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堤浅吉漆店の「金継ぎコフレ」を使って、金継ぎに初挑戦してみました。

 

 

今回挑戦したのはスタッフM。器が好きで、旅先やふらっと入ったお店で素敵な器に出会うたびにじわじわと食器を増やしてきていました。なので家にあるのはどれも思い入れのある1枚ですが、大切に扱っていても食器が割れたり欠けたりしてしまうことはどうしても起きてしまうもの。その度に「金継ぎ」が頭をよぎっていましたが、いざやろうとなると「難しそう」「最初はどこかでやっている金継ぎ教室に通おうかな」などと思いつつなかなか始められずにいました。そしてそのいつかのために、壊れたままの器をいくつか残していました。

 

 

 

そんな時に出会ったのが、堤浅吉漆店が作る動画解説付きの金継ぎキット「金継ぎコフレ」。動画と言っても説明書の内容をわかりやすくしたくらいかな?と想像していましたが、いざ動画を見ながら挑戦してみると、初めて挑戦する人を想定して作られた動画はとても分かりやすく、驚くほどに準備から片付けまでをスムーズに行えました。金継ぎに挑戦してみて、自分の器にさらに愛着が深まり、修理をして長く使うことの喜びを実感しました。

 

 

それでは、修復の流れを見てみましょう。

今回はこの2枚の金継ぎに挑戦しました、これらは修復前の状態です。

 

 

1枚目の絵皿はお祝いでいただいた5枚組だったもの。片付け途中に上からコップを落としてしまい割れてしまいました。

 

 

 

3つに割れています。

 

 

 

もう一つのお皿は、気が付いたらどこかにぶつけたのか欠けてしまっていました。

 

 

なので破片が見つからないままでした。(金継ぎができることを考えると、今後は小さな破片も取っておこうと思います。)

 

 

 

こちらが金継ぎコフレのセット内容。小麦粉やサラダ油といったどのご家庭でも用意できるもの以外は道具を含め全て揃っているので、金継ぎのために新たに何かを購入したりする必要がありません。また、金継ぎは一回の作業である程度の材料が出来上がります。材料が無駄にならないように、複数枚をまとめて進めていくことをおすすめします。

 

 

 

難しいだろうなと緊張しつつ、動画通りに準備を整えていざスタートです。

 

 

まずは割れた絵皿の接着から。小麦粉と水、金継ぎ用上生漆を混ぜた「麦漆」を作って接着します。

 

 

漆が色々なところについてしまいましたが、器についてしまった漆は作業中であればテレピン油で簡単に落とせます。(時間が経過するとなかなか落とせないです)。動画でも教えてくれますが、手袋に漆が付くとスタンプのように広がってしまうので、手を拭きながらやればほとんど汚れることはないと思います。

 

動画内では、作業前にマスキングテープを切っておくことを指示してくれたりと手順に応じてとても丁寧に説明してくれます。説明書では「適量」と書かれているような内容でも、具体的に「○滴」と教えてくれます。なので動画の手順通りに進めば問題なくできるのですが、金継ぎ自体を始める前に付属の紙の説明書で全体の流れを把握しておいて、さらに作業を始める時には、その日の工程の動画を一度最後まで見ておくことで、注意するべきポイントやその日の作業工程の意味をよりしっかりと理解しながら進められます。

 

全ての行程の終わりに乾燥(硬化)があります。漆は高温多湿な環境で乾燥が進み硬くなっていく素材。なのでそれぞれの工程の最後には必ず「ムロ」と呼ばれる乾燥用の箱に濡れたタオルを入れて、湿度を保ちながら保管をします。

 

 

これが今回の金継ぎに使っていたムロ。何か大掛かりなものが必要なのではないか?と始める前は思っていたのですが、器がダンボールや湿気用のタオルに触れずに出し入れできるサイズであれば良いので、大きい必要はありません。(むしろ大きすぎると湿度が上がりにくいので、器にあったサイズのものがおすすめです。)

 

 

麦漆が乾燥したら次は、欠けた部分や接着部分の凹みを埋める「錆付け」という工程。砥之粉と水、金継ぎ用上生漆を混ぜた「錆漆」で、割れた部分の凹凸を埋め、欠けた部分を復元します。

 

 

パリッと綺麗に割れていたと思っていましたが、埋めてみると裏面はこのように結構欠けていたことがわかります。

 

 

 

欠けが大きい部分は、翌日に水分が抜けて少し凹んでしまったので追加で錆漆を塗りました。動画では作った材料を保管する方法やどのくらい持つかももきちんと教えてくれるので、材料が無駄になることがありません。またこの後の工程もそうですが、初めてだと特に失敗したらどうしよう、と緊張しながら思いながら進めがちですが、ほとんどの行程でやり直したり戻ったりができるので、あまり気負わず安心して進めて大丈夫です。

 

 

さて錆漆が乾いたら耐水ペーパーで表面を滑らかにして、次は「中塗り」という程。錆漆の上をなぞるように筆で絵漆を塗っていきます。

 

 

かすれてはいけないと思い、絵漆をつぎ足しながら書いていましたが、チューブから出したばかりの絵漆とても滑らかで、想像以上にスムーズに線が引けるのであまりつぎ足さずに、できるだけ細く描くのが良さそうです。(ここで線が太くなりすぎると、その後に金を撒く工程で金粉がたくさん必要になります!)

 

 

 

乾燥後に、再び耐水ペーパーで研いで、その後再び絵漆を塗り、いよいよ金粉を撒いていきます。毛棒という筆に金粉を付けて、パラパラと絵漆の上に落としていきます。絵漆を厚く塗りすぎると金が沈んでしまい金粉がたくさん必要になってしまうので、ここは慎重にゆっくりと描くことが大切です。金継ぎを始める前にメーカーの方に「特に最初は金粉の減りが早いと思います。」と言われていましたが、その理由がここでやりながらわかりました。今回は、お皿2枚分でおよそ1袋(0.1g)を使用しました。金粉を蒔き終わったらムロでしっかり漆を硬化させ、金粉を定着させます。

 

 

その後、テレピン油で希釈した金継ぎ用上生漆を金継ぎの上から塗って強度を高め、最後に、胴摺粉・磨き粉で磨いていよいよ完成です。

 

 

最初は、大きく新聞を広げていましたがやっていくうちに汚れそうな工程とそうではない工程がわかってきたので、最後はこんな感じで小さいスペースで作業です。

 

 

約2ヶ月かけて無事に修復された器はこちらです。

 

 

 

割れはぴったりとくっついています。

 

 

始める前は「時間がかかる!」と思っていた金継ぎですが、やってみてわかったのは、1回1回の作業自体は時間がかからないということ(割れや大きさにもよりますが、準備含め作業自体はそれぞれ30分から〜1時間ほどでした)。乾燥は時々タオルを湿らせたりしながら、基本はそっと放置しておけば良いので、手を動かす時間はわずかです。進めていくには定期的に時間を取る必要があるので、毎週末少しの時間を取れば無理なく進めていけれると思いますよ。漆は直接触れるとかぶれる可能性があるので、特に小さいお子さんがいるご家庭では、お子さんが寝た後の時間で挑戦するのが安心ですね。

 

 

 

 

 

金継ぎで修復された器が食卓に帰ってきました。次はこうやってみようという点はいくつかありますが、大切な器への愛着がさらに増しました。完成までに時間はかかりますが、モノを修復するという楽しさを実感し、また器が壊れてしまった時はこのキットを使って自分で修復できる!と自信がついたのも嬉しい出来事です。そして、金継ぎ器を使うたびに、私が直したんだな、と嬉しく愛おしい気持ちになっています。

 

 

 

今回スタッフが金継ぎしたものを、動画解説を担当している漆芸ユニットsuosikkiさんに見て頂きました。

 

こちらは動画内で修復していたもの。

 

・動画でsuosikkiさんの修復したお皿を見ると金が白っぽく明るいのに対して、スタッフが継いだお皿は色が少し暗めです。これはどのような違いによるものなのでしょうか?

粉固めや漆固めの生漆が厚く残っているのかもしれません。固めの生漆が厚くなると、金粉の上に生漆の茶色い塗膜ができ、全体に茶色っぽく仕上がります。

生漆は乾くにつれてだんだん濃い茶色になり、作業中の乾いていない状態は透明に近く、茶色味が見えにくいので、注意が必要です。金粉の上に生漆を塗ったら、ティッシュに生漆がつかなくなるまで、念入りに押さえ取るようにしてください。

ただ、時間が経つにつれて、茶色い生漆がまた透明に近づいていき、金の発色が良くなっていきます。仕上がりの瞬間が一番茶色く暗い色なので、これから使っていく中で綺麗な色になっていきます。変化をお楽しみください。

 

 

 

・表面に少し凹凸ができてしまいました、この原因として何が考えられるでしょうか?

絵漆の塗り付けと、金粉の蒔き方が原因かと考えられます。

絵漆に厚みがあり、金粉を蒔くのに時間がかかってしまうと、固まりで着いた金粉が絵漆を吸い上げてダマになってしまい、結果このように凹凸のある肌(ゆず肌)になってしまいます。絵漆はできるだけ薄く塗り、金粉を素早く蒔くことが綺麗に仕上げるコツです。

ただ、金色に完璧に綺麗に仕上げることは職人でも難しい仕事です。いくつか金継ぎをしていく中で少しずつコツを掴んで頂けると思います。

 

一つ一つの工程を丁寧に進めていくことが最後の仕上がりに影響していくのですね。最初はこの日までに完成させる!と気負わずに、丁寧に確認して時には戻りながらゆっくりと進めていくことが大切です。

 

 

そしてもう一つ気になっていたことも聞いてみました。

 

・以前に別の金継ぎキットで「食器には使用しないでください」というものを見かけたことがあります。そのような商品と今回の金継ぎコフレの違いはどこでしょうか。

これは、人体に害のある合成樹脂で接着し、食品衛生法に通らないからです。本来、そのような修復は伝統的な金継ぎとは呼べません。金継ぎコフレでは、漆の原材料店である堤淺吉漆店で精製された天然漆を使用しますので、安心して伝統的な本格金継ぎにトライして頂けます。

 

 

 

金継ぎした器の使用上の注意

 

漆は、時間が経過するほど強固になっていきます。金継ぎした器は完成してすぐにでも使うことは出来ますが、3か月ほど寝かせてから使用されると、耐久性が増しより長く使えます。日々の使用には以下を守りながらお使いください。

 

・使用後は柔らかなスポンジで洗う。

・電子レンジ、食洗機、着け起き洗いは塗膜が剥がれる原因となるので使用しない。

・金属のカトラリーが金継ぎ部分に強く当たると傷の原因になるので注意する。

 

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投稿者: 森 日時: 2020年10月28日 08:30 | permalink

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