工業製品で多く使われている鉄ですが、昔からの調理器具では南部鉄器が代表的で、鉄鍋・フライパン・鉄瓶などがあります。南部鉄器は、17世紀の茶道具として鉄瓶が使われたことがその始まりで、今も料理好きや道具好きの方たちに愛用されています。身近なところでは鉄製の鍋は中華料理店やステーキ・焼肉屋さんの鉄板などでも使用され、それらの調理法からもわかるように、鉄素材は強火の熱に耐えられるように頑丈で、一度熱くなると温度が下がりにくい性質があります。
どんな素材にもその良し悪しがありますが、鉄のフライパンでその素材のいいところと難しいところをあげてみるとこのようなことがあります。
❶壊れるといったことがなく、丈夫で長く使える。
❷使えば使うほど油がなじみが良くなり、おいしく調理できる。
❸料理がおいしくなる。
❹食材を均一に加熱できる。
その他、鉄瓶の場合には、水がまろやかになると言われていますので、お茶を沸かして飲む方や白湯を飲む習慣のある方にはおすすめです。
❶フッ素加工のフライパンと比べて重くて、錆やすい。
❷使い終わったら、洗うだけではなく油に馴染ませて置く必要がある。
❸すぐにあたたまりにくい。
ちょっと手がかかりますが、利点の方が多くなりました。何よりおいしくなるわけですから多少の手間は惜しまずにというところです。使い始めには、自分の暮らしに取り入れる儀式のような準備もありますが、とは言えちょっとひと手間することも暮らしの道具や素材と向き合って関係を深めているようなものです。
フライパンの内側を軽く拭いて、多めの油で野菜クズを弱火で炒め、全体に油が馴染むようにして油膜をつけてください。調理が終わったら、熱いうちに水やぬるま湯と棕櫚たわしで優しく擦り洗いします。こびりつきがある時は、しばらく水を張って、洗った後は水気を拭き、火にかけて乾かします。プツプツと水が蒸気になる音が消えたら終了です。
この工程をとることで、肉や魚も表面をはパリっと香ばしく、中はじっくり火を通し焼き上げることができます。炒め物もおいしく仕上がり、オムレツも驚くほどふっくらと出来上がります。もしも魚や肉がどうしてもくっついてしまって上手く使えない体験をした場合は、食材がフライパンの表面の熱を冷ましてしまっていることが考えられます。調理するものを入れる前に、煙が出るくらいにしっかりと熱してください。また食材は調理する少し前に常温に戻しておくのも良い方法です。
鉄鍋や鉄フライパンを使い終わったら熱いうちにお湯と、たわしやスポンジで汚れを洗い流します。 洗剤は要りませんが、油が気になるのであれば使っても問題ありません。(金属製のたわしや磨き粉の使用は控えてください)また、洗剤はあまり使わない方が良いですが、使い込んだフライパンなら簡単に油の膜が取れてしまうようなことはありませんのでそれほど神経質になることはありません。
水洗い後は、きちんと乾かしておくことが大切です。水洗い後そのまま置くと錆の原因になるので火にかけて乾かすようにしましょう。また、使い込んで油が馴染むまでは、洗って乾かした鉄鍋や鉄フライパンに油をひいておくのがよいです。長期間使用しない時にも軽く油をひいて風通しのいいところに保管してください。
強火で焼き切るというのが一番簡単なメンテナンスです。 煙が出るまで強火で加熱すると、焦げつきが炭化して剥がれてきます。 その後、たわしで洗い流しいつも通り乾かし、油をひいておきます。
※金たわしやクレンザーは使わないでください。
①重曹の量は水1リットルに対して大さじ2ぐらい作ります。
②鉄鍋、または鉄フライパンに水と重曹を入れ、10分ほど沸騰させます。
③火を止め、しっかりと冷めるまで1時間以上おいておきます。
④流水で流しながらたわしで擦り、焦げを落とします。
⑤いつも通り乾かし、油をひいておきます。
少しくらいの錆はそれほど気にする必要はありませんが、気になる場合は、鉄鍋は天然素材のたわしでこすり落とした後、初めて使う時と同様に、多めの油を熱して野菜くずを炒め、油をしっかりとなじませます。
新しい鉄瓶は1〜2回、水ですすいで中の埃を流します。その後2〜3回、水を変えて沸かしてから使います。始めのうちは、お湯に色がつくことがありますが、繰り返すうちに色がなくなります。無色透明になったら使い始めの準備完了です。使い始め1ヶ月程度は、毎日お湯を沸かすことで内側に湯垢ができ、より錆びにくくなります。
※内部を覆う湯垢は、使用頻度や水質により黄・茶・青味を帯びた白色と異なります。
※ホーロー加工してある急須の場合は、お湯を沸かすことはできません。空焚きをしますとホーローが剥離しますので、直火ではお使いにならないでください。
鉄瓶は使うほど内側が赤みを帯びてきますが、洗わずに育てていくと、錆とは別の油の膜ができて、白湯が口当たりまろやかに感じます。
鉄瓶で沸かしたお湯はポットなどに移して中身を空にしておくこと。いつまでも中にお湯を残しておくと鉄瓶を痛める原因になります。すぐにお湯を移すことで、鉄の余熱で鉄瓶内部が乾燥させることもでき、あとから火をかけて乾かす手間が省けます。 もし水気が残ってしまっていたら、拭きとらず弱火で30秒ほど熱して乾燥させてください。内側はたわしなどでこすり洗いしないでぐださい。
内部に赤い錆が出てしまっても沸かしたお湯が赤く濁らない限り、問題ありません。錆が気になっても、絶対に内部には触らないようにしましょう。もしお湯が赤く濁ってしまったら、お湯を沸かす・捨てるの工程を繰り返し行います。何回か行うと透明なお湯に変わります。
水道水のカルシウムなどが付着したものです。決してたわしや布で内部をこすらないでください。付着した湯垢はそのままで、沸騰したお湯が透明であれば問題はありません。錆止めの効果がありますのでそのままご使用を続けてください。
金具臭い時は水を8分目まで入れ、茶さじ一杯程度の煎茶をお茶パックにいれて30分程度煮みます。(吹きこぼれを防ぐため蓋は外してください) 煎茶に含まれるタンニンと鉄分の化学反応して、お湯が黒色になったら火を止めて水を足し、その後半日程度放置して洗い、乾かします。それでも匂いなど気になる場合は、2−3回繰り返します。
鉄瓶に余熱が残っているうちに、煎茶に浸し軽くしぼった布で磨きます。鉄瓶の鉄分とお茶のタンニンが反応し、錆がある場合は、お手入れを繰り返すうちに少しずつ黒く変色します。(ただし、鉄瓶が冷えていると逆に錆びますのでご注意ください。)
お手入れをしながら経年変化で味わい深く美しく育つ鉄の調理道具は、使い方が難しいと思う方もいますが、使いはじめてみると最初の心配はどこへやら。おいしく調理できる鉄の素晴らしさに、日々使うことが楽しみになります。
熱したら冷めにくい特性上とても熱くなります。火傷には十分注意してください。鉄の調理道具を使う際には、必ずしっかり厚手の手の甲まで覆うミトンを装着ください。
明治35年創業の南部鉄器の老舗メーカー、岩鋳(いわちゅう)。国内でも有数の大型工場を持ち、現代の暮らしに馴染む鉄瓶や鉄器から、約400年の伝統を受け継ぐ手作りの南部鉄瓶まで多岐に渡る製品を製造を手掛けています。また海外向け製品も積極的に取り組んでおり、カラフルな鉄器が人気を呼び、ヨーロッパでは「IWACHU」が鉄瓶(ティーポット)の代名詞にもなっているほど。国内外に南部鉄器の良さを広めるトップメーカーです。
昭和32年創業、鍋製造メーカーの山田工業所は日本で唯一打出し製法での鍋作りを守り続けています。職人が一つ一つ丁寧に仕上げるフライパンは、一生物として料理好きの人に愛されてきました。飲食店向けにさまざまなオーダーを受けて中華鍋を作ってきた山田工業所が、より家庭での使いやすさを追求したブランドがtsukumo(ツクモ)。毎日の料理に欠かせない機能性と永く使える調理器具は多くのプロからも愛される一品です。
1929年、岩手県水沢生まれ。
岩手県盛岡市の南部鋳物製作所「おがさわら」の代表で、JCDA(社)クラフトデザイン協会会員です。
水沢市で鋳物業を指導し、発展に多大なる貢献をしています。60年以上のキャリアを持ち、古典的な南部鉄器について、単純な形しか出来ないが大量生産がきく「生型」と、制作に煩雑な工程と熟練の技を要する「惣型」の2つの技法を使いわけ、生活に根ざした鉄器を作り続けています。古典的な南部鉄瓶の技法を受け継ぐ一方で、シンプルでモダンなデザインの日用雑器の製作もこなすマルチ鋳物師です。
山形鋳物のブランド、鋳心ノ工房(チュウシンコウボウ)。デザイナーである増田尚紀さんが手がける鋳心ノ工房(チュウシンコウボウ)のプロダクトは、私達の暮らしに馴染む使い勝手の良さと、伝統技術のバランスに優れた逸品ばかり。鋳物ならではのしっかりとした質感や程良い重みが感じられ、毎日の暮らしにすっと馴染む品々は、日本の個性である伝統工芸「山形鋳物」を次世代に伝えたいという理念を感じさせます。
柳宗理は1915年東京に生まれ、東京美術学校油絵科に入学。フランス人建築家ル・コルビュジェの「現代の装飾芸術」を読み、装飾のないところに真の装飾があることを述べたその本に、宗理は自分の進んでいく道を見つけます。
終戦後は工業デザインに着手し、1952年には毎日新聞社主催の第一回工業デザインコンクールで第一席に入選。その後、柳デザイン研究会を設立します。手掛けたデザインは、「バタフライ・スツール」や照明、オート三輪、陸橋、オリンピックの聖火台などと幅広く、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やルーブル美術館などでは作品が永久保存されています。
1830年にフランスのヴァルダジョルという小さな町で創業。鍛冶工場の持ち主であったデバイヤー家は、代々受け継がれてきた技術を元に、鍋や釜の製造を始めました。その後、フランスの産業革命とともに事業を発展させ、今でも当時と変わらぬ製造方法で製品を作り上げています。180人にも及ぶ職人が、産業革命時から使用している300もの機械で作り上げたフライパンは、世界中のシェフやフランス経済財政産業省の認定を受けるほど、長く使える確かな品質を持っています。