学生が通学時に履く靴、というイメージがあるローファー。革靴であることからも、かっちりとかしこまったイメージをお持ちかもしれません。でもその起源を辿っていくと、ローファーとは日々気軽に容易に履ける靴として考案されたものだったことが分かります。今や世界中で愛用者の多いローファーの背景をご紹介します。
ローファーとは、低いヒールに靴紐を結ぶ必要がない楽に履ける靴、つまりスリッポンの一種として作られた靴を指します。
ローファーの原型と言われているのは、アメリカのネイティブアメリカンが使用してきたモカシン。モカシンもローファー同様に、現代でもファッションアイテムのひとつとして認識されている靴ですね。そのモカシンのデザインをもとに、大西洋を越えたノルウェーでのちのローファーとなる作業靴が製作されました。そしてそのノルウェーの靴を知ったアメリカの靴メーカーが自社シューズとして「ウィージャン・ローファー」(ウィージャンとは「ノルウェーの」という意味)を作ったことが、「ローファー」の名称に繋がったと言われています。同じ靴のスタイルがアメリカとノルウェーを往来した不思議なストーリーです。
典型的なローファーとして連想される足の甲に切れ込みが入ったデザインは、アメリカの靴メーカーがローファーの原型を改良したことで作られたのだとか。そのローファーデザインはほかの靴メーカーにも踏襲されていき、イギリスでは王族が室内で履く靴として採用されたり、作業靴として使われていくようになります。つまり当時のローファーは気軽に履けて、足にフィットする歩きやすい靴として認識されていたのです。
その後、メゾンブランドが既存のローファーに独自のデザインを加えながら、ファッションアイテムのひとつとしてローファーを打ち出していくようになります。日本でローファーが広まったのは、1960年代に流行したアイビールックにローファーが必需のアイテムとされたことがきっかけでした。今では学生の履く通学用の靴として、そしてファッションアイテムのひとつとしてその地位を確立したローファー。靴としての在り方が変化した独特の経緯を見ることができます。
さて、ローファーにはいくつか種類があります。ある靴メーカーが考案したデザインでも、今となっては世界中で履きこなす人が増えたものなど、さまざまなローファーが愛用されています。その中でも主流な3つのデザインをご紹介します。
クラシックなローファーとして、学生靴としてもよく使われるペニーローファー。ペニーとは1セント硬貨の意味で、ちょうどペニーの大きさが挟める切れ込みが入ったデザインです。アメリカの靴メーカーであるG.H. Bassがノルウェーから伝わったローファーを生産する際に、実用性だけでなくファッショナブルな要素を加えるために生まれたのがペニーローファーです。今ではペニーローファーが、「ローファーといえばこの形」と誰もが思い浮かべる代表的なデザインとして認識されるようになりました。ちなみにアメリカの学生の間では、ペニーローファーは公衆電話をかけるためのペニー硬貨を隠す場所としても活用されていたようです。
こちらはビットローファーと呼ばれるデザイン。ビットとは馬具を意味し、くつわを模した金具が甲部分に取り付けられています。この形はもともと1960年代にラグジュアリーブランドのグッチがメンズシューズのために考案し、「グッチローファー」として広く世界で人気を博したことから知られてきました。ローファーならではの履きやすさはそのままに残しながらも、馬のくつわという上流階級が楽しむ乗馬を連想させるビットローファーは、ファッションアイテムの中でもひとつのステータスとしても捉えられてきました。リラックスした装いに仕上げながらも、全体のスタイルを崩しすぎない、そんな絶妙なバランスが好まれているローファーです。
そして最後はタッセルが甲部分に装飾された、タッセルローファー。タッセルローファーはそのそもそもの起源が明確ではありませんが、ほかのローファーデザイン同様に装飾という観点からタッセルが付けられたと考えられています。世界的に広まっていったのは、レザーシューズメーカーとして名高いオールデン社が今のタッセルローファーを確立したことと考えられています。歩くたびにタッセルが揺れる様子はどこか遊び心も感じさせる一方で、アメリカでは弁護士や政治家に好まれるなど、ローファーの新しい可能性を形にした靴とも言えます。
革靴というとビジネスやフォーマルな場でも履くことの出来る靴というイメージがありますが、ローファーは英語で「怠け者」という意味を持ち、スリッポンの一種として履きやすさを追求した靴。そのため、フォーマルシューズとしてではなく、あくまでカジュアルなスタイルを品良く仕上げるアイテムとして履くのがおすすめです。
例えば、ラフなパンツスタイルにローファーを合わせるだけでも、全身をぐっと引き締める役割を果たしてくれます。ベージュやブラウン、ホワイトと同系色で合わせたこちらのコーディネート。シンプルなDIEGO BELLINI(ディエゴ・ベリーニ)のコインローファー Brownは、装飾が控えめながらも、艶やかで上質なバッファローレザーが、大人っぽさを高めてくれます。スニーカーだと少しカジュアルすぎる、という場合におすすめのローファースタイルです。
スカート:EASY KILT (73cm) BROWN WATCH・バッグ:ショルダーバッグ/D.Brown
とことんトラッドなスタイルは、ローファーの持つ魅力を引き出してくれます。タータンチェックのキルティングスカートに、タッセルローファーを合わせれば、それだけでクラシカルな足元の出来上がり。DIEGO BELLINI(ディエゴ・ベリーニ)のタッセルローファーは、ふたつの小さなタッセルの下にフリンジの付いたキルトが組み合わさったデザインで、派手になりすぎずちょうど良い華やかさを作ってくれます。
スカーフ:スカーフ/FUR/HOUNDSTOOTH CHECK・スカート:リネン スウィングスカート MILITARY GREEN
メンズライクなビットローファーですが、スカートやスカーフといった女性らしいアイテムと合わせても、違和感なくコーディネートすることが出来ます。DIEGO BELLINI(ディエゴ・ベリーニ)のビットローファー スエードは起毛のスエードらしい落ち着いた雰囲気で、ビットの金具がシックなアクセントになっています。スエードはウールのセーターなど、秋冬の素材との相性も良いので、全身の服とのバランスを取りながらコーディネートするのがおすすめです。
ローファーは気軽に履ける靴として作られてはいるものの、レザーを素材とし、タッセルやビットなど、装飾を含めたシルエットがその魅力のひとつとなっています。そのため、ローファーを長く使うにはシルエットを保つことを意識するのが重要です。
・ローファーに限らず、革靴の場合、かかとを踏むなど、過度の力を加えないように扱ってください。着脱の際には必ず靴べらを使うことをおすすめします。
・履き終わった後はシューキーパーを使って形を整えておくことで、美しい形を保った状態で履くことが出来ます。
1951年、「靴の聖地」とも呼ばれるイタリア・マルケ州モンテ・サン・ジュストにて創業したDIEGO BELLINI(ディエゴベリーニ)は、創業から60年以上、学生靴から紳士のモカシンを作り続けるファクトリーです。 古くからグッチ・パチョッティなど、イタリアが誇るメゾンブランドのファクトリーとして多くのシューズを手掛けてきた実績もあり、レディースファッションの定番としてその地位を築き上げてきました。一足一足が足を美しく見せる木型をベースにハンドメイドされ、履きやすさと心地よい履き心地が作られています。
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