私たちが毎日身につけている服、
寝具やタオル、はたまたバッグや傘などなど
日常的に布製品に触れる機会がありますが、
布製品は織物と編物に大別することが出来ます。
織物や編物は、素材のほかにも製法によって、
その肌触りや着心地、そして耐久性が変わってくるもの。
今回はその製法にフォーカスを当て、それぞれの違いと特性をご紹介します。
織物と編物の違いは、その作り方にあります。
織物は基本的に縦糸と横糸を交差させて織り上げていくのに比べ、
編物はループ状にした糸(編み目)にさらに糸を引っ掛けて編み上げていきます。
分かりやすい例でいえば、一般的なシャツやブラウスは織物、温かいセーターは編物。
二着の着心地から分かるように、織物はより糸の目が
ぎゅっと詰まっているためハリがあって丈夫、
編物はより伸縮性が高く柔らかく肌にフィットし、
保温性がある作りになっています。
現代では織物は織機を、編物は編み機を使った機械生産が主ですが、
メーカーによっては昔ながらの機械を手直ししながら使っていたり、
パーツによっては手で編んだりと、それぞれのこだわりがあります。
機械で高速で織って(編んで)いくと、早くたくさんの量を生産することが出来ますが、
あえて低速の機械を使ったり、職人の手を加えることで糸の負担を和らげ、
柔らかな生地や風合いを実現している製品もあります。
織機の例:木製部品を使用したVlas Blommeの織機
それではより詳しくそれぞれの製法を見ていきましょう。
代表的な織物の織り方は「平織り」と呼ばれるもの。
平織りは縦糸と横糸が交互に交差するもっとも単純な製法で、
表裏の生地が同じ織り方になります。
摩擦に強く丈夫であることが平織りの特徴。
ぎゅっと目が詰まっている分、厚手のものには向きませんが
逆に薄地で軽さのある布地を作るのに最適です。
Vlas Blomme(ヴラスブラム)のリネン チュニックシャツはシンプルな平織りの一着。
胴からひざにかけて、ふんわりとリネンの生地が揺れる作りで、
涼しげな素材のリネンを引き立てる透け感のある織り方は平織りならでは。
いつものボトムスと合わせるだけで、肩の力を抜いた
リラックスムードのあるコーディネートが仕上がります。
代々受け継がれてきた織機を使い、低速でゆっくりと織り上げられています。
丈夫なイメージのある平織りとはいえ、糸に負担をかけないよう
ゆっくりと織ることで柔らかくふんわりとした仕上がり。
コットン100%の吸水性の高さもあり、
タオルケット代わりとしても使うことが出来るので
寝室やリビング、外へのお出かけにも重宝します。
続いてご紹介するのは「ツイル」とも呼ばれる「綾織り」。
平織りは縦糸横糸が均等に交差している生地でしたが、
綾織りの場合は、縦糸が複数の横糸をまたいで
交差するよう織り上げていく製法。
平織りは縦糸と横糸が交差する部分が多いことで
生地が硬くなりやすいという性質がありましたが、
より生地を柔らかくするために考えられたのがこの綾織りで、
縦糸と横糸が交差するポイントが徐々にずれていくことから
表面には斜めに入った線が見えるようになるのが特徴です。
生地に柔軟性が生まれることで
しわが入りにくくするという利点が生まれました。
デニムも綾織りを用いた生地の一つです。
ZUTTOオリジナルのコットンウールデニム ワイドパンツは、
コットンにウールを少量加えて、やや起毛した柔らかな表情のデニムパンツ。
ロープ染色と呼ばれる染色方法により、インディゴの内側の糸を白く残すことで
徐々に白みを帯びた糸が見えるようになります。
綾織りの斜めの模様もよく表れているのが分かります。
布地の柔らかさもあり、幅を持たせることで、
ロングスカートのような着こなしを楽しめる一枚に仕上がっています。
ジャガード装置を備えたジャガード織機で
織り上げられた織物はジャガード織りと呼ばれています。
「ジャガード」という名前はジャガード織機を発明した
フランス人発明家に由来しています。
ジャガード織機が生まれるまで、大きく複雑な紋様を入れた織物は
複数人で縦糸を持ち上げ、もう一方から横糸を通していくという大変な作業でしたが、
ジャガード織機が生まれたことで自動的に縦糸が開口し、
複雑な紋様をひとりで、そして同じ柄を何度も織ることが可能となりました。
大柄で複雑な模様や写実的で細やかな表現が可能になったことは
織物の世界の中で画期的な発明だったのです。
HADACHU ORIMONO(羽田忠織物)のネクタイも、
ジャガード織りを採用したもの。
コンピューターで織りを制御することも多い現代ですが、
HADACHU ORIMONO(羽田忠織物)ではジャガード織りが生まれた頃のように
あえて人の手で糸を通してゆっくりと織り上げていくことで
糸の間に空気を含ませ、柔らかい曲線を描くことを可能にしています。
素材にはシルクを使用し、光沢のある生地に。
ストライプやチェック柄、ドット等、様々な模様が楽しめるネクタイです。
「しじら織」の一種であるシアサッカーは
縦糸の張りをゆるく・きつくと交互に行うことで
表面に波のような模様を冠した製法。
布地に凹凸が表れ、さらりとした着心地のため
暑い時期の布地として採用されることが多いものです。
リトアニア産のリネン100%を使用した、
fog linenwork(フォグリネンワーク)のスピカ リネンナイトシャツ。
吸水性・速乾性に優れたリネンに加えてシアサッカーにすることで、
より涼やかな生地に仕上がっています。
ハーフサイズとロングサイズの2サイズがあり、どちらもパジャマ代わりとして、
ルームウエアとして使いやすいアイテムです。
ニットにもっとも多く用いられる編み方、平編み。
天竺(てんじく)とも呼ばれる編み方で、生地の表側には表目、
裏側には裏目と編み地が異なるのが特徴です。
平編みのニットは薄地に仕上がり、上下の端がまくれ上がる性質があるため、
襟や裾にデザインになることもあるのだとか。
横方向に伸縮性が大きく、インナーやソックス、
Tシャツやセーターと、幅広いニットに使用されています。
Armor lux(アルモー リュックス)のボーダーカットソー BEG MIELは
厳選した綿糸を丁寧に平編みしたもの。
下着メーカーとして始まったブランドという背景もあり、
素材や着心地を最重視して作られたカットソーは
伸縮性のあるゆったりとしたシルエットで、トップスとしてだけでなく
インナーとしても使えるほど薄手に作られています。
枡状の布地が特徴のワッフル製法。
立体的な布地になることで、肌に触れる場所が少ないことから
軽い着心地で、汗をかいても吸収・放湿度の高い生地になっています。
ニットの生産がさかんな和歌山県の老舗ファブリック工場で
作るZUTTOオリジナルのワッフル ハーフスリーブカットソーは、
超長綿のスーピマリサイクルワッフルを使用しています。
柔らかいコットンの糸をワッフル状に編み上げることで、
肌に優しく、ゆったりとした着心地で、通気性も抜群。
お洗濯もしやすいので、汗をかく季節に一枚持っておくと重宝するカットソーです。
縦方向に畝(うね)のように連なった編み地が特徴のリブ編み。
表目と裏目が交互に並ぶことで、横方向に向かって伸縮性が良くなり、
端がまくれにくいという特性があります。
そのため、伸縮性や体へのフィット感が求められるインナー、
セーターの襟元や袖口、裾の部分に使われることの多い製法です。
ナツメ・キキョウ・生姜といった昔から漢方として
知られてきた植物で染め上げた、天衣無縫(天衣無縫)の
漢方染め リブ8分袖シャツも、リブ編みの柔軟性を活かして作られたインナー。
そのままの状態ですと胴の部分がすぼまった形ですが、
着用すると体に優しくフィット。
お腹や腰をすっぽりと覆い、脇の下や身幅も十分に伸縮するので
身動きが取りやすくなっています。
素材にはオーガニックコットンを使用し、お洗濯するたびに柔らかくなっていくので、
年中使えるインナーとしておすすめです。
こちらも植物の色を使って染め上げた
MAITO(マイト)の草木染 WT リブスローケット。
大判のスローケットながら、リブ編みにすることで巻きやすくなり、
ぐるぐると首元で巻いたり、肩から羽織ったりと着こなしの幅が広がります。
ベーシックなデザインながら、スローケットの中心の
縦方向と端に入ったリブ編みがアクセントになり、
普段使いにも、フォーマルシーンにも使うことが出来ます。
◆◆◆
今回は生地の製法の中でも、織物と編物の基本的な製法についてご紹介しました。
織り方・編み方ひとつでその姿が変わっていくので、
もとになっている製法を知ることで、
自分に合ったものに出会い、そして服や生地を選ぶ
楽しみが広がりましたら幸いです。