革素材のアイテムは様々あり、そして一様に「革」と言ってもその種類は様々です。牛革、馬革などの種類や月齢の違いもあれば、加工によってもその性質や特徴、呼び方は変わってきます。では、スエード・ヌバックとはどのような革でしょう。
毛羽立ち加工が施してある、布のベロアのような手触りの革素材です。バッグやシューズに用いられることが多く、洋服だとジャケットも思いつきますね。
今回は、そんなスエード・ヌバックの特徴や魅力、取り扱いの注意、お手入れについてご紹介します。
私たちが「革」と聞いて最初に連想するのは恐らく、ツルツルとして革特有のシボがある、いわゆるスムースレザーと呼ばれるものだと思います。スムースレザーは、皮の表面(銀面)を鞣しているもので、種類や加工の程度はあれど、「滑らかな」革です。
それに対して、
スエード:床面(本来内側である面)を表にしてサンドペーパーなどで起毛させた革。
ヌバック:子牛、山羊、羊などの表面の皮(銀面)をなめし、サンドペーパーなどでこすって毛羽立てて、柔らかい手触りに仕上げた革
スエードもヌバックも見た目や触り心地は似ていますが、皮の表面を使用するか裏面を使用するかの違いがあります。
2つの革の違い
スエード:毛足が長く、起毛感が強い、革自体が薄め
ヌバック:毛足が短く、繊細な手触りで光沢が強い、革は厚め
スエードのほうが毛足が長いのは、裏側の繊維が粗めの面を使うためなのだとか。ちなみに「スエード」という名称は、この技法が開発されたのがスウェーデンであることからついたのだそう。
シューズ:DIVINA/チャッカーブーツ
コート:Yarmo/ラボコート
見た目も手触りも通常の革とは異なる起毛革、スエードとヌバックですが、
・独特の光沢感やあたたかい雰囲気
・レザーの丈夫さを持ちながら高いファッション性を実現
・お手入れが簡単(ステップが少ない)
といったいくつかのメリットがあります。
起毛され、「暖かそう」な雰囲気を持つので、日本では秋冬の素材として季節で使い分けられているように感じますが、海外では意外にもそうではなく、ブーツなどの無骨なデザインの素材としてよく用いられ、「丈夫な素材」としての認識が高いようです。
お手入れが簡単というのは、通常革製品に必要とされるクリームでの保湿がスエードの場合は不要であるということです。革用のクリームやワックスを塗ってしまうと起毛部分が寝てしまい風合いがなくなってしまうので、注意してくださいね。
バッグ:vasco/【別注】SUEDE×LEATHER CITY MAILバッグ SMALL
トップス:FilMelange/BAILEE オーガニックラフィー プルオーバー
スカート:ONEIL OF DUBLIN/EASY KILT (83cm) BLACK STEWART
シューズ:NPS/デザートブーツ BROWN
まずは、ファッションに取り入れやすいバッグから。
vasco(ヴァスコ)のこのバッグは米国産の牛革を、ヴィンテージの様な表情が出るように加工したもので、長年愛用してきたような独特の雰囲気を醸し出しています。形は1960~70年代にアメリカ都市部のポストマンたちが使用していたバッグをベースに作られているので、いわゆるがま口式なのも面白いところ。金属パーツは真鍮を使い、より重厚感のある印象になった、他ではなかなか見かけないvasco(ヴァスコ)らしさが溢れるバッグです。
手に持つバッグはスエードの触り心地の良さを実感出来るので、革好きの方なら1つは持っておきたいアイテムです。
WALSH/Tornado Halley Stevensons Iron
スニーカーに部分的にスエードを用いることは多く、柔らかい質感と耐久性が、アクティブに動きまわるためのスニーカーの素材として適していると言えます。
WALSH(ウォルシュ)のこちらのスニーカーはスエードとワックスコットンのコンビネーション。ワックスコットンとは、コットンにワックスを染み込ませることで撥水性を持たせた生地で、履くほどにワックスが抜けていき、色や質感の味わいが増していくという経年変化も楽しめます。天然素材のコットンとスエードの相性も良く、アッパーにナイロンを使うことが多いスニーカーの中で、柔らかくナチュラルな雰囲気の一足に仕上がっています。
dansko/MARIA Black Milled Nubuck
丈夫なヌバックは靴の素材としてもよく利用されます。
dansko(ダンスコ)のMARIAブーツは、フルグレインレザーの表側を細かく起毛させたミルドヌバックをアッパーに使用しています。毛足が短くシンプルながら、上質さと温もりを感じさせてくれますね。
dansko(ダンスコ)のシューズは、機能的にも優れ、クッション性が高く、 レザーでラップされたフットベッドとアーチサポートは快適な履き心地。 足を入れると、甲を含めた足全体をすっぽり包み、内部は足の中央からつま先に向かって広がりがあるので、指先を自由に動かせるゆったりとしたスペースがあります。
スエード・ヌバックのトラブルとしては、使用していく内に白っぽくなっていく「色落ち」と、起毛が寝てしまうことによる風合いの低下が気になります。風合い豊かなスエード・ヌバックのアイテムだからこそ定期的なお手入れによって長く愛用したいですよね。
・使い始める前に
スエード・ヌバックの靴やバッグは特に、最初に使う前に防水スプレーで保護することをおすすめします。防水スプレーは水分を弾くだけでなく、汚れを弾き定着させない役割も果たすので、汚れが入りやすいスエードやヌバックには防水スプレーは効果的です。ですが、その効果も使ううちに取れてきてしまうので、定期的に防水スプレーをかけてお使いくださいね。
・履いたらブラッシング
靴の場合は特に、目には見えなくても着用するとほこりが付きます。スエードやヌバックは起毛された凸凹にほこりや砂が入り込み、汚れが付いたり色のくすみを招きますので帰ったら柔らかい毛のブラシで優しくほこりを落としてください。
※靴クリームの付いたブラシは使わず、何も付けない「ほこり落とし用」の靴ブラシをご用意するのがおすすめです。
・毛並みを整えるのもブラッシング
また、ホコリを取り除く以外にも、スエードにはブラッシングが大事です。それは、毛並みを整えたり、寝てしまった毛を立たせるため。スエードは、起毛された毛が整って艶がある状態が美しく、それを保つためにはブラッシングが必要ですね。通常の毛ブラシに加え、スエード専用の金属ブラシを使って起毛を増やすお手入れの方法もあります。
・汚れには生ゴムブラシを活用
銀面を使用したスムースレザーに比べ、スエードやヌバックは汚れが付きやすく目立ちやすいように感じます。部分的に付いてしまった汚れは、専用の生ゴムまたは生ゴムブラシで、消しゴムで落とすように丁寧にこすってください。
・色落ちにはスエード用の補色スプレーを
濃い色であれば特に目立つのが、白っぽくなっていく色落ちです。スエードやヌバックには専用の補色スプレーを使って色を足していくことが出来ます。長く使う上で色を蘇らせることが出来るというのは魅力ですね。