キッチンには、水気があり火の気があり、雑菌も存在します。実は過酷な環境の中で使われ、仕舞われている時も湿気と戦っている調理道具たち。そんな中でも今回は「木のまな板」に着目します。
木のまな板への憧れはありながらも、お手入れが難しそう、という理由で使用を躊躇される方は多いかもしれません。木のまな板は、見た目の良さだけでなく、日々使う道具としてとても優れています。適した使い方、仕舞い方を知るだけでもっと長く清潔に、快適に使い続けられるかもしれません。
ナチュラルな雰囲気と木の香り、滑らかな触り心地。そういった「感覚」で木のまな板を選ぶというのも立派な理由ですが、食材を切る上で木の機能性、利点を述べることが出来るのです。
木のまな板は、包丁を使用した時の「あたり」が柔らかく刃への負担が少ないと言われています。
特に鋼を使用した包丁は、硬度のあるプラスチック・大理石のまな板では刃先がすぐに劣化してしまいます。木のまな板を使用することは刃こぼれの予防になるのです。
また、木のまな板には適度な弾力があるので、包丁で硬いものを切っていても疲れにくいという話も聞きます。「トントン」と切っていく音も、木の場合は耳に響くうるささではなく、心地良い音です。
木のまな板を使用すると、まな板に置いた食材が滑りにくいという利点もあります。
プラスチック製のまな板の上では、食材によっては滑ってしまい危ない場面もありますが、木のまな板の場合は食材の余分な水分を木が吸収するためにまな板の上で食材が滑る心配が少ないのです。
まな板に使用される木の種類は様々あります。種類によって特徴があり、そのまな板で何を切るか、また何を求めるかということも変わってきます。
ZUTTOで扱っている木のまな板ですと、ひのきの他、いちょう、オリーブ素材というものもあります。ひのきは強い抗菌力があることが知られていますが、いちょうにも抗菌作用があり、そのためカビが生えにくいと言われています。着物や本の虫除けにも、いちょうの葉が使われてきました。
山一(やまいち)の木曽ひのき
山一のまな板は細かく平行に木目が入っているのが特徴。この平行の木目は木材の柾目(まさめ)と呼ばれます。柾目は樹齢を重ねた木材から取れる貴重な部分です。木目が平行であることから、刃の当たりがよく、木曽ひのき材の持つ弾力性からトントンとリズミカルに包丁をさばくことが出来るのです。また木の凹みキズも水の吸収により、ある程度復元する力を持っています。また、ひのきの香りで気持ち良くお料理が出来るのも嬉しいポイントです。
ひのきは、表面や横の断面からヤニが出てくることがありますが、ひのきのヤニは汚れや痛みからくるものではなく、木が健康な証拠です。ヤニは雑菌の繁殖を抑える抗菌力を持っており、ヤニが多いほど水に強くなり、まな板の黒ずみを防ぐことが出来ます。余分なヤニが出た場合には、熱いお湯で洗い流してください。
woodpecker(ウッドペッカー)の国産いちょう
woodpecker(ウッドペッカー)が誕生するきっかけとなったのは、奥様のために作った一枚のまな板。使う人を思ったものづくりから始まるまな板は、素材に国産のいちょうの一枚板を使用しています。しっとりと柔らかないちょうの木で作られたまな板は、昔から板前さんに愛用されてきた道具で、使い心地良く、一度使うと手放せなくなるとも言われるほど。
いちょうの木のまな板は、きめ細やかですべすべとした木肌が特徴で、刃当たりが優しいため使う包丁も長持ちします。また、油分を適度に含んでいることから乾きやすく使いやすいというメリットもあり、使い勝手のバランスがとれた素材です。
BERARD(ベラール)のカッティングボード
調理に使える「まな板」ではありませんが、オリーブ素材のカッティングボードもあります。
パンやフルーツ、チーズやお菓子を切りそのまま食卓へサーブも出来るサイズ感とデザイン。丈夫で硬く、刃物などのキズが残りにくく、プラスティック製まな板と比べてバクテリアが短時間で自然に減少し、衛生的なのが嬉しい素材です。用途を考えると、フルーツやチーズなどは力を入れずに切れる食材なのでボードが硬い素材であっても包丁の刃への負担は少ないですね。
このように、用途・食材・包丁やまな板の素材で使い分けるのも良さそうです。
木という性質上、取り扱い方法を間違えると黒ずみが生じたり、反りが発生してしまいます。気遣いとお手入れが必要な素材だということは確かです。
理由は、食材の水気や臭いをまな板に染み込ませないようにするため。
木に水を掛けることで表面に膜を作り、余分な水が浸透しなくなるのだとか。ただ、水で濡らしたびちゃびちゃの状態で食材を置くと、逆に食材が水っぽくなるので、まな板を水で濡らしたら固く絞った布巾で拭いてから使用してください。
和食屋さんやお寿司屋さんで板前さんがよくまな板を拭いているのはそのためです。
これは木のまな板に限ったことではありませんが、1枚のまな板を使いまわして複数の食材を切る場合はその切る順番を考慮することも、「まな板の寿命を延ばす」という点では効果的です。
野菜を切る場合、切ったあとに野菜の水気や汁が出にくいもの、色が出にくいものから切っていきます。臭いがあるネギや生姜などはそのあと。さらに、魚や肉類はそのあとに切ります。(都度、水で流したり濡れ布巾で拭くということは必要です。)
例えば、最初に色や臭いが付いてしまう野菜を切って、そのあとまな板を使い続けているとその色や臭いがまな板に吸収されてしまいますが、それらを後回しにし、全て切り終えたのちに洗剤や塩でまな板を洗えば、まな板に吸収される前に取り除くことが出来ます。
野菜の場合は、各食材切り終わって次の食材を切る前に毎回水で流して布巾で拭くことをすれば、汚れや野菜から出る色はまな板に付着しにくくなります。
肉や魚などの生ものを切ったあとは洗剤で洗ってからすすいでください。洗剤で洗う前にお湯をかけてしまうと、肉や魚のたんぱく質が固まり汚れが取れにくくなってしまいますのでご注意を。
まな板を使い終わったら洗って、乾いた布巾でよく水気を取り、その後自然乾燥させます。一番良いのは外での陰干しですが、まな板の作業面が下に触れないように、なるべく立てるようにして乾燥させてください。
▲このように、まな板スタンドを活用すると設置面が少なく、下にも風が通るのでおすすめです。
本当の理想は野菜用、肉用、魚用、パン用、と食材別にまな板を使い分けることですが、収納スペースも限られますしその枚数分のメンテンナンスは少々面倒。ならばまな板の両面で「野菜用」「肉・魚用」と使い分ければ衛生面でも気になりませんね。
またはよく使うサイズのまな板だけでも2枚用意し、日替わりで使用するのもおすすめです。木のまな板には復元力がありますので、包丁によってついた傷はまな板が濡れ、乾く間に目立たなくなっていきます。そのため、使用したまな板は次の日も十分に乾燥の時間を設けて、休ませるのが良いようです。
◼︎木なので、乾燥しすぎもよくありません。
木肌が白っぽく乾燥してきたら、木製食器専用のミネラルオイルや、亜麻仁油、オリーブオイルなどを薄く塗布すると乾燥を防いでくれます。
◼︎レモンと粗塩でまな板をこすってください。
まな板についた細かい包丁傷の中に塩が入り込み、汚れを取ってくれます。また、塩には木を修復する機能があります。
◼︎黒ずみがついてしまったら。
軽度な黒ずみでしたら、紙やすりで表面をこすってください。黒ずみは時間が経つと根が深くなりますので、見つけたらすぐに対処することがポイントです。紙やすりをかけた後は、ミネラルオイルや木のまな板用のオイルを塗ってケアします。
◼︎反りを予防するために。
木は呼吸をしていますので、薄めのまな板ですと「水に濡れる→乾く」を繰り返すうちに反りが生じてしまう可能性もあります。それを防ぐためには、以下に注意してください。
・立てて保管(木目が縦になるように立てる)
・両面洗い
・極度な乾燥注意
◼︎メーカーでの表面削り。
長く使ううちに、傷や多少の黒ずみは生じてくるかと思います。削り直しをしてくれるメーカーもありますので、気になった場合はメーカーへ依頼することをおすすめします。表面が削られただけでも新品のようになり、木の香りも。また長く愛用しよう、という気持ちになります。
日本の料理人が「板前」と呼ばれるのは、「まな板の前に立つ」ことから来ており、まな板は調理においてとても大事な存在であることが分かりますね。
特に和食は食材をいかに美しく、かつ調理に適した方法で切るかということに重きを置いている料理ですので、包丁とセットになるまな板の重要性は明白です。
家庭ではもちろん、そこまで気負うことはありませんが、毎日のように目にし、手に取るものであるから、使っていて気持ちの良いものを、と思うのです。
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