とく、とく、とく。
今日は大人に、お酒のお話を。
冷酒も熱燗も水割りも、お酒のための道具が揃えば
雰囲気も相まってより一層美味しく感じるものです。
お酒を美味しく飲むための「酒器」に注目し、
そのサイズや形状による違いを比べていきましょう。
日本で「お酒」と言うと清酒(日本酒)を真っ先に
思い浮かべる方が多いかと思います。
お酒は古来より、神に祀られたもので、慶事の象徴。
結婚式での三三九度、新たに建物を建てる際の地鎮祭(じちんさい)
でもお酒をもって神への儀式を行いますね。
お神酒(おみき)を神前に備え、その後お神酒を
実際に頂きますが、これは神様の霊力を分けて頂くという意味合いがあります。
お酒と神様・神事は切っても切れない関係で、
そのため、お酒に関連する酒器に描かれる文様は縁起が良いものが多く、
結婚祝いや引っ越し祝いなどの贈り物としてもおすすめです。
さて、話を酒器に転じます。
酒器とは、お酒を飲むための器ですが、その種類は実に様々。
お猪口、ぐい呑み、杯、タンブラー、徳利、銚子など。
加えて、陶器やガラス、錫などの素材の違いもありますね。
「杯(さかずき)をする」という言葉が約束や誓いを交わすという
意味であるように、元来、杯は単にお酒を飲むだけの容器ではありませんでした。
スポーツなどで優勝した際に贈られるトロフィーも、
元々は古代ギリシャ時代、戦争の戦利品のカップで
英雄に酒を勧めたことからきているそうです。
つまり酒器は、人間関係、名誉、格式、儀式などの様々な文化事象と関連付いた道具なのです。
そういった歴史的、文化的な背景を知るのもなかなか面白いものですね。
様々なサイズと素材がある中で、どの酒器を選べば良いのでしょう。
酒器を選ぶ際に気にすべきはこちら。
・自分(や相手)が飲む量
・冷酒か熱燗か
・どういう種類のお酒が好みか
そういった好みを踏まえた上で、
まずはサイズで選んでいきます。
サイズ、つまり容量ですね。
酒器の中で小さいものはお猪口を連想しますが、
お猪口は、少ないことを表す「ちょっと」を語源とする「ちょく」や
飾り気がないことを表す「ちょく(直)」が元になっているそうです。
そのためお猪口はサイズ的にも小さく、かわいらしい印象ですね。
一度に入れられる量が少ないので、温度の変化が少なく
冷酒は冷たいまま次の一杯に進めます。
「ちびちび飲む」とよく言いますが、そういった方には
まさにお猪口がぴったりです。
カラフルな万華鏡のような、美しいガラスのお猪口セット。
津軽びいどろの五様ミニグラスセットは、ハンドメイドならではの
いびつさや愛嬌を持ち合わせています。
友人同士で、どの色にしよう?と悩むのも楽しそうです。
津軽びいどろは、青森の老舗ガラスメーカーが手掛けるブランド。
長年の浮玉製造で培った「宙吹き」等の技法を用い、
青森の自然をイメージさせるハンドメイドガラスの創作を行います。
「宙吹き」とは、溶かしたガラスを吹き棹に付け、
反対側から息を吹き込んで形を整えていく技法です。
自由自在な成型が可能な分、職人の腕が試される技法でもあります。
懐かしさをも感じる、宮本泰山堂(みやもとたいざんどう)の唐草丸紋組盃。
高めの高台で、植物の茎やつる,これらに花,葉,実などを
つけた連続文様が、丸紋と共に描かれた盃です。
丸紋は、古くから「円(縁)がつながる」縁起の良い紋様、
唐草もまた繁栄象徴の吉祥文様です。
古九谷の本流伝統と言われる色絵磁器を中心に「伝統とモダンの融合」
「何よりも楽しんで使える器」をテーマとした作陶を行っています。
一方ぐい呑みは、お猪口よりも一回り大きくて深い酒器を指します。
ぐいぐい呑み進めるようなもので、日本酒だけでなく焼酎や
ウィスキーにもおすすめです。
容量が多いので、冷酒の場合飲むペースによっては
途中でぬるくなってきてしまうことも。
サイズを選ぶ、という点でいうと自分や相手の飲む量、
ペースを把握することも必要そうです。
美しいカッティングに惚れ惚れしてしまう江戸切子のぐい呑み。
手に取って、色んな角度から眺めると、彫刻のように刻まれた文様に
光が反射し、まるで万華鏡を覗き込んでいるようです。
透き通る彩色がその美しさをより一層引き立てて、
見ていて飽きない江戸切子です。
涼しげな見た目からも、特に夏におすすめ。
嘉久正窯(かくしょうがま)の反杯(そりさかずき)は
持ちやすいサイズ感で、上に向かって湾曲しながら口を開いています。
純白の白さを誇る三川内焼は、他のやきものに比べて
抜きん出ていると言われる程滑らかな白で、繊細な文様がより引き立ちます。
白い肌に澄んだ青い色で描かれる独特の染付は、
呉須(ごす)と呼ばれる藍色の染料で描かれ、濃淡を活かし、
立体感や遠近感が表現されてきました。
飲む際に唇に触れる、飲み口の厚みによってもお酒の印象は変わってきます。
それは往々にして、素材によって決定づけられることですが、
薄いガラスはシャープで繊細なお酒の味がダイレクトに伝わりますし、
木や漆などの厚みがあるものは優しい口当たりとなり、まろやかな味わいに感じます。
輪島キリモトの漆器のぐい呑み。
漆器だからと言って特別扱いせず、普段使いすることが
何よりのケアとなります。
冷酒も熱燗も、持った時に温度を感じにくいので
優しい使い心地です。朱色と黒の2種類ご用意がありますので、
ペアにして結婚のお祝いとして贈るのも良いですね。
能作のぐい呑みは錫100%で作られています。
錫には抗菌作用があり、お酒や水の雑味が抜け、
味と口当たりがまろやかになると言われています。
飲み口は、薄すぎず厚すぎず。ですが、錫自体がヒンヤリ
とした素材なので冷たい飲み物の時の口当たりは抜群です。
錫は熱伝導率が良いので、冷蔵庫で数分冷やすと
十分な冷たさになるのも嬉しい点です。
ビアカップやタンブラーにビールを注ぐと内側の凸凹で
きめ細かい泡が立ちますよ。
磁器の酒器は、薄めでツルツルとした口当たりで
冷酒にも熱燗にもどちらにもおすすめです。
把手付盃シリーズはとても小さいサイズで、かつ把手が
付いているかわいらしい印象で女性への贈り物にも。
上出長右衛門窯(かみでちょうえもんがま)は135年余の
歴史を持つ九谷焼窯元で、磁器の成形から絵付までを一貫生産する老舗です。
その手作り・手描きで作られる製品は、彩り鮮やかな
上絵付けと深い発色の染付け、何より丈夫で美しい生地が魅力的です。
能作(のうさく)の「ふたえ」のように、
上に向かって口がすぼまっているものは
香りを閉じ込め、強めます。
逆に「江戸切子 重矢来文様 ミニオールド ペア」のように、
上に向かって口が大きく開いているほうが
注いだ時の表面積が広いので、酸化が促され
芳香成分の揮発によりお酒の香りを豊かにしつつ、
アルコール臭を飛ばすと言われています。
どちらが良いということではなく、
香りをどのように楽しみたいかによって、選ぶ形状は変わってくるのです。
徳利とお猪口が揃っていれば雰囲気も味わいも良いものです。
お酒を瓶から直接お猪口やぐい呑みに注ぐのではなく
徳利や片口に入れてから頂きましょう。
上出長右衛門窯(かみでちょうえもんがま)には、
徳利とお猪口のデザインが揃っているものが2つあります。
徳利にもお猪口にも把手がついている珍しいデザインで、
何ともかわいらしい印象です。
把手があることで熱燗でも持ちやすく、機能面でも
その存在感を発揮します。
シンプルで使いやすいものなら白山陶器です。
模様のない真っ白な波佐見焼き、でも徳利はまるでペンギンが
ちょこんと立っているかのような、遊び心感じるフォルム。
ぽっこりとしたお腹は持ちやすく、
くちばしのような注ぎ口は、お酒を注ぎやすく。
白山陶器は華やかな美しさではなく、かといって平凡なものでもない、
「使っていて飽きのこないデザイン」を、そしてその「愛着」へ
応える姿勢を大切にしています。
津軽びいどろの片口とおちょこが2つセットになっています。
ひねりの効いた片口は、まるで花瓶のような美しいフォルム。
底のほうが細いので、持ちやすく注ぎやすいのが便利なポイント。
揃いのおちょこは見た目はシンプルでも、ほどよく凹凸が付いた
デザインが他にはない存在感を醸し出しています。
耐熱なので熱湯や電子レンジでも使用出来、ガラス製なのに
熱燗までも楽しめるので、お酌に欠かせない存在になります。
今回は、酒器選びのポイントをご紹介しました。
専門家やお酒好きの方によると、本当に酒器のサイズや素材で
味わいが変わってくるので、自分の好みの飲み方やペースに
合うものを見つけて欲しい、と仰っていました。
自分の好きな人達やものと一緒に楽しむお酒は、きっと格別ですね。