冬に身につける服は例えばウールやカシミヤといった暖かさを作る素材を選ぶ方も多いと思いますが、服の構造によって暖かさを作るのもひとつの手。キルティングは保温性を求めて生まれた製法です。
キルティングとは複数の布を縫い合わせ、中綿(なかわた)を詰めることでふかふかと弾力のある生地に仕上げる製法を指しています。生地を菱形に縫ってこの形に中綿を詰めたデザインが馴染み深いかもしれません。このキルティングの製法はもともとヨーロッパの寒冷地で考案されたもの。二重の生地の間に綿を詰めるので、断熱性を高め、体温を保つという役割のために作られたのでした。
服だけでなく例えば掛け布団にも同じ構造がありますね。布団には羽毛や羊毛、化学繊維を中に敷き詰めることで、あのふかふかとした弾力と冷気を防いで保温する機能を作っています。キルティングは前述の通り菱形などの形にステッチを入れることで、よりすっきりとしたシルエットになり、中綿の偏りや身動きのしづらさをなくしています。
保温に加えてキルティングウエアのさらなる魅力はその軽さ。素材にもよりますが、現代では外側に当たる生地も中綿にもポリエステルやナイロンといった化学繊維を採用しているほか、薄手な作りでありながら保温が可能なことから、全体の重量が非常に軽いという魅力があります。ウールのコートですと冷気を防ぐためにどうしても目の詰まった厚さを出した生地が多いため、重量が増しますが、キルティングウエアは暖かさを保ちながら、重量というハードルをクリアした衣服と言えます。
もともと保温を目的に生まれたキルティングは、時代が進むにつれて色柄を駆使した装飾性に広がりを見せるようになっていきます。幾何学模様を作るアーミッシュキルトや日本の刺し子もその延長。キルティングはシンプルな構造で生まれる実用性に加えて、デザインを自在にアレンジできることから世界中に広まっていったのです。
それでは、実際のキルティングウエアを見ていきましょう。ご紹介するのは1969年にイギリスで創業したBEAVER OF BOLTON(ビーバーオブボルトン)。見るも美しい菱形模様のキルティングに、バランス良く縁取りが入ったキルティングコートです。
創業地であるイギリスには古くからハンティング(狩猟)文化が根付いており、寒空の下のハンティングの際に狩猟者が着るキルティングウエアが広まっていった経緯があります。その広がりのゆえんは、やはりキルティングウエアが持つ軽さ、暖かさ、そして丈夫さでした。
イギリス・ランカシャー州で創業したBEAVER OF BOLTON(ビーバーオブボルトン)はこうしたキルティングウエアのほかにも、ツイードやワックスジャケットなどのカントリーウエアを展開し、いずれも自社工場で行う堅実な縫製と、厳選した素材調達によってその品質に定評があります。
BEAVER OF BOLTON(ビーバーオブボルトン)のキルティングコートは中綿に100%ポリエステル素材を使用し、とても軽量な作り。腰まですっぽり隠れるサイズです。襟にはコットンのコーデュロイ生地を採用。コーデュロイもまた、保温性に優れているという特性があります。袖を通してみると、身頃の部分がさほど厚ぼったく着膨れしないのが、嬉しいポイント。ボタンを留めたら縦長のすっきりとしたシルエットに見せてくれます。
ブラック、ネイビー、べージュとベーシックな3色が揃っています。いずれも光沢のある生地で大人っぽさを作ってくれます。また、それぞれ表地と裏地の色が異なるのも、さりげないポイントに。厚手のパンツやブーツに合わせれば、しっかりとした冬の防寒コーディネートに、もしくはクラシックなキルトスカートや、レザーシューズに合わせてもきれいめなコーディネートを作ることが可能です。
同じくイギリス生まれのBARBOUR(バブアー)からは、丈が短めのキルティングジャケット。ちょうど腰が隠れる程度の丈で、BEAVER OF BOLTON(ビーバーオブボルトン)同様に、コーデュロイの襟が付いています。
BARBOUR(バブアー)の起源は悪天候の中で働く漁師等の労働者のために、油を塗った布製レインコート、オイルドジャケットを生産したことから。その後、BEAVER OF BOLTON(ビーバーオブボルトン)と同じく、イギリスのハンティング用ジャケットとして普及し、イギリス王室御用達のブランドとしても知られるイギリスの代表的なジャケットブランドです。
BARBOUR(バブアー)のキルティングジャケットは丈が短いだけでなく、ポケットの位置もひとつの特徴。外側に向かって斜め方向に付いたポケットは、羽織った際にシルエットを良く見せるだけでなく、手を入れやすいという良さも。左身頃の内側にはファスナー付きのポケットも。貴重品をさっとしまっておく利便性があります。
裾のサイドにはスリットが入っており、スナップボタンで身幅の調整が可能です。ジャケットの下にセーターなどで重ね着した場合も、窮屈に感じることなく羽織ることが出来ます。似たようなキルティングウエアに見えて、実はこうした細部のデザインが羽織った際の印象をも変えてくれます。
キルティングウエアは、ジャケットだけでなくインナーとしても幅広く活躍してくれます。NANGA(ナンガ)のダウンシリーズもそのひとつ。
NANGA(ナンガ)は1941年よりこたつ布団や敷布団の製造を行っていた横田縫製が前身となっています。1960年代より社名をナンガに変更、高級ダウンを使用したシュラフ&ダウンメーカーとして日本のみならず世界中の登山家たちから知られる存在となりました。NANGA(ナンガ)とは、ヒマラヤにある世界で9番目に高い山、標高8,125mの高峰ナンガパルパットのことです。登頂が非常に難しく、多くの遭難者を出していることで知られますが、その山の名をブランド名にした背景には、最も困難な状況に打ち勝つための挑戦を続けるという強い意思があります。
NANGA(ナンガ)の作るダウンシリーズは、ダウンや羽毛を生地の中に詰めたいわゆるダウンコート。表面と裏地はナイロンで作られており、薄手でも抜群の暖かさを誇ります。超撥水加工を施したヨーロピアンダックダウン(原産国証明付)を50g使用し、ダウンの品質測定基準を大きく超える空気を含んだ復元力とかさが高いダウンになっています。つまり、ダウンが少ない量で保温性が高く、軽量に仕上げられているのです。
そのコンパクトで軽量なデザインから、インナーにも使いやすい作り。厚手のアウターを羽織っても北風が身にしみるとき、運転中に冷えを感じたとき、ちょっとそこまでのお散歩に、手軽に羽織ることが出来て、上からアウターを重ねても着ぶくれすることなく着ることが出来ます。※女性向けサイズは完売しております。ご了承くださいませ。
キルティングウエアは羽織りだけでなく、普段使いのトップスにも使われています。こちらのHAVERSACK(ハバーサック)のキルティングトップは、独特なキルティングのデザインが目を引くトップスです。表地・裏地ともにウールで作られており、中綿にはポリエステルが採用されたキルティングトップは、寒い冬の日でもしっかり体を温めてくれる作り。
斜めにラインの入ったキルティングのデザインは、大きなヘリンボーン柄を表しており、ボリュームを抑えた切り替えのデザインになっているので、もこもこしすぎない、それでいて暖かい仕様になっています。主にウール製でありながらもウォッシャブルウールを使用しているので、自宅でお洗濯が出来るのも魅力のひとつ。セーター代わりの冬のトップスとして十分に役割を果たしてくれる便利なキルティングトップです。
2001年にスタートした日本のファッションブランドHAVERSACK(ハバーサック)。ミリタリー、マリン、ワーク、ユニフォーム、テーラードなどを軸に、工夫を凝らしたカッティングや縫製により、デザイン性と機能性を実現。創業以来、多くの職人たちと共に取り組み、共に歩んできた時間の中で、ヴィンテージになりうる服をひとつ、ひとつ丁寧に仕上げています。 糸の選定から始まり、織物や編み物の組織、仕上げ方、パターンのミリ単位での調整、縫製技術に至るまで多くの時間と、多くの人たちとずっと作り続けて来たからこそのクオリティーが長く着ることの出来る、記憶に残り続ける 「ずっと」な製品となっています。
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