日本のやきものの魅力を再発見する、やきものを愉しむシリーズ。
石川県の九谷焼に続く第二弾は、
岐阜県を中心に作り続けられている美濃焼です。
◇美濃焼の始まり
美濃と呼ばれていた地域は現在の岐阜県にあたり、
その地域で製造されてきた焼きものが全般的に美濃焼として知られています。
美濃焼の特徴は、なによりその多様さ。
一つの焼成様式にとらわれず、
志野・織部・青磁・粉引・染付・天目など、
数多くの製法で焼きものが作られてきました。
古くは韓国の須恵器(すえき)の製法が伝わったことがきっかけで、
美濃で焼きものづくりが始まったと言われ、
その後は、愛知県の瀬戸焼の影響を受けたり、
安土桃山時代には、京から来た陶工や茶匠により
焼きものの一大産地として発展してきました。
美濃焼ならではの様々な焼成様式は、
各地の焼きものの技術がこうして結集してきた結果かもしれません。
現在では多くの製法で作られた美濃焼が
経済産業大臣指定伝統工芸品とされています。
さらに日本の食器のうち、約60%を占めると言われているほど、
和食器に限らず、洋食器としても手に取って使われている美濃焼。
昔から、いつも人々の暮らしに寄り添う焼きものだったのですね。
◇ガラスのような透明感
陶器を「ガラスのよう」や「透明感のある」と表現すると違和感がありますが、
ご紹介するカネコ小兵製陶所のぎやまん陶シリーズは
まさにそんな表現がぴたりと合う美濃焼です。
大正10年に岐阜県土岐町下石町で開窯した、カネコ小兵製陶所。
もともと花瓶や徳利といった、型に粘土を流し込んで成形する
袋状の陶器に適した陶土が採れたことから、徳利の生産に力を入れていました。
窯も登り窯からトンネル窯に変えるなど
時代に応じて製造方法を変え、昭和40年代には徳利の生産量日本一を誇りました。
しかしながら、その後は飲酒文化の多様化により、
カネコ小兵製陶所も徳利の生産から方針転換を行います。
その結果、生まれたのがこの「ぎやまん陶」シリーズです。
江戸時代から明治始めにかけて、ガラスを意味する外来語だった「ぎやまん」。
漆器のようにしっとりと深い色合いを持ち、
ガラスのように輝きを放つ存在です。
窯の中で酸素を少なめにし、いわば不完全燃焼の状態で焼成する
還元焼成と呼ばれる製法を用いることで、
深い色合いとなり、吸湿性の少ない丈夫な食器となります。
触れるとコツコツといった硬い質感で、
指でなぞりたくなるような表面は非常に滑らか。
菊の花がモチーフになっていると言われ、
ぱっと花が開いたような姿は繊細で優美な印象です。
数ある美濃焼の技法の中でも、ぎやまん陶のガラスのような透明感と
漆器を思わせる深みのある風合いは、美を追い求めた末の傑作と言われています。
その高い評価は、国内はもちろん、海外においても
海外の有名ブランドで販売されたり、
ベルサイユ宮殿でのパーティーにも使われた実績があります。
カネコ小兵製陶所のぎやまん陶は、
日本の伝統的な美濃焼を多くの人の手に渡るものへと
進化させた焼きものと言えますね。
◇素朴な味わい
さて、美濃焼にはぎやまん陶のように
陶石を使用した磁器だけでなく
陶土(粘土)をおもな原料とした陶器もあります。
東海地方を中心に、優れた陶磁器産業の技術や製品を継承するために、
現代に見合った良質な陶磁器の製造を行うTOJIKI TONYA(トウジキトンヤ)。
TOJIKI TONYA(トウジキトンヤ)でも、様々な技法で作られた美濃焼があります。
まずは美濃焼の中でも最古窯に分類され、
良質な粘土が産出されると言われる高田の地からは
昔ながらの日用品として愛されてきた摺り鉢が作られています。
高田の美濃焼は、その昔、高価な焼きものを焼いていた職人たちが
庶民のための器を作るために良質な粘土の採れる高田の地に
移住してきたことが始まりと言われています。
フードプロセッサーを使えば、食材の粉砕は可能だけれど、
摺り鉢を使えば、擂粉木のごりごりとした音や
食材の香りまでも楽しめます。
きめ細やかで丁寧に焼き締められた摺り鉢には
無数の細い櫛状の線が入っており、この形状が
食材の香りと食感を引き立てる役目を果たしています。
かわって、こちらはTOJIKI TONYA(トウジキトンヤ)の粉引 リム皿。
同じく美濃の地で作られた焼きものですが、
「粉引(こひき)」の製法がまた異なる風合いを作っています。
粉引とは、器の素地に白土をかけ、その上に透明釉をかけることで、
全体が白色になる製法です。
粉引 リム皿は、さらに内側の縁の部分を削ぐことで、
素地の色がうっすら見える、芸術的な雰囲気があります。
粉引の特徴としては、異なる大きさの粒子の土を
重ねた製法のため、ざらりとした質感があり、
よくよく見ると表面に小さな気泡が開いているように見えます。
こうした特徴が、どことなく素朴な粉引 リム皿。
美濃焼のまた違った一面を見せてくれます。
◇美濃焼を使う
先述の通り、日本の食器の大半を占める美濃焼なので、
既に使われている方が多くいらっしゃると思います。
美濃焼はその様々な形式から、和食にとらわれず、
麺類や洋風のお肉料理、デザートなどにもおすすめです。
器を選ぶ際に覚えておきたいのが、大きさを示す表記。
カネコ小兵製陶所のぎやまん陶や
TOJIKI TONYA(トウジキトンヤ)の粉引 リム皿は、
「寸」で大きさを示す表記があります。
この表記は器の直径を表しており、
一寸はおおよそ3cmなので、四・五寸は約13〜14cm、
七寸は約21cm、九寸は約27cmになります。
いずれも食卓で使いやすいサイズですが、いざ選ぼうとすると迷ってしまいますね。
個人差がありますが、大きさの目安は以下の通りになります。
四・五寸は副菜や取り分け皿、デザート用に使えるサイズ。
七寸は朝食用や少食の方の一人前のプレートとしておすすめ。
九寸はメインディッシュと少しのおかずが乗るくらいの
一般的な一人前のプレートほどの大きさ。
もしくは、既にお使いの器のサイズを測って、比べるのも分かりやすいですね。
また、九寸の器やぎやまん陶の楕円大皿は、
食卓の真ん中に置いて、みんなに取り分けるための主役の器としても。
美濃焼だけで食卓の器がまかなえます。
◇美濃焼を扱う上で、気をつけたいこと
■耐久性があり、丈夫な美濃焼ですが、
ものによっては電子レンジの使用が出来ない場合があります。
お取り扱いの際には商品の注意事項をよくご確認ください。
■美濃焼には、硬い陶石から出来た磁器と
粘土から出来た陶器があります。
陶器の場合、吸水性が高くなっていますので、シミを防ぐために
使用前、十分に水を滲み込ませ目止めを行うことをおすすめします。
5~10分、水に浸しておくだけでも効果があります。
■洗浄後、乾燥を十分に行いませんと
カビの原因となってしまいますので、ご注意ください。
■重ねて収納する際には、お皿の下に布巾や薄い紙を敷いて、
収納することをおすすめします。
>>やきものを愉しむシリーズ 第一弾 九谷焼はこちら