幼い頃に憧れた、ぴかぴかのエナメル靴。
エナメル靴はまるで光を受けて輝いているようで、履くだけで足元も心も軽くなる、そんな不思議な力を得たような気分になるものです。男性はフォーマルな場で履く靴のようなイメージがありますが、女性はエナメル靴といってもパンプルタイプやレースアップ、バレエシューズなど様々なデザインのものがあるので、ラフにデニムに合わせて日常使いも出来ますね。
そんなエナメル靴の魅力や、意外と知らない正しいお手入れや保管の仕方をご紹介します。
一言で言うとエナメルとは、本革にエナメル樹脂で加工、コーティングをした革のことです。エナメルはもともと、革を守るためのコーティングとして開発されました。水に強く、傷が付いている革を商業的に使用可能にする意味合いもあったようです。そのため、「エイジング」や「柔らかくなっていく」という革ならではの経年変化は、エナメルでは強く感じることは出来ません。
エナメルは、しばしば「パテントレザー」と呼ばれます。パテントとは「特許」の意味で、アメリカでエナメル加工する技術が特許を取っているために呼ばれる、愛称のようなものだとか。エナメルとパテントレザーは同じ素材ですので、お間違えないように。
しかし、エナメルと言っても、本革にエナメル加工するものと、ビニールにコーティングをしてまるでエナメルのように見せているものもあります。それはビニールエナメルと呼ばれますが、合皮に加工を施すもの。剥がれやすかったり、使用していくうちに表面がポロポロと劣化しやすいと言われています。
「エナメル」という素材の名前がまるでそれらの通称のように使用されることもあるようですので、注意が必要なのだとか。
エナメルはかつて高級靴の素材として多く採用されていました。お手入れに靴墨を使用しないことから、舞踏会で男性が女性のドレスを踏んでしまっても通常の革靴より汚すことがない、という理由でフォーマルの場で広く愛用されていたと言われています。
このように、エナメルという素材は見た目の美しさのみならず、その製法や特徴によって生産者からも愛用者からも重宝された素材だったのです。
こちらの美しいエナメルシューズは、イギリスのブランドCATWORTH(カットワース)のもの。
1970年代に設立されたCATWORTH(カットワース)は、先代の馬具職人が、英国で競技者人口の多いダンス市場に参入し、ニュービジネスを始めたことをきっかけに誕生しました。現在英国内にわずか数人しかその技術を継承した職人がいないと言われ、彼らが作る由緒正しいダンスシューズは一点一点丁寧に、職人の手によって仕上げられていきます。
また、CATWORTH(カットワース)は英国発祥のダンスアカデミーでエリザベス女王も後援者として名を連ねるRoyal Academy Of Dance Official Manufactureの認定を受けているほど、英国内のダンス競技者には名が知られているブランドなのです。
※Royal Academy Of Danceは1920年イギリスで設立され、主にバレエの知識、理解、そして実践を国際的に推進するために活動している国際的な団体です。
通常、ダンスシューズは室内で履くためのものですが、ステップやタップを多く踏むため耐久性を高くしており、日常の外履きとしても十分な作り。レザーの柔らかい質感は、履くたびに足に馴染み、アウトソールは、軽快な歩行と優しい雰囲気の足元を演出してくれます。
シューズ:ローヒールワンストラップシューズ Patent/Black
トップス:クルーネックセーター Ecru
スカート:コットン ギャザースカート
ローヒールワンストラップシューズ Patent/Leadは、柔らかいパテントレザーを使用したストラップシューズ。実際に足を入れてみると非常に柔らかく、足に当たる部分は布を当ててありますので、靴擦れの心配も軽減されます。靴底には、ヴィブラム社製の滑り止めも付いており、安全な歩行が出来るような工夫も。つま先部分が細過ぎず、ぽってりともし過ぎていない絶妙な形も、幅広い年代の方に好まれますね。
甲部分は浅すぎず、素足で履いても指元が見えません。ストラップでしっかりとホールドし、歩きやすく。デザインそのものはシンプルですが、エナメルの光沢があるので足元の存在感を出すには十分です。ラフにロールアップしたデニムに合わせたり、カラータイツ+スカートとコーディネートするのも素敵です。
シューズ:フラットシューズ JazzShoe Patent/Black
トップス:AIRY WOOL ボーダー プルオーバー
バッグ:HORSE LEATHER DRAW STRINGS POUCH/S
ジャズダンスのためのシューズに、3cmのヒールが付いています。レースアップタイプで甲に沿って自分のサイズにぴったりとフィットさせることが出来ます。平紐ではなく丸紐なのが、少しドレッシーなこのシューズに合っていますね。
パンツスタイルに合わせてマニッシュに、ワンピースとの相性も抜群です。
足を入れるだけで履けるバレエシューズは、履きやすさに加えてきちんとした印象も作れる万能シューズ。Brassは控えめに光沢を放つゴールドカラー。大人っぽい色合いで、上質なエナメル素材がシンプルなコーディネートに映える、足元のポイントになってくれそうですね。バレエシューズは特に季節を問わないので、寒い時期はタイツやソックスと合わせて、暖かい時期は素足で楽しめます。
エナメルは、皮革ではありますが通常のスムースレザーと同じお手入れをしてはいけません。エナメルの特徴を押さえながら、長く愛用するためのお手入れを身に付けてくださいね。
・日々のお手入れは、履いたら柔らかい布で拭くこと
繊維の中に汚れが入り込むことはあまりないので、ブラシではなく柔らかい布で丁寧に拭いてください。色が薄いエナメルは汚れが目立つので、履き終わったら拭く(汚れが付いていないかチェックする)時間を設けてください。
・エナメル専用のお手入れ用品で汚れ取り、曇り取り、ツヤ出しを行う
ホコリや指紋などの汚れ取り、ツヤ出しにはエナメル専用のものが市販されています。スムースレザーの保湿クリームを塗ると表面のコーティングが剥がれてしまう可能性があるので、使用しないでください。
・ひび割れに注意
エナメルは皮革にコーティングをしているために、断面に若干の厚みがあり、歩いた時に出来る「履きジワ」が入りやすく、かつその部分からひび割れしてしまうこともあります。履かない時はシューツリーを入れ、シワを伸ばすようにしてください。
・他のものがくっつかないように
コーティングのために触るとぺとぺとして、ものが張り付きやすい素材です。そのため、新聞紙などの紙類にくっつけて保管しないようにご注意ください。紙そのものが張り付いたり、文字や模様が靴に移ってしまう場合があります。そうなってしまうと綺麗に取り除くことは難しいです。
・持ち運びには布袋を使用
同様の理由で、旅行などで持ち運ぶ際は新聞紙や紙袋、ビニール袋には入れずに、布袋を使用してください。
・湿度に注意し、定期的に履くこと
コーティングがべたつきを起こすので長期間の保管はおすすめしません。特に高温多湿の場所で保管すると表面のコーティングが溶け出してしまい、ベタ付きが発生します。定期的に履くこともメンテナンスの一つとして、季節を問わず履いてくださいね。
・防水スプレーはNG
革靴に定番の防水スプレーはエナメルにはおすすめしません。シミになったり、光沢が曇ってしまう原因になります。エナメル靴は比較的水には強いと言われていますが、濡れた場合は表面を柔らかい布で拭き、内側もしっかりと風通しの良い場所で乾かしてください。
・エナメルシューズの保管
エナメルは、革シューズの中でも特に保管に気を使わなくてはいけない素材です。一度ベタついたり、ひび割れや色落ちが起こると元には戻せないのです。その分、手間と愛情をたっぷりかけ、その様子を観察することが大切で、それを億劫に思ってしまう場合は、エナメルを長く愛用するのは難しいかもしれません。
靴の基本的なお手入れは「家に帰って玄関で脱いだらまず拭く(ブラッシングする)」です。エナメルに限らず、どの靴でもこれを行うと外出先で付いたホコリや土、汚れをある程度新しいうちに取り除くことが出来ますし、時間が経ってからやるとでは汚れが定着する度合いが違います。どんな靴でも、まずは帰ってきたら拭く、ブラッシングすることを習慣にしてみませんか?
真新しいエナメルシューズを箱から取り出した時のドキドキとワクワクの気持ちを忘れずに、長くともに歩く相棒として、大事にしていってください。
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