日本でチェックといえば、タータンチェック、ギンガムチェック、マドラスチェックとあらゆる格子柄をさしますが、イギリスでは、タータンとそれ以外に分けられているのをご存知でしたか?
山と湖の国、スコットランドを象徴するタータンチェックは、人々の暮らしに深く関わってきた格子柄。その一つ一つが名前と意味を持っています。16世紀頃、スコットランドのハイランド地方にはクラン(氏族)と呼ばれる小さな共同体がありました。タータンは、スコットランドで身につけられていた民族衣装が始まりでした。
この記事でご紹介のストールは、イギリス・ヨークシャー州リーズに創業の名門ファブリックメーカーMOON (ムーン)、Highland Tweeds(ハイランドツイード)の製品です。
タータンチェックは、身近なものでは衣類だけでなく、インテリアやプロダクトデザインにも使われていますが、スコットランドではタータンは織物。丈夫でシワになりにくい綾織りの生地で制服やスーツ、ジーパンにも用いられている織り方の織物がタータンです。
その歴史は3500年以上、ケルト人が着用した織物がその始まりで、その後それぞれの氏族を表すもの(クラン・タータン)へと変わっていったようです。
タータンは日本でいう家紋。一見同じように見える柄でも、それを身につけることで、国、氏族、学校、チームなどを表すファブリックデザイン。それぞれが家族の絆や地域、土地の色(島の赤土、牧草地の緑、海のしぶきの白、太陽の光の金など)を表すために身につけていたもので、それぞれにストーリーがあります。
また、スコットランドには、政府管轄の「タータン協会」があり、そこに登録されると正統なタータンとなります。申請では糸、色の数が登録されるというスコットランドが毛織物で発展してきた歴史とスコットランドが文化を重んじることがうかがえる管理体制です。
Hunting・・・狩猟など野外で自然と同化するための色調で暗めの色に作られたもの
Dress・・・正装用で白を基調とした女性用のタータン
Muted・・・ぼやけた色合い、くすんだ色合いのタータン
Old・・・天然染料を使用した優しい色合いのタータン
Modern・・・化学合成染料の発明で鮮やかで濃い色合いのタータン
一つの氏族の中でも、TPOのようにタータンを使い分け、日常はクラン・タータン、正装時はドレス・タータン、狩猟、スポーツとアクティブな時用にハンティング・タータン、その他、地域に関連したものがディストリクト・タータン、軍隊用がミリタリー・タータン、王室が用いたものがロイヤル・タータンと現在、4000種類以上が「タータン協会」に登録されています。
たくさんのバリエーションがあるタータンですが、それには2色以上の色を使い、それらが直角に交わる格子柄という定義がありました。
たて糸とよこ糸に使う糸の色と数が同じで、基本のパターンが繰り返される(原則として上下左右対称模様になるが、一部例外も)という条件を満たしたデザインです。
規則正しく組み合わせられた伝統あるチェック柄は、その後、王室やファッションデザイナーに注目され愛され、いつの間にか秋冬になったら欠かせないものになっています。チェック柄は、いつものスタイルに加えるだけで、ワントーンコーデや冬に取り入れることの多いダークカラーの装いが明るく華やぎます。
色と配色のバランスで異なる印象を作る無限なほどにあるタータンは、グレー、ネイビー系は知的な印象に、イエロー、ブラウン系は品よく柔らか、レッド、パープル系は女性らしく装いのアクセントとなり、おしゃれや気分で選べるバリエーションの豊富さが毎年飽きさせない理由でしょうか。
左からチェックストール YELLOW、GREY THOMPSON、BLACK WATCH
アウター:CAVALRY TWILL コート
トップス:クルーネックセーター DERBY GREY
ボトム:8Wストレッチコール パンツ NATURAL
シューズ:アンクルブーツ MARIA Black Milled Nubuck
左からMCKELLAR、チェックストール WINE、MACDONALD
アウター:ダブルビーバー ノーカラーコート GREY
トップス:ワッフル編みセーター LIGHT GREY
ボトム:マリンパンツ NAVY
シューズ:ローヒール バレエシューズ Patent/Brass
ミリタリータータンの中でも最も有名なブラックワッチ。世界中でタータンが広がるきっかけとなった柄で、約300年にもなる歴史ある柄です。ブラック・ワッチ=黒い見張り番と呼ばれたスコットランド連隊は世界中に派遣され、その活躍で一躍有名になった柄です。その後に生まれるさまざまなタータンの発想の元となっていて、例えば、マッケンジーやゴードンもブラックワッチの色の置き換えです。
世界でもよく知られているのがロイヤルスチュアート。ヴィクトリア女王の時代に王室でタータンが好まれていたことで、上品でおしゃれな生地イメージがついて、イングランド、ウェールズ、アイルランドの国民の間でもブームになった背景があります。それを機に海外にも人気が広がり、世界で愛される柄になったそうです。そのスチュアートを暖かく柔らかな雰囲気にしたキャメルスチュアートは、ベーシックカラーのアウターやニットと相性良く、赤のラインがアクセントになります。
トップス:Crew Neck Multi Pure Aran
ボトム:フロント ボタン スカート RED
シューズ:チャッカーブーツ
イギリスの物理学者で古典物理の分野で多大な貢献のあった、ウィリアム・トムソン卿のために特別に作られたという柄。
オーソドックスな中にも高級感がある柄です。ベーシックなグレートンプソンはユニセックスでお使いいただけます。
アウター:CAVALRY TWILL コート
トップス:クルーネックセーター DERBY GREY
ボトム:8Wストレッチコール パンツ NATURAL
シューズ:アンクルブーツ MARIA Black Milled Nubuck
スコットランドの有力なクランの一つで、マグレガー家、ブルース家、キャンベル家、マクドナルド家、ステュアート 家などは、スコットランドの歴史にその名を刻んだ名門氏族の柄です。レッド、グリーン、ネイビーの格子はさりげなく取り入れるタータンにもちょうどいい色味です。
アウター:ダブルビーバー ノーカラーコート GREY
トップス:ワッフル編みセーター LIGHT GREY
パンツ:マリンパンツ NAVY
シューズ:ローヒール バレエシューズ Patent/Brass
マクラーレン氏族が身につけるクラン・タータンで、グレー、ブラウン、ベージュを配置した組み合わせは、ファッションとしても取り入れやすく幅広い世代に愛されています。
アウター:ダブルビーバー ノーカラーコート GREY
トップス:ワッフル編みセーター LIGHT GREY
パンツ:マリンパンツ NAVY
シューズ:ローヒール バレエシューズ Patent/Brass
スコットランドで人々の日常着として始まった織物は、その土地や氏族の象徴としての柄から、軍隊や政治にも結びつき、ファッションの中でも幅広いスタイルに浸透して時代時代で変化している普遍的な柄です。
複数の色と線の幅が織りなす無限のバリエーションとも言えるタータンはこれからも新たな価値を作って、多くの人に愛され続けるファブリックデザインです。
左からチェックストール YELLOW、チェックストール WINE