漆器と聞くと、木製の器に漆が塗られたものを連想するのではないでしょうか。古くから作られてきた一般的に浸透している漆器はこのような形が多いですが、hyakushiki(百色)が提案する漆器は少し違います。「漆ガラス」と名付けられた器は、その名の通りガラスに漆を施したもの。新しい器を目指して作られた漆ガラスは独特な感性の中に、結実した技術が見える新しい漆器です。
日本の各地で作られてきた漆器。現在の長野県周辺でも木曽漆器と名付けられた漆器が作られてきました。ヒノキをはじめとした木曽近辺で採れる良質な木材を木地とし、漆を塗った器や家具などは特産品として知られています。
hyakushiki(百色)の母体となる丸嘉小坂(まるよしこさか)漆器店は、この地で約70年前から漆業をスタート。代々漆工としておもに座卓を生産しながらその技術を受け継ぎ、より幅広いシーンで漆の器の魅力を伝えるため、新しい器づくりにチャレンジしてきました。約20年の歳月の中で研究を重ねながら生まれたのが、漆ガラスブランドのhyakushiki(百色)です。
ガラスに漆。この組み合わせが耳慣れないのは、ガラスに漆を塗布することがそもそも技術的に難しいと言われてきたことも一因です。それでも丸嘉小坂漆器店は、日本の美を象徴するかのような奥深い漆と透き通る美しさを持つガラスによって、かつて「百色眼鏡」と呼ばれた万華鏡のように自由で個性的な器を目指し、漆ガラスを作り上げています。
漆ガラスの特徴として器の内側には漆を塗らず、外側に漆を重ねていくことで内側からも美しい模様が楽しめる、同時に食材を気兼ねなく盛り付けることが出来るという点があります。深みがあり、品のある艶を放つ姿は天然の漆ならでは。
丸嘉小坂漆器店に漆ガラスの工程を伺ったところ、多くをお話することは出来ないとのことでしたが、概要を教えてくださいました。
まずガラスの表面を綺麗に洗浄した後、ガラスに漆を定着させるための下処理を行う。その上から漆の絵付け・塗りを施す。その後、手で触れるくらいまで自然硬化させた後に焼き付けをし、完成。
一見、シンプルにも感じる工程の中に、漆をガラスに定着させるための術があり、美しい絵付けを施す職人技が隠されています。
「室(むろ)」と呼ばれる板張りの保管場所。漆を塗った器に埃がつかないように、そして漆を硬化させるために適当な湿度や温度を保った大きな木の箱のようなもの。
ガラスへの絵付けは全て手作業で施されているとのこと。細い筆で一点一点行われた繊細な絵付けからは職人の丁寧な手仕事が垣間見えます。通常、漆器の場合は背景の塗りから行い、続いて絵付けの流れとなりますが、漆ガラスの場合はガラス越しに絵を見せるため、まず絵付けをしてから背景を重ねていくのだそう。また、古くの漆器にも採用されてきた、漆で文様を描いた上で金粉や銀粉を蒔く蒔絵(まきえ)や仕上げに表面を研がず、漆を均等に塗り滑らかな表面を作る花塗りといった技術も応用されています。
幾重にも花弁を重ねた菊。緩やかに広がっていく波紋。空に浮かぶ雲。hyakushiki(百色)のモチーフとなっているのは、日々私たちが目にしているものばかり。「和」を感じさせる自然や季節がデザインとして取り上げられています。
深みのある色に線香花火が瞬くような花火 2枚セット(アサギ・牡丹)。一見黒っぽく見えますが、実は青緑色のアサギ、深紅は牡丹の色。ぽつぽつと描かれた花火には金粉が使われており、上品に煌めきを放ちます。比較的小ぶりで深さのある器が2枚セットなので、副菜用の器としても良いですし、アイスクリームなどのデザートを盛り付けても。結婚祝いや内祝いのお返しの品に選んでも喜ばれます。
hyakushiki(百色)の器は、揃えてみるとどれも落ち着きがありながらも華やかさがあります。器そのものだけでなく、光が当たるとモチーフが美しく影を落とし、儚さと繊細さを感じさせる、まるで日本画のような魅力があります。特別なお祝いの日の器として、お客様に出す器としてもおすすめです。
大輪のように細やかな葉脈が描かれた葉が並ぶ、葉輪 プレートM 黒朱。黒をベースにどっしりとした重厚感がある中に、漆らしい艶のある色味を楽しむことが出来ます。直径21cmと大きめのサイズなので、中央に置くメインのお皿としても素敵ですし、インテリアのひとつとして飾っても映える一枚です。
何十にも輪が描かれた螺旋 タンブラー 透 2個セット。朱・オレンジ・茶と、モチーフの中にも様々な色が絶妙に混ざり合っています。涼やかさを助長するガラスは冷たい飲み物との相性が良く、螺旋のモチーフは普段使いの食器として選びやすいデザイン。毎日使うタンブラーのひとつとして、冷酒用タンブラーとして、もしくは引き出物やお祝いの品としてもちょうど良いタンブラーセットです。
こちらは水面に浮かぶ波紋を表した、水輪 豆皿 2枚セット(円・光)。ガラスの器に透過性のある透漆と不透明な漆を塗り重ねることで、茶色のグラデーションを作るデザインは、レトロモダンな懐かしさを連想させる色合いでもあり、直線と円で描かれたモチーフには新鮮味も感じます。片手で持てる小さな豆皿なので、お客様をもてなす際のお菓子を盛り付けるお皿としてぴったり。先のタンブラーともセットにして使っても素敵です。
食卓に彩りを作るhyakushiki(百色)は、楽しげな雰囲気を作る食器としても一役買ってくれます。
雲が彩られる吉兆とされた自然現象を表した、彩雲 盃 大は、赤・青・黄・緑が組み合わされた色合い。まるで盃自体が雲のようで、底面にもきらりと美しい金をベースにした彩りが施されています。小ぶりな盃は冷酒や冷たい飲み物を注ぐための食器としておすすめ。4色異なる配色があるので、ひとり一つ持つだけで食卓が明るい雰囲気に。箱を開けた際に並んだ様子も素敵なので、贈り物としてもきっと喜ばれる漆ガラスです。
漆ガラスは食器の内側ではなく、外側に漆が施されています。そのため、一般的な漆器よりも丈夫で剥がれにくい性質があるため、普段使いの食器としてお使い頂けます。
尚、お取り扱いの際には以下の点にご注意ください。
・耐熱食器ではありませんので、極端に熱いお料理や飲み物には使わないでください。
・外側の漆塗り部分に金属製のカトラリー等が当たりますと剥がれの原因となります。お取り扱いの際にはご注意ください。
・電子レンジや食器用洗浄機、直火や湯煎での使用はしないでください。
・洗浄の際には柔らかいスポンジを使い、たわしや磨き粉は使わないでください。
・器同士を重ねますと漆が剥がれる原因となります。重ねずに保管するか、柔らかい布を噛ませて重ねるようにしてください。
・直射日光の当たらない風通しの良い場所で保管してください。
▽hyakushiki(百色)の漆ガラスはこちらから