実りの秋の楽しみに新米がありますね。ほくほくと炊き上がったご飯、茸と混ぜ合わせた炊き込みご飯。梅干しをのせたお茶漬けなどなどご飯だけでも様々な味わい方が。今回は、そんなご飯をより美味しく頂くための、日本の道具をご紹介します。
ご飯炊きには炊飯器が主流となりましたが、昔ながらの土鍋は今なお現役で活躍してくれます。炊飯器に比べると火を扱う分、目を離せないという点がありますが、土鍋で作るご飯の美味しさは、やはり格別。毎日は難しくても、休日や特別な日にチャレンジしてみませんか。
そもそもなぜ土鍋がご飯との相性が良いかというと、土鍋は熱がじっくりと回っていくことが一つあります。熱がゆっくりと伝わることで、お米のでんぷん質が分解され、美味しさが引き出されていきます。また、余分な水分を土鍋本体が吸収してくれることで、お米の水分バランスが良くなり、もっちり、ふっくらとしたご飯を味わうことが出来ます。さらに土鍋の蓋も美味しさの一因。重さのある蓋でしっかりと密閉されることで、内部の圧力が高まり、粒だったご飯が炊き上がるのです。
土鍋で炊飯することは、土鍋にとっても良い効果があります。土鍋の原料となる土には空気が多く含まれており、素地は隙間が多く出来た状態です。この状態で使い始めてしまうと、水漏れが起きたり、割れの恐れがあるため、土鍋は使用前に目止めという作業が必要になります。目止めは残りご飯や片栗粉といったでんぷん質が多く含まれるものを少量入れ、お湯を沸かすことですが、目止めを行なった後でも、炊飯に使うことで、より素地の隙間が埋まり、強く長く使える鍋へと変化していくのです。
▼目止めのやり方はこちらをご参考に
TOJIKITONYA(トウジキトンヤ)の伊賀土 丸土鍋 四人用は、鍋の周りをぐるりと囲む縁が日本の伝統模様の「丸輪」に似ていることからその名が付いた土鍋。良質な伊賀土で作られており、抜群の蓄熱、保温の効果があります。重さは約2000gと、四人前の土鍋にしては比較的軽量で、360度どこからでも持つことが出来るので、使い勝手が良いのも魅力。もちろんご飯だけでなく、鍋料理の主役としても活躍してくれます。
▼土鍋ごはんの炊き方
(使い始めはまず必ず目止めをしてください。新品の土鍋を急に強火にかけると割れの原因となりますので十分にご注意ください。)
1. 軽くお米を研いでから、30分〜1時間ほど浸水させます。
2. いったん水を切ってお米を土鍋に移し、米量の水を注ぎます。(2合のお米に対し440〜450mlが目安)。
3. 土鍋を中火〜強火にかけます。ぶくぶくと沸騰したら弱火にし、15分間じっくり熱を通します。このとき蓋を開けないようにしてください。
4. 炊き上がったら、火からおろし、布巾などを土鍋にかけて蒸らします。10分ほどが目安です。
5. ほかほか土鍋ごはんの出来上がりです。
炊飯の理想は土鍋炊きだけれど、実際やるには少々億劫…という方には、TOJIKITONYA(トウジキトンヤ)のご飯釜をおすすめします。深さのあるシンプルな蓋付きの焼きものに見えるご飯釜。実は直火でも電子レンジでも炊飯が出来る優れものです。
電子レンジで上手に、美味しくご飯が炊けるよう工夫が施されたこちらのご飯釜。釜の本体を加熱させるために内側に電子レンジマイクロ波に反応して高温になる釉薬を施してあります。そのため、直火で炊いたご飯と同じ甘みが出るように工夫されているのです。
二合炊きというサイズも使い勝手の良いポイント。電子レンジに入るのはもちろん、残りご飯も蓋をしてそのまま冷蔵庫へ保管することが出来ます。
火力にもよりますが、二合炊きの場合、直火なら8分〜10分程度、電子レンジなら12分〜15分程度で美味しいご飯が炊き上がります。時間に追われがちな現代人にとって、これほど短時間で炊飯出来るのは心強いですね。
萬古焼(ばんこやき)の産地として有名な三重県で生まれたTOJIKITONYA(トウジキトンヤ)のご飯釜。蓄積された陶磁器製造の技術と知識を活かし、現代に見合った新しい焼きものに挑戦し続けています。
一度炊き上がったご飯を一時的に保管したり、冷蔵庫に保管したご飯を温め直すなら、お試し頂きたいのが木製のわっぱ。水分を程良く吸収、放湿してくれる木製わっぱはご飯を適度な水分量の状態で保ってくれます。また蒸気で蒸すことで、一度冷めたご飯をふっくらと復元し美味しさを取り戻してくれます。
足立茂久商店(あだちしげひさしょうてん)のわっぱは、江戸時代末期から作り続けられている蒸籠(せいろ)。ツガ、竹、檜と木材を使い分け、美しく曲げた「曲げ物」です。台座、胴、蓋、そして中にスノコがセットになっています。
胴の内側に段差(赤矢印の部分)が付いており、そちらにスノコを載せることで底面とスノコに空間が生まれ、蒸気が循環し食材に熱が通ります。ご飯をはじめ、野菜の蒸し料理にも手軽に挑戦することが出来る蒸籠です。
足立茂久商店のわっぱは調理のしやすさが何よりの魅力。まず電子レンジにかけられるので、例えば残りご飯を温め直す際には直接スノコの上にご飯を置いて、蓋を閉めてレンジへ。ラップにご飯を包んだ状態よりも、粒全体に熱が通り、ふっくらとしたご飯になります。また、根菜など火が通りにくいものは、大きめのお鍋に蒸籠ごと入れて、周りに水を注いで蒸し上げて。シュウマイなど、本格的な中華料理も同じような手順で作ることが出来ます。
レンジにも入るサイズで、軽くてコンパクトなので、キッチンでの使い勝手も良いのが嬉しいポイント。食卓にそのままサーブしても良いですね。
ご飯の調理だけでなく、保管や食卓でも使える日本の道具はほかにも。こうした道具には昔ながらの知恵が随所に散りばめられています。
釘などの金具を一切使わずに作られた、東屋(あづまや)の米櫃は全て桐で作られています。桐はタンニンやセサミン、パウロニンといった成分が含まれていて高い防腐・防虫効果があり、虫やカビから守ってくれます。また繊維が多孔質であることから極めて軽く、調湿効果に秀でている利点も。滑らかで美しい木目が表れた桐の米櫃は存在感があります。
お米の出し入れは引き戸で。ぴったりと密閉することで、乾燥や湿気を防ぐこの技術からも、日本のものづくりの技術が感じられます。東屋 米櫃には一合用の枡が付いているので、贈りものとしても喜ばれる日本の道具です。
炊き上げたご飯を一時的に保管する道具として知られるのが、お櫃(ひつ)。よく旅館で見かけることもありますね。炊き上げたご飯を保管する際に重要なのが、お米の水分をバランス良く保つことです。例えば保温をオフにした炊飯器に一時的にご飯を入れたままにすると表面がパサパサとしてしまうことがありますね。逆に器に入れたままにしておくと、お米から出た水分によってベタベタとすることも。そんな微妙な水分調整が必要なご飯には、水分を程良く吸収・放湿してくれる木製のお櫃がおすすめです。
山一(やまいち)の江戸びつ15C(しゃもじ付)は、木曽さわらで作られたお櫃。さわらはもともと油分を多く含んでおり、水と酸に強い特徴があります。そのためご飯を入れておくと適度に水分調整をしながら、程良い柔らかさを保ってくれるのです。テーブルやキッチンに置いても邪魔にならない、比較的小ぶりなサイズも嬉しいポイント。職人が美しく歪曲させたさわらとタガに使われている銅は、長年日本で愛されてきた形です。
最後にご紹介するのは、ご飯を頂く際に欠かすことの出来ないお茶碗。お茶碗と一口に言っても、直径や深さといったサイズ感に意外と種類があるもの。長崎県で波佐見焼を作り続ける白山陶器(はくさんとうき)の平茶わんは、そうしたお茶碗の中でも、どなたにでも使いやすい定番です。
お茶碗で大切なポイントの一つには、片手での持ちやすさにあります。白山陶器の平茶わんは女性の方でも、無理なく持てる高さになっており、横幅を十分に持たせることでちょうど良い一杯をよそうことが出来ます。まさに、食べやすさ、使いやすさを求めた白山陶器の想いが表れるかのようなアイテム。さらに豊富な色と柄があるので、気分に合わせてお茶碗を選びたくなる、そんな楽しみを作ってくれます。
▼三重県生まれの陶磁器屋。TOJIKITONYA(トウジキトンヤ)
▼デザインを改めながら作る、日本の道具。東屋(あづまや)
▼曲げ物一筋。足立茂久商店(あだちしげひさしょうてん)
▼木曽の山の豊かな恵みを受けて。山一(やまいち)
▼食卓の定番を作り続ける。白山陶器(はくさんとうき)