Reports 007 ミツバチが寄り道するハチミツ屋さん
コムハニーやマヌカ蜂蜜、ZUTTOでご紹介している神楽坂ピービーズさんの商品は、スーパーマーケットではなかなかお目にかかる機会のないハチミツです。ニュージーランドの広大な自然によってもたらされた恩恵、そういっても過言ではない本物のハチミツ。そんなこだわりのあるハチミツを扱っていらっしゃる神楽坂ピービーズさんに、ハチミツの魅力を伺ってきました。
■お話を聞かせてくれた人
神楽坂ピービーズ (株)プレイン/嶋村 賢次さん
神楽坂ピービーズ (株)プレイン/嶋村 姉美子さん(写真左)
◇神楽坂ピービーズ
ニュージーランドの美しい自然の中で育まれた天然100%のハチミツにこだわっている、 東京の神楽坂にあるハチミツ専門店。 お店の方自らがニュージーランドに出向き、現地の養蜂家の方と交流をして選びぬいた、 本当に美味しくて安心なハチミツを扱っていらっしゃいます。ニュージーランドのおみやげの手作りモビールが、ゆらゆら揺れてお出迎え。
ハチミツを絞った後に残るミツロウ。やさしくほんのりハチミツが香ります。
この香りに惹かれて、ミツバチが遊びに来ることもあるそうです。
カウンターではアイスや飲み物もいただけるとか。
ハチミツ好きが集まればカウンター越しのおしゃべりもはずみます。
Q1.ニュージーランド産のハチミツを扱うようになったきっかけを教えてください。
こちらが神楽坂ピービーズさん。
ガラス戸越しに見えるハチミツがいっぱいの店内に期待が膨らみます。
ニュージーランドに旅行している時に、なんでこんなにハチミツをいろんなところで見るのだろうと気になったことがきっかけです。
スーパーマーケットにたくさんのハチミツが並んでいるだけでなく、風邪をひいたときに飲ませたり、傷口ややけどに塗ったり、それに歯みがきに使ったりと、ニュージーランドの人の生活と切り離せないものなんです。
うちの子供がアトピー体質で化学物質に敏感だったことから、そういった使い方をすることにも興味を持ちました。
ハチミツのことを調べていくうちに、日本のスーパーマーケットで売っている中国産や一部の日本産のハチミツは、農薬や抗生物質まみれであることを知りました。
そうして自然な方法で作られているニュージーランドのハチミツを、ますます魅力的に感じるようになりました。
Q2.ニュージーランド産のハチミツのどういったところが魅力的なのですか?
これが巣箱の中に入っている巣板。ここから丹精込めてハチミツを搾っていきます。 ニュージーランドのハチミツ消費量は世界一で、日本の7倍にもなります。 東京23区が入るくらいの大きさの養蜂農園に対して養蜂家が2,3人といった、大規模で、オーガニックな農園です。 それほどの規模なので国もしっかり管理しています。 ミツバチがハチミツを作り、巣にふたをして熟成させるのを待ち、完熟したハチミツを極端な加熱などをせずに自然な方法で充填するという方法で、ニュージーランドのハチミツは作られています。
Q3.神楽坂ピービーズではハチミツの品質管理について、どのような点に気をつけているのですか?
安心なハチミツの証。「抗生物質不使用証明書」
まずは農薬や抗生物質を使っていないハチミツであるかどうか調べています。
その養蜂家が農薬を無使用であるかどうか、ニュージーランド政府発行の「抗生物質不使用証明書」を持っているかどうかを確認し、そして日本の検疫による「抗生物質未検出検査」を通ったハチミツでないと扱いません。
またハチミツは高温になると栄養成分や風味が飛んでしまうので、加熱温度は45度を守り、5,6日かけて充填するようにしています。
Q4.実際にニュージーランドまで足を運んで養蜂家を訪ねたとうかがったのですが、 そのニュージーランドでのハチミツさがしの旅について聞かせてください。
心のこもった手作りスプーンのプレゼント。
「kenji」と名前が彫ってあります。
ニュージーランドへは1年に1回、シーズンの初めに約1週間行っています。
養蜂は雨や気温に左右される仕事なので、彼らは自然と向き合って暮らしています。
1回の旅の道のりはだいたい2,500kmくらいになるのですが、山を越えたり谷を抜けたり、ひたすら移動です。でもそうやって苦労して養蜂家のお宅にたどり着くと、本当にあたたかく歓迎してくれるんです。
ホームメイドのケーキを準備していてくれたり、おみやげに名前入りの木のスプーンを作ってくれたり。
それだけでも行ってよかったと思えます。
Q5.養蜂は自然から大きな影響を受けるのですね。
そういえば、アメリカで起きているミツバチの集団失踪のニュースが気になっていたのですが、それについてはどのようにお考えですか?
ニュージーランドの大自然。
野の花にミツバチたちが戯れているのです。
ミツバチについての異常はアメリカだけでなく、いろいろなところで起きています。
お隣のオーストラリアではアオカブトムシにミツバチの巣を荒らされる被害が、2,3年前から多発しています。その土地にほかの産業が入ってくることで環境が大きく変化するのです。
ワインを作ろうとすると山を1つつぶしてはげ山にしてしまう。
養蜂は自然とダイレクトに繋がっているので、周辺の自然が変わるとミツバチに大きな影響を与えます。
ミツバチが受粉を手伝うポリネーションができなくなり農業にも深刻な被害を及ぼすのです。
ハチミツが好きで将来的にもかかわっていきたいので、これからどうなるかを案じています。
Q6.それでは今後の夢を教えてください。
瓶につめられたハチミツが棚にいっぱい。
琥珀色やくちなし色…きらきら光る宝物のようです。
日本ではまだまだ本当のハチミツが知られていない状態です。
え?これがハチミツ?というようなものが流通していることもあるので、もっとハチミツを広めていきたいですね。
うちで扱っているハチミツを年配の方がお召し上がりになると、「昔の味がする」とおっしゃるんです。
昔、野山で見つけて食べた、天然のままのハチミツの味と同じなんでしょうね。
自然な環境で採れたハチミツを追求して、そんな自然の味を取り戻していきたいと思います。
◇神楽坂ピービーズさん直伝!! マヌカハニーのおすすめレシピ
- ・生姜のハチミツ漬け
1.新生姜を5~6個乱切りにする。 - ※着色されていない、国産の生姜を使うこと。
- 2.ガラス瓶など、保存のできる容器に生姜を入れ、マヌカハニーを大さじ2杯くらいとろーっとかける。
- 3.冷蔵庫に入れて保存する。
- ハチミツが生姜の水分を出してくれるので、生姜ハチミツのシロップができる。
※ときどき液体に浸っていない、上の方の生姜にも水分がかかるようにしてやること。
»お湯で割って生姜茶に…からだを芯まであたためてくれます。
»ソーダで割ればジンジャーエールに…氷とミントを浮かべてリフレッシユ。
- ・ハチミツ味噌
1.マヌカハニーと味噌(黒味噌か麹味噌)を、加減を見つつ1:1くらいの割合で混ぜる。
2.お好みの量のゴマを入れる。 - »野菜スティックにつけて食べれば、とまらなくなってしまいます。
»お酢を加えると、ゴマしゃぶのたれや冷やし中華のたれに大変身。
◇取材後記
神楽坂の町並みの中に突如現れる、かわいらしいハチミツ屋さんが神楽坂ピービーズさんです。 店内は木目調の家具や、ぬくもりいっぱいの小物があちこちに置いてあり、そして壁の棚には選び抜かれたニュージーランドのハチミツがたくさん並んでいます。 愛らしくてほっとする雰囲気で、ふらっと遊びにいくだけでもきっと幸せな気分になれるのではないかと思います。 ハチミツの味見をさせていただいたのですが、花の香りが押し寄せてくるような感覚がして、私が今まで食べていたハチミツはなんなのだろう…と考えてしまいました。
ちなみに神楽坂の実店舗では、手作りミツロウキャンドルを作るワークショップも開催しているそうです。手に残る香りも優しいミツロウで、粘土遊びをするようにオリジナルキャンドルを作ることができます。都会の中に、子どもの遊び場があったらいいな…そんな思いから始まったワークショップなのだとおっしゃっていました。
取材を通して始終感じていたのは、お話くださったお2人のハチミツやニュージーランドへの愛情です。本物のハチミツを追求することで、人と人との繋がりや植生などの地球環境まで見つめていらっしゃるように思いました。
ミツロウの香りに誘われて、ミツバチもつい立ち寄ってしまうという神楽坂ピービーズさん。大自然の味がいっぱいつまったハチミツに誘惑されにいってみませんか?
◇神楽坂ピービーズ
http://pbees.jp/
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