季節に合う素材、というものがある反面、実はどの季節でも使えるのに、イメージだけでその使用を制限してしまっている、というものもあるのではないでしょうか。
例えば、ウールは冬のものと思いがちです。ウール=暖かいという機能性からくるイメージですが、ウールは実は吸湿性が高く、外気と体温の状況に合わせて保温効果や吸湿効果を発揮し、常に丁度良い体温を保つことが出来る素材と言われています。もちろん、ふわふわに編まれたニットは夏には向きませんが、ウールでも薄手のインナーなどは通年でお使い頂けるのです。
このように、素材と季節のイメージというのは時に「春らしさ」「冬らしさ」を演出する上で大事なものかもしれません。ファッションで季節を感じることは四季がある国ならではの楽しみですから。
ですが、そのイメージによってその使用を制限してしまってはもったいないとも思うのです。
かごバッグがその一つ。
あけびや籐、ラフィアなど主に植物素材を編み込んだバッグは「夏らしさ」を感じるアイテム。私たちはかご類に対して無意識に涼しげな印象を持つために、季節を春夏に限定しがちです。ただ、そのファッション性や耐久性、経年変化を楽しむという点において秋にも冬にも使いたいと思っても不思議ではないのです。
そこで、涼しげなイメージのあるかごバッグにアレンジを加えることで、寒い季節にも違和感なく取り入れられるように、ポイントとなることをご紹介していきます。
ウールやファーなど、ふわふわもこもこと、見た目に暖かい印象を与えるものと組み合わせてみると、かごバッグの印象もガラリと変わります。また、冬にしか使わない手袋やイヤーマフなどのアイテムを活用するのも手です。
【 ウール × 手袋 】
セーター:フィッシャーマンリブポロニットセーター/Pure Aran
スカート:コーデュラミニ裏毛 スカート
シューズ:サボ TEXAS 50 SWEDE
宮本工芸のあけびのかごに取り付けたのはlapero(ラペロ)のウール素材の手袋。(近日販売開始予定です。)
寒くなると手袋は必須のアイテムですが、バッグの中で迷子になってしまったり、ちょっと外して手で持っていたら片方を失くしてしまったり・・・。
チェーンタイプの手袋ホルダーを使えば、バッグに取り付けて持ち歩きながらもお気に入りの手袋をアクセサリーのように見せることも出来ます。
別注品のあけびのかご(並編みグニ手・ショルダーストラップ付)は、持ち手パーツとショルダーストラップにレザーを使っています。ブラックレザーがあることであけび素材をきりりと引き締め、それだけでも「夏らしい」印象が薄まりますが、そこに手袋をプラスするとより冬らしくなります。
宮本工芸は青森県弘前市であけび製品を作っています。一つ一つ職人さんにより、ずっと昔から手づくりで生み出されてきたあけびのかご。自然素材が出す魅力だけでなく、失われつつある日本の職人さんの手仕事を感じることが出来ます。あけびのかごは元々、暮らしの道具として作られてきた丈夫なかご。ファッションアイテムとして持つことも多くなってきたいま、その愛らしいフォルムや長く使うほどに生まれる艶も慈しむように持ちたいものです。
【 ファー × 耳あて 】
代わってこちらは、ふわふわとしたファーが暖かい雰囲気を出しているイヤーマフです。こちらも、あけびのかごに引っ掛けてみるとまた全体的に雰囲気が変わりますね。
ころんとした丸いフォルムのあけびのかごで、口が大きく開いています。冬はイヤーマフだけでなく手袋やマフラーなど、防寒の細々としたアイテムが多いのでポン、と入れられかつ出し入れがしやすいのが使いやすい点。
イヤーマフのファーは羊毛です。毛足が長くほわほわとして、柔らかいので耳にあたる内側部分までファーで覆われています。手袋やマフラーは冬の必須アイテムとして複数持っている方は多いかと思いますが、イヤーマフになるとかわいらしすぎる印象もあり、お持ちでない方もいらっしゃるかもしれません。ですが、耳は体の中でも体温が低い部分で、寒い日は耳が痛くなってしまうほどに冷えを感じることも。防寒のため、見た目の暖かさのためにもぜひ取り入れたいアイテムです。
ブランドのOwen Barry(オーエンバリー)は1948年、5世代に渡り、シープスキンと革の鞣しに携わってきたファミリー企業から誕生しました。革のなめし、染色、製造において代々の知恵と技術を重ね、現在では高品質のシープスキン製衣類やアクセサリー、革手袋・クッションなど幅広く展開するブランドへと成長しています。
素材だけでなく、色や柄にも温もりを感じさせるものがありますね。レッドやグリーン、ブラウンなどの色や、柄であればタータンチェックはその代表例です。
【 グリーン × スカーフ 】
天然の藁とレザーを組み合わせて作られたTOINO ABEL(トイノ アベル)のバスケット。明るい色合いなので秋冬には向かないと思いがちですが、冬のコーデは黒や茶色などが多くなって全体的に重くなりがちです。そんな時に、かごバッグを持つことによって明るい色をプラスしてくれる効果も。
ですがそのままですとやはり、夏に持つ時との違いがないので、持ち手にストールを巻きました。
選んだのは深いグリーン色をベースにしたデザイン。ベージュやワインレッド、オレンジ等の暖色系も入っているので、冬にぴったりです。
大判サイズをふんわりと巻いて垂らすことで、バスケットの明るい色みの面積を小さくしてバランスを取っています。すっきりとしたネイビーコート、ヒールと合わせれば大人の女性らしいスタイルの完成です。
TOINO ABEL(トイノ アベル)はポルトガルで100年以上前から伝統的に作られてきたハンドメイドのバスケットを製造しています。使用する全ての材料はポルトガル国内で調達し、ハンドルにはベジタブルタンニンレザー(牛革)を、ハンドル部分の固定には柳の枝を使い、全て自然の材料からできています。製造は主に女性がきれいに同じサイズにそろえたスティックの束を整え、それを乾燥させた後、顔料などで色や様々なパターンを施しながら手織機で織り上げています。
スカーフはスイスで180年以上、独自の製法と最高級の品質を守り続けてきたハンカチ・バンダナメーカーのオリジナルブランド、GLARNER TUECHLI(グラーナートゥエッチリ)のもの。スイスは山岳地方の良質な水を活かした染色業がさかんで、 17世紀から豊かな水と水力発電により捺染工場が数多く存在していました。長い歴史で培った繊細なパターン、豊富なカラーバリエーションとその発色は、他にはまねのできない美しさ。高品質のスイスコットンを使用したしっとりとした肌触りの生地に、高い技術によってプリントされたバンダナは、光沢感のあるコットンで上質な一枚です。
【 レッド × タータンチェック 】
セーター:ケーブルセーター
スカート:EASY KILT (59cm) RAVEN POINT
ブーツ:JOUBER BLACK
かごバッグにアレンジを加えずに、その他のアイテムで全体的にバランスを取る、という方法も。例えば装いにタータンチェックのスカートを加えると途端に冬顔に。キルトスカートはラップ(巻き)スカートで、左側にくるフリンジや、左右の腰にある黒い革ベルトがさり気ないポイントとなっています。あけびのかごの革ショルダーともリンクし、統一感が生まれます。
キルトスカートを1850年から160年もの間作り続けるブランドが、ONEIL OF DUBLIN(オニール・オブ・ダブリン)で、キルトスカートと言えばの名門ブランドです。一枚仕立ての生地をベルトで留めて履くキルトスカートは、正面は左右両サイドに革ベルト、後ろ部分にはゴムギャザーが入っていますので、 後ろ姿のプリーツもストンと下に落ちるシルエットで、サイズもバランス良く調節が可能です。また、フロントを留めるキルトピンがさりげなく名門らしいこだわりを感じます。
やはり憧れは赤いチェックのキルトスカート。明るいレッドですが、グレーとの組み合わせのチェックなので意外にも取り入れやすい色合いです。ニットやパーカーなどを合わせて腰で落として履いたり、シャツやタートルネックなどをインにして、ハイウエストで着たり、合わせる洋服次第で様々なコーディネートを楽しむことが出来ます。
【 柄・編み 】
ワンピース:キャメル チュニック丈セーター
シューズ:PADRE BLACK
口の広いかごバッグは大判のストールをかけると、視覚的な温かみを足すことと、中身を見せないための目隠しにもなります。寒い時には本来の用途として首や肩にかけることも出来ますし、一石二鳥です。
こちらは、同じかごバッグ、同じコーディネートでかごにかぶせるストールを変えています。赤いチェックのストールは冬をイメージさせますし、白いニットのストールはケーブル編みの模様でほっこりとした温もりを感じることが出来ます。
MUUN(ムーニュ)の肩掛けバスケット002は、かごには珍しくブラックです。シックでコーディネートを落ち着かせる色合いなので、アレンジアイテムに明るい色や柄を持ってきてくださいね。
使用している素材はエレファントグラスと呼ばれるしなやかで非常に丈夫な植物です。比較的柔軟性があり、肌にあたっても痛くないのでかご特有の弾力性が持ちにくい、と感じる方にもおすすめです。台形の形をした肩掛けバスケット002は、手持ちと肩掛けの2通りで持つことが出来ます。
アフリカ・ガーナ北部の小さな村で作られるMUUN(ムーニュ)のかごは、高い模様編みの技術による繊細な編み込みが特徴で、バッグだけでなく帽子やサンダル、アクセサリーにも活かされてきました。MUUN(ムーニュ)では、国境を越えて技術や知識、感性や文化を共有しすることで、伝統的なアフリカの手編みのかごをより日常的に使い続けられるものとしてデザインしています。
Highland Tweedsのタータンチェックのストールは、タータン発祥の地スコットランドで製造されています。1837年に創立の歴史深い織物工場で、ラムズウールを使って作られた、非常にしなやかでふっくらとした暖かみのある肌触りです。染色-混合-梳き-紡績-整経-製織-整理の工程、全てを一貫して行う英国唯一の工場は、品質管理が徹底されている上、細かな縫製では、エッジ部分にステッチを1本入れることにより、生地がほどけるのを防いでいます。
白いケーブル編みのストールはアイルランドのブランド、CARRAIG DONN(キャレイグ ドン)のもの。アイルランド諸島の永遠のシンボル、その長い歴史、独特の文化が育んだ光栄の伝統であるアランニットを継承しています。撥水性・保温性に優れたアランニットはふんわりと優しい手触りです。しっかりと厚みもあるので安心感もあり、首に巻いたり肩に掛けたり、オフィスでのひざ掛けにもなります。温かみのあるノスタルジックなスタイルを是非お楽しみください。
湿気や熱に弱いかごバッグの一番のお手入れは、仕舞いこまずに「使うこと」。その点からも、季節を問わず使うことが長持ちの秘訣かもしれません。
バッグとして使わない時は、収納やインテリアとして置いておくのも良さそうです。 手で触れ、空気を通すことでかごバッグは適切な環境に置かれ、長く愛用することが出来るのです。
【日々のお手入れ】
汚れを落とし、艶を出すには「拭く」「ブラッシングをする」がおすすめです。拭く場合は柔らかい布で、ブラッシングはたわしなどで磨き上げるようにしてください。
【保管】
かごは、天然植物を乾燥させ編み込んでいるので水気や湿気が大敵です。カビや虫の発生、さらに編み込みの緩みに繋がる可能性があります。かごバッグを保管する場合、日陰の風通しの良い場所を選び布をかぶせておく、不織布をお持ちの場合はかごをまるごと包んでおくことをおすすめします。
▼かごバッグ一覧はこちら
▼ストール一覧はこちら