Reports 003 ダージリンに自然を取り戻した茶園のお話
TVで特集が組まれたり、多くの新聞、雑誌にも紹介されてきたマカイバリの紅茶。その理由は、もちろん世界最高峰のダージリンティーにもありますが、 その背景にあるたくさんの素敵なストーリーが魅力なことにもあります。
今回は、マカイバリの紅茶を日本に紹介しているマカイバリジャパンさんに、マカイバリ紅茶の魅力を伺ってきました。 事務所の場所は、閑静な住宅街。マカイバリから届きたての紅茶と和やかな雰囲気で迎えて頂きました。
■お話を聞かせてくれた人
マカイバリジャパン ディレクター 石井 博子さん
◇マカイバリジャパン
1859年に創立された、インド西ベンガル州ダージリンにあるダージリン地方では最も長い歴史を持つ茶園マカイバリ。 英国王室ご用達や、ティーオークションで歴代世界最高値を記録したことで知られていますが、近年では「自然との調和」 といった理念や有機農法を越えたバイオダイナミック農法で注目を集めています。 マカイバリジャパンは、マカイバリ茶園の商品を扱う日本総代理店です。◇インタビュー
Q1.まず、マカイバリの紅茶の魅力を教えてもらえますか。
マカイバリから、届きたての秋摘み茶。優しい甘みに深みがあります。
やっぱり、美味しいことだと思います。
もちろん、マカイバリの紅茶には、美味しさの他にも魅力的な要素があります。
例えば、安心出来る有機農法で作られていたり、茶葉は大切に手摘みされていたり、その出来から世界最高値をつけたこともあります。
もちろん、それらは全て私たちの誇りですが、素直に心からおいしいと思える紅茶だからこそ、そう思えるんだと思うんです。
それは、一度、飲んでいただければ、きっと分かっていただけると思います。
Q2.マカイバリの紅茶を扱うことになきっかけは?
少しづつ集めたティーセット。どれも大切な宝物だそうです。
商社の社員としてインドに駐在していた父が、退職後にマカイバリ茶園のオーナーであるバナジーさんと知り合ったことがきっかけです。
マカイバリの紅茶を、もっとたくさんの方に知ってもらいたいと思っていたバナジーさんとインドの良さをもっと日本に伝えたいと思っていた父。
それは、お互いにとって、とても幸運な出会いでした。
父は、そのまま現地に残り、マカイバリジャパンのインド代表としてマカイバリの紅茶の普及に努めています。 日本では、私を含め、母、姉もマカイバリに参画し、本当の意味で家族一体となってマカイバリの紅茶を知ってもらえるよう活動しています。 私自身、一年のうち半年はインドに駐在して、ブログなどを通して、マカイバリ茶園をはじめとしたインドの様々な魅力を紹介しています。
Q3.では、マカイバリ茶園のことも聞かせていただけますか。
味わいのある、アンティークの秤。趣きを感じます。
紅茶を美味しく飲むために欠かせないティーコージー。
マカイバリ茶園は、ダージリン地方で最も長い歴史を誇る茶園の一つです。
自然との調和を理念にしているマカイバリ茶園は、約700ヘクタールある広大な敷地の3分の2は原生林のまま残されています。
ですから、マカイバリ茶園には野生に生息しているトラ、ヒョウ、シカ、ヤギ、ウサギ、昆虫にいたるまで、無数の動物を見かけます。
マカイバリ茶園が、自然の楽園と紹介されている所以です。
でも、実は、今の茶園主バナジーさんが引き継ぐまでは、自然の楽園どころか、マカイバリを含めたダージリン全体が、長年にわたる農薬や化学肥料で土はやせ、収穫量が減っただけでなく、その影響から、周囲の豊かな自然環境まで失うほど危機的な状況にありました。
それを見てショックを受けたバナジーさんは、自ら研究を行い、これを回復させるには、自然との調和の中で栽培を行い、農作物を育む土地は、農薬や化学肥料に頼らない、自立維持可能でなければならないと考えました。
そしてバナジーさんは、すべての茶畑において、農薬や化学肥料を一切使わず、シュタイナーのバイオダイナミック農法とガンジーの無農薬農法に、30年の月日をかけて挑戦した結果、マカイバリ茶園をふかふかとした肥沃な土地に生まれ変わらせることに成功しました。
これは、有機農法だけでなく、農園のスタッフ自身が小株主として茶園経営に参画出来る体制を作り、自身の努力が経済的に反映されることで、各自の自主性を育てたことや、牛糞から取れるメタンガスを燃料として利用するといった新しい技術を導入することによって、森林伐採をなくし、環境にも人にもやさしいエコビレッジを作り上げたことにあります。 持続性のある農業スタイルとして、きっと、日本でも参考にしてもらえるものがあると思います。
今では、マカイバリ茶園に習って、ダージリン全体の茶園も少しづつ良い方向へ向かっています。これは、マカイバリ茶園の功績ですね。
Q4.マカイバリと日本を繋げるようなプロジェクトされているようですね。
これから、日本でも紹介していきたいと思っている、インド人デザイナーの作品。
それは、架け橋プロジェクトですね。
2001年に、マカイバリで扱っている刺繍袋を作ってくれていた村を含めた大地震が起こり、NGOを通じて、基金に参加したことがありました。
これを機会に、私たち自身も、お世話になっているマカイバリ茶園そしてダージリンに住んでいる人たちに、何か出来ればという気持ちが強くなっていきました。
それが、架け橋プロジェクトに繋がり、医療関係者の支援を受けて、インドでは未だに難しいとされる白内障治療などの医療プロジェクトを行ったり、日本の手揉み玉露の製法をインドに伝えるという文化プロジェクトを行っています。
また、日本のマカイバリ茶園の取り組みに興味のある方々や学生に対し、エコツアーやスタディーツアーなども行っています。
日本でマカイバリの紅茶を飲む人たちがマカイバリ茶園のことを想い、 ダージリンでマカイバリの紅茶を作る人たちが日本の私たちを想ってくれる。 「生産者が見える」ではなく、「生産者も消費者もお互いが見え、心が通っている」。 マカイバリの紅茶とこのプロジェクトを通じて、日本とダージリンがより近い関係になれれば、と思っています。
Q5.新たに、マカイバリの紅茶以外にも、始められたことがあるそうですね。
AVANIのマフラーたち。ちょっと持っただけで、手がぽかぽかしてきます。
フェアトレード認証がとれたばかり。版画風の絵柄がかわいい。
AVANI(アヴァニ)の製品ですね。
AVANIは、「自然との共生」をテーマにヒマラヤの麓、インド・ウッ
タランチャル州の山岳にある村の職人たちが、野生の繭玉や野草といった
自然の恵みから、一点、一点マフラーやストールなどを手作りしています
。
AVANIの製品は、柔らかく繊細な中にも、存在感のあるしっかりとし た風合いを持ち合わせています。手にとってみると、とても軽く、持って いるだけで、すぐに手がぽかぽかしてきます。研究を重ねた植物染料のお 陰で色彩も豊か。きっと、たくさんの方に気に入ってもらえると思います 。実は、AVANIの製品は、私が気に入って、インドに行くたびに、少 しづつ買い揃えていたものです。今回、愛用している製品を扱えることに なったことに、とても縁を感じています。本当に、素晴らしい製品なので 、たくさんの方に知ってもらえるようマカイバリ同様、頑張っていきたい と思います。
また、マカイバリも、新しくフェアトレード団体から認証を受けた紅茶を はじめました。ティーパックですので、マカイバリ紅茶をはじめてお試し になられる方にぴったりかと思います。
Q6.これからの夢とみなさんへのメッセージをお願いします。 もともと、私自身、NGOに勤める道を考えていたこともありましたので、 ビジネスとやりたかった活動が、合わせて取り組めることに幸せを感じて います。これからの夢というよりは、そんな毎日に感謝し、大切に過ごし ていきたいと思っています。マカイバリの紅茶は、是非、一度お試しくだ さい。
◇取材後記
終始、和やかな雰囲気で、あっという間に時間は過ぎてしまいました。
お話頂いた内容は、それぞれが奥深く、とても、全ては書ききれないほどでしたので、抜粋させて頂きました。
今回の取材で、人と自然、人と人のつながりから生まれるものの素晴らしさを再認識させられました。
実は、マカイバリジャパンの代表であるお母さまもご同席されていましたが、写真は恥ずかしがられてご辞退。
もちろん、淹れていただいたマカイバリの紅茶は、とっても美味しかったです。
ご馳走さまでした。
◇マカイバリジャパン
http://www.makaibari.co.jp/
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