世界で広く作られてきた民芸品のひとつに、「かご」があります。天然の植物だけで作られるかごは、高い耐久性、軽量であること、用途によって形を変えられる柔軟性といった利点を持っていたため、荷物を運ぶ道具として親しまれてきました。
現代でも、道具としてのかごは残っていますが、ファッションアイテムとして広く浸透したのが、かごバッグ。職人がひとつひとつ手で編み込んで作り上げた、道具としてのかごらしさを残しつつ、洗練されたその姿で人気のアイテムです。
暖かな季節のバッグとしてぴったりなかごバッグ。今回は天然素材で作られた、手編みのかごバッグにフォーカスし、長く付き合うためのポイントをご紹介します。
手編みのかごバッグに使われるのは、自然の植物たち。その種類は様々あるので、まずはそれぞれの素材の特性を見ていきましょう。
葦ハンドバッグ レザーハンドル
水辺で育つ水草は、まっすぐ上に向かって成長していき、茎が丈夫になる性質があります。
CANDRIA TOMMASO(カンドリア・トマソ)の葦ハンドバッグ レザーハンドルは、イネ科の植物である葦(アシ)と牛革を組み合わせた、独特の素材使いが特徴的なかごバッグ。葦はまっすぐ上に成長するとともに、素材そのものが硬くなっていくため、丈夫で軽い素材としてスダレなどにも用いられてきました。
CANDRIA TOMMASO(カンドリア・トマソ)では、葦をまるでのロープのように細やかに編み込んで、かごバッグを作り上げています。
葦ハンドバッグ レザーハンドルは、葦と牛革を木型を使って成型することで筒型にし、開口部にはマグネット、内側は布張りすることで、十分な機能性を持ちながら、上品な仕上がりになっています。ぎゅっと目の詰まるように葦を編み込んでいくことで、荷物を入れても変形する心配がなく、美しい形のまま使い続けることが出来ます。
バスケットS/NAVY
バスケットM/BE
ポルトガルのバッグブランド、TOINO ABEL(トイノ アベル)のかごバッグも、葦を手で編み込んで作られています。青と黒の生地を一緒に織り上げることで、全体にストライプ柄を入れたり、ハンドルも丈夫な葦の枝を使う一方で、ショルダーストラップには牛革を用いたりと、素材使いが楽しいバッグ。
葦に硬さがあることで、変形の心配がなく、全行程がハンドメイドという驚くべき職人の技術の高さが伺えるかごバッグになっています。
手提げバスケット005
かわって、こちらはガーナで作られているMUUN(ムーニュ)のかごバッグ。素材に選ばれているのはエレファントグラスと呼ばれる、こちらも水草の一種です。エレファントグラスはアフリカの熱帯で育つ、高さ5メートル以上にも成長する植物で、茎が非常に丈夫なことで知られています。
肩掛けバスケット006
アフリカでは古くから繊細な模様編みの技術が発達しており、MUUN(ムーニュ)のかごバッグが作られている小さな村ニャリガでも、その技術が受け継がれています。エレファントグラスは水草の中でも復元性があり、一度変形してもまた自然に戻るという特徴を持っています。
巻き付くように成長していく、つる性の植物もかごバッグに多く使われてきた素材。特に日本の山々で育つあけびや東南アジアなどの温暖な地域で育つ、ラタンといった素材が当てはまります。
あけびのかご(薄型2本ホラ編)
青森県弘前市で大正時代から手作業であけびのかごを作り続けている、宮本工芸。農閑期にかご等の手編みで行なう民芸品が多く作られていたこともあり、機械では作ることの出来ない味わい深いかごバッグに仕上がっています。
あけびのかご(台形並編)
あけびは、もともと太さ・弾力性があるため非常に丈夫なかごが生まれることで知られています。さらにあけびを裁断すると分かる通り、素材自体が丸みを帯びているため表面にささくれが起きにくく、バッグの中身を傷つけにくいという良さがあるのも特徴です。
熱帯地域に多いヤシ科の植物もまた、かごバッグの原料として好まれています。インド洋に浮かぶマダガスカル島を原産とするラフィア椰子は高い柔軟性により、細やかな加工が可能で、編み上げた際の見た目の美しさも人気の理由です。
バケット形 ラフィアバッグ
ボーダー ラフィアバッグ
Sans Arcidet(サン・アルシデ)はラフィアの柔軟性を活かした、かごバッグを作り上げています。マダガスカルの西海岸エリアにある、Majunga地方の自然公園に生息するラフィアヤシの葉から採れる最高品質の原料を使い、約450人もの職人がひとつひとつを手で編み上げています。
丸型・スクエアなど、特徴的な形にレザーといった素材やカラフルな染色を施したかごバッグは唯一無二の存在感を放っています。
Carillo Natural
ショルダーバッグ LOTO Natural
同じく、マダガスカル島の良質なラフィアを使った帽子やかごバッグを手がけるHELEN KAMINSKI(ヘレン カミンスキー)。こちらのかごバッグはひとつひとつがクロッシェ編みされており、細やかな技術が光ります。
ラフィアを編み込んで作られたショルダーバッグは、しなやかに体に馴染み、荷物の量に応じて、形を変化させるラフィアならではの特徴がよく分かるバッグになっています。
天然素材であることに加え、さらに手編みのかごバッグの場合、機械生産されたバッグとは異なる特徴があります。製品の特徴や保管の仕方などを踏まえて、長く愛用していきたいですね。
かごバッグは、天然原料を適切な長さに裁断した上で編み上げられています。そのため裁断処理した部分が表面に現れていたり、バッグから小さなささくれが見える場合があります。
裁断処理の例
裁断処理した部分が表面に現れていても、強度があるためほつれてしまう心配は少ないですが、使い始め当初は衣服や布、アクセサリーなどにひっかけないようご注意ください。内袋が付属していたり、内側が布張りになっているバッグはひっかけを軽減してくれます。
内袋が付いていないかごバッグの場合、布製の巾着などを中に入れてお使い頂くのもおすすめです。ZUTTOではオリジナルのインナーバッグのお取り扱いもありますので、併せてご参照くださいませ。
手編みにより接合している例
宮本工芸のあけびのかごは、全体が手編みで作られており、持ち手と本体を繋ぐ部分も、全てあけびで作られています。天然素材の特性上、使用していくうちにやむを得ず接合部分が緩んでしまう場合がまれにありますが、宮本工芸の製品の場合、お直しを承ることが可能です。
ご希望の場合はカスタマーサポートまでお問い合わせください。
ZUTTOカスタマーサポート:support@zutto.co.jp(平日10:00-16:00)
日頃のお手入れとしておすすめしたいのが、「拭く」こと。まるで磨き上げるように、柔らかい布でかごバッグの表面を拭いてください。
細かな編み込みが施されたかごバッグは、編み込みの内側に汚れが溜まりやすくなっているので、重点的に拭いていきます。
あけびのような素材自体が太さのあるものの場合、洋服ブラシなどでブラッシングしても良いでしょう。ブラシも天然の動物の毛を使ったものを選ぶと、かごバッグの艶が増す効果があります。
かごバッグにとって、大敵となるのが湿気。天然素材であることから、水に濡れることで、カビや虫の発生、さらに編み込みの緩みに繋がる可能性があります。そのため雨の日は使わない、水に濡れた場所には置かないことはもちろん、保管の仕方にもお気をつけください。
かごバッグを保管する場合、日陰の風通しの良い場所を選びます。そのままの状態ですと湿気を吸い込みやすいので、布をかぶせておく、不織布をお持ちの場合は、かごバッグをまるごと包んでおくことをおすすめします。
かごバッグの扱い方についてご紹介してきましたが、天然素材のかごバッグを育てるにあたって、最適な方法は何といっても使うこと。手に触れることでささくれがなくなり、油分により徐々に色が濃くなり、空気にあたることでホコリを被ることもない。そんな状態がかごバッグにとって最適なのです。
もちろん、毎日使うことは難しい場合は目に付く場所へ保管して、時々手で触れてみてください。手で触れることで、天然素材のかごバッグの良さを実感して頂けるはずです。
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