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料理をしながらその変化を楽しむ。鉄鍋・銅鍋・土鍋を使う暮らし

 

お料理の幅を広げてくれるのは、食材に限らず、調理道具という場合があります。

たとえば、鉄や銅を溶かして形にした鍋、土を捏ねて作り上げた土鍋。使い勝手の良さを重視した機能的な調理道具が揃う現代ではありますが、ずっと昔から作り続けられてきたこうした調理道具は、残る理由があるから、今なお作り、使い続けられているといっても良いのかもしれません。

 

 

フランス製の鉄フライパン

東京の下町で作り続けられている銅製鍋

伊賀の良質な陶土から作られた土鍋

 

今回ピックアップするのは、いずれもZUTTOのスタッフが愛用している3つの鍋。使い始めてから数年が経過した今、使い始めた頃よりもずっと使いやすく、見た目も変わってきました。時とともに表れてきた変化が教えてくれる、鍋の魅力、そしてこれからも長く使っていくためのヒントをご紹介します。

 

万能選手の鉄製フライパン

 

 

エレメントフライパン/de Buyer(デバイヤー)

1830年にフランスの小さな町からスタートした、デバイヤー家の鍋製造。もともと板金と鉄の道具業を営んでいた技術をもとに鍋や釜の製造を手がけ、フランスの産業革命とともに発展した経緯があります。製造方法は当時と変わらず、180人にも及ぶ職人が産業革命時から使用している300もの機械で作り上げています。 同一の工場で一貫生産出来るのは、世界でde Buyer(デバイヤー)のみ。卓越した技術で作られるフライパンの耐久性と使いやすさは、世界中のシェフが認めているほど。

 

 

 

 

黒光りする姿が嬉しい、3年目

 

エレメントフライパンを使う前は、テフロン加工がされたフライパンを使っていたスタッフ。でもテフロンの場合、ほぼ毎日使っていると1年足らずで表面の加工が落ちてしまい、何を焼いても食材が鍋にくっつくようになってしまいました。その煩わしさから逃れたい、次は買い替えずに使い続けられるものを、と悩んだ末に選んだのがこのエレメントフライパン。

鉄製のフライパンは、まず使い始める前に油を馴染ませる油ならしが必要だったり、使用後はすぐに洗浄する必要があります。放置していると錆が付いてしまうことも…。そんな懸念から手が出しにくい存在ともいえますが、一度熱が回ると食材に一気に熱が通り、美味しさを閉じ込める力はほかの追随を許しません。

 

 

 

 

3年間使い続けてきたフライパンは、使い始めはシルバーの印象が強かった色が徐々にブロンズのような艶やかな茶〜黒色へ変化。裏側はコンロや火に直に当たるからなのか、真っ黒になりました。初めて使う前に表面コーティングは落としているので、この色はまさに時間が作り出したもの。

 

料理の幅を広げるフライパンの力

 

 

使用直後は油慣らしをしても、食材が鍋にくっつくことがしばしばありました。その原因は、フライパンに十分に熱が回っていないことだったと考えられます。フライパンを火にかけたら、手を近づけると熱いと感じるくらいに温めてから料理を始めるのが適しています。スタッフはこの点に注意しながら使い続けてみると、今ではなにを焼いてもくっつくことはなく、とてもジューシーに焼き上げるフライパンへと育ちました。

 

フライパンが世界中で愛用されてきた理由は、幅広い調理方法に合うことがひとつなのかもしれません。肉や魚を焼き付けたり、野菜を炒めたり。ほかにも、油をいつもより少し多めに注いで小麦粉をはたいた食材を入れると揚げ物が作れたり、水を注いでフタを閉めれば蒸し料理も。ひとつ持っているだけでお料理の幅がぐんと広がる万能鍋なのです。

 

>>de Buyer (デバイヤー)の鉄製フライパン

 

熱回りの早さが魅力の銅鍋

 

 

玉子焼鍋/中村銅器製作所

 

中村銅器製作所は現在3代目が担い、銅製の鍋を製造し続けています。東京下町の職人が作る銅製玉子焼鍋はプロもこぞって愛用する逸品で、熱を均一に伝える銅が玉子焼きをふっくらと美味しく仕上げます。 内側の素材は熟練の職人技により錫を焼き付けており、剥がれにくく、油馴染みが非常に良いのが特徴です。

 

 

 

「するり」とした感触を実感する、2年目

 

玉子焼専用の鍋と思うと、少々ぜいたくなイメージがありつつも、厚みのあるフワフワ、アツアツの玉子焼の食感が出来るのは銅鍋ならでは。その特徴は、熱の回り方の早さにあります。銅鍋は熱伝導率が高いので、弱火でも火にかけるとすぐに全体が温められる特徴があります。そのため、玉子焼のようにまんべんなく火を通したい食材に最適。均一に火が通るので、見た目も良い玉子焼が出来上がります。

 

 

 

外側は銅、内側は錫が焼き付けられた玉子焼き鍋。使い始めはピカピカとした銅や錫の印象がありましたが、使用していくにつれて徐々に銅の色が濃くなり、木製の取手も心なしか色が濃くなってきました。内側も食材や箸が当たるからか、表面にうっすらと傷のようなものが出来ています。でも、油のなじみは使い始めより今のほうが断然良く、玉子焼も「するり」と巻くことが出来ます。

 

少ない食材に手際良く熱を通す

 

 

先に紹介した鉄フライパンと同じように、使い始めは油ならしが必要な銅製の鍋。鉄と同じように焦げ付きやすい温度があり、それを超える温度までしっかりと温めること、そして表面に油が十分に馴染んでいないと食材がくっつく要因となります。油は注ぎすぎても料理に支障が出るので、注いだらキッチンペーパーで軽く拭くようになじませるのがポイントです。

 

片手ですいすい持ち上げられるコンパクトな玉子焼鍋。そのサイズ感と銅の熱伝導率の高さのおかげで、玉子焼だけでなく、少ない食材を効率的に料理することが出来ます。例えば、朝食にベーコンを焼いたり、お弁当の玉子焼を作った後に野菜をさっと炒めてもう一品、一人分の煮込み料理の温め直しに、と実は様々な使い方が出来るのです。素早く熱が回って、コンパクト、そして均一に熱が回って美味しさがアップ…。そんな良いとこどりのお鍋です。

 

>>中村銅器製作所の玉子焼鍋

 

使うことで強くなっていく、土鍋

 

 

伊賀土 丸土鍋 四人用/TOJIKITONYA(トウジキトンヤ)

2007年、TOJIKITONYA(トウジキトンヤ)は、問屋業を営んでいた3社が地域の歴史や文化に育まれてきた素材を活かし、現代の生活に見合う良質な陶磁器製品を伝えていくという使命をもって始まりました。 焼物産地においても昔ながらの技術や職人が急減している中、日本の食文化の歴史とともに歩んできた陶磁器産業の優れた技術や製品を継承していきたいという想いがあります。 焼き物の産地、三重県の伊賀で製造されている、TOJIKI TONYA(トウジキトンヤ)の土鍋は、伊賀の地層である古琵琶湖層から採れる陶土は非常に耐火度が高く、耐熱陶器に見合う土として知られてきました。蓄熱・保温に大変優れていること、そしてざらりとした手触りが特徴です。また、伊賀土には遠赤外線効果があるため、食材の旨味を引き出し、料理をまろやかに仕立てると言われています。 

 


 

 

土の変化に愛着が沸く、2年目

 

主に冬の時期に鍋料理の主役として活躍してきた、丸土鍋。実は使い始めた当初、底面から水漏れを起こしていました。早速割ってしまったのかと心配になりましたが、水漏れの様子を観察していると、底面から緩やかに水分が滲み出していることが分かります。これは割れのせいではなく、素材である土に小さな穴が無数にあるから。その穴を塞ぐ作業が「目止め」と呼ばれるのですが、目止めをしたとしても、使い始めたばかりや長期間使わなかった後に再び使い始めると水漏れを起こすことがあります。根気よく何度か目止めを行なうと、徐々に水漏れはなくなっていきました。

 

 

 

鍋の内側を見てみると、無数にひび割れのような模様が入っていることが分かります。「貫入(かんにゅう)」と呼ばれるこの模様は、鍋の素地と釉薬の収縮率の違いにより生まれるもの。鍋を使えば使うほど貫入が入っていく様子を見ることが出来ます。裏側の底面はざらざらとした土の質感がそのままに表れています。目には見えませんが、使うことで徐々にこの素地の目が埋まり、土鍋自身が強いものへと変化しています。

※上記の土鍋は仕様変更前のものになります。仕様変更後の鍋底の色が異なりますので、ご了承ください。

 

美味しくて、鍋にも良い炊飯

 

 

丸土鍋は四人分のサイズとして作られているので、冬の鍋料理の主役として大活躍してくれます。そのほかにも、お米と土鍋の相性は抜群。お米に含まれるでんぷん質が土鍋の素地をくっつける役目を果たし、より鍋を強く育ててくれます。そして土鍋での炊飯は容量さえ覚えれば、意外と短時間で美味しく頂くことが出来ます。しっかりと時間をかけて蒸したごはんはふっくらと米が立ち、美味しさが凝縮されています。ホクホクと温かさを保つのも、土鍋ならでは。また、炊飯のみならず、温かさが重要なおかゆやうどんにも最適ですので、幅広い鍋料理を楽しむことが出来ます。

 

>>TOJIKITONYA(トウジキトンヤ)の丸土鍋

 

これからも使い続けるために

 

鉄鍋、銅鍋、土鍋は原料が異なるため、細かな手入れの仕方もそれぞれ異なります。でも同じ鍋として共通点があるのも事実。これからも長く使い続けるために、以下3つの点を共通して心がけるのがポイントです。

 

①使用後はすぐ洗浄

鍋は熱を持っている場合のほうが汚れを落としやすい性質があります。特に鉄や銅といった金属の場合は、まだ鍋が熱い状態でお湯で洗浄すると、食材がこびりついてしまった場合も驚くほど早く洗い落とすことが出来ます。土鍋の場合も、盛り付けた後に出来るだけ早く洗浄することで、匂いの吸着を防ぎます。

鉄のフライパンはたわし、銅鍋や土鍋は柔らかいスポンジなど、具体的な洗い方は鍋によって異なりますので、下記にある「はじめてシリーズ」もご参照ください。

 

②素材の異なる鍋を重ねない

意外と盲点なのがこちら。鍋を収納する際に、重ねて置く場合もあるかと思いますが、種類の異なる金属を重ねてしまうと、それが錆の原因となる場合があります。鉄と銅、ステンレスとほかの金属、など様々な組み合わせによって錆が生じる可能性がありますので、ご注意ください。取手に穴の付いた鍋の場合は、吊り下げて収納することをおすすめします。

 

③鍋に合わせた火加減を

鍋の適正な火力をご存知でしょうか。基本的に鍋底を上回る火力を使う必要はなく、一度熱が回れば強火にする必要のない鍋もあります。

鉄鍋:鍋自体が強いため強い火力でも十分に持ち堪えます。熱伝導率が低いため、熱が回るまでに時間がかかりますが、一度温まると熱を保つ性質がありますので、弱火〜中火でも十分に調理が可能です。

銅鍋:銅は柔らかい性質があり、中村銅器製作所の玉子焼鍋の場合、鍋自体が細い作りになっているので、火力は鍋底を越えない程度に留めます。また、熱の回りが早いため、一度温まったら弱火でも調理が可能です。

土鍋:急激な温度変化に弱く、急に強火にかけると破損の恐れがあります。まずは弱火〜中火から調理をはじめて、火に慣らしてから火力を調整することをおすすめします。鉄鍋同様に保温性が高いため、一度熱が回ると長時間熱を保つ性質があります。

 

 

「油ならし」や「目止め」、まず基本の使い方を抑えるなら

 

▼はじめての鉄のフライパン、どう使う?

 

▼はじめての銅製品、どう使う?

 

▼はじめての土鍋。正しい目止めの方法とは?

投稿者: 植田 日時: 2018年03月08日 11:00 | permalink

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