10年先も着たいと思える服はありますか。
服は消耗していくもの、いずれ買い替えるものという見方も出来る一方で、これは一生モノだと思える服やストール、靴に出会った時の感動はやはり格別です。
コートというのも、きっと同じ。今年こそはと思って前々から考えていた定番スタイルのダッフルコート。年齢を重ねたら、いつかえいや!と勇気を出して手に入れたい、カシミアのコート。様々な素材、デザインのコートがありますが、初めて袖を通す日から、ちょっとした気遣い1つでその後の風合いや寿命までもが変わってくるのです。
今回は、コートを長く愛用するためのお手入れ方法と着こなし方を、意外と知らない「脱ぎ方のコツ」、毎日の習慣にしたい「正しいブラッシング方法」など「今日からできる5つのステップ」という視点でご紹介していきます。ぜひ、お手持ちのコートで試してみてくださいね。
長く愛用するためのステップに移る前に、まず、どうしてコートは傷んでしまうのだろう?と考えてみます。コートの品質を損なってしまう大きな原因は、「生地の磨耗」と「型崩れ」の2つです。生地表面の風合いを損なう=「磨耗」する、着用する時のシルエットが定着して戻らなくなる=「型崩れ」というのがコートが古くなってしまう原因なのです。
もちろん、コートを含む衣類は、経年変化によって風合いを増していくものですが、「表面の毛がすり減ってしまい、見た目が美しくなくなる」という変化もあれば、「生地が柔らかくなって着心地がよくなる」という変化もありますので、ぜひ新品の時よりも風合いを増し、魅力的な一着になるように育てていきたいものです。
それでは、具体的な5つのステップを見ていきましょう。
意識しにくいポイントなのですが、コートを美しい状態で保つためには「着方」の前に、まずは「脱ぎ方」が大切。例えば、暖房が効いていてうっすら汗をかく電車の中、コートを着たままにしていませんか?湿度が高い状態ではコートの生地が湿気を吸います。その後再び北風が舞う、乾燥した冬の屋外をコートを着て歩くとシワの定着やシルエットの崩れに直結してしまいます。
また、車を運転する時、カフェで椅子に座ってちょっと一息という時、寒いからとコートを着たまま腰掛けると、腰から下半身にかけての生地に負担がかかり、生地の伸びや、摩擦による劣化の原因となります。ちょっとしたことですが、暖房が効いていて汗をかきそうな場所や電車、車に乗る時はたとえ短い時間でも面倒くさがらずに脱ぐようにしましょう。摩擦による生地の磨耗を防ぎ、さらに型崩れを防ぐ上で効果てき面。
今すぐ実践できる「適切な時に、きちんと脱ぐ」がステップ1です。
気をつけたい生地の劣化の一つに、「首まわりのシミ・汚れ」があります。寒い冬とはいえ、私たちは知らず知らずのうちに汗をかいています。厚着をする季節ですので、直接肌がコートに触れる場所はほとんどないのですが、唯一の例外が「首元」なのです。
首まわりといえば、シャツやニットでもよく汗ジミが出来る場所。コートも、いつのまにか汗を吸収し汚れがつきやすい場所です。とびきりのお気に入りで、10年先も着続けたいコートには、タートルネックのニットを合わせて、肌が直接触れないよう心がける。そうでない場合は、肌触りの良いウールやカシミア、シルクのマフラー、ストールを首元に巻くようにすると、暖かさも増して一石二鳥です。
特に、フード付きやハイネックタイプのコートはマフラーなしでさらりと着たい気持ちもありますが、コートを長く使うという視点に立てば、肌が直接触れないようにするのがおすすめですよ。
帰宅してからも、コートを長く愛用するためのステップは続きます。その第一歩は、適切なハンガーを使うこと。ハンガーは、着用しない時のシルエットを決める、いわばコートの相棒のような存在。着用していない時も、極力自然な姿勢を維持できるよう心がけましょう。
せっかく大切なコートを手に入れたのだから、専用のハンガーを用意したいという時は、
①針金の細いハンガーは避けて、肉厚のものを選びましょう。
②ハンガーの全長がコートの肩幅に合うものを。
③金属製よりは、吸湿、防臭性の高いシダーウッドがおすすめ。
の3点を抑えましょう。
これまで幅のない針金製のハンガーを使っていたという方は、今日から厚みのあるハンガーに切り替えるというだけでも、効果がありますよ。
また、コートをハンガーにかけた後は、すぐにはクローゼットに仕舞わずに少し風通しの良い場所に掛けておくようにします。これは、【きちんと脱ぐ】のステップでもご紹介した通り、湿気を含んだ状態で型崩れするのを防ぐため。
クローゼットに仕舞う前に、コートの生地が吸い込んだ湿気を外に逃がしましょう。たかがハンガー、されどハンガー。コートは、着ている時間よりも脱いでいる時間の方が長い、ちょっと特別な存在。そう考えれば、やはりハンガーはあなどれない存在なのです。
最後のステップは、洋服ブラシを使いこなしたお手入れ。
洋服ブラシの役割は「汚れを落とす」「生地の表面を整える」の2つ。生地を傷めないように、ササっと「払う」のがコツです。
ブラッシングの手順は
①繊維の流れを逆らうようにブラッシングしてホコリを浮かせる。(毛が細く繊細な生地の場合は、このプレケアは省いてもOKです。)
②繊維の流れに沿って大きな面をブラッシング。肩、前面、裏面の繊維をくまなく整えていきます。
③小さな面をブラッシング。襟、袖のベルト、ポケットも入念に。
という流れです。
ブラッシングのもう一つ良いところは、全体をくまなく目視チェックすることでちょっとした汚れや引っかかり、取れかかったボタンなど着用しているとなかなかわからない異変に気づけること。汚れは定着する前にシミ落としの対策が出来ますし、ボタンも落とす前に付け直すことが出来ますよ。
また、匂いが気になる時はブラッシングの後はファブリックスプレー、シワが目立つ時はシワとりスプレーという風に、衣類用のスプレーを仕上げに使うのもおすすめです。洋服ブラシは持っていないという方も、この機会に是非1本のウール・カシミアブラシを暮らしの備品に加えてみませんか?
まずはここまで紹介した1-4のステップを1週間続けてみます。
その後どんなシーンで何回そのコートを着たかな?と一度振り返ってみます。それが、ステップ5です。
お気に入りのコートなら当然毎日着て出かけたくなるものですが、やはり日々着用を繰り返すと、どんなにお手入れを入念にしても磨耗のスピードは早くなりますし、生地を休ませる時間が短くなることで型崩れのリスクも高まります。そういった意味では、長く着たいコートは頻繁に長時間着続けるのではなく、別のコートと組み合わせて着用の頻度を抑えるという視点も必要になってきます。
2着以上、できれば3着ほど着回せるコートを素材別で常備しておくのがおすすめ。コートをベースにその日の装いを考えるというのも、なかなか素敵です。とはいえ、せっかくのお気に入りのコート。クローゼットに仕舞ったまま活躍の機会を失わないようコンスタントに着用しながら、お手入れを続けてあげるのがコートにとっても一番のスタイルのはずです。
5年10年と着続けられる愛用コートを少しずつ増やして、そんなとっておきのコートで毎日出かけられるようになったら素敵ですね。
『ずっと良いと思えるデザイン』『愛着のもてる服』を求めて展開しているZUTTOのオリジナルウェア。今季のコートはソフトなタッチに、つやつやとして毛並みのような素材感がビーバーの毛に似ていることから名付けられた、【ダブルビーバー素材】を使用しています。糸に空気を入れる加工で「軽さ」と「ふっくらさ」を出しています。贅沢にたっぷり生地を使い、魅力を遺憾なく発揮できるようにシンプルな形に仕上げています。
「smooth(気持ちいい)」+「day(一日)」という造語である、smoothday(スムースデイ)。特筆すべきは日本のみならず、世界のトップメゾンにも愛されるその素材です。製造は老舗カットソーメーカーの小野メリヤスが担っています。コートに使用しているのは、ウール繊維のスーパー140を贅沢に使用したヘビーメルトン。その表面はとてもきめ細やかでチクチク感がなく、肌当たりがとても滑らか。目が詰まって温かさは勿論、上品な印象が漂う素材です。
老舗衣料品メーカー出身のロブ・ハドソン氏とマームン・チョードリー氏が、25年間老舗メーカーで経験を積んだ熟練した職人と共に設立したブランド。英国生産に拘り、トップクオリィティ商品を適正価格で提供していこうと立ち上げたブランドで、本国での信頼は非常に高く、品質にこだわりぬいた価値のあるものを生み出すLONDON Tradition (ロンドントラディション)は、バーバリーのコートを手がけていることで有名なブランドでもあり、時代に左右されることなく長く着ることが出来る製品を作り続けています。
今回登場したダッフルコートは、ウール70%をベースにポリエステル15%、ナイロン10%、アクリル5%を含んだ生地を使用したもの。ウールの暖かさに、軽さ・扱いやすさが合わさった、長く愛用できるコートです。