装いの定番、白シャツ。
1枚さらりと着るだけで「品」を醸し出し、
まるで、船の白い帆を思わせるような後ろ姿は、時に見惚れるほど。
ところがそんな定番こそが難しいというのもまた事実で、
目立つ装飾のない白いシャツだからこそ、サイズやアイテムごとのディテールで
大きな差が生まれるのではないでしょうか。
主張せずともきりりと端正で、凛々しくも頑張りすぎない。
今回は、そんな自分にぴったりの白シャツを選び、
上手に長く愛用するためのコツを深堀りしてみます。
デザインは好みなのに、なぜか着た時しっくりこない。
そんな経験はありませんか。
シャツを着た時、見た目の印象を大きく左右するのは、
他でもない「サイズが合っているかどうか」です。
どんなに良い生地を使い、パターン(型紙)に趣向を凝らしたデザインでも、
着る人のサイズにフィットしていなければ、その良さを引き出すことはできません。
その逆で、自分の体型に合ったシャツを選ぶポイントさえ押さえておけば、
自分の「定番」を上手に増やしていくことが出来ますよ。
見るべき項目が多いトップスのサイズですが、
特にチェックすべきは、袖丈(そでたけ)・肩幅(かたはば)・着丈(きたけ)の3点。
シャツに限らず、袖付きのトップスには共通のポイントなので、覚えておくと便利です。
シャツのシルエットを大きく左右するのが、肩幅と袖丈。
そして、この2点はセットでチェックするのがおすすめ。
袖の長さは短すぎても長すぎても美しいシルエットにならないもの。
また、袖丈は合っていても、肩の位置が大きくずれていると
やはり綺麗なシルエットにはならないのです。
試着出来る時は、実際に着てみて肩の位置が合っているか触って確認し、
袖丈が長すぎ、あるは短すぎないかチェックします。
試着出来ない場合は、手持ちのお気に入りのシャツを計測し、
着丈・肩幅のそれぞれの長さを比較してみましょう。
袖丈がぴったり合っている状態。
腕をすとんと伸ばしても丈が余らず、
曲げ伸ばししても違和感がないベストな状態です。
ただし既製品では、肩と袖の両方がぴったり合うというのはなかなか難しいもの。
肩を合わせると、袖が長い。袖を合わせようとすると肩が狭いなど、
どこに合わせたら良いのか迷うこともありますよね。
シャツのサイズにもよりますが、そんな時は肩幅よりも袖丈重視で選んでOK。
写真は、袖丈をジャストサイズにするために、
肩幅は体よりも少々短めのものを選んでいますが、さほど違和感がありません。
試着した時、鎖骨のあたり(枠で囲った部分)に不自然なシワがよったり、
肩が引っ張られる感じがなければ大丈夫です。
肩幅については、体よりも±2cmくらいまでならシルエットには
さほど大きく影響しないので、着心地や袖丈を重視して選んでみましょう。
シャツの場合、裾をボトムスにインして着ることが多いので
着丈はそこまで細かく気にしなくても大丈夫ですが、
着丈があまりに短いと動いた時に裾がボトムスから出てしまったり、
長いと丈が余って身長に合わず、だらしない印象になってしまうこともあるので
袖丈・肩幅の次にチェックしたいポイントでもあります。
一般的な着丈のサイズ感は、こちらの計算式を目安に考えることが出来ます。
・身長×0.42-10cm=着丈の最小値
・身長×0.42-5cm=着丈の最大値
たとえば、身長160cmであれば57〜62cmがちょうど良い着丈の目安になり、
タイトな着心地が良ければ55cm前後、長めに着たい場合は60cm程度というふうに
おおよそのサイズ感を掴むことが出来るので、
オンラインストアのように試着出来ない時はぜひ参考にしてみましょう。
ただ、これはあくまで目安。服は平面ですが、実際に着ると立体になりますので、
単純に身長だけではなく、体の厚みやプロポーションによっても変わってきます。
やはり、お気に入りのシャツのサイズを測ってみて
それよりも長い・短いという比較で判断するのがおすすめです。
サイズ選びの際、ぜひ注目してみたいのが日本企画か、海外企画かということ。
ブランドによって、またシャツのモデル一つずつによっても
型紙(パターン)は異なるので一概には言えませんが、
いずれのブランドも人の体型に合わせたサイズで製品を企画しているので
国によって肩幅や袖丈のサイズ感が異なるという前提を理解する必要があります。
同じサイズ表記のシャツでも、欧米企画のものは
肩幅が狭く、袖丈や着丈が長めという傾向があるようです。
全体的に細身で縦長のシルエットなのですね。
ジャストサイズの1枚を選び抜くという考え方も大切ですが、
着丈・袖丈は長いけれど、とても素敵なインポート品のシャツを着こなしたい!ということだって
もちろんありますし、そうした服との出会いも大切にしたいもの。
肩幅・身幅はスリムだけれど袖が長いなど、
ジャストサイズではないけれどぜひこのシャツを愛用したいという時は、
着方を工夫することで、体にフィットさせることが出来ます。
シャツ:ロングスリーブシャツ ストライプ ラウンドカラー White
肩幅・身幅がスリムで、袖丈が長めの場合は、
襟を開けてラフに着つつ、袖をまくって見せることで全体をコンパクトな印象に。
体に合った着こなしに見えるだけでなく、
第二ボタンまで外すことで胸周りがゆったりとするので窮屈な感じはありません。
首元にスカーフをあしらえば、より上品な印象に仕上がります。
着丈が長い場合、無理にボトムスに押し込むよりも
ブラウジング(裾見せ)の方がかえって品よく見える場合も。
細めのベルトをゆったり締めウエスト周りをすっきり見せることで
シンプルなシャツに表情が生まれます。
トップスが白いシャツ1枚だと、仕事着のように見えてかっちりし過ぎるし、
かといって裾を入れないと子供っぽく見えてしまうという
白シャツならではの悩みをまとめて解消してくれます。
シャツのサイズが体にフィットしていると、
着心地もよく不自然なストレスがありません。
実際に身につけた時の着心地という点で、もう一つチェックしたいのが縫製の丁寧さです。
1枚のシャツは、前身頃、後ろ身頃、袖、カフス、襟という風に
たくさんのパーツを縫い合わせることで完成しますが、
それぞれの縫い目が全て内側にあるため、縫製が甘いと着心地に直接影響してしまうのです。
試着の際に簡単にチェック出来るのが、シャツ内側、アームホールの縫い付け部分です。
・縫い目が細かく丁寧かどうか
・余分な糸が外側に出ていないか
・生地の端が丁寧に処理されていて、肌にチクチクと触れないかどうか
カーブの縫い止めは縫製工程の中でも技術を要するポイントですし、
内側の縫製が丁寧であれば、
それはそのシャツが着る人のことを考えて作られたという証でもあります。
一言でシャツといっても、お値段になかなかの幅があり、
どこに差があるの?と不思議にも思えるのですが、
実はこういったポイントに技術的な差が生まれることも多いのです。
縫製が丁寧であれば、型崩れやほつれの防止という点でも長持ちしますので、
ぜひ、縫製の丁寧さも見極めたいものです。
ここまで、サイズ選びや着心地を重点的に見てきましたが、
シャツの印象を大きく左右するのが、「襟」と「開き」のディテールです。
襟をボタンで留め付けるボタンダウンシャツは、
ポロの選手が着るシャツの襟が競技中に邪魔にならないようにとアメリカで考案されたパターンで、
現在ではビジネスシーンからカジュアルな日常着まで、様々なシーンで活躍している定番の形。
第一ボタンを外した時、襟が浮かず首元に美しいVの字のシルエットが生まれ、
襟元のボタンが左右の襟に絶妙なラインのカーブを生み出します。
襟元までしっかりボタンを閉めて、クラシックなコーディネートを楽しんだり、
ボタンを外してラフに着崩しても、気品をそこなわないのが丸襟(ラウンドカラー)タイプ。
襟先がゆるやかなカーブを描くデザインは、
程よくフェミニンな雰囲気を出しつつ、甘すぎないちょうど良いバランスが魅力。
真っ白だと可愛すぎてしまうかも?という時は
写真のようにピンストライプが入ったものがおすすめです。
クローゼットの中には既に定番のシャツが2枚以上常備されていて、
そこにもう1枚プラスするとしたら、こんな遊びのあるデザインも良いかもしれません。
より女性らしい風合いの、「シャツブラウス」とも呼ばれるジャンル。
襟、ボタン、カフスといったシャツのパーツをベースに、
緩やかなカーブを描くフェミニンな襟、まるでジャケットのような合わせのデザインなど、
シンプルな中に、これ1枚で装いが決まるこだわりの要素が詰め込まれています。
薄めのベージュ〜グレージュに近い色味だとより柔らかい印象になります。
襟元にボタンがなく、V字に開いたスキッパーシャツ。
鎖骨が見え、デコルテが強調されるので女性らしい印象になりますし、
インナーの合わせ方次第でコーディネートに幅が生まれるのも
スキッパータイプの面白いところ。
ブラックやグレーなど、単色のインナーでシンプルにまとめるのはもちろん、
ボーダータンクトップやレースの着いたタンクトップを合わせれば
カジュアルにも上品にも見せることが出来ます。
白シャツの良さは、なんといっても真っ白で清々しい印象。
そんなシャツを愛用すればするほど気になってくるのが、黄ばみやシミの定着です。
【心がけたいお洗濯のポイント】
・洗濯前には、必ずシャツの状態を丁寧にチェックします。
縫い目のほころび、いつの間にかついたシミ、取れかかったボタンなど、
気づかずにお洗濯すると、かえって状態を悪くすることもありますので注意しましょう。
・通常のお洗濯は、衣類ごとの洗濯表示を守り、洗濯機・乾燥機・アイロンを適切に使います。
生地の素材によって、洗濯水の温度や、乾燥機・アイロンの使用に制限がありますので要注意です。
・美しい白さを保つためには、「シミ」「黄ばみ(皮脂汚れ)」のチェックとケアを小まめに。
お料理のソースやインクと、皮脂汚れは性質が異なる汚れなので、
汚れに合わせた洗濯洗剤を使い分けるようにします。
【心がけたいアイロンがけのポイント】
・スチームアイロンを使う時は、アイロンの水タンクに注ぎ入れることが出来る
リネンウォーターを。シワを取りやすくするだけでなく、
ふんわりと良い香りが立ちのぼり、心地よい仕上がりに。
・襟、カフスなどシャツの印象を形作るパーツには、スプレータイプの洗濯のりがあると便利。
洗濯のりというと、つんとした匂いが気になるというイメージもありますが、
植物由来の成分を配合したスプレーもありますので、ぜひ活用してみましょう。
真っ白なキャンバスか、あるいは船の帆のように
凛とした佇まいが魅力の白シャツ。
サイズの選び方やお手入れ方法の注意点はたくさんありますが、
それらを吟味し、お気に入りを1枚、また1枚を増やしていく楽しみがあります。
自分に「似合う」を上手に選び抜く楽しさを覚えたなら、
自然と服に好かれるような、上手な着こなしが出来るかもしれません。
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