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その魅力は、造形美に限らず。暮らしにおけるガラス製品との付き合い方

 

「ガラス」と耳にしたとき、思い浮かべるのはどんなイメージですか?その魅力はなんといってもその見た目の良さ。光を通してきらきらと輝く様子は唯一無二の魅力です。一方で、ぶつけたり落としてしまうと、即座に割れてしまうという繊細さも持ち合わせているのがガラスです。窓ガラスをはじめ、食器やビン、レンズといった形で暮らしに浸透しているガラスがなぜ割れてしまうのか?という点を知り、割れものであっても長く使っていくためのヒントをご紹介します。

 

一口に言えないガラス

 

ガラスの歴史は遡ること紀元前5000年。メソポタミアやエジプトで、陶磁器の原料として使われていたといいます。その後、息を吹き込んで形を作る吹きガラスの製法の普及によって、花瓶やコップという形で一般的にガラス製品が広まっていくようになりました。

 

そもそも、ガラスはなぜ透明なのかというと、ガラス自体が光を吸収せず透過させることが挙げられます。透過、つまり背景の色を透かすことが出来、光に当たるときらりと反射させることが出来ます。この透過性が「美しい」という認識に繋がり、ガラスの食器は宝物として扱われたり、装飾品の材料としても重宝されてきました。

 

吹きガラスで作られた津軽びいどろの一輪挿しは、ソーダガラス製

 

身の回りにあるガラスを細かく見ていくと実は多様な種類があります。一般的な窓ガラスや食器に使われているガラスは「ソーダガラス」と呼ばれるもの。発泡性のある炭酸ナトリウムを使うことから「ソーダ」という名が付いており、古代で初めて作られたガラスと言われています。比較的硬く、軽量、そして成形しやすいことから、幅広い分野に普及している種類です。ほかにも、透明度の高いクリスタルガラスは屈折率が高く、美しくきらめくことからガラスの中でも高級品として扱われており、無鉛ガラスは材料に鉛を使わないことから、環境に配慮したガラスとして知られています。

 

ガラスはどうして割れるのか

 

落としたり、何かにぶつかった衝撃でガラスを割ってしまった経験はありませんか。そもそもガラスが割れる理由は、ガラスの表面に入った無数の傷と言われています。

ガラスはケイ素や石灰といった原料を混ぜ溶かしたものを形にし、固めたものが製品となります。この固める過程において非常に小さな傷が無数に入りますが、この傷に外から力が加わった場合、耐えきれず割れてしまいます。プラスチックや金属などは変形する力があるため、例えば落としてしまっても割れずに変形しますが、ガラスにはこの変形の力がなく、衝撃を受けると即座に割れてしまう性質があります。この傷をいかに増やさないか、大きく広げないかという点が、ガラスと長く付き合っていくための焦点とも言えます。

 

身の回りのガラスとの付き合い方

 

では、具体的にガラス製品を見ていきます。光や色を透かしたり、映し出す性質を持つガラスは、情報を伝えるモノに活用されています。

 

 

例えば、腕時計。時間という情報を伝える腕時計は、文字盤を守る役目を果たす風防(ふうぼう)にガラスが使われています。渡辺力(わたなべりき)のALBA リキ腕時計 AKPK404 ブラウンは、ゴールドステンレスのケースにカーフレザーのベルトが付いた腕時計。シンプルでありながら大人っぽさが光る印象的な腕時計です。

 

 

ALBA リキ腕時計 AKPK404 ブラウンの風防には無機ガラスが使われています。視認性が必要となる腕時計は、文字盤の数字と針がよく見えることが最重要。ガラスの透過性がその見やすさに繋がります。現在では、ガラスのほかにプラスチックや人工サファイヤが風防の材質として使われることがありますが、無機ガラスは加工のしやすさから重宝されています。

 

 

身近にある鏡も、ガラスを使っています。鏡は、ガラスの片面に銀や銅といった金属の膜を貼り、ガラスを通った光がその膜に像を映すというしくみ。表面の部分はガラスなので、衝撃を受けると割れてしまったり、指紋が付いたりという特徴はほかのガラス製品と同じです。像を映すという意味では、鏡もまた情報を伝達する役目を果たしていると言えます。

 

 

tone(トーン)のmirror(鏡)は、円錐状の形が特徴的なハンディタイプの鏡。鏡の裏側には高岡銅器の伝統的な着色方法で、様々な色の銅が施されています。円錐状の形は置くだけで上を向いてくれるので、気軽に置いて使えるのが便利な形です。

 

 

こちらは硬質ガラスで作られたHARIO Lampwork Factory(ハリオ・ランプワーク・ファクトリー)のアクセサリー。全て職人の手により、バーナーでガラスを溶かしながら形を作っていく様子はまさに職人技。2000度の高温の炎が当たることによって小さな粒や細長いシルエットと、様々な形へと姿を変えていきます。

 

 

透明感溢れるHARIO Lampwork Factory(ハリオ・ランプワーク・ファクトリー)のアクセサリーは、背景となる色を透かし、光を浴びるときらめきます。その美しさは透過性のあるガラスだから為せること。アクセサリーはガラスの魅力を最大限に引き出し、実感出来るアイテムとも言えます。

 

ガラスとの付き合い方① 破損の原因を取り除く

 

腕時計、鏡、アクセサリー。どれも私たちが普段何気なく使うものではありますが、ガラスが材質として用いられていることには変わりありません。つまりふいに衝撃を受ければ割れてしまう懸念があるということ。そこで心がけたいのが、破損の原因となるガラスの表面の傷を増やさないことです。

 

 

TOWNTALK(タウントーク)のマイクロファイバークリーニングクロスは、ガラスにも使うことが出来ます。

ガラスの表面の傷は衝撃のほかにも、ホコリが原因となることも。定期的にホコリを取り除くことで、傷からの保護に繋がります。マイクロファイバークリーニングクロスは目が細かく小さなほこりまでしっかりとキャッチ。ホコリのほかにも手で触れる腕時計や鏡は指紋が付きやすいことから、「拭う」ことが基本になります。

 

付き合い方② 「見せない」収納で保護

 

そしてガラスの製品は、それ自体を保護することも大事。思わぬタイミングで表面に傷が入らないよう、ガラスの部分を「見せない」保護が重要です。

 

 

 

アクセサリーなら、布張りされた専用ケースに収納。天然木と再生紙を合板にしたPLYWOOD laboratory(プライウッドラボラトリー)のアクセサリートレイは、内側に布が張られており、ぴったりとフタが出来るので、ホコリからも守ることが出来ます。

tone(トーン)のmirror(鏡)は円錐型のため鏡の部分を伏せておけばまわりから傷つけられる心配がありません。mirror(鏡)は側面の銅の縁取りがあるため、鏡を伏せても直接机などに鏡が触れないという細やかな配慮が為されています。

 

ガラス製のグラスとの付き合い方

 

食卓で使うガラス製品といえば、グラスを思い浮かべる方も多いと思います。きらりと透明感のあるグラスは液体と相性が良く、見た目の美しさが際立ちます。中に入れる飲み物に合わせて形の異なるグラスを使ったりと、様々な種類のグラスを揃えている方も多いのではないでしょうか。

グラスの原料にガラスが使われるのは、見た目の美しさに加え、ワインなどはグラスの微妙な形状の違いによって美味しさを引き出してくれるという理由もあります。

 

 

iittala(イッタラ)のLempi グラスペアセットは、脚の付いた背が低めのグラスセット。フィンランドでガラス製品メーカーとして創業したiittala(イッタラ)は、環境と人体への影響を配慮し、ガラス製品の製作工程において鉛を使わない無鉛ガラスを原料としています。

 

 

飲みくちに向かって広がるカップ本体と安定感のある太めの脚は柔らかみのある形で、タンブラーのような存在感があります。飲み物を注ぐのはもちろん、ヨーグルトなどを入れても、ガラスの透明感が爽やかに演出してくれます。

 

左:江戸切子 桜文様 天開タンブラー・右:江戸切子 剣菱魚子文様 天開タンブラー

 

変わってこちらは江戸期の優れた工芸品のひとつである江戸切子。その始まりは江戸後期にガラスに切子細工を施したのがきっかけと言われています。カットガラスとも言われる切子は、日本以外にもチェコやイギリスといった国々でもそれぞれ伝統技術として継承されてきました。日本ではほかにも薩摩切子が有名ですが、江戸切子は庶民の手によって現代まで大成した文化と言われています。

 

 

切子はもともと透明のグラスに手摺りと磨きという工程を加えることで、ガラスに文様を彫っていきます。彫った部分を均一にならし磨きあげることで、擦りガラスのようだったグラスが輝く美しい切子グラスへと変化します。透明なグラスはそのシンプルな美しさが持ち味ですが、切子は光が彫った部分を透け、陰影を付けていく趣深さがあると言って良いでしょう。

 

ガラスとの付き合い方③ グラスは飲みくちを守る

 

グラスを割ってしまうという場面は、使用中、そして収納時にあり得ること。落とすことのほかにも、ほかの食器にぶつかったり、重さに耐えきれずに割れてしまう場合もあります。

 

 

グラスの中でももっとも力に弱い部分は飲みくちの部分。口当たりを良くするために、あえて薄く作られているグラスもあり、この部分に極端な負荷がかかると破損の原因となります。

 

 

そのため、グラスを収納する際には飲みくちを上にして、立てて収納することが基本です。飲みくちの部分を下に向けて伏せますと、力が飲みくちにかかり、破損につながる傷の原因となります。ガラス製のグラスの収納は、立てて揃えることが重要です。

 

ガラスとの付き合い方④ ガラスと温度変化の関係を知る

 

ガラスは表面の傷から破損に繋がることが分かりました。さらに、ガラスは急激な温度変化に対しても注意が必要です。

例えば熱湯をガラスのコップに入れると、割れてしまう場合がありますが、これは熱湯がかかった表面と内側の温度に差が生じ、高温になった部分は膨張するのに内側はしていないという差が割れの原因となります。これは急冷した際にも同じことが言えるので、ガラスが温かい状態で急に氷を入れたりすると破損の原因となります。

 

 

その温度変化に耐えうるよう考案されたのが耐熱ガラス。熱が加わった際に破損の原因となる膨張率が低いため、急激な温度変化にも耐えられるようになっています。津軽びいどろの耐久片口酒器セットは、120度までの高温に耐えられるよう作られた酒器セット。シンプルな透明のガラス製ですが、ひとつひとつが手作りで若干の個体差があるサイズ感に温もりを感じます。

 

 

肉厚で膨張率の低いガラスが用いられていることで、急激な温度変化があっても割れにくい作りとなっています。熱湯を入れるだけでなく、電子レンジにも使えるというのですから、驚きです。

 

 

熱湯を入れた状態で手に持つと、じんわりと手に熱が伝わり、「まったく持つことが出来ない」ということはありません。また、耐熱ガラスは温度変化だけでなく、ニオイ移りも少ないことから香りのある飲み物でも安心です。

 

割れものであるガラスは、どうしても扱うときに気を使うもの。それでもそのきらめく美しさはほかの材質に取って代わることはありません。割れに至る経緯を理解し前もって対策しながら、ガラスの美しさを存分に活かしつつ、暮らしの中で使っていきたいですね。

 

 

▽青森のガラス工房。津軽びいどろ

 

▽シンプルの中に光るデザイン性。渡辺力

 

▽切子を現代に伝える。硝子工房 彩鳳

 

▽フィンランドのガラスといえば。iittala(イッタラ)

 

▽きらめく日本製ガラスアクセサリー。HARIO Lampwork Factory

6月にHARIO Lampwork Factoryのガラスアクセサリー製作体験特集を公開予定です。お楽しみに。

 

▽高岡銅器の技術を生かす。tone(トーン)

投稿者: 植田 日時: 2018年05月25日 11:00 | permalink

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