指、小指の付け根がフィットしていること(横幅に余りがなく、でも痛くない状態)
・かかとがフィットしていること(後ろから押される感じがしない)
今回、前田さんに革靴のお手入れについても伺いました。
はい、雨染みが出来てしまったら、その染みをぼかす意味でもその手段は有効です。タオルを水で濡らして固く絞り、染みになっている箇所も含め全体的に拭いて濡らし、染みとその他の部分の色の差をなくします。その後、日陰でしっかりと乾かして、革靴用のクリームを塗ってください。
ちなみに、染みや汚れが泥や油だった場合は難しいかもしれません。いずれにせよ、早めの対処が大事です。
週2〜3回履く靴であれば半月に一度はお手入れをしたほうが良いですね。靴ブラシやクリーナーで汚れを取って、革靴用のクリームを塗ってください。
お手入れをすればするほど良い、ということではありませんのでその靴の使用頻度と汚れとも相談しながら。ミンクオイルなどを沢山塗ってしまうと革が柔らかくなりすぎて型くずれする恐れもあるので、革の状態を日々よく見ることも大事ですよ。
取材当日、前田さんが履かれていた革靴は履き込んで味が出ているのですが、丁寧にお手入れがされていることがよく分かる非常に綺麗な靴でした。人の手を介して出来上がった美しいchausser(ショセ)の靴は、その美しい姿で長く履いていきたいと思わせてくれる佇まいと、雰囲気を持っています。
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