おしゃれなカフェやディナーに憧れて盛り付けをいろいろ工夫してみても、なかなか続かなかったという経験を持つ方にこそ、おすすめな木のお皿たち。例えばいつものトーストさえも素敵に美味しそうに見える器は、普段の暮らしをもう一段階豊かにする力を持っているように思います。今回は、そんな木のお皿を取り扱う人気ブランドの使い勝手と魅力を比較しながらご紹介します。
まず、木のお皿のいいところとは
① 乗せるものがおしゃれに変わること
② 軽くて割れにくい
③ 自然な手触りがいい
ざっくりとこの3つが挙げられます。中でも特筆したいのは自然な手触りがいいという点で、木のざらつきや滑らかさは実際のところ器の仕上げごとに異なる点ではあるのですが、一つ共通して挙げられる部分があります。それは、食材の柔らかい温もりがほんのりと手に感じられるところ。木の汁椀が最も身近な例ですが、木は陶器などに比べて熱を通しにくく、緩やかに暖かさを伝えるので、料理の温かさが優しく手に伝わります。手料理の温もり、ありがたみ、それを感じさせてくれるのが木のお皿なのです。
さて、早速木のお皿を見てみます。今回比較するのは、こちらの5ブランド。
・GOLD CRAFT(ゴールドクラフト)
・RIN&CO.(リンアンドコー)
・我戸幹男商店(ガトミキオショウテン)
・BUNACO(ブナコ)
・高橋工芸(たかはしこうげい)
同じ食パンと野菜を乗せて、向き不向きを見ていきます。
まず、高橋工芸のKakudo プレート。丸でもない、四角でもない、少しデザインに捻りがあるけれど、シンプルで使いやすい木のお皿です。角を滑らかに整えた八角形は、端正でモダンな印象を感じさせます。デニッシュや焼き菓子などを乗せると、それだけで様になってしまう器です。
縁が少しだけ立ち上がっている形になっていますので、トーストやケーキのような平らな皿に乗せて食べる料理との相性が抜群です。見た目以上に座りがいいので、野菜スティックのトレーとしてもいいですね。縁があるとはいえ、汁気の多いものを入れる際には注意が必要そうです。
GOLD CRAFTの木製ワイドリム皿 Mです。朝ごはんと相性抜群で、とても美味しそうに盛り付けられました。トーストなら、リムの狭い木製タイトリム皿 Mもおすすめです。木製ワイドリム皿 Mはホワイトのシナノキ、ベージュのベイマツ、ブラウンのウォルナットと木の素材で色が異なっています。
今回使用したブラウンのウォルナットは、淡い色味の食材をより美味しく引き立てます。例えばポテトサラダやチーズ料理、白和など。そのほか、ローストビーフの盛り付けや、テリーヌといった洋食から、寿司などの日本食までアイデア次第でおしゃれな盛り付けが可能です。こちらもややリムがありますが、皿自体が平たく省スペースとなっていますので、汁気の多いものにはご注意ください。
RIN&CO.のトレイは、なんといってもこの色味の可愛らしさと食洗機対応な使いやすさを特徴としています。洋食にも似合う色味ですが、日本の福井県で作られる漆塗りの木の器です。木目こそありませんが、トーストを乗せると何だか愛らしく、お子さんにも喜ばれそうな器ですね。小さなお子さんでも持つことができる軽さであるのも、こちらのトレーの特徴です。
こちらは縁が立ち上がっているので、汁気の多いものでものせることが可能です。カットフルーツの盛り付けに使ったり、ワンプレートランチのお皿としたり、刺身やお豆腐を乗せたりするのにもおすすめです。一方で、金属製のカトラリーを苦手としているのでご注意ください。
我戸幹男商店のボウル SINAFU plainはやや大きめで、年輪を思わせる凹凸が入っているのが特徴です。深さがあることからパスタ皿やサラダ、メインディッシュ用としての使い方が良さそうです。特にパスタ皿としては優秀で、職人手作りのこだわりの作りからシンプルなミートソースを乗せるだけでも高級感が増して美味しそうに見えるのです。
側面から見た時の美しいカーブから分かる通り、手に馴染む作り。さらに見た目の重厚感からは想像できませんが意外にも軽く、使い勝手のいい大きな器です。
BUNACOのボウル 浅鉢です。こちらも上の我戸幹男商店と同じく、トースト用としては深さがあるのでパスタ皿やメインディッシュ用としての使い方がおすすめです。我戸幹男商店よりしっかりと深さがあるので、カレーやシチュー用としてもよいですね。
つるりとした表面が美しく、サラダボウルとして食卓に並べると、野菜の彩りを引き立てて何とも美味しそうに見える器です。手間をかけずに素敵な盛り付けをするのに向いている器ですね。
次に、仕上げの違いを比較します。天然素材だからこそそれぞれ良いところと注意したいところのある木の器。見た目の素敵さはもちろん選ぶポイントですが、木材と仕上げ方の違いを見ていくと、自分の求めている器が見えてきます。
仕上げ:ウォールナットにオイルフィニッシュ
○最もナチュラルで木の色や木目を生かした仕上げで経年変化を楽しめる
○木の反りや割れをできるだけ防止する
△お手入れ次第では、シミになる可能性も
△木の香りがする
極度の乾燥や、熱、湿気に弱いのがオイルフィニッシュ。直射日光に当てて保管したり、長時間水気の多いものを乗せたりすると、シミや反り、カビの原因となるので注意が必要です。
オイルフィニッシュは、オイルを塗って木を乾燥から守るナチュラルな仕上げ。木目や色味、肌触りを大切にしたこの仕上げ方法は、木の良さを最大限楽しめる仕上げ方法です。木の呼吸を妨げないので、木に含まれる水分量をちょうどよく保つことができ、完全防止策ではありませんが、木の反りや割れを防ぐ効果も持っています。無塗装のものに比べて汚れを弾く一方で、濡れたものを直接長い間置いておくと、シミになったりすることもありますので、長時間水に触れないよう注意してくださいね。
オイルフィニッシュは自宅で簡単に塗り直しが可能で、長寿な仕上げです。オイルは木の表面に留まりますので、使用するうちにだんだんと抜けていきます。表面がカサついてきたのを感じたら、エゴマ油や胡桃油などの食用油のうち、乾いて固まる速乾油を布やキッチンペーパーにつけ、少しずつ塗って乾かしてください。
胡桃の木です。高級感のある深い色合いで、木目が整っていてきれいで滑らかな木材。耐久性に優れ、衝撃を受けても割れにくい特徴を持っています。温度や湿度で変形しづらく、木目を生かしたオイルフィニッシュに適しています。
仕上げ:天然ブナ材にウレタン塗装
○オイルフィニッシュに比べ、熱や汚れに強く色や匂いがうつりにくい
○耐水性があり、油によるシミが防げるので気軽につかえる
△経年劣化をしてしまうと剥がれる場合がある
洗う際や水気を拭く際、ゴシゴシと擦るとウレタンが剥がれる可能性があります。アルコールのものを使用すると経年劣化を早めますので、ご注意ください。
ウレタン塗装は、透明の樹脂で木を覆うようにコーティングする塗装です。初めは特有の匂いがある場合がありますが、口に入れても安全なものですのでご安心ください。ウレタンの種類により若干異なりますが、オイルフィニッシュに比べるとやや表面に光沢を感じられるものが多いようです。塗装は水気や着色汚れに強く、日常のお手入れは陶磁器と同様特に木にすることなくご使用いただけます。
一方で、ウレタン塗装されたものはオイルフィニッシュのように簡単な塗り直しができません。そのため、塗装が剥げたりすると器そのものの劣化につながってしまうので、寿命を伸ばすために、強いこすり洗いを避けたり長時間水に浸したりせず、表面を優しくお手入れしてあげるのがよいですね。
ブナは耐久性が高く長寿命な木材。水分を多く含む木ですが、十分に乾燥させることで硬くて弾力があり曲げに強い特徴を持ちます。そのおかげでコイル状に巻きつけて器の形を作り出すBUNACO独自の製法にまさにピッタリの素材でした。
仕上げ:トチにウレタン塗装
トチの木は、予想外に広がる個性ある杢目が自然でしか表現できない美しさを持っています。金色、白、赤ともつかない独特の色味を持ち、世界に一つだけの模様のお皿を楽しめます。頑丈で長く使い続けられる特徴を持ちます。
仕上げ:木合に本漆手塗り
○酸・塩分・アルコールなどに強く、抗菌性・耐水性・断熱性・防腐性・防虫性なども高い
○年月を経るごとに美しく強くなり、剥がれにくくなる
△お手入れを必要とする
△乾燥するまでに何十年の時間がかかるため、物によっては扱いが難しい
漆は極度の乾燥が苦手ですので、時々使ってあげることがお手入れになります。金属系のものと一緒に使ったり洗ったりすると、表面に傷がついてしまうのでお避けいただき、陶磁器などとは重ねないようにご注意ください。
漆塗りは言わずと知れた古くから続く長寿な塗装。耐水性だけではなく、抗菌作用まであり食材の腐敗を防ぐため、長時間食材を入れるお弁当箱などにも使われてきました。ウレタン塗装同様色や匂い移りもなく、使い勝手の良い塗装です。木に着色を施すため、ナチュラルな木の風合いはありませんが、漆ならではの独特な艶をお楽しみいただけます。
漆塗りは職人による修理が可能。現代では技術も進歩し、難しいお手入れが不要な漆塗りも登場しました。
漆塗りのデメリットである「お手入れの難しさ」をなくしたのが、越前硬漆です。本来の漆より早く硬化することで、食器洗い機にも耐え、難しいお手入れが不要となっています。
仕上げ:様々なプライウッドに特殊コーティング
○耐薬品、汚れや擦り傷にも強く、食洗機3000回の洗浄耐水試験にパスする耐水実力
○食品衛生法に合格し、小さなお子様も安心
△経年劣化をしてしまうと剥がれる場合がある
ウレタン塗装同様、洗う際や水気を拭く際、ゴシゴシと擦るとコーティングが剥がれる可能性がありますのでご注意ください。
木を薄くスライスした芯材を重ね合わせ、熱圧力で貼り合わせる製法で作られた木材のことです。芯材の木目が交互になるように重ねることで、木製品特性のゆがみや反りが出にくくなるのを特徴としています。そのため木を削り出したりくり抜いて作る他の木製品に比べ、薄くて軽く、丈夫なものが出来上がります。また、シート状に桂剥きした材料を積み重ねて使用するため、捨てる部分が非常に少なく、省資源な製法であることも特筆すべき点です。
陶磁器に比べると、長く使うためには少しだけお手入れを必要とするものもありますが、並べてみてみるとそれほどまでに難しいことはないことがわかりました。「時々使ってあげる」というのが木のお皿にしてあげられる一番のことだと思うと、いつも使っている食器のように気軽にサラダを乗せたりパスタを乗せたりしながら使っていきたいものです。