1年のはじめに、何かの記念日のたびに、今度こそはとはじめてみる日記。だけれどやはりその日の出来事を綴るにはハードルが高くて、いつしか開かなくなってしまう。
「日記を書くこと」が目的になると億劫に感じるものですが、「毎日でなくてもいい。思ったことがある時、忘れたくないことが起きた日にだけ書くたった1行の日記」があれば、細く長く続けられる気がします。
今回は、そんな日記を愛用中のスタッフに、日記との付き合い方や綴っている内容、魅力についても聞いていきます。
丸川商店の日事記(ひじき)は、「1日1行・10年間分の日記」です。日々通り過ぎていく、記憶にも留まらない何気ない日常でも、10年間綴っていけばそれは他の誰のものでもなく、自分だけの10年の物語になる、という素敵なコンセプト。
古事記は日本最古の歴史書として知られていますが、その「わたし版」としてのネーミングである「日事記」にも面白みを感じますね。大げさですが、自分だけの歴史書という訳です。
日事記は1日を1ページとして、「何月・何日」の日付だけが書かれています、日付の下には10行の罫線。そこに「年」を書いて、その日の出来事や感じたことを1行から2行綴るだけ。10行は10年分、つまり2年目以降はページをめくるたび、去年の今日、2年前の今日、何をしていたかが分かる。書くたびに昔の自分に出会える場なのです。
そんな丸川商店の日事記を愛用しているスタッフがいます。2014年からつけはじめ、もうすぐ丸5年。5年間も日々の出来事を綴るなんてすごいな…と思っていたら、拍子抜けな答えが返ってきました。
「毎日なんてつけていませんよ?笑」
え、そうなんですか?どういう時につけているんですか?
見てもらったほうが早いから、とパラパラとページをめくってくれたスタッフM。もうすぐ丸5年が経つのなら、5行目までは毎日埋まっていてもいいはずですが、目立つ空欄。
「もともと私は、毎日何かを継続するのが苦手で。日記も、家計簿も、ラジオ体操も、最初は張り切るんですが、徐々に飽きてしまう性格なんです。自分で自分に呆れることもしばしばです。」
そんな人が、なぜ日記を書こうと思ったんですか?しかも、10年分の日記と考えるとハードルがぐんと高い気がします。
「きっかけは子どもを産んだことでした。日々の成長が早いから何かが出来るようになって感動しても忘れてしまうし、もったいないなと思い、書き留めることにしました。10年後に読み返したら面白いかなという気持ちもあり。ただ、見ていくと分かるのですが、最初のほうは頑張って色々書いているんですよね。1行日記の中に無理やり3行詰め込んだりして。それが徐々に文量が少なくなり、そして1日空き、2日空き(笑)。」
△中には5年間何も書かれなかったページも。「なぜ2015年の日付だけ書いたんでしょうね(笑)」とスタッフM。
確かに、やる気と停滞感の浮き沈みがよく分かりますね。
「ああ、また続けられないかな。と思ったんですが、10年分もあるなら、書いていない日があっても問題ないのでは?とも思って。この時期は日記を書く気分ではなかったんだな、忙しかったのかな、とか、この辺りはやる気が出ていたんだな、とか、当時の自分の状況までうつしているようで、それはそれで面白いと感じるようになっています。」
日記をつける=毎日つけるものと考えていた私にとって、この柔軟な発想はなかったものでした。でも確かに、10年分の日記だからこそ気負わず、書きたい時に書けばいい、と大らかな気持ちになれるのかもしれません。
では、どういう内容を綴っているのですか?
「1日1行なので、詳細なことは書いていないです。子どもの面白発言を書きとめておいたり、仕事で感じたことを記しておいたり。出産を機にはじめた日記ではありますが、子育てのことだけでなく自分を中心に起きたことを書いています。読み返してみると子育て日記というよりは、自分日記になっているので、やはり自分だけの10年物語なのだなぁと。」
書いていない日もあるとはいえ、5年間も日記を続けるのははじめてとのこと。日事記をつけはじめてから、何か変化はありますか?
「気負わずゆるく続けるというのがテーマなので、あまりその日の出来事に敏感になっている訳ではないのですが、やはり読み返すのが楽しいですね。その日の日付のページを開くと1年前の今日、2年前の今日何をしていたかが分かるので、その話題で家族で盛り上がったりしています。10年終わってみて、さらにそのあと何年か経ったあとに読み返すのもいまから楽しみです。」
日事記の10年日記を書くことへの魅力について触れたところで、今度は10年愛用するために施された工夫についても探っていきます。10年間の日記なのに、10年経たずに壊れてしまっては元も子もありませんからね。
日事記の表面を覆うのは、松阪もめんと呼ばれる三重県松阪市の伝統民芸品である布生地です。松阪もめんは縞柄が特徴的な生地なのですが、日事記に採用されたのは縞模様ではなく、無地の藍染生地。濃紺で深く味わいのある藍色は、化学的に調合された色ではなく、土や畑が育んだ自然の色。1年、2年と年を追うごとに徐々に色合いが変わっていき、10年も経つとどういう表情になるのかも楽しみな点ですね。
上画像は、新品と5年間愛用の日事記。濃い藍色が全体的に少し薄くなってきて、部分的に擦れた箇所は白い筋になって、あとから出来た縞模様のようになっていますね。経年変化と経年劣化は似て非なるものですが、この松阪もめんのカバーに関して言うと、美しい「経年変化」。5年間という時間を現した見た目に、愛着が湧きそうです。
5年の月日を共にしても、カバーの角がつぶれる訳でもなく、本全体がガタつく訳でもなく、残りの5年間もまだまだ一緒に頑張れる。そんな印象です。
日事記の用紙に採用されたのは、書籍用紙の「メヌエットホワイト」という紙。聞くと、紙選びにも並々ならぬこだわりが込められていました。
というのも、日記に通常使われるのは手帳用紙や帳簿用紙なのだそうですが、それらの紙では丸川商店が求めているような本の佇まいが表現されなかったそうです。そこで、書籍本で使用される紙を様々試し、その中で選び取ったのが「メヌエットホワイト」。
真っ白ではなく少しグレー掛かっているので目が疲れにくく、かつ可読性を高めてくれます。そして鉛筆でもボールペンでも万年筆でも、ペン先が滑りすぎることなく、裏面への写りが少ないもの。
程よい厚みがあるのでめくっていて安心感がありますし、表面がほんの少しざらついているので指先の乾燥でページを上手くめくれない、ということも少ないと思います。
日事記は自分が綴っていく日記ですが、贈り物にされる方もとても多いのです。今回ご紹介したZUTTOのスタッフしかり、結婚や出産などの節目は日記をつけはじめるきっかけになるようで、お祝いにとお贈りになるのも素敵ですね。
また、母や父へ、いつもは離れているからこそ家族の想いを振り返ることが出来るようにと、年始やお誕生日に贈る場合も。大切な方の10年物語を、いつか自分も読むことが出来たらと思いながら、日事記を贈ってみませんか?
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