お守りのように、大切に身に付けているものはありますか?これがあるとなぜか安心する、心強い、というもの。そういうものは、長く愛用するうちに劣化するのではなく、美しく経年変化してくれる素材であればなお嬉しいですよね。
今回は、北欧ラップランドの先住民族、サーミの人々に伝わる、お守りのようなアクセサリーの、素材に込められた想いと経年変化についてご紹介します。
Duodje(ドゥオッチ)とは、スカンジナビア半島北部ラップランドの先住民族、サーミの人々に16世紀頃から伝わる伝統工芸のことです。
フィンランド、ノルウェー、スウェーデンの北部やロシアの北東部に住むサーミ族は古くからトナカイとともに遊牧する民族で、現在ではその生活スタイルの変化に伴い定住する人が多いようですが、民族の誇りとして受け継がれてきたものを大事にしています。
そんなサーミ族が作り出すドゥオッチと呼ばれるアクセサリー。その素材は、トナカイの革、角、腱、そして錫の合金であるピューター。サーミの人々にとってトナカイは生きるために重要な存在であり、そのトナカイの革や角などを利用するのは、サーミ族にとって自然の恵み、共に生きたトナカイに敬意を払うという事なのです。
トナカイの角は幸福をもたらすお守りとして伝えられてきたことからも、サーミ族にとって、トナカイがどれほど大事な存在であるかが分かりますね。
装飾として使用されている光沢のある銀糸は、ピューター(錫)と4%のシルバーから出来た合金の糸であり、使い込むほどにゆっくりと輝きを増します。かつてサーミ族が、トナカイでスカンジナビア半島からピューターを運搬していたという歴史から、第二の資源となり使用されることとなりました。
そんなドゥオッチの模様は家に代々伝わるものが多いそうです。ピューターのワイヤーを様々なパターンで編み込んだデザインや、革に刺繍するように装飾を施すタイプ、様々です。
ZUTTOでご紹介しているのは、Monica Johanssonのもの。20年以上前からスウェーデン北部の美しい自然に囲まれた小さな村にアトリエを構え、デザイン・製造を一人で行っています。
サーミ族の子孫であるMonica Johanssonがドゥオッチ作りを始めたのはごく自然のこと。サーミの美しい伝統を絶やすことなく、世界に広めたいという想いがあります。
レザー:色は深く、より柔らかく
トナカイの革は軽くてキメが細かいことから、しっとりとした手触りで非常に柔らかいのが特徴です。長年使うと手の油分で色は深く濃くなっていき、弾力があった革はくったりと、より馴染み扱いやすくなっていきます。
角(留めボタン部分):角(かど)がとれ、ツヤが増します
留め具のボタンは、トナカイの角を加工して作られています。角の色には個体差が見られ、経年変化にも差がありますが、使用するうちに丸みを帯び、ツヤが出てきます。トナカイの角は権力の象徴とされており、極寒の雪の中餌を掘り起こす役割を果たすというような、頑丈なものとされています。
また、より頑丈な角を作るために、年に一度生え変わるという特徴を持っています。形を整えて磨いていくと美しいため、多くの装飾品に使用されているのだとか。
ピューター(装飾部分):ゆっくりと時間をかけて
張りのあったピューター部分も、使用するうちに柔らかく馴染んでいきます。ピューターは酸化しにくく、錆びにくい安定した素材で、そのため色の変化は時間をかけてゆっくりと。
錆びにくいということは有害物が溶け出すことがなく、安心安全な素材だということです。また、ピューターには抗菌作用があることが知られており、アレルギー反応も出にくいと言われています。
・1ヶ月に一度、綿素材の布で乾拭きしてください。
・黒変する可能性がありますので、保管時は必ず密閉してください。
・水仕事やお風呂の際に水分が付着しても問題ありませんが、きれいな状態を長く保つためにも、外して頂くことをお勧めいたします。
ですが、大事なのは愛着をもって頻繁に身に着けること。身に着けることで自然な油分が補給されますので、難しいお手入れはさほど気にせず、気軽に楽しんでください。