高級で貴重な素材として知られる、シルク(絹)。
何となく扱いが難しいイメージがある素材ですが、
一般的なシルクスカーフの他にも、ネクタイやアクセサリーなど、
手軽に取り入れられるアイテムがあります。
シルクのネクタイやスカーフは、どうやってケアすれば?
洗える場合は、どんな洗濯洗剤を選べば良いの?など
一言でシルクと言っても、デリケートな上にアイテムごとに注意点は異なってきます。
今回は「シルク」という素材を取り上げて、
その特徴と正しい取り扱い方法をご紹介します。
「絹(シルク)」と聞いて、どんなイメージが思い浮かべますか?
シルクのパジャマに、ハンカチといえば、扱いが難しいイメージがあるでしょうか。
そしてはるか昔、東西交易の道がシルクロードと呼ばれたように、
歴史的にかなり古くから重宝されてきた素材ということも知られていますね。
4大天然繊維(絹、麻、木綿、羊毛)の一つにも数えられ、
古来より、シルクは「最も美しい繊維」として重宝されてきました。
蚕の繭から糸(生糸と呼ばれます)を紡ぎだすのですが、
1粒の繭から取れる糸は、長さにして1km以上にもなります。
さらに天然繊維の中では極細の繊維で、生糸の細さは髪の毛の約30分の1とも言われています。
シルクの光沢の秘密は、その糸の構造にあります。
生糸の繊維は三角の形状をしており、
この形がプリズムのように入ってきた光を反射、拡散するため、
他の天然繊維では見ることの出来ない、独特な光沢を生むのです。
そんなシルク生地の特徴はこちら。
(利点)
・シルクならではの滑らかさと光沢
・天然繊維なので静電気を起こしにくい
・多湿にならず、適温を保つ
(欠点)
・シミになりやすい
・酸やアルカリに弱い
・水に濡れると縮みやすい
・害虫の被害を受けやすい
また、もう一つの特徴として「紫外線を吸収しやすい」ことが挙げられます。
絹を首元に巻けば紫外線対策になるというは一つの利点です。
ただし、絹自体は紫外線を吸収すると黄変する性質があるため、
直射日光に一定時間当たると風合いを損ねてしまう可能性があるので注意しましょう。
ZUTTOでご紹介しているファブリックケアの中では、
「THE LAUNDRESS(ザ・ランドレス)」のデリケートウォッシュが
絹を含むデリケートな素材のお洗濯に適しています。
絹を水洗いする場合に気をつけたいのは以下のポイント。
▼守るべきこと
・30度以下の水温で洗うこと(温水の使用不可)
・衣類の洗濯表示に沿って、手洗い又は洗濯機のデリケートコースでケア
・お洗濯用のウォッシングバッグに入れる
・衣服の場合は、中表にする
▼注意事項
・生地を絞ったり、ねじったりしないこと
・温水、乾燥機、漂白剤は使用不可
・乾かす際は、直射日光を避けて平らに置いて干すか、吊るして干す
・お手入れ後、長期保管する場合は、不織布のケースや絹専用の保存袋に入れるよう心がける
(ビニール袋やプラスチックケースに密閉して保管すると、調湿が出来ずカビの原因になりやすい)
それでは、シルクのアイテムとそれぞれの取り扱い方法を見ていきましょう。
シルクといえばスカーフのイメージが強いですが
他にも様々なアイテムがあります。
まずはシルクの王道ともいえる、スカーフのブランドから。
the PORT(ポート)を手がけるのは横浜の地場産業である捺染(なっせん)メーカー、株式会社丸加。
昔からたくさんの人やモノが行き交う港町、
横浜がかつて世界に繋がり日本を元気に彩っていったように
毎日の生活に彩りを添え、現代に見合うプリントでありたいという願いから、
ファクトリーブランドであるthe PORT(ポート)がスタート。
1859年の横浜港開港時より日本の主要輸出品目であったシルク。
当時は日本の生糸の需要が高く、横浜開港博覧会やメルボルン博覧会などで
日本製のシルクハンカチが注目を浴び、横浜で生糸市場が大きくなっていくにつれて、捺染業も発達していきました。
昭和初期には、スカーフがファッションアイテムとして人気を集め、横浜の名産となります。
丸加は横浜の老舗スカーフメーカーとして知られ、現在日本で唯一企画からデザイン、
工場生産、納品まで一貫して自社が受け持ち、手捺染によるこだわりのスカーフを生み出しています。
シックなラインナップも多く展開する丸加ですが、
こちらのthe PORTはモダンで遊び心を感じさせる絵柄を多く揃えています。
シルクのスカーフといえば花柄、チェーン模様などが一般的な中で
the PORTがモチーフとして取り上げるのは、
例えばケーキの絵柄、まるで現代アートのような幾何学模様に
マリンテイストの錨のシルエットなど。
捺染(なっせん)メーカーならではの技術力で、
絵柄と鮮やかなカラーを活かした発色の綺麗なスカーフばかりです。
1日中巻いたスカーフは、ハンガーや椅子にかけて
光の当たらない場所に吊るすようにします。
(光に長時間さらすと、変質・変色の恐れあり。)
使用の度にクリーニングの必要はありません。
汚れがひどい時には、ドライクリーニングしてください。
シルクを中心とした天然素材を使用し、自社工場でものづくりを行うブランド、羽田忠織物。
昭和10年に傘や風呂敷の布地を織るメーカーとして創業しました。
着物の裏地などに多く使われた甲斐絹(かいき)の一大織物産地として栄えた
山梨県富士吉田市は、ネクタイの生産量は日本一を誇ります。
1935年に創業した羽田忠織物は、国内ではたった1軒しかなくなったネクタイの紗織りや、
シルクの持つ素材感にこだわったジャガード織りを中心に
産地の職人と新しい生地の開発に日々取り組んできました。
織物工場としてなみならず、オリジナルブランドとして
素材・品質の双方へのこだわりを発信しています。
この写真を見てわかるように、
上質なシルクを敢えてカジュアルな風合いに仕上げたアイテムも。
太いデニールの絹糸を使用することで
「シルク=光沢感」のイメージに囚われない、
ナチュラルな質感を楽しんで頂けるネクタイも揃います。
長繊維のシルクをわざと短くし様々な色の繊維と混紡し、
凹凸のある生地に仕上げ、太番手の糸を使うことで
今までのシルクには無いざっくりとした風合いを生み出しています。
シルク素材に限らず、ネクタイはお洗濯せずに使うのが基本です。
無理に洗うと生地の痛み、風合いの変化の原因となります。
また、ネクタイを外した後に残るシワが気になると
スチームアイロンをかけたくなりますが、シルク素材の場合、
スチームの水滴でシミになる場合があるので避けるようにします。
1度着用したら数日は休ませるというネクタイの基本を守りましょう。
間隔をあけて着用すれば、シワを防ぎながら長持ちさせることが出来ます。
糸の力でゼロから新たな価値を創造するというコンセプトを掲げる000(トリプル・オゥ)。
ブランドの母体となっているのは、群馬県桐生市で明治10年(1877年)に創業した、
老舗刺繍店「笠盛」。笠盛は創業から桐生の伝統技法をベースとしてものづくりを行い、
1960年代からはジャガード刺繍機を導入し刺繍業に取り組んでいます。
000自体はシルク以外にも様々な素材の糸を使って
ものづくりを行うブランドですが、
その中でも絹の質感・光沢を最大限活かした
Sphere silkシリーズの繊細さは圧巻です。
このSphere silkシリーズは、球体の中身まで全て糸が詰まっており、
何度も何度も繰り返し刺繍を施すことで立体的な造形を可能にしています。
まるで繭玉のような球体のモチーフは、糸で作られることによって柔らかな印象を作ってくれます。
金具以外は、全て糸。だからこそ優美で繊細、なおかつ軽いという利点があります。
触り心地も優しく、金属だとひんやりと感じたり、重さを感じる方にぜひおすすめしたいネックレスです。
シルク素材に対応した衣類用中性洗剤を使って、ご家庭での水洗いが可能です。
汗や汚れが気になる場合は、部分洗いをおすすめします。
中性洗剤を溶かした水に浸け、優しく手洗いした後はタオル等で水気を取り、日陰に干します。
(浸け置きはしないでくださいね。)
他のシルク製品と同様、直射日光や蛍光灯の光が当たる場所は避け、
風通しの良い場所へ保管してください。
今回取り上げた「シルク」という素材。
一見取り扱いが難しいようにも思えますが、
アイテムごとの特徴と適切な取り扱い方法を知っていれば
長く、美しく使うことが出来ます。
小物としてプラスするだけでエレガントに仕上がるシルク。
日々の装いに取り入れてみませんか。