今回取り上げるのは、Macon&Lesquoy(マコンエレスコア)のワッペンとブローチ。「金銀細工」を意味するカンティーユの技術を用いて施された細工をよくよく見てみると、その繊細な技術と美意識に心を奪われます。
ブローチは職人による手刺繍、ワッペンは機械刺繍と、コストバランスの良さで様々な方に受け入れられるような製造手法を持っていますが、それぞれのアイテムに共通している想いは、「お気に入りをお気に入りのまま、長く愛用することが出来るように」ということでした。
フランスのブランドであるMacon&Lesquoy(マコンエレスコア)が生まれたのは、2009年のこと。デザイン学校で出会った2人の女性が、「実用的かつ宝物のように大切にしたくなる、特別なもの」を作りたいと、立ち上げたブランドです。
2人は、単に美しく着飾るためだけのものは作らず、ものが溢れもはや新しいものは何も必要としないこの社会で新しい製品を作ることの意義を考え、「本当に役立ち、価値のあるもの」として選んだアイテムがブローチとワッペンでした。
そこにはこんな想いが。
母から受け継いだトレンチコートにシミ。
奮発して購入したカシミヤニットに虫食い。
誰もが抱える、お気に入りや受け継ぎたい洋服の汚れや穴、傷の問題。着続けることは出来ないと諦めてきた気持ちの救世主になることが出来れば、それは本当に価値のあるものになる。
ブローチやワッペンでそのシミや穴を隠しているのだけれど、実際はそれだけではなく、もとの洋服をより一層素敵に見せてくれる。小さなビジューにはそんな物語が潜んでいます。
加えて、シミや穴が無くてもMacon&Lesquoy(マコンエレスコア)のブローチやワッペンはシンプルなウェアのポイントとなりエレガントに飾ってくれます。どこか詩的でユーモア溢れるモチーフが多く、見るだけで幸せな気持ちになるのです。
△パリにある、Macon&Lesquoy(マコンエレスコア)の直営店
そんなMacon&Lesquoy(マコンエレスコア)のブローチとワッペン、それぞれ異なる方法で刺繍が施されているのですが、まずはその技法の違いを紐解いていきましょう。
【ブローチ】
職人による技術力がより光るのはブローチのほうです。
繊細なブローチを見てみると、刺繍糸ではなくコイルのような金属線でモチーフがデザインされていることが分かるでしょうか。
柔らかい銅線に金や銀、赤や青などのカラフルな色を施し、カンティーユと呼ばれるフランスの伝統的な技法を用いてフェルト地に手刺繍を行っています。
カンティーユとは、金属線を自在に曲げて必要な長さにカットしモチーフに刺繍し仕上げる技法です。産業革命後、金価格が上昇した際に少ない金でジュエリーを作るためにフランスで開発されたといいます。そのためもともとは「金銀細工」を意味するカンティーユ。ひと針ずつ刺繍を刺したような繊細さから、金属の刺繍とも言われています。
Macon&Lesquoy(マコンエレスコア)の手刺繍ブローチはパキスタンの自社アトリエで職人達がひと針ひと針手掛けています。パキスタンの職人達の技術力は非常に高く、代々受け継がれるノウハウと技術はフランスと同じくらい長い歴史を誇るのだとか。
アトリエを切り盛りするアドナンさんの祖父は、パキスタンがイギリスの植民地だった時代、軍服に刺繍を施す職人であったといいます。腕の良さに定評があった祖父から父へ、そして子へとその技は引き継がれ、磨かれているのです。
カンティーユは少ない金属で豪華なビジューに仕上げる技法ですが、軽いのが特徴です。更に、フェルト生地に刺繍をしていることから、ブローチとして非常に軽い仕上がり。
軽いということはつまり、縫い付ける洋服の生地を傷めにくいので、これはMacon&Lesquoy(マコンエレスコア)が目指す、「洋服のリペア」や「シンプルな洋服にポイントを」という使い方に対して理に適っているのです。
【ワッペン】
ブローチに対して、ワッペンは機械で刺繍を施しています。糸は金糸や銀糸ではなく、レーヨンやナイロン糸を使用しています。アイロンで熱処理をして接着させるワッペンには金糸銀糸を使用することは出来ません。ですので、必然とも言える素材選びなのですが、機械刺繍だからといってブランドの技術力が関係ない、ということではありません。
Macon&Lesquoy(マコンエレスコア)のワッペン達は全てポルトガルの工場で作られているのですが、ポルトガルはアパレル産業が発展しており、洋服の仕上げに欠かせない刺繍や装飾を専門に手がける小さなアトリエが数多く存在しているそうです。
そして機械刺繍でも、人間による技術や感覚というのはとても大事で、Macon&Lesquoy(マコンエレスコア)の、小さく緻密で色彩豊かなワッペンをデザイン画に忠実に再現するためには熟練した刺繍プログラマーが必要ですし、どんな小さなモデルでも正確な位置に刺繍針を刺す完璧な仕事ぶりが徹底されています。
一般的な機械に比べ、同じ面積により多くのステッチを施すことが可能なポルトガルの刺繍用機械により、動物の毛並みやスベスベとした質感など、デザインに合った表情を生み出すことが出来るのです。
Macon&Lesquoy(マコンエレスコア)の素敵なコンセプトと製造背景に触れ、「ぜひ、ワッペンでカスタマイズしてみたい!」というスタッフが。実際にお気に入りのカットソーにMacon&Lesquoy(マコンエレスコア)のワッペンを付けてみました。
選んだのは、こちらの2つ。
ワッペン CLASSICのmarmot(マーモット)と、ワッペン HIVER18のcat on the roof。両方とも動物をセレクトしました。
まずはワッペンの刺繍をまじまじと眺めるスタッフ。
「モチーフや色合いが愛らしいですね!マーモットがヘッドフォンを付けて音楽を聴いていたり、ネコが屋根の上で伸びをしていたり、ディテールにほっこりします。何に付けようかな、とワクワクしてきますね。」
悩みに悩んで、お気に入りのLe minor (ルミノア)ボーダーカットソーにワッペンを付けることにしました。
ステップ1:生地を確認する
今回のカットソーはコットン100%だったので、アイロンで取り付け可能です。
ウール、カシミヤ、シルク、ナイロン、レザーなどの繊細な素材にはアイロンではなく、手縫いでワッペンを取り付けてくださいね。
ステップ2:付ける箇所を決める
・Le minor バスクシャツ 115 MARINE/BLANC
「ワッペンの定番は胸元や肩の付近だけれど、そこまで主張させないように裾に付けることにします。気が付く人だけが気が付く、というのもいいですよね。」
ステップ3:アイロンで取り付け
△実際はあて布をしてくださいね。
アイロンを高温にし、当て布をして20秒間押しあてます。生地を裏返し、今度は裏側からも20秒間アイロンを当ててください。ワッペンの端がきちんと付いているかを確認してください。剥がれてしまうようなら、アイロンが高温になっているか確認し、再度取り付けてください。
「簡単に取り付けられました!長年着ているいつものボーダーカットソーがまた違う印象になって嬉しいですね。自分で付けたから愛着も更に湧いてきそう。もうひとつのネコのワッペンはもうちょっと考えて、バッグかキャンバススニーカーに付けてみようと思います。」
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ここで湧く疑問。「ワッペンを付けた洋服は洗えるの?」
メーカーに聞くと、ワッペンは洗濯機で洗えますが、必ず「ワッペン面を裏返して」洗ってくださいとのこと。洗濯の摩擦でワッペンが擦れてしまわないようにしましょう。
また、ワッペンを取り付ける洋服も、洗濯機での洗濯がOKのものにしてくださいね。
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Macon&Lesquoy(マコンエレスコア)のワッペンとブローチ。手法は違えど、ブランドが打ち出すコンセプトをきちんと体現しているこれらのアイテムたちの魅力は非常に高く、まるで物語のようなデザインの世界観にも惹き込まれます。2つ3つと組み合わせて自分だけのストーリーを作るのも素敵ですし、友人への贈り物に選ぶのもオススメです。
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