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テーブルで楽しむ茶事。春のたけなわに、美味しいお抹茶と和菓子を

 

日本に根付いた文化のひとつに、お茶のたしなみがあります。茶事の歴史を読み解くと、茶道が始まってから実に400年もの歳月が流れていきました。茶事はお茶を楽しむのみならず、ものを大切に扱う心がけや四季の移り変わりを感じる心など、私たちの今の暮らしにも通ずる、美しい文化でもあります。日本に残る古き良きお茶の文化を、楽しく、カジュアルに現代の暮らしの中に取り入れるアイディアをご紹介します。

 

もてなしを再発見する、お茶の文化

 

そもそも茶事とは、「お客様をもてなす」という意味合いが込められています。現代でもお客様が自分を訪ねてきたら、まずお茶を淹れて出す、という方が多いのでは。私たちが自然に行っているおもてなしの中心に、お茶があることが分かります。

 

 

お茶が日本で普及した経緯には諸説あるようですが、奈良時代に中国からもたらされたと言われています。高級品であったお茶が一般庶民にも普及したのが、約400年前。千利休らが茶の湯、つまり現代に通ずる茶道を確立した時期です。その茶道には、高価でなくても、無駄を省いた機能的で美しい道具、客人との距離が近くなるよう考案された茶室、窓から見える、美しくも儚く移りゆく季節の表情といった、意識せずとも自然に溶け込むように工夫された「もてなし方」を発見することができます。


今となっては椅子に座ってテーブルでお茶を頂くことも増え、日本茶だけでなく、お茶の種類も多種多様になるなど、400年前とは大きく暮らしが変化しています。それでもなお、日本で紡がれてきた400年のお茶の文化は客人をもてなす基本を教えてくれ、自らのまわりにあるものへ目を向ける、感性を研ぎ澄ましてくれるかのようです。

 

今の暮らしで、和の心を感じるお茶支度


流派が様々で難しい、決まりごとが多いという印象のある茶事ですが、抹茶の粉末とお茶を点てる茶筅(ちゃせん)という道具さえあれば、それ以外はキッチンにあるもので十分代用が可能。アイディア次第で和の心を感じるお茶支度が出来ます。



お茶のうつわ

 

茶事で使ううつわは、抹茶碗。お抹茶を点てて頂きます。抹茶碗はご飯茶碗よりも大きめで、たっぷりとした深さがあります。ご飯茶碗が半円を描く形をしているのに対し、抹茶碗はより寸胴に近い形。大きめではありながらも、片手で扱えるサイズになっています。



 

ZUTTOでは、京都で作られる華やかな清水焼の抹茶碗のお取り扱いがあります。西川貞三郎商店は大正6年から陶磁器を製造している老舗の窯元。
 


 


 

日本の美しい風景を連想させつつ、雪・月・花をコンセプトに見立て、釉薬の重なりが織りなす繊細さや、澄みきった職人の技と揺るぎない伝統、そして京の都ならではの華やかさに溢れたうつわを作っています。西川貞三郎商店の抹茶碗は、優美で大胆。菊や椿といった花々に加え、品のある黒楽といった様々なうつわがあります。
 

大きさがあり、少々形が特異な抹茶碗ですが、ご自宅に持っている方は少ないかもしれません。抹茶碗を持っていない場合は、少し大きめのご飯茶碗で代用するのも手です。

 




東屋(あづまや)の印判花茶碗は、抹茶碗よりも小ぶりながらも形が似ており、お茶用として使うことが出来ます。江戸時代から続く藍色の印判は、呉須(ごす)と呼ばれる顔料を転写しに吸わせ、手作業で素地に写していきます。白磁に藍色が映えるお茶碗です。


 



こちらは岐阜県を産地とする美濃焼、蔵珍窯(ぞうほうがま)の朱貫入飯碗 大。やや高さのあるお茶碗は、貫入によって施された「赤い器」と名の付いた美しいベンガラ(赤色)が特徴です。表面に細かなひび割れのように見える貫入は、陶土と釉薬の収縮率の差によって生じるもので、焼成が織りなす美しい模様ともいえます。

 

碗はお客様が唯一口に触れるもの。そしてホストの趣味が表れる部分でもあります。「来てくれてありがとう」「あなたにはこの碗が似合うと思って選んだよ」。そんな気持ちを表すのも、お茶のうつわの役割です。

 

気軽に始めるお茶の点て方:

1. ティースプーンに軽く1杯の抹茶をお茶碗に入れます。
2. 沸騰したお湯を一度湯冷しに移してから(なければマグカップや飯碗でOK)、碗に適量注ぎます。
3. お湯通しした茶筅で「m」を書くように素早くかき混ぜます。
4. 細かい泡が立ったら、最後に「の」を書くように茶筅をそっと抜きます。
5. お茶碗の正面がお客様に向くように置きます。





菓子切りとふくさ


お茶の時間のもうひとつの楽しみ、お菓子。お菓子はお茶をより美味しく頂くための脇役でもあります。

 

お盆:山道長手盆/輪島キリモト


茶事で頂くお菓子にも、生菓子・干菓子といった種類がありますが、餡の入った生菓子を普段のお茶の時間に頂く方も多いのでは。生菓子を出す場合に役立つのが、菓子切りです。

 



手で持ちやすいようにと考えられた輪島キリモトの和菓子切りは、少し大きめのサイズ。しっかり手に持つことができ、滑らかなカーブを描く先端は切れ味抜群。美味しさの詰まった和菓子も潰すことなく切ることが出来ます。 木目がうっすらと見えるのは、漆を擦り込み、拭き取る、を繰り返す拭き漆の技法によるもの。素材の木目が浮かび上がるような仕上げによるもの。縁部分は丁寧に面取りをしており、非常にスムーズな手触りになっています。 




もし菓子切りがない場合は、木製のフォークで代用してみても。金属よりもあたりが柔らかな木製のフォークは、立てて使えば生菓子もすっと切ることが出来ます。公長齋小菅(こうちょうさいこすが)の鶴フォーク5本セットは、しなやかな竹の曲がりを活かし、鶴を模したフォーク。おめでたい鶴のモチーフは、来客用にぴったりです。

 

 

また、茶事ではふくさと呼ばれる布をお茶を点てる際に拭うために使ったり、茶器にあてがって使うことがあります。一般的に絹で作られることの多いふくさですが、柔らかなクロスでも代用が可能です。綿で作られた遊中川(ゆうなかがわ)の花ふきんは吸水性、速乾性に優れたクロス。普段は食器拭きなどにも使え、使っていくうちにどんどん柔らかくなっていきます。パステルカラーの優しい色合いが揃っているので、茶器や季節に合わせて選んでみるのも良いですね。

 

おもてなしの空間
 

茶事は茶道具だけでなく、お茶を頂く空間もまた、重要な意味を持っています。茶室では、旬の花をしつらえ、茶事の主題を示す掛物(掛け軸)が掛けられている。さらに千利休が確立した茶の湯では、茶室の窓から見える庭園の風景までも、季節の移ろいを感じられるように工夫されていたのだとか。口にするものだけでなく、視覚や嗅覚といったそのほかの五感でも「おもてなし」の心が伝えられるようにと、お茶の文化は教えてくれるようです。

 

花器:フラワーベース suzu/能作

写真立て:フォトスタンド(ナチュラル)/Oak Village

 

花のように、自然のものは空間づくりに一役買ってくれます。例えばお花でも一輪花器に生けるだけでも、その場をぐんと華やかにしてくれます。その季節の旬のお花を選ぶことで、日本の四季を目で見て、花の香りで感じることが出来ます。春なら例えば、可憐なスイートピーを。

能作(のうさく)のフラワーベース suzuシリーズは、果実を模した錫製の花器。シンプルな銀色の花器はどんなお花にも合い、空間を品良く引き締めてくれます。

また、立派な掛け軸を準備するのが難しくても、例えばフォトフレームに季節を感じる写真やポストカードを飾ってみても。Oak Village(オークヴィレッジ)のフォトスタンドは、丈夫なナラ材で作られており、ナチュラルな木製の質感を感じられます。縦・横、どちらにしても使えるのも便利なポイントです。

 

さあ、これでお客様を迎える準備が整いました。



 

茶事に学ぶ、モノとの向き合い方

 

茶事はその空間だけでなく、モノの扱い方や自分の行為を見直すことの出来る機会でもあります。
 

碗のような割れ物は低い位置で扱い、指を揃えて丁寧に扱う。ちょっとした気遣いの仕草は、まわりから見ても美しいもの。

 

湯呑みなどに比べると大きめの抹茶碗。持ち上げる際には片手でなく、もう一方の手を添える。両手で大切に持ち、お茶を頂く。お茶を点てる際にも、底面を畳に付けて安定させながら行う。器を置く際はふくさを敷く…。こうした一連の動作の中には、ささやかなモノへの気遣いが溢れています。



持っていると便利な懐紙。お菓子を置くだけでなく、コースター代わりにも。

 

また、清めることも茶事の大事な作法。口を付けた茶碗をふくさで拭う。お菓子の下には懐紙を敷く。使い終わったら自ら整えて清める。ものを清潔に保つ。汚れを取り除くという意味で、茶事に限らず日々の整理整頓や食事のマナーにも通ずる「清める」という行為。言葉にしてみれば当たり前のことではありますが、暮らしの中での心がけを今一度思い出させてくれます。

 

 

かしこまったイメージの強い茶事でも、こうしてひとつひとつの道具と作法の意味を見ていくと、お客様へのもてなし方、ものに対する考え方、季節の感じ方、など様々な要素が織り交ぜられていることが分かります。花々が開き、鳥のさえずりが聞こえる春のたけなわ、気心の知れた方とともに、お茶をたしなんでみませんか。

 

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投稿者: 植田 日時: 2018年04月01日 16:20 | permalink

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