漆と聞くと漆器を思い浮かべる方が多いと思いますが、実は装身具、つまりアクセサリーにも古くから漆が使われてきました。艶やかで麗しさを感じる漆塗りのアクセサリーには、ほかの素材にはない、唯一無二の存在感があります。その一方で普段漆塗りのアイテムに触れる機会が少ない方にとっては、どうやって使いこなせばよいのか、気になるポイントも多いのではないでしょうか。そこで今回は漆塗りアクセサリーの扱い方をご紹介。アクセサリーだからこそ取り入れやすい、漆塗りアイテムの魅力を深掘りしていきます。
漆器に代表されるように日本で漆が長く使われてきた理由には、湿度や熱に強く、防腐性や防虫性まで兼ね備えている、漆の特性があります。紀元前に作られた漆塗りのうつわが遺跡から発掘されたという事実からも、漆の高い耐久性をうかがい知ることができます。
色漆が塗られたうるしピンズ
そうした特性に加えて、見た目の良さという点も漆の魅力のひとつ。漆の木から採取される漆は、濾過されて生漆(きうるし)と呼ばれる状態になります。艶を出すためにそのまま使われることもあれば、熱や鉄粉を加えたり、顔料を含ませることで、朱色や黒といった、艶と深みがある色漆へと変化させる場合も。色漆だけでなく、蒔絵や螺鈿(らでん)といった装飾が加わることで、美術品でも見ることができる美しさが溢れる製品も作られています。いずれの製品にも通ずるのは、漆が持つ独特な色彩と繊細さ。「優美」や「みやび」といった表現がしっくりとくる美しさとも言えます。
七宝文様が蒔絵で表現されたBisai(ビサイ)のピアス
また、漆は様々な素地に塗ることが可能なのです。代表的なものは木材ですが、ほかにも真鍮などの金属や貝、ガラスなどを用いる場合もあります。漆塗りのアクセサリーは、バリエーション豊かな素地を使っていることで、もとの素材と漆との組み合わせを楽しめる、という特徴もあります。
さて、漆の特性を踏まえて頂いた上で、早速漆塗りのアクセサリーを見ていきましょう。ZUTTOでお取り扱いしている漆塗りアクセサリーは、ブレスレット、ネックレス、ブローチなど、様々な種類があり、ブランドによって様々な工程を経ていることも特徴です。いずれも私たちの普段の装いに取り入れやすいよう工夫されているので、漆だからと億劫がらず、装いとの組み合わせを楽しむことが出来ますよ。
気軽に使える漆塗りアクセサリーとして、まずおすすめしたいのがピンズ。ピンズの場合、服・バッグ・帽子など、活用できる場所が様々あるので、自分の好みに合わせて取り入れることが出来ます。
ころんとした小さなサイズの素地に、丁寧に漆が塗られたKORINDO(コウリンドウ)のうるしピンズは、福井県に伝わる越前漆器を基盤にしています。切り出した天然木に漆を手塗りし、そこに蒔絵を描く、という越前漆器の重箱などと同じ手順で作られています。
金色に見える部分は、漆を塗った上に金粉を蒔いた蒔絵の部分。蒔絵の部分は粉状のため、光が当たるとランダムに反射し、金属とはまた異なる輝きを持っていることが分かります。配色はシンプルなのに、深みと華やかさを感じられる仕上がりになっており、漆特有の魅力を感じられるアクセサリーです。
うるしピンズ 動物シリーズ・うるしピンズ ネクタイ ストライプ
バッグ:ケイトショルダーバッグ
ピンズは小ぶりなサイズ感で主張しすぎないので、漆塗りアクセサリーをはじめて使う方でも、挑戦しやすい良さがあります。リネンのバッグに付けてみると、ぐんと愛らしさがアップ。ストライプ柄や濃色とも相性が良く、意外とカジュアルに合わせられるアクセサリーだということが分かります。
帽子:ベレー帽
ピンズは布地のものであれば基本的にどこでも取り付けることができるので、帽子や洋服に使っても。こちらはカーキ色の帽子にゴールドの蒔絵が入ったピンズを組み合わせることで、色のコントラストが生まれ、顔まわりを明るく見せるアクセントになっています。遠目で見ても、どことなく立体感がある漆塗りらしい特徴が分かりますね。
続いてご紹介するのは、漆塗りのペンダント。ZUTTOがbisai(ビサイ)に別注して作った白蝶貝ペンダントは、朱合漆に顔料を混ぜて作った色漆を白蝶貝に施したペンダント。蝶貝の自然な光沢のまわりに、リングのように色漆が入ったデザインです。色漆は、朱合漆に顔料を混ぜて色を変化させて作っており、たとえ単色でも艶や深みのある印象。小ぶりでシンプルなペンダントでも、胸元できらりと存在感を示しています。
漆の色というと朱色や黒が王道ですが、白蝶貝ペンダントは新しさを感じられる、胸元がおしゃれに見える明るい色を選択。日本の伝統色やヨーロッパの古い街の風景にある建物や物などをイメージして作られています。漆は湿度が高い場所で乾燥するという不思議な特徴を持っており、この乾燥に時間をかけて行うことで、発色の良い鮮やかな色彩が生まれました。
漆の美しい色彩を活かしてモノトーンのようなベーシックな装いに合わせるのはもちろん、ほかの色との組み合わせも楽しんで頂きたいのがこの白蝶貝ペンダント。
別色との組み合わせは難しく感じますが、自然な光沢と色を持った天然石とバランスよく組み合わせることが出来ます。TO LABO(トゥラボ)の【別注】CUBE ADJUSTABLE RING(BLUE)は、天然のラピスラズリを使ったリング。ハッとする濃いネイビーに、うっすらと金色の鉱物が斑点状に見られる石です。白蝶貝ペンダントと同じく、光沢感があるので同居しやすいアクセサリーの組み合わせ。サイズが小ぶりなもの同士を選ぶことで、互いに喧嘩しないというのもポイントです。
絲 tabane(たばね)のブレスレットは、漆塗りの真鍮パイプに金糸(きんし)を組み合わせたユニークなアクセサリー。きらびやかさの中に繊細さや奥ゆかしさがあり、刺繍が施された着物を彷彿とさせるデザインです。ブレスレットの中でも比較的太さがあり、金糸が組み合わせることでひとつ身につけるだけでも印象的なアクセサリーになっています。
絲 tabane(たばね)シリーズ
金糸とは、絹糸に金箔を撚りつけた伝統的な工芸品。絲 tabane(たばね)の母体である京都の寺島保太良商店は長年、着物の帯刺繍や相撲の化粧回しの製作を手がけてきた実績があります。金糸が束になることで、「ひねり」や「揺れ」といった動きが生まれ、新鮮味を感じるアクセサリーになっています。
腕時計:【別注】箔 ゴールド
そんな印象的な絲 tabane(たばね)のブレスレットでも、意外と合わせやすいのが、腕時計。革ベルトの腕時計を選べばシックな印象があいまって、お互いを引き立て合う存在になります。絲tabane(たばね)のブレスレットと、はなもっこの腕時計も色味を最小限に抑えたものを選ぶことで、シンプルな装いで映える組み合わせに。はなもっこの腕時計には文字盤に金箔が使われているので、金糸と金箔という、和の共通点があるのも相性が良い理由です。
白蝶貝に蒔絵の縁取り。Pierce オーバル
漆塗りアクセサリーは、もちろん私たちの肌ともバランスよく合わせることが出来ます。身につけるアクセサリーをはじめて選ぶのなら、落ち着いた色味の小ぶりなピアスが選びやすいです。一見分かりにくくても、よく見ると、丁寧な漆塗りが施されている。そんな深みのあるアクセサリーは、大人が選ぶアイテムにぴったりです。
Bisai(ビサイ)のピアスは、白蝶貝や黒蝶貝に様々な蒔絵を施したデザイン。蝶貝は光に当たると上品に輝き、小さくても美しく映えるアクセサリーです。ピアスそれぞれに異なる文様が施されており、細やかな蒔絵の技術にはついうっとりとしてしまうほど。
金糸と組み合わせた絲 tabane(たばね)のピアスは、ループ型になっており、漆と金糸が肌色を綺麗に見せてくれます。肌色に近い白漆ははじめての方でも選びやすく、肌馴染みの良い色。少し存在感のあるピアスを選びたい方におすすめです。
・完全に乾燥した漆製品の場合、かぶれの心配はございませんが、ごく稀にお肌が敏感な方はかぶれる場合があります。その場合は速やかに使用を停止し、専門医にご相談ください。
・製作から日が浅いものは、漆特有の匂いがする場合がありますが、ご使用上の問題はなく、時間の経過とともになくなります。
・漆塗り、蒔絵、金糸は鋭利なものにぶつかったり、引っ張ったりすると、剥がれや破損の恐れがあるのでご注意ください。
・ご使用後は乾いた柔らかい布で全体を拭いて頂きますと、漆の光沢を保つことが出来ます。
・漆は紫外線に弱い性質があります。直射日光の当たる場所に置かないようお気をつけください。
・保管の際にはアクセサリーケースなどに入れて収納してください。なお、極端な乾燥を避けるため、長期間保管するよりも、まめにご使用頂くことをおすすめします。
アクセサリー収納に。JEWELRY BOX
▽ご紹介した漆塗りアクセサリーはこちら
越前漆器からヒントを得た、うるしピンズ。KORINDO(コウリンドウ)
漆装飾の魅力たっぷり。Bisai(ビサイ)
金糸と漆が織りなす美しさ。絲tabane(たばね)