知っているようで知らない素材、銅。
日常生活において身近な銅製品というと十円玉。
それ以外は…というと実はすぐに思いつくものも
少ないかもしれません。
様々な素材が存在する現代では、定期的な手入れが必要な
銅製品は馴染みの薄い素材かもしれません。
しかし先史時代から人類に使われてきた素材として
銅の特徴は現代の生活にも役立ち、正しく扱えば
長く付き合える存在となります。
それでは早速銅の魅力に迫っていきましょう。
銅の最大の特徴は、その熱伝導の力。
火にかけると一気に熱が全体に回ります。
同じ金属でも、例えば鉄製のフライパンを火にかけると
熱が全体に回るのには時間がかかりますが、銅は鉄のほか、
アルミニウムやステンレスに比べると
断然、熱の回り方が早いのです。
そのため、調理器具を始めとした、火にかける、
熱する作業が必要なものが銅製ならば、時短に繋がります。
さらに熱の伝わり方が均等なので、
例えば鍋を火にかければ鍋底全体に一気に熱が回り、
熱ムラがなく調理することが出来ます。
また、熱するだけでなく、銅製のカップは氷を入れれば
すぐさま冷却効果を発揮し、カップ全体が冷たくなります。
さらに銅製品の長所として、高い抗菌性が挙げられます。
銅の化合物には殺菌作用があり、微生物や細菌類の繁殖を
抑えてくれる効果が知られています。
そのため、下水道の配管に銅が使われたり、
銅製の花器を使うと花が長持ちすると言われるほど。
鉄製の調理器具を使うと鉄分が溶け出すと言われますが、
銅も同じように銅イオンが溶け出し、
殺菌効果があると考えられているのです。
口に触れるもの、手に触れるものは衛生的であってほしい。
銅はそんな願いも叶えてくれます。
さて、金属につきものなのが、錆(さび)。
銅はアルミニウムや鉄に比べると錆びにくい金属ですが、
日常的に使う十円玉が徐々に黒くなっていくように
銅は空気中の酸素に触れて変色していきます。
食品を扱う銅製の調理器具については
一般的に錫や銀で食品に触れる表面を覆うことが薦められています。
これは錆の発生を防ぎ、さらに銅の匂いが
食品に移らないようにするためです。
それでも時間の経過とともに徐々に現れてくるのが錆。
中でも緑青(ろくしょう)と呼ばれる緑色の錆が生じる場合があります。
銅製の自由の女神も今や緑色ですが、
あの色も緑青によるものです。
水分や二酸化炭素の影響で現れる緑青も一種の錆ではありますが、
表面に皮膜を張ることで、内部の銅に腐食が進まないようにするための
自然な現象でもあります。
錆が出て来ることを考えると、銅は扱いにくいと
思ってしまいますが、正しく扱い、手入れをするだけで
錆を防ぐことが出来ます。
深みのある赤褐色や時間が経過しても
ものとして残り続ける耐久性は、銅ならではのもの。
少し手を加えてあげるだけで、
手元に残り続けてくれるのが銅製品です。
銅は熱伝導の良さから調理器具として高い実用性を持ちます。
まず取り入れてみたいのが、銅の鍋と
考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こちらは代々銅器の製作を手がけてきた中村銅器製作所の玉子焼鍋。
関西型・関東型と2つの異なる形の鍋になっていて、
お料理の仕方によって鍋を選ぶことが出来ます。
中村銅器製作所の作る銅製の玉子焼鍋は
料理のプロもこぞって選ぶ鍋として知られています。
料理人も選ぶ理由は、銅の熱伝導を最大限に活かした鍋の作り。
卵のように火が通りやすく、気をつけていないと
焦げ付いてしまうような熱に敏感な食材は、
銅のように熱が素早く均一に広がる素材の鍋と
相性が良いと言われています。
中村銅器製作所の玉子焼鍋はコンロに載せると
ちょうど良いサイズ感で、熱が一気に回ります。
さらにハンドルを卵を返しやすい角度にし、
銅の接合部分を極力少なくすることで、
玉子焼きをいかに美味しく焼き上げるかという点を
こだわり抜いた作りになっています。
銅製鍋を使う際には、いくつか気をつけるポイントがあります。
◇使い方のポイント1・油馴らし
使い始めはまず、油馴らしを行います。
油馴らしは鍋表面に油膜を作り、
食材の焦げ付きを防ぐために必ず行うようにします。
まずは油を注いで油馴らし
1) 鍋の7分目くらいを目安に食用油を注ぎます。
2) 鍋を弱火〜中火にかけます。
油の表面がゆらゆらと揺れて、少しぽこぽこと
泡が出るくらいがちょうど良いでしょう。
内側の錫は高温だと溶け出してしまいますので、火加減にご注意ください。
3) 4〜5分そのまま煮立たせます。火にかけている間は
鍋から目を離さないようにしてください。
4)火を消し、少し冷まします。
油は油ポット等に移してください。
鍋表面はキッチンペーパー等で油を擦り込ませてください。
この状態で使用が可能です。
※熱した後は鍋が非常に熱くなっていますのでお気をつけください。
◇使い方のポイント2・火加減と油返し
銅鍋は熱伝導が早いため、全体が一気に熱くなります。
基本的に火加減は弱火〜中火でお使いください。
また、最初の油馴らしをした後も、
使い始めから1ヶ月くらいは油膜を十分に作るために
鍋を弱火で温めた上で油を多めに注いで馴染ませ、
余分な油をキッチンペーパー等で取り除いてから
調理を行うことをおすすめします(油返し)。
鍋底の様子。一度の使用で色合いが変化します
◇使い方のポイント3・お手入れと収納
1) 使用後はすぐに柔らかいスポンジで洗います。
洗う際にはお湯を使用し、油膜を残すために洗剤は
使わないようにしてください。
※食材をそのまま放置すると錆の原因となりますので
できるだけ早く洗浄してください。
※たわしやクレンザーは使わないでください。傷の原因となります。
2) 洗い終わったら火にかけて水分を飛ばします。
その後キッチンペーパーに油を含ませて、鍋の内側と
外側に擦り込んでおくと錆の予防になります。
3) 収納はできるだけ湿気の少ない場所にしてください。
新聞紙などにくるんでおくと湿気予防になります。
調理器具に限らず、食器やインテリア用品に
銅を取り入れてみると、お部屋の雰囲気を変えてくれます。
富山県高岡市で400年以上作り続けられてきた、高岡銅器。
高岡市は江戸時代に加賀藩が鋳物師を招いたことから始まり、
仏具を始め、国内の約90%の銅器の生産を占めていると言われる銅器の名産地です。
tone(トーン)はその高岡の地で、長年銅器の着色を手がけてきた折井着色所の銅器ブランド。
高岡銅器を含めた日本の伝統産業の衰退の危惧が叫ばれる中、
自分たちの持つ技術を活かしたオリジナリティのあるものづくりを目指しスタートしました。
tone(トーン)は、銅器でありながらも、
現代の暮らしに見合うように設計されたデザインとその独特な色合いが特徴。
特殊な薬品を使って銅を腐食させることで銅が本来持つ色を引き出し、
青銅色、煮色、宣徳色、鍋長色、朱銅色、焼青銅色と呼ばれる色合いになっています。
上から着色しているわけではなく、銅本来の色というのがポイントです。
tray(トレイ)シリーズはお部屋の雰囲気を変えてくれるアイテムとしておすすめ。
silver・copper pink・greenと、異なる3色と銅ならではの色ムラが表面に表れたアイテム。
金属とはいえアルミやステンレスとは違う趣のある仕上がりになっています。
玄関で鍵の収納に、食卓では調味料入れを置いたり、
寝室でアクセサリーの収納に、と様々な活用が出来ます。
tone(トーン)もまた、中村銅器製作所の玉子焼鍋と同様に
内側に錫、もしくは銀メッキが施されています。
tumbler(タンブラー)は、日常使いに取り入れやすいアイテムの一つ。
銅の熱伝導率の良さから、飲み物の温度が全体に伝わるので、
氷を入れた冷たい飲み物を冷たいままに保冷する力があります。
その使いやすさから贈り物にも喜ばれます。
on the wall mini(壁掛け花器)は、
その名の通り壁に引っ掛けて使うことが出来ます。
こちらはガラス管が付属しているので、そちらに花を生ける作りです。
壁に自然と馴染むよう計算された平たいシンプルなデザインで、
花を生けるとまるで銅の板から花が生えているように見えます。
リビングや玄関、洗面所といった場所で
さり気なくワンポイントになってくれるアイテムです。
clock(壁掛け時計)もまた、お部屋にアクセントを加えてくれるアイテム。
文字盤はなく銅板に針が付いたシンプルな作りで、銅が鈍く光を反射します。
時計の周囲にぐるりと囲われた銅の色とムラの質感が唯一無二の印象を残してくれます。
お部屋に入ったときに目を引くclock(壁掛け時計)は、
確実に存在感を残しながらも、静かに時を重ねているようです。
◇銅製インテリア・食器の使い方のポイント
銅製のアイテムは湿気・水気が苦手です。
インテリアの場合は、通気性の良い場所で
お使いになることをおすすめします。
お手入れは定期的にはたきでホコリを取り、乾拭きをおすすめします。
長期で保管する場合は、水に濡らして硬く絞った布で
まず水拭きをし、その上に乾拭きをして十分に乾かした上で収納してください。
収納の際には、紙製の箱や布に包んで頂くと湿気がこもりにくいです。
銅製の食器は、錫や銀メッキがありますので
錆びにくくなっていますが、ご使用後は出来るだけ早く
水洗いしてください。(食器用洗剤の使用も可能です)。
水洗い後は乾いた布で拭き、十分に乾かしてから保管してください。
水に触れていない場合でも時間の経過とともに、
空気中の水分が影響して徐々に色合いが変化してきます。
銅製品の特徴として変化の様子をお楽しみください。