生け花って難しいのかな・・・、生け花教室に通ってみる勇気まではでない・・・、とお花が好きな方であれば、興味を持ったことがあるのではないでしょうか。
生け花は、花鋏さえあれば楽しめるといいますが、剣山も使ってみたいという方の導入アイテムとして、「針のない剣山」をご紹介します。その使い方と、一緒に生け花のコツをお花のスペシャリストに教えていただきました。
「生け花は、立派に飾る必要なく、お花を飾りたい気持ちを大事に、手軽に創意工夫で楽しむスタンスでやってみるのでいいんだよ。」
いいなと思ったお花が気持ち良さそうに生けられれば、自由でいいと話す華道家の玉野さん。
「この「針のない剣山」は、生け花のいくつかの難しいルールを省くように楽しめるもので、一輪を庭や植木から摘んで部屋に飾ることができる道具だね。」
「剣山はね、もともと「こみわら(しっかりと束ねて留めた藁)」を束ねたものの断面を使っていたのが始まりで、藁の茎の断面はストロー上の空洞だから、KAMAHACHI(カマハチ)の剣山は、ルーツに近く自然な形になるね。」
「針のない剣山」のような道具はお花の業界ではよく使うものですか?と聞いてみると、
「展覧会などに使うことはないけど、庭の草花や植木から緑を取り込めるため、自宅などで使うかな。」
この日も庭のお花を持ってきてくれましたが、花瓶の花が弱ってきて短くなった時も、こうした針のない剣山は最後まで楽しめるので、自宅で少し生け花を楽しみたいという方にはおすすめということでした。
▲水を入れる容器も一体となったハート型の剣山は、手のひらに収まる小さなもので、ちょっとしたスペースに飾れる良さがあります。
玉野さんはこれに一輪のバラを差して葉を取っていました。
「水を入れる容器の容量が限られているため、小さな花向きだね。」
例えばレストランやカフェのテーブルに小さな花が飾られているようなイメージで使うに良いということ。その他にも棚のちょっとしたスペースや、玄関や洗面台、トイレにキッチンの窓辺にも飾ることができます。針がない安全性からもどこにでも飾ることができて、使いやすいのは「針のない剣山」の魅力ですね。
ここからは、基本の使い方からお伝えしていきます。まずは、剣山の大きさなどをお伝えするために生けたのはこちらです。
「容器に入る水量が限られているため、吸水が少量で良い小さな花を生けるのがおすすめで、アレンジメントや頂いたもので、茎が短くなったもの、生き残った花を最後まで楽しむために使うのが良いと思う。」
と教わったので短くなったお花を生けてみました。
▼下は、針のない剣山Lサイズです。水盤に使用したガラスの容器は、HOLMEGAARD(ホルムガード)のオールドイングリッシュ ベースです。ガラスのベースに剣山を入れて。すくっと立っているのにも方法(花留め)がありましたので後ほどご紹介します。
「穴は何個もあるけど、全部の穴を使おうとせず、まずは一つの穴を使って完成させる方がいいよ。」
一つの穴でまとめることで、水際が綺麗に見えて、植物が凛としてみえるので、多すぎる枝は適度に剪定して生けるのがコツということ。
そして、お花を庭から取る時際は朝晩がおすすめとのこと。それは、日中のお花は根から吸い上げた水の蒸散体勢になっていることが理由で、朝晩の草花のきゅっと締まった状態で取るのが持ちが良いのだそうです。
「カットする時のポイントは、花の正面を確認して飾る向きを決めたら、茎は斜めに切ること。花鋏で斜めに切ることで、剣山の穴の内側面に茎の切り口を沿わせるようにすることで、茎のカーブは自然で、大地に映えているようになってお花の見どころになるからね。」
↓このように太い枝物はそのまま1本で剣山の穴に立つことがあります。斜めに切って、穴の壁面に切断面を合わせるようにします。
▲ここで使ったのは、針のない剣山Sプレートセットの剣山と白化粧十草 6寸鉢セットです。
少し深さのある和食器と合わせるのもなかなか良いものです。葉っぱは器の縁につかないように生けるのがコツということ。
「縁に寄りかかってしまうように見えるより、しっかりと自立してみせる方が花がイキイキして見えるでしょ。」
確かに、傾けて生けることで自然で奥ゆかしい表情です。
細い茎の生け方として、花留めという方法も教えていただきました。花を美しく安定させて生けるための工夫で、枝を切って隙間に詰める方法や椿のようなコシのある葉っぱをくるくる丸めて穴に入れる方法があるそうです。
先に花留めを入れてから花を挿しても良いですし、穴に花を挿してから花留めを入れるのでもどちらでも良いということで、工作みたいで楽しいので一度お試しください。
NG例も教えてくれました。針のある剣山では、生けた時に針が見えることはNGとされていて葉っぱの自然な動きで隠す必要がありますが、この針のない剣山は見せても良いものです。
剣山も含めて見せることができるのは生け花のハードルも下がります。また、穴はたくさん使いすぎると、水際がごちゃごちゃして見えるので、使う穴は最小にするのもコツだそうです。
▲NG例 これは生けた花を真横からみたものですが、正面から見た時にこのようにならないように、複数本生ける時は横の穴にあちこち挿すより正面から見た時に後ろの穴で挿していくのが良いということですね。
「使わない剣山の穴が見えてもかわいいのがこの針のない剣山の良さと佇まいであって見せて良いので初心者にも使いやすいんだよ。」
▲OK例は、このように、正面からみるとひとまとまりになることです。あちこち挿してしまいそうになってしまいますが、これは大事なポイントです。散らかって見えず水面も綺麗に見えて素敵です。
▲こちらの水盤にしたのは HORITSUKE(ほりつけ)の十草入れ子ボウルセットです。うどんを盛り付けるに良い器に新たな可能性がみえたので、家にある食器でもお試しいただきたい工夫です。
そして、複数本生ける時には長さは揃えず、あえて高低差をつけて、それぞれのお花が綺麗にみえる角度で生けるのもコツです。
この日は秋の始まりの日の取材でしたが。景色を作るには、草花は小さな花をたくさん生けると季節らしさがでるということで、秋の風景に見るススキも入りました。春には新芽や桜、夏には朝顔やひまわり、冬には松や南天など、その時期ならではの植物を取り入れるのも、日本の暮らしの楽しみ方ですね。その他にも、水位で季節を生ける表現もあって、梅雨の時はたっぷりと、冬は少なめにするという見せ方も。生け花はやっぱり面白いですね。
▲こうした使い方も即興で見せていただきました。
口の小さい花器の上にのせることで、一輪挿しのように使うことができます。これも針のある剣山ではできない使い方で、器と剣山との合わせで新しい花器ができました。剣山が硬いものなので繊細な器にはのせない方が良いということです。
できるだけ1日1回、水換えをしてください。水を変えるときには容器もざっと洗い、草花を切り直すことでより花も長持ちします。また、直接冷暖房の風に当たらないところで、気温が高くなりすぎない場所に飾るのがおすすめです。
「正解がどうかで生けるのではなく、創意工夫して楽しむことが大事なこと。」
と玉野さんから教わった生け花です。針のない剣山を使えば、難しそうに見える生け花も気軽に楽しむことができ、植物は暮らしをより一層彩ることを感じた取材でした。
<使った花材>
・雲龍柳
・ケイトウ 2種類
・マム
・バラ(レオナルドダヴィンチ)
・雪柳
・ハイビスカス
・ススキ
最後に道具をテーブルの上にひとまとめにして、使わない時もそっとインテリアにおいておくだけでも心が整えることもできると教えてくれました。
四季の絵柄が描かれたハンカチは、きちんと紅葉柄を見えるように畳まれて。
花鋏はお借りしたものですが、ZUTTOでも播州刃物の生花用鋏をご用意しています。
生け花以外にも、針のない剣山は様々な用途で活用できます。日本の伝統的な技術で作られている剣山には佇まいがあります。インテリアとして成立する存在感と素材特性を活かし、ペーパーウェイトやペン立て、アクセサリー入れ、お香用など。使わない時にもそっとインテリアにおいておくだけで雰囲気も良い針のない剣山です。