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「われもの」について考える

 

 

われもの注意。
そんな注意書きを目にすると何だか危なっかしい感じがして
取り扱いに躊躇してしまいがちですが、
一方でキラキラと光を反射して美しく輝くガラスや
素朴で味わい深い陶磁器は、私たちの暮らしの中でとても身近な存在です。

そんな、いつか割れてしまうという可能性を秘めたガラスや陶器、磁器の中にも、
大切に使えば長く愛用出来るものがあります。
「壊れてしまうかもしれない」という可能性を感じながらも、
私達が割れ物の器やアクセサリーに魅力を感じ、日々ずっと使い続けるのはなぜでしょうか。

 

 

 

窓ガラス、ガラスのコップ、カメラのレンズなど、
ガラスは私たちの生活に欠かせない素材のひとつですが、
史実的に見てもその歴史は古く、たとえば紀元前の時代から
天然ガラスである黒曜石(こくようせき)が武器の一部や刃物として
使われていたことが分かっているほか、
紀元前1600年頃には人工のガラスが製造されるようになったと言われています。


紀元1世紀頃に開発された「宙吹き」と言われる技法は
金属の棒の先端に溶けたガラス素材をとって息を吹きかけ
型を用いずに成形するもので、
今でもガラス工芸でよく用いられる技法として受け継がれてきました。
現代では、宙吹きのほかにも、プレスしたり引き伸ばしたり、
様々な加工技術が開発されていることからも分かるように
熱で溶かして成形すると、様々な形に姿を変えることが
ガラスの魅力の一つと言えるかもしれません。

 

 

そんなガラスの特徴を一言で言えば、「硬くて、脆い(もろい)」ということ。
強化ガラスと呼ばれるような、強度を特徴としたガラス素材もありますが、
その繊細さから、落とせば割れる/壊れる、というのはガラスの宿命です。
一方、ほかに変えられない魅力といえば、
繊細な造形の美しさと、光を受けてキラキラと輝く透光性ですね。
壊れやすい性質でありながら、様々に形と色を変え
キラキラと輝くガラスは古の時代から人々を魅了してきた素材と言えます。

 


 

ガラスと同じくらい、私たちにとって身近なのが、やきものの器。
一般に「やきもの」といわれるような器は、「陶磁器」と呼ばれてます。
そして陶磁器は、大きく「陶器」と「磁器」に分かれています。
陶磁器とは、この陶器と磁器の総称という訳です。

 

 

陶器は、陶土とよばれる粘土、つまり土が主な原料で、
別名「土もの」と呼ばれることもあります。

 

 

一方の磁器は陶石とよばれる岩石が主な原料。
土ものに対し、「石もの」と呼ばれることも。

粘土を素材とする陶器は、吸水性多孔性なので本来、
水が浸透する性質なのですが、釉薬をかけて焼き上げたものは
水を通さないのが普通です。
ただし、洗剤の中に長時間つけおきしたり、
熱湯で洗うと腐食してしまうこともあるので注意しましょう。

一方の磁器は、ほとんど水を通さず、
焼が固く、質が緻密で気孔が少ないという特徴があります。
磁器は硬質なものが多いですが、やはり「われもの」であることに
変わりはありません。取扱いは、陶器同様に丁寧に行いましょう。


 

 

ガラスも陶磁器も、落としたら壊れやすいという宿命は持っていますが、
「われもの」ならではの造形美や、
「われもの」だからこそ長く大切に使ってもらうための
作り手の工夫が施されているものなど、様々なバリエーションがあります。


 


蔵珍窯(ぞうほうがま)は昭和45年に開業した美濃焼の窯。
人間国宝の師匠に学んできた修行時代を経て、
開業から陶磁器のデザインで最高賞を受賞
重要文化財文化財の写しの製作を美術館より請け負うなど、
センスと技術の高さが注目されています。
蔵珍窯(ぞうほうがま)を含む美濃焼は、岐阜県東美濃地方で生産される多種多様な焼き物を総称しますが、
1300年の歴史があり、食器類の生産が全国シェアの約60%を占め、日本のやきものの代表と言えます。 
どこの家庭にも当たり前に存在し、今も昔も日本の食卓に欠かせない器が美濃焼です。

 

蔵珍窯(ぞうほうがま)の器の特徴の一つの朱貫入・「赤い器」は、
蔵珍(ぞうほう)の赤と呼び、それはとても貴重なベンガラを用いて作られています。 
器を華やかに彩るベンガラの赤は、
千日かけてゆっくりと丁寧に擦り続け3年で完成する絵の具で、
焼成後は滑らかで深い赤い色となります。
時間をかけて擦れば擦るほど美しい赤色になると言われ、
昭和初期から貴重なものとして「幻のベンガラ」といわれていました。 
そして、その年月をかけて生み出された赤色は、
さらに使うことで、より美しく鮮明な赤へと育ちます。 

蔵珍窯(ぞうほうがま)は、貫入の技法によってこの赤色を器に施しています。 
貫入とは、陶器や磁器を焼く時に、陶土と釉薬の収縮率の差によって生じる
表面(釉薬)の細かにヒビ状のもので、2種類の貫入があります。
窯出し直後、窯出し後冷ました際に入る「直接貫入」と、
時間を経て自然と発生する「経年貫入」です。
貫入の入った器は、長年大切に使われたことを感じさせる独特の風合いでもあります。

 

 

 

 

FALBE(ファルビー)は、直径1.5mmの光を通して輝く
「シードビーズ」と呼ばれる、種(シード)のように
小さなガラス製のビーズを用いてものづくりを行っています。
ガラスを溶かし、中に空気を吹き込んで管状にしてから細かく切断、
着色や加工を施して作られる「シードビーズ」。 

 

 

 

多彩な色のビーズづくりでも、ちょっとした加減で色や切断面にムラや変調が起きるため、
長年の職人の技術が必要です。熟練の職人により、ビーズ玉と染料が調合され色付けされるビーズは、
繊細な柄を美しく表現できる小さな宝石のようです。 

ビーズの起源は古く、人類が最初に用いた装身具として知られています。
また、ビーズは大自然に祈りを捧げる太古の人々の道具としても役割を果たしてきました。
FALBE(ファルビー)では、ドレスや衣類の装飾に使われる
華やかなビーズとしてだけではなく、
もっとたくさんの人に日常に使っていただきたいという思いを込めて
一点一点を手仕事で作り上げています。 

 



このタンブラーを生み出したアイノ・アアルトは、
20世紀を代表する建築家アルヴァ・アアルトの妻。
仕事のパートナーでもあったアイノ・アアルトが、
1932年に実用性と簡潔さを反映させることを目指しデザインしたものが
このAino Aalto タンブラーです。
アイノ・アアルトは、Aino Aaltoシリーズで
1936年のミラノ・トリエンナーレ金賞を受賞しました。 

 

 

厚みのあるグラスは、実際に持ってみると、手によく馴染みます。
それは、グラスの表面のデザインのおかげ。
ガラス製のものはどうしても滑りやすいので、
手を滑らせ、グラスを落とさないようなデザインになっています。
グラスを持つ安心感だけでなく、細やかな気配りが嬉しいですね。 
そういった点では、とても女性的なデザインと言えそうです。
こちらのタンブラーはよくよく見ると、
街中なカフェのような飲食店のテーブルグラスとして
使われているのもよく見掛けます。
Aino Aalto(アイノ・アアルト)が70年以上も愛されている理由は、
デザインがシンプルというだけでなく、
その使い心地の良さも愛されている理由の一つなのかもしれません。 

 

 

取り扱いに注意が必要な「われもの」ですが、
こうした「長く愛用してもらうための工夫」が施されていることが分かると
よりいっそう愛着が湧くものです。
身の回りにある、ガラスや陶磁器の製品についても、
きっとたくさんの工夫が成されているはず。

 

 

 

投稿者: 斎藤 日時: 2016年03月31日 11:00 | permalink

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