艶のある表情に、端正でかっこいいフォルム。
かっちりとした印象の中に宿る、女性らしさ。
レザーシューズは、私たちの憧れを詰め込んだ特別な一足です。
その一足を履くために、その日の装いを決めることもしばしば。
美しさに加え、メンテナンスをしながら長く履けることも魅力の一つです。
今回は、革の種類による表情の違いや、
アウトソールと製法による耐久性やケアについて。
秋冬に履きたい、レザーシューズの魅力をお届けします。
【アッパーのレザー使いで丈夫】
靴のアッパーにレザーを使用しているので、レザーシューズと言いますが、
そもそも革はなぜ丈夫なのでしょうか?
革は、牛や馬、山羊などの原皮を鞣(なめ)したもの。
動物の皮の構造として、細い繊維と太い繊維が複雑に
入り組んで絡まって出来ているために、革は丈夫だと言われています。
また、皮を革に生まれ変わらせるための鞣しの工程は、
そのままでは腐敗したり水分が抜け硬くなってしまうことを防ぎ
革製品としての柔らかさと更なる強度を持たせるためのものです。
更に革には、「柔軟性」と「剛性」という要素が混在します。
長く使うほどに柔らかくなり、馴染んでくる性質。
それとは別に、元の形に戻ろうとする剛性も兼ね備えているため、
適切な使用と保管により型くずれしにくい素材でもあります。
歩行時の足の動きや伸びを受け止める素材として、柔軟性のある
レザーは靴の素材として適していて、自分の足に馴染みながらも
靴としての美しい姿形は保つ。
そんなところがレザーシューズの魅力ですね。
【アウトソールのリペアや交換で長持ち】
レザーシューズの製造に、「グッドイヤーウェルテッド」というものがあります。
19世紀初頭、それまで手縫いされていたレザーシューズが
機械化されるきっかけとなった製法です。
この製法の特徴は、アッパーとアウトソールを直接縫い付けないので
アウトソールが劣化した時に取り替えが可能なこと。
つまり、メンテナンスとリペアを繰り返しながら
長く使い続けられる製法なのです。
リブとよばれるパーツを通じて、アッパー、ライニング、ウェルトが
しっかり縫いつけられているため非常に耐久性に優れています。
また、地面から靴内部に達する縫い目がないために、
耐水性にも優れた特徴があるのです。
更に、グッドイヤーウェルテッドは中底と本底の間に
コルクを入れていて、長く使っていく事でコルクが
足の形に馴染み、履き込むほどにフィット感がよくなっていきます。
一般的にグッドイヤーウェルテッド製法の場合、
厚い革を使用するためにごつい印象になってしまうことが
あるようですが、chausser(ショセ)のサイドゴアブーツは
スラッとしたシャープなフォルムで、「美しい」の一言に尽きます。
このように、レザーシューズの耐久性を考えた時に、
レザーそのものの丈夫さや靴にした時の
素材としての使いやすさ、という点と、
レザーシューズの製法によりメンテナンスをしながら
長く使い続けられる、という点が挙げられるのですね。
革の種類は様々です。牛や馬、といった動物の違いもあれば、
同じ牛の中でも月齢によって名称や特徴が違っていたり、
鞣しの種類によっても識別されていたり。
今回は、ZUTTOでご紹介しているレザーシューズの
中から特徴的なレザーをご紹介します。
chausser(ショセ)のTRAVELシリーズは
その名の通り、旅行にも連れて行きたい機能を兼ね備えていて、
レザーシューズにもかかわらず雨に強いのです。
牛革の染色時にフッ素樹脂を繊維にからませることで
強度と防水性を増しながら、
表面にも防水加工を施したソフトな革を使用。
水を弾く一方で、空気は通し通気性を保つという、
雨の日の足元にうってつけの性質を実現しています。
△メーカー実験画像
靴にした時、縫い目から水が染み込んでくる場合はありますが、
レザーだけの実験では48時間水に浸けても染み込んでこなかったという驚きの結果。
・バッファローレザー
DIEGO BELLINIのローファー、ブーツにはバッファローレザーを採用しています。
革でいうバッファローとは、水牛のこと。
しなやかで強靭な革素材で、牛革より肉厚で丈夫と言われています。
比較的雨に強く、傷つきにくいのも特徴です。
・カーフレザー
CATWORTHのバレエシューズは、カーフレザーを採用しています。
カーフレザーとは、牛革の中でも生後半年以内の仔牛の革を指します。
きめ細かいので部位による差も少なく、
柔らかく馴染みやすいためレザーシューズに適していますね。
自然な光沢が魅力ですが、傷が入りやすいというデメリットもあります。
シューズを長く愛用するためには、アッパーだけでなくアウトソールも大事です。
アウトソール、つまり地面に接する面ですが、
やはりこの部分の劣化は他のどの箇所よりも早く、
かつ過酷な環境下で使われます。
そこで、各ブランドのアウトソールの素材や特徴を見ていきましょう。
クラシカルなレザーシューズは、アウトソールにもレザーを
採用しているものが多い印象です。
ドレッシーな雰囲気が出ますし、革好きの方はソールもレザー、
というこだわりをお持ちも方も多いと思います。
レザーソールの良いところは、
・吸湿性が高く、蒸れにくい(この場合、インソールがレザーであることもポイントです。)
・使い捨て構造でないことが多い(ソールの張り替えにより長く愛用出来る。)
あと、少々マニアックですがレザーソール特有の感覚・履き心地や
歩いた時の音が好き、という意見もあるのだとか。
反して、レザーソールの欠点を挙げるとすれば、「滑りやすい」こと。
表面に滑り止めとなる機能がないので、特に濡れている地面や
タイルの上では滑りやすいです。
また、レザーが水を吸ってしまい、シミになるので雨の日には履けません。
(雨の日でもOKのように加工しているものは別です。)
chausser(ショセ)は、TRAVELシリーズに
ヴィブラム社製のアウトソールを採用しています。
ヴィブラム社とは、もともと登山靴用のアウトソールの開発から始まり、
登山における厳しい環境の中で軽さ、耐久性、機能性、
そして安全性の高いラバーソールを作っています。
滑りにくく、かつ磨耗に強いアウトソールはいまや登山靴にとどまらず
様々なシューズブランドのアウトソールに採用されているのです。
TRAVEL SHOESのアウトソールは、
ヴィブラム社にゴムの配合から別注した特別なもの。
「ICETREK」というソールで、氷点下でも柔軟性を保ち、
凍結した地表でも優れたグリップ力を発揮します。
限られた服装と小物しか持って行かれず、
かつどんな天候になってもアクティブに外を歩きたいのが旅先。
見た目にはお洒落なストレートチップのレザーシューズ、
でも実は全天候型の機能シューズなのです。
chausser(ショセ)からのメッセージ。
"あなたの旅が素晴らしいものになりますように。
パスポートとチケットをお忘れなく。良い旅を。"
旅を楽しんで欲しい、という想いが込められている
このシリーズ、アウトソールには世界地図が描かれています。
また、インソールに書かれたメッセージも、
旅を更に楽しむ気持ちにさせてくれます。
そんなレザーソールとラバーソールの良いとこどりをしているのが
ハーフラバーと呼ばれるソールです。
つまり、土踏まずからつま先の広い面にラバーを貼り、滑りにくくしたもの。
chausser(ショセ)のサイドゴアブーツは土踏まずからつま先にかけての
広い面にヴィブラム社製のラバーソールを貼っています。
ブーツは冬に履く靴なので、凍りやすい道路や雪の日の足元対策には欠かせませんね。
ハーフラバーは、ドレッシーな表情のレザーシューズだけれど
履く環境下によって危険だったり、劣化が激しくなり得る
タイプのシューズに採用されているように感じます。
ラバーの張り替えだけであれば気軽にかつ安価に出来ますし、
そういった利便性も兼ね備えているのが、ハーフラバーソールです。
レザーソール、ラバーソール、ハーフラバー。
レザーシューズのアウトソールとしてどれが適しているか、は
その靴をどう使うか、ということに尽きると思います。
もちろん、好みの問題は大きなことですが、
例えば、フォーマルな場で履くドレスシューズはきちんとした印象のレザーソール。
雨や雪が多い季節に履くシューズは、グリップや滑りにくさを重視するラバーソール。
季節問わず履けるデザインや素材のものはハーフラバー。
そのような使い分けがおすすめです。
レザーの性質として、履くうちに自分の足に馴染んでくるレザーシューズ。
美しい経年変化を楽しみながら長く愛用するためにも、
履く時の注意点やケアをおさらいしましょう。
【履く時や保管の注意点】
・1足1足の寿命のためには連続使用不可
靴に限らず、革製品は使ったら休ませる時間も必要です。
1足を連続して履くのではなく、数足をローテーションしましょう。
・雨の日には履かない
特別な加工がされていないレザーシューズは
雨の日には履かないようにしましょう。
雨に濡れるとシミになったり、硬くなり履き心地にも影響が出てきます。
・保管時はシューツリー活用
特に柔らかい革のシューズは、保管時の型崩れに注意が必要です。
また、履いた時の反りにより出来てしまう「履きジワ」を定着させない役割もあります。
サイズの合ったシューツリーを活用して、綺麗な形で保管してください。
【レザーシューズのお手入れ】
・履いたらブラッシング、を基本に
革にとって乾燥は大敵で、特にこれからの季節、注意が必要です。
革には元々油分が付いていますが、ホコリが付くと油分が奪われ、乾燥を招きます。
そのため、帰宅後は軽くブラッシングすることを日課にし、
早めの対処を行ってくださいね。
ブラシは、アッパー用に大きめのもの、そして細かい部分用に小さいものを
使い分けると効果的です。アッパーとソールとの縫い目は入念に。
・定期的な汚れ取りと保湿ケアを
革は、私たちの肌とは違い内側から油分が出てこないので、
外からの保湿ケアが必要です。
月に一度は、革靴をケアする時間を設けてくださいね。
1.紐靴の場合は紐を外します。
2.シューツリーを入れて履きジワが伸びた状態にします。(クリームを馴染ませやすくするため。)
3.ブラシで表面のホコリを落としてください。
4.革用のクリーナーで、油性の汚れや古い革クリームを落とします。
5.革用の保湿クリームを布またはブラシに取り、少量を良く伸ばしてください。
6.普段、履いている時にシワになる部分は革が切れやすいので入念に行います。
7.クリームが馴染んだら、目の細かい布やストッキングで乾拭きしてください。
・レザーソールのお手入れ
アッパーの革だけでなく、レザーソールの場合はそのケアも必要です。
地面に接する箇所なので、アッパーより消耗が激しいのは当たり前ですよね。
ソールを見た時に白っぽく毛羽立っていたら乾燥している証拠。
その状態で履くと柔軟性がなく歩行時の反りが悪くなり、
ソールの減りも早くなってしまうのだとか。
TAPIR(タピール)のレザーソールオイルは、靴の底革用専用のオイルです。
革に浸透して革の耐久性を高めます。
靴底が新しい状態から、定期的なお手入れがおすすめです。
柔らかい布またはブラシ、刷毛などにオイルを少量取って、底革に薄く均等に塗ります。
余分なオイルは拭き取って、そのまま数時間馴染ませて下さいね。
・濡れたらすぐに拭く
突然の雨に濡れてしまった場合、大切なのは放置せずに拭くことです。
放置すると型崩れ・ひび割れ・硬化を招きます。
軽く濡れただけの場合は、
1.表面の水滴をタオルで拭き取る
2.風通しの良い場所で陰干しする
3.革用のクリームで栄養分を補給する(保湿)
陰干しと言っても、雨の中帰宅すると室内で干すことになります。
アウトソールを地面につけないようにし、何かに立てかけるように乾かしてください。
水分が蒸発する時に革の油分も奪ってしまうので、乾いたあとの保湿ケアを
忘れずに行ってくださいね。
注意!
ドライヤーで乾かすことは避けてください。
革がひび割れる原因となります。
・雨ジミが出来てしまったら
濡れたあとにケアをせずにいると、
ポツポツと雨の跡がシミになることがあります。
そうなってしまったら、
1.柔らかい布を水に濡らし、雨ジミも含む靴全体を濡らします。
ポイントは、全体を均一に濡らすことです。
2.全体が均一に乾くように陰干ししてください。
3.革用のクリームで栄養分を補給する(保湿)
濡れてしまったのに、また更に濡らしてしまうの?!と
驚きますが、出来てしまったシミを馴染ませる効果があります。
必ず、完全に乾かしたことを確認してくださいね。
生乾きの状態で仕舞うと、臭いやカビの原因となります。
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レザーシューズは、革という素材そのものが丈夫で
かつ経年変化を楽しめるものであることがポイントですが、
私たちの日々の心がけ一つで3年後、5年後、10年後が変わってきます。
どんなに着飾っていても、素敵な小物を持っていても、
足元が決まっていなければ印象は台無しです。
たかが靴、されど靴。
明日も、美しい足元で出かけましょう。