日本には、古くから受け継がれてきた窯元があります。窯元によって、原料、焼き方、仕上げが異なり、同じ日本の中でも、全国各地で多種多様な陶磁器が作り続けられています。それぞれに歴史が詰まった焼きものの魅力をご紹介します。
器は大きく分けて、陶器と磁器に分けられます。
「土もの」とも呼ばれる陶器は、原料が土。各地で取れる土をこね、焼成して器となります。
愛媛県砥部町で安永6年(1777年)から生産されている、中田窯の砥部焼(とべやき)。白の素地に鉄粉が入った、素朴で味わい深い器です。陶石を1300℃前後で焼成した硬い素地は、厚みがあり頑丈で、陶器らしいどっしりとした安定感が魅力です。
陶器と対になるのが、「石もの」の磁器。磁器は、原料となる石英や長石を砕いて練り、高温で焼き付けて作られます。嘉久正窯(かくしょうがま)の器は、長崎県佐世保市を代表する磁器、三川内焼(みかわちやき)。きめ細やかで、まるでガラスのようにつるつるとした表面を持っています。
器を彩るのは、絵付け。手作業で絵付けされた器は、線の太さや濃淡によって一点一点が微妙に違う表情を見せます。失敗の効かない絵付けは、職人の腕の見せどころでもあります。
京都生まれの西川貞三郎商店の清水焼(きよみずやき)は、日本の美しい風景を連想させる、松や雪、月や花が描かれています。釉薬の重なりが織りなす繊細さと華やかさを愉しむ京の遊び心を感じられます。
佐賀県の有田焼の窯元、李荘窯(りそうがま)の染付は、大きな筆で呉須と呼ばれるコバルト色の下絵の具を生地に染みこませながら絵付けしていきます。松やよろけ縞など、伝統的なモチーフが美しく描かれています。
扱う前に知っておきたい、焼きものの特徴のひとつ、貫入(かんにゅう)。
貫入とは、陶磁器の表面に表れる細かなひび割れの現象です。ひび割れ、と聞くと驚く方もいらっしゃるかもしれませんが、これは器の素地と上にかけた釉薬の収縮率の違いによって起きる現象です。手で触れて、ひっかかりがなければ、ひび割れではなく貫入になります。貫入が起きても、水漏れが起きることはなく器ならではの特徴として、楽しめるポイントです。
器の表面に表れた、きめ細やかな貫入が美しい蔵珍窯(ぞうほうがま)の器。1000日の歳月をかけて作り出した貴重なベンガラ(紅柄)の色合いを同時にお楽しみ頂けます。
和食器は、一器多用という言葉があるように、特定の用途が定められておらず、様々なシーンで扱うことが出来ます。
1. 嘉久正窯(かくしょうがま)の反杯(そりさかずき)は杯とはいえ、幅があるので小鉢としてもお使い頂けます。小さく種類がありますので、テーブルを可愛らしく見せてくれます。
2. 西川貞三郎商店の抹茶碗はその名の通り抹茶のためのお椀として作られてはいますが、程良い深さがあり手に持ちやすいことから、煮物やサラダを入れても、ちょうど良いサイズです。
蔵珍窯(ぞうほうがま)の朱貫入片口ボール。片口はお酒を入れるための容器として知られていますが、大きなサイズを活かして、お料理を入れても使えます。もしくは、花を生けてお部屋や玄関に飾っても素敵です。
器を長く使うためには、お手入れが欠かせません。器はその素材や装飾によってお手入れの方法を変えるのが重要になります。
・使う前は
土ものの陶器、また貫入している器は汚れが付きやすいという特徴があります。そのため、使う前に10分ほど水に浸けておくと、汚れにくくなります。
・使った後は
陶器の場合、お醤油やソース、油の色や臭いが付きやすいので、使った後は出来るだけ早めに洗います。また、吸水力が高いので、洗った後は乾いたクロスで拭いて十分に乾燥させます。表面は乾いていても、水分が残っているとカビの原因になりますので、ご注意を。
磁器は硬質のため、衝撃を受けると欠けやすい性質があります。取扱いには十分にご注意ください。
・しまい方
食器棚の中で重ねて収納している方が多いと思いますが、陶器は柔らかく割れやすいため、キッチンペーパーや布を挟んで重ねることをおすすめします。細かな絵付けが施された器も紙に包んでおくと安心です。
また、漆器と陶磁器は漆器が傷つきやすいので、一緒に重ねないようにします。
・電子レンジと食洗機
絵付けのないシンプルな陶磁器で、多少厚めのものであれば、電子レンジを使用出来ます。ただし熱を与えすぎると破損の原因になりますので、あくまでお料理を温める程度にします。特に金銀の絵付けの器、上絵付けの器は火花が散ったり変色の恐れがあるので、電子レンジは使用してはいけません。
尚、陶器はデリケートなので、食洗機での使用は避けたほうがベターです。