世界自然遺産に登録されているブナの希少な原生林が残る白神山地のほど近く。地元青森でブナを自在に操り、年輪のように美しい螺旋模様を描くBUNACO(ブナコ)の木工芸。それらは貴重な資源を無駄なく活用しながら、職人の手によってひとつひとつ大切に作り上げられています。持ってみるとしっくりと手に馴染むような形。ブナの艶やかな質感に触れていたくなるようなBUNACO作りの背景に迫っていくと ZUTTOとの共通点も見つかり、商品だけではないブランドの魅力が知れました。
年輪のように美しいBUNACOの螺旋模様
BUNACOの名前にもなっているブナの木。元々ブナは、枕木や薪などにしか使われない「役に立たない木」として戦後大量に伐採されていたものでした。というのも、家具などに使われる木材と比べ、ブナは幹に水分を多く含み、保水力に優れていることから、従来の木工加工技術では乾燥が難しいものとされていたそうです。使い道のないまま伐採されていくブナをどうにか生かせないかと、1950年代当時の青森県工業試験場(現 青森県産業技術センター)で、技術開発が行われてきました。
水分の多いブナの欠点を解消する画期的な技術が発明されたのは1956年のこと。ブナを薄いテープ状にし、木を十分乾燥させると、従来の木工品のような狂いや割れを生じないことが分かりました。更にブナの木は、硬くて弾力があり、曲げに強いのも特徴と言われています。そのブナの良さを最大限に引き出すのが、平面から立体へ押出成形するコイル構造だったのです。過去には、ブナ以外の木材でもいくつか試したことがあるようですが、粘り強さや硬さなどコイル構造を作るには、ブナほど適した素材はなく、BUNACOの商品は"ブナだからこそできる"造形だったようです。
工程1 ブナを薄い板に
大根のかつらむきのような方法で、ブナを厚さ1mm、長さ約2mの薄い板(単板)の状態にします。ここで木を十分に乾燥させることができるため、従来の木工品のような狂いや割れを生じることがないそう。
工程2 テープ状にカット
工程1で作られた薄板をテープ状にカットしていきます。幅はつくる製品によって様々。この状態だと、どうやってあの優雅な曲線ができあがるのかまだ想像がつきませんね。
工程3 巻き上げ
机に刺した釘で固定しながらテープをコイル状に巻きつけていきます。強すぎず弱すぎないというその力加減はとても難しく、成形にも影響する工程のため、熟練の技が必要となります。
工程4 成形
バウムクーヘンのようになった平面の巻き板を立体になるよう押し出して成型していきます。手に持つのは、陶器の湯呑み茶碗。様々なもので試した結果これが一番成形に向いているのだそう。ごりごりと押し当てながらテープをずらしていくことで、多様なフォルムを生み出しています。
実はこの製法、従来の削り出し製法に比べて1/10以下の資材で作ることができると言うから驚きです。確かに先ほど紹介した工程では、削り出し製法のように大量の木屑が出る場面はありませんでした。コロナ禍や、昨今の不安定な世界情勢も加わり、世界的に原材料の供給不足や価格高騰などの課題に直面する中でも、BUNACOの製法は貴重な木材を有効に使える製法とも言えますね。
さらにBUNACOでは、よりロスを減らすための“BUNACOの新たな取り組み”も始めていることを教えていただきました。
選別しないことで生まれる個体差も個性に。
どんなものが届くだろうとそれぞれの個体差も楽しみの一つに変えて、自分だけの特別なアイテムとして迎えたいBUNACO。続いては、ZUTTOがラインナップする商品を使い方を交えながらご紹介していきます。
クセのないナチュラルなブナらしいカラーのボウルは、丸鉢と円錐鉢の2パターンの形状があります。手に取ると艶やかな質感で、底の方から縁にかけてグラデーションのようにコイルが立ち上がっていき、手仕事で作られた木工芸品らしい温かな風合いを感じながら食事を楽しんでいただけます。
ボウル 円錐鉢 (大:#264、中: #268、小:#269)
サイズや形の展開が多いとどう選ぼうかと迷ってしまいそうですね。そこで、BUNACOのスタッフの方におすすめの使い方を伺ってみました。
使いやすさの観点はそれぞれの個性が出るもの。BUNACOのボウルはプレーンなデザインだからこそ、使い方の幅はいくらでも広がりそうですね。例えば、和食器・洋食器に合わせたとき、雰囲気はどう変わるのか検証してみました。
まずは、ボウル 円錐鉢(#269)をお茶碗に、和食器に合わせてみました。けやきで作られためいぼく椀や、色彩豊かな九谷焼のカワセミ長角皿などと合わせても、個性を打ち消すことなくお互いに引き立て合うように並んでいて、味噌汁に焼き鮭、梅干しなどと朝を気持ちよく迎えられそうな献立が目に浮かびます。素朴な風合いなので、漆塗りの食器とも相性が良さそうですね。
続いて、ボウル円錐鉢(#268)をサラダボウルに、洋食器に合わせてみました。洗練されたデザインのCutipolのカトラリーや艶やかな釉薬が美しく輝くクラシカルなプレート。ブナのすっきりとした色味に白い陶磁器がよく合い、友人を迎えて過ごすランチタイムなどおもてなしにもおすすめです。
ご紹介したように食器としてはもちろんのことですが、ブナの木目が優しく目を引くため、パントリーや戸棚などリビングから見えるところにお菓子や野菜を保管しておくカゴとしても使えそうで、キッチン周りで何かと活躍してくれるアイテムだと思います。
オーバル状の筒型がころんと可愛らしい印象のティッシュボックス。気になるティッシュの存在を程よく隠しながらちょっとしたインテリアとしても飾ることができます。
使い方はとても簡単で、丸く穴の空いた側面の板を外してティッシュを入れるだけ。筒の中には、取り外しのできる底板が付属されています。底板を使うと、ティッシュ箱の底の方まで指が届き、中にティッシュが入り込んだときもわざわざ箱を取り出して残りのティッシュを引き抜く手間なく使うことができます。
今回入れたティッシュ箱のサイズは高さ約5.5cmのもの。底板を使うならこれくらいの高さがティッシュボックスに入れられる限度じゃないかと思います。底板を外して使う場合は約7cmほどの高さのティッシュボックスが入れらました。保湿系の上質なティッシュだと箱の高さが10cm近くなるものもあるため、箱が大きすぎる場合は中身だけ入れるなど工夫が必要です。
楕円状で通常のティッシュボックスよりも大きく感じられますが、縦向きに置くこともできるので寝室の小さなサイドテーブルにも難なく置くことができました。優しいブナの質感がさり気なくお部屋を引き立てくれていますね。
落ち着いた雰囲気にカラーリングされたレターホルダー。ティッシュボックス同様に本体が一枚のブナの皮で覆われているため、素材そのものの質感が感じられ、散らかったデスク周りを整然と整えてくれるようなアイテムです。
届いた封筒やメモ帳などを入れておくこともできますが、スタッフがおすすめしたいのはマスクホルダー。市販の不織布マスクをその時の気分に合わせて買い替えているため、どんな形状のマスクでも入れられるものを探していたのですが、これならある程度幅のあるものも入れられますよ。平置きではなく縦に入れられると、お出かけ前の時間がないときもさっと取り出すことができて、とても重宝しています。
木製品は、ヒビ割れや歪みなどがないようにお手入れに慎重になってしまうものですが、BUNACOはポイントを抑えればとっても簡単です。ただし、同じブナ製でも用途によってお手入れの方法が変わるのでご注意ください。
【食器(テーブルウェア)のお手入れ】
対象となる商品(ボウル 丸鉢 / ボウル 円錐鉢 / ボウル 浅鉢 / BUNACO オーバルトレイ)
【食器以外の商品のお手入れ】
対象となる商品(BUNACO ティッシュボックス / BUNACO ペンスタンド / BUNACO レターホルダー ショート / BUNACO ペントレイ / BUNACO ダストビン)
最後に紹介したいのは、青森の西目屋村という小さな村にあるBUNACOの工場のこと。実はこの工場、統廃合により空き校舎となった西目屋小学校を活用しているそうです。ZUTTOでも廃校となった小学校の体育館を倉庫に、職員室をオフィスとして活用しているため、意外な共通点があることに嬉しくなりました。子どもたちの成長を見守る学舎は、大きくなっても心の拠り所とも言えるような場所。そんな地域の資産に新たな価値を付け加え、人が再び集まり長く愛される場所を作る姿は、ブナを余すことなく大切に使い続けるBUNACOらしさを表しているようで、一層BUNACOの魅力に引き込まれていきます。
ブナコ西目屋工場では、製作工程の見学やBUNACO製作体験プログラム、更にはBUNACO製品で彩られた“ブナコカフェ”や“ミニショップ”を併設し、一般の人もものづくりを体感できる施設となっているそうです。作り手と繋がれる機会に触れると、一層その商品に愛着を抱き大切に使いたくなるようなきっかけにもなりますね。青森の小さな村で、作り手も使い手も互いに良い刺激し合うBUNACO。これからどんな商品が生み出されるのか、期待をせずにはいられません。
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